たぶん、ヴィランが親らしいが。それはそれとしてヒーローの子どもの方が気苦労が多い。   作:幽 

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評価、感想ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。


荼毘側の話、簡潔に。
荼毘と、魔王と、弔の話、ちょびっと。

何か、こういったの読みたいとかありましたら、ここにくだされば。何か、アンケートというか、興味です。
https://odaibako.net/u/kasuka_770


歪な地平線

 

「・・・・・これだけか?」

 

スピナーは斜め前で、死体から剥ぎ取ってきた財布やスマホを眺めて呟く、荼毘を見て不思議な気分になっていた。

 

丁度、ヴィラン連合自体が迷走と言って状態になっていた。何せ、パトロンである死柄木弔の師が逮捕されてしまった。それと同時に、死穢八斎會ではマグネが行方不明になっており、逮捕された可能性が高い。

そんな中、スピナー達は異形排斥主義集団、通称CRC、現代のシーラカンスのアジトにやってきていた。

そうして、金目の物は無いかと突入したわけだが。

 

まあ、そんなものはもちろん、なかった。金庫を漁ったりだとか、屋敷内を浚えども、金目の物など存在しない。

そんな中、珍しく合流していた荼毘だけがおかしな動きをしていた。

 

「・・・うん、これならいいか。」

「何してるんだ?」

「今の時代、便利に振りすぎるとろくでもないって話だ。ほら、顔認証でスマホが開けられるようになってる。」

「それがどうしたんだよ?」

「こういった場合、基本的に顔認証とか生体情報でロックかけてるんだ。トガに化けさせて貯蓄を引き出させるんだ。生活資金ぐらいにはなるだろう。ダミーの口座も何個か残ってる。」

 

荼毘は、何か、死柄木とは別で浮世離れした男だった。

ある意味で、昔からアングラな場所で生きていたような、そんな男だった。

死柄木の側に静かに寄り添い、意見を言う様はひどく物静かでよく分からない男だった。

 

「あと、この金も使ってください。」

「前から思ってたんですけど、荼毘君って、どうやってお金稼いでるんですかあ?」

「私は以前からの伝手があるので。そちらで稼いでいるんですよ。後は、仲間の候補も探していますが。」

「それで、連れてきたことないだろうが。」

「うちが欲しいのは、戦力じゃなくて思想犯だ。下手な奴を入れると、情報を売る愚か者を引き当てるよりはいいだろう。」

 

疲れたようにそう呟く荼毘にスピナーが遮るように声を上げた。

 

「・・・・俺たちはどこに向かっているんだ?」

 

それに皆の視線がスピナーに向かう。

 

「俺はステインに触発されてここにいる!」

 

トカゲ野郎と蔑まれていた青年は、何もないと叫ぶ。

 

「空っぽだから、自分の中身を求めてるのか。」

「そうだよ、おれぁ、スッカラカンなのさ!だから、このダラけた状態がわからねえ!」

 

自分たちはどこに向かっている?

その問いかけに、死柄木が答えようとしたとき、大地が震えた。

 

 

 

「・・・・もしも、弔が死んだ場合、あなたはどうする気なのですか?」

「死なん。」

「可能性はあるでしょう。」

 

皆がいなくなった研究所にて、氏子は目の前の青年を見つめる。それに荼毘は静かな目で目の前のマッドサイエンティストを見つめる。

 

「それで?死なんように保険をかけろと?」

「私は。」

「AFOの忠実な僕でないことは知っとる!」

 

叩きつけるようなそれに氏子はぎろりと荼毘を睨む。

 

「AFOが弔にお前を付けたときから、大分変わったな、荼毘、いや、え・・・・」

「その名を呼ぶことをてめえに許可した覚えはねえぞ!!」

 

叩きつけるようなチンピラ染みた、けれど、その言葉では片付けられない声に氏子は黙り込む。

冴え冴えとした、チンピラなんて言葉では尽きない、冷たい殺意だった。

 

「・・・・貴様は、弔に執着しとるだろうが。」

「・・・・もう、弔はどこにもいけず、いかない。私は羊飼い。黒霧のような、世話係ではない。私は、家畜の管理者だった。だが、それがどうした?自分の立場は理解している。」

 

ざりっと、踏みしめて、荼毘はぎらぎらと輝く、澄んだ青い瞳でにらみ付ける。

そこには、確かな狂気がある。

社会というものに属すこともなく、庇護を受けることもない、獣のように生きたそれの生々しい憎悪。

それに氏子は言葉を続ける。

 

「なら、何故、そんなにも弔に執着する。」

 

それに荼毘は黙り込んだ。

 

君には、あの子の監視をして欲しいんだ。なあに、逃げたりしない限りは放っておいてくれて構わないよ。

なぜ?

まあ、そうだね。君は、あの子の兄だけれど。せっかくだ。弔にもつけてみようかとね。それに、君はあの子のよき見本になるだろう。

みほん・・・・

そうだ。あの子の心には感情がこびり付いている。それをどこに向けるのかは、私が教える。君は、ぬるい闇の心地よさを教えてやればいい。

 

哀れな子ども、家畜の子ども、使い道の決まった復讐の人形。

自分はそれを受入れた。

助ける理由などはなかった。なかったのだ、自分には。

だから、自分は彼の兄であった。ずっと、彼の側で、彼の兄で。

 

荼毘は一度だけ、仮面の下でゆっくりと瞬きをし、そうして息を吐いた。

 

「・・・・なら、今更あの子を失った時はどうするので?」

「はっ!お前が気にすることではない。お前は、またハイエンドのテストに付き合え。これで負けるようなら。それこそ、執着する理由もない。」

「・・・・わかりました。」

 

荼毘はそれにうなずき、そうして、己の手をじっと見つめる。

 

目的がある。一つだけの、目的。それが正解だったのかわかりはしないけれど、もう、決めてしまったこと。

 

(・・・・ドブネズミが、どんな努力をしたところで、ハッピーエンドは訪れない。)

いつだって、世界とはそんなものなのだ。

 

 

 

「・・・・お前の、氷叢の人間か?」

 

荼毘の言葉にフードを被った、おそらくそう年の変わらない声からして青年は一瞬だけ動きを止めた。

 

「どういう意味だ?」

「・・・・個性血統論といって、まあ、すぐで消えたとある分類だ。」

 

空の上で氷で出来た龍に乗ったそれに、荼毘は言った。

 

「普通、見ただけで分かる遺伝だとか親類だとかは見た目とか、そこら辺だが。それをはっきりと分かるには曖昧な分類だ。そこで出てきた個性によって、人は遺伝子だとかに頼らずに自分の家系を辿れるんじゃないかってものだが。まあ、すぐに断ち消えた。だが、これはなかなかに面白いものでもあった。」

 

それはトントンと靴先を地面に叩きつけた。

 

「人に出た個性は、血が近いほど似通ったものになる。例外もあるが。氷の個性で、鍛え、個性が拡張したとしてもそこまでのもので、思いつくのはその辺りか。違うか?」

「・・・・おしゃべりしてる暇があるのか?」

「気にするな、ただの雑談だ。」

「なら、よかったじゃないか。お前を殺す奴が誰なのか知れるんだからな!」

 

 

 

 

考える、考える、考える。

個性を使って考える、目の前のそれと、恵まれたはずの子ども、なのに、こんなところで社会から転げ落ちていく。

それは、ある意味で哀れだった。

 

何故、人は、そんなにもあっさりと境を越えられるのだろうか。

荼毘と、己に名を付けた青年には分からない。

 

殴られない環境、満たされた腹、与えられる教育。

荼毘の知る存在には、それから放り出された者、放り出した者、そうして、取り上げられた者がいる。

荼毘は、それに何かを言うことはない。何せ、そんな権利も義務も、愛もない。

けれど、荼毘は考える。

 

自分の欲しかったものから、遠ざかるものたち。

 

「何故?」

「は?」

 

異能の強さ以外に生の価値はないと言い切った青年に、荼毘は問い返した。

もちろん、彼はそれについて問うたわけではない。ただ、彼は夢想している。ドクターに言われた、何故、死柄木に執着すると。

それに、ただ、考える。

 

「お前、何を考えてる?」

「・・・いや、考えて、いる。宿題のようなものを。」

 

何故、何故、何故?

 

「くそ!いつまでそうやって余裕持ってるんだよ!?お前、俺と同じだろ!?炎なんて出せない!炎を操るだけの、それじゃないか!」

 

そんな言葉さえも遠く、荼毘は淡々と時間を稼ぐ。ギガントマキアさえ来ればそれでいい。ただ、考えているのだ。

 

気持ち悪い、かゆい。

死柄木弔は、その感情をよく出した。それと同時に、暴力的な子どもだった。個性を使って、人を傷つけることにためらいを持たない子どもだった。

けれど、荼毘は知っている。

その子どもが、結局の話、相手に殴られただとか、そんな理由だけで、八つ当たりや楽しみのためにすることはなかった。

結局、その子どもは暴力を振う事への戸惑いさえ無くなっただけで、誰かを傷つけることに積極性を持っていなかった。

それが、そうなったのは養父の教育による後天性のことだろう。

彼は、ただ、抱えた苛立ちと、その傷をなくさせたいだけなのだ。

それだけ、それの方向性を、養父は示した。

指さしされた方向に、進んでいるだけなのだ。

 

 

ただの、操り人形だ。哀れで、悲しい、それだけの。なのに、何故、自分は彼が死なないようにと、死ぬに行だけの子どもにどうして礼儀を教えて、気遣うのだろうか。

死なないで欲しいと、心のどこかで、思うのだろうか。

 

それを、ただ、考える。

自分の目的は只、一つだけ。

 

どうして?

幼い少女の、声が、する。

ぴかぴかの、星の瞳をした、ドブネズミとは違う、お姫様のような、少女。

 

笑いませんよ。

どうして?

だって、素敵な夢じゃないです。ヒーローなんて。

 

どおおおおおおおおおおおおおん!!!

 

崩壊の音が、した。遠くで、目当てのビルが、義欄の捕らえられた場所が崩れおちてイノが見えた。

それに、何か、すとんと胸の内に収るような感覚がした。

 

「ふ、あははははははははははははははっはあははははははははははは!!」

 

連合の皆と走りながら、壊れていく世界の中で、荼毘はあまりの愉快さに笑ってしまった。

 

ああ、そうか、わかった。

何故か、そうだ、似ていたのだ。きっと、昔の弔と自分。そうして、今の弔と養父が。

似て、いたのだ。

 

ヒーローを嫌った父に、たった一つの夢を否定され、がんじがらめにあった心。

きっと、荼毘は理解できる。

きっと、君は、父を殺したとき、心の内から嬉しかっただろう。

 

否定された人生、ねじ曲がった願い、叶う叶わないではない努力することさえも叶わぬ世界はきっと、君の心をひしゃげさせた。

分かるよ、わかる。

 

(きっと、君は、ただ、自由にして良いと。)

 

夢が叶うかどうかではなくて、きっと、もっと最初の一歩。嘘になっても構わない。

 

君は、ヒーローになれると、その言葉が欲しかったのだろう。

あの日、自分が叶わない願いにその言葉をもらったように。

 

何故、恵まれた立場から離れるのか、転がり落ちるのか、しがみつかないのか。

 

ああ、そうだ。

お笑いだ。

 

この世には、社会生活を営むための正義と悪がある。けれど、どうしようもないことがある。どうすればよかったと問いかけても、助けてくれる人もいない。

 

本当に助けを必要としている人間は、助けるに値する姿をしていないのだ。

 

そうだ、最初から、社会というものに属さなかった荼毘には分からないことだろう。

庇護を受けない代わりに、荼毘はずっと自由だったのだ。罪を犯し、人を傷つける彼らを受入れられる自分には、その自由の価値を理解していなかったようだ。

 

どうしようもなかったところが、結局、養父の操り人形でしかない自分と、あの子は、とても、似ていて。

 

哀れみか、同情か、興味か。

何か、それを表現する言葉がない。

ただ、思うのは、一つだけ。

 

庇護を持たぬ、人権さえも持てなかったくせに星に憧れた身の程知らぬずの自分。

庇護を持てども、彼を取り巻く全てに心を殺され星に手を伸ばしていた自分を忘れた君。

 

それは、自分にとって、どこか似ていた。

似ていたから、だから、自分が死んだ後も。未来がいらないとしても、望むものが手には入って欲しかった。

 

世にも美しい地平線。

 

その言葉が、いつかに聞いた、養父の言葉に似ていた。

 

 

何故、魔王なんですか?

へえ、そんなことに興味を持つのかい?そうだね、昔は、漠然としていたんだが。過程で、一つ、理由が出来た。

 

その人は、いつも、薄く笑みを湛えて、余裕ぶっていたけれど。その時だけは、その話をしたときだけは、何か、とてももの悲しそうな顔をした。

 

頼まれごとをしたんだよ。とても、奇妙な、人間に。

頼まれごと?

人は悪辣なるものでもなく、善なるものでもない。人は、ただ、臆病なだけだから。善を行使するにも、そうして、悪を背負いきるのも、あまりにも弱い生き物だから。

 

どうかと、そう、魔王に頼み事をした女がいたらしい。

 

人の悪を全て背負い、自分に敵対するだけで正しい生き物として保証される。

 

「・・・・人の弱さを、救ってくれと。」

 

そんなことを言った女がいたらしい。

 

その言葉に、ただ、思った。それは、きっととても、優しい言葉だと思った。散々に、人の弱さに手を差し出されることの無かった子どもには、ひどく、優しいものに聞こえた。

その人が、優しい人ではないし、嘘つきであることだって知っていても、何か、その言葉だけは本当で、彼の本心でなくても、そうあるのならいいなあと思った。

 

人で人は救えない。

いつだって、人を傷つけるのも、不幸にするのも、きっと人間だから。

魔王に支配された世界は、恐ろしくても、その平等さは少ないになるのかも知れない。

それは、確かに、全ての悪を魔王のせいに出来るのだから。

弱さと醜さを永遠に知ることはないのかも知れない。

 

ギガントマキアが、弔を認めた。

ああ、と思う。

 

君の作る歪な地平線は、きっと、とても残酷だ。残酷だけれど、きっと、それと同時に優しい。

社会という概念の中で、傷つけられない保証を持って、心を殺され続けた者にとっては、きっと、優しい。

 

正義と悪さえも、平らになった地平線は、とても美しいだろう。

 

(・・・・あの子は、そこで、笑えるだろうか。悪と正義の垣根がなくなれば。私たちの罪さえも、忘れられれば。)

そこに、自分が、いないとしても。

 





トガちゃん、息はまだある。
でも、死ぬぜ。
顔だってぐちゃぐちゃ、敵の血!?
いいや、君の血だ!

拭いてあげなきゃ、覚えてるかい!?君がくれたハンカチだ。
忘れたな。

諦めよう、この子はもう死ぬ。

声がする、声が、して。

ダメだ、ダメだ、生きてくれ!こんな、君みたいな、幼い子が。少女が。あの子だって、きっと、君みたいに大きくなって。
あぶれちまった人間でも、それでも、幸せになっていいはずだろう!?

あほか、少なくとも、俺にはないぜ?

ああ、ああ、五月蠅い、五月蠅い!!



ああ!俺が、俺が、はじける!?包まないと、だから!

俺が、あの子を殺そうとしてる。違う、違う、あそこにいるのは、俺じゃなくて!いや、違う、俺じゃない!?いいや、それも違う!?
裂ける、俺が、裂けて!!

本当に?

声が、した。

落ち着いて、穏やかで、優しい、声が、して。


なるほど、君がこの頃この辺りを騒がせている。使い方によっては引く手あまたでしょうに。まあ、今時可笑しくもない、話、か。ふむ、自分が自分かわからない?自分が本物か?なんだい、それ。あははははh!よし、決めた。

俺が、お前がお前だと証明してやろう。

ずきん、指が、手袋の中で何かが、己を突き刺して。

それに、思考が、一気に冴え渡る。

いいかい、仁。痛みこそが、お前をお前たらしめる。だから、痛みが走れば、お前はお前だ。だから、安心しなさい。

ああ、ああ、ありがとう!ありがとう!神様!

俺、まだ、あの子のこと、助けられるよ。

以前、後書きにあった転夜の異母兄、本編に出そうか、それとも番外編に置いておこうか悩んでおりまして。参考程度に知りたいです。

  • 二次創作だし、いいんじゃない!
  • 一周回って見たい!
  • 番外編で留めておけば?
  • いっそ、兄弟増やそう!
  • どっちでも
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