___ 戦士は 、外に踏み出した。
初めて見るその景色 、墳墓のような殺風景な景色とは打って変わり
大地の息吹のようにも感じるそよ風が頬を通り抜け、眼窩には大地に
根をはやしている木々が幾らか生え揃えているが、その景色はまるで
元の世界の、"サバンナ"を連想させるほど果てしないほどの草原ざ広がっていた。_____。
「 __ ... これはまた、おかしな所に来たな。 」
戦士は その壮大な景色に一瞬だけ、息を呑まれ驚愕に心を支配された。しかしその気を削ぐようにズキン 、と戦士の肩に開けられてた
( せめて、この傷さえ無ければな。)
まるで感情が痛みによって抑圧されたように、驚愕から一転。冷静な思考に切り替わり、その景色にいつまでも息を呑まれるわけにはいかないと思い立ち、墳墓の砕けた壁からその大地の息吹が吹き荒れる草原にへと足を踏み出してみる。
墳墓の硬い石の大地から一転し、その大地は酷く柔らかく湿っているような感覚もしなかったので雨などはここ最近降っておらず、概ね快晴が続いていることが分かる。
「 __ ... 何処か、集落のようなモンを探さねぇとな。 」
手から滲んでいる血の色、一度その手を話してみればドロっとした自身の血液が濁流を成しているのが見える。死者から蘇った身であれ、一度は葬られた身である為か物資や医薬品の類などは一つも持っておらず、
まともな治療も出来やしない。このままだと、最悪。敗血症になって
転生して恐らく、最速で死に至るだろう。そんな事は一度死んだ身からすれば真平ごめんだ。
「 ... ちっ 、此処は草と木しかねェのかよ。 」
だが、歩けど歩けど周辺に集落はおろか、人の気配すらせず 度々見かけるのは木の上に登り、木の実を貪っている子リスぐらいしか見かけないものだ 。と 、そろそろ集落が見つから無い事に焦りを覚えた時のことだった。_____
「 ....... あ ? 」
少し、草原を抜けて 森を少しだけ奥に進んだ所。時間にしてみれば
30分弱歩いていた所だろうか。森が少し妙に開けており、そこを目掛けて探してみると ....... 。
「 ___ .... あった。 」
思わず、口を動かして声帯を零してみる。戦士の目の前に広がっているのは 、明らかに人の手によって作られた木の障壁と見張り台に囲まれた小さい村であり、目視では有るが 煙突の煙のようなものが幾つも上がっている為、人はそれなりに居るであろうと予測出来る。
「 ... 邪魔しちゃあ貰えねぇかな。 」
人が少ないとはいえ、木の障壁や見張り台といった簡易的では有るが
セキュリティが頑丈に固められている為、それほどまでに他所から来る者に対しての警戒心が高い、と見える。セキュリティがザラなのはアレだが、現状の状況を考えるとセキュリティはある程度、緩和で有る方が良かったのだが 、致し方ないだろう。この村を逃せば、次に村が見つかる保証などない。恐らくだが、頼れる所は此処しか無いだろうと確信する。
「 .... しょうがねぇな 。 」
戦士は 、歩みを進め その村の門前まで足を進める。その道のりでは、
特に門番らしい人間は見つからず、見張り台の方にも視線をやったが
そこにも弓兵らしき者も非ず、まさかまだ見張りが来る時間帯では無かったか 、と錯覚するが 。_____
ヒュンッ !!!
突如、自分の足元に弓矢が突き刺さる。矢は的確に、正確無比の一撃から放たれたモノであり、あと一歩ズレていたら自身の胴体に突き刺さって居た所だ。まぁ、この鎧がどれだけの耐久性を誇るのかは知った所では無いが ....... 。
『 ___ 何者だっ !!!! 』
見張り台から響く怒号、それに合わせるように戦士の周りにある草原から身を隠していた者らが姿を現していく。
そいつらは人間と言うにはあまりにも身長が小さく、どうやって見繕っても齢10歳前後の男の子のような身長しか無く。肌の体色はベージュ色では無く、深い緑色をしている。弓兵のように弓を持つものも居れば
切れ味が鋭そうなロングソードとバックラーを両手に控える近接特化型の者も居たり、ダガーを二刀流にし持ち合わせている隠密系の者が居たり、と。自身が戦った
「 .... はっ 、化け物風情が今度は村の住人ごっこかよ。 」
その風貌から見るに、此奴らは恐らく
元の世界でも創作やゲームで度々見かけていたRPGの雑魚筆頭。一説では精霊の一種だという説も有るが、基本的に
『 ___ ... ただの侵入者、というわけじゃ無さそうだな。その怪我 、
一体 誰にやられた? 』
戦士に問いを投げかける。どうやら、
そうなればやる事は一つだ___。
「 ... 誰 、というよりかは "何か"に襲われたって言った方が良いかもな ... 。フランベルジェで俺の肩をグサりって刺して来やがってよ ... 」
敢えて、自身に襲われた者の名称は出さずに。ともかく、正体不明の化け物に手傷を負わされ逃げて来たことだけを説明する。墳墓から蘇って来た死者だといきなり正体を明かしても信じてもらえる保証はない。とすれば、この鎧と剣と言い、逃亡騎士を偽った方が良いだろう。
『 ...... 負傷者か 、おい !!! 門を開けて、誰かこいつをンフィー兄さんのトコまで連れてってやってくれ !!! 』
どうやら 、説得が完了したらしい。
『 良いか? 、もし怪我が治って変な気を起こそうってんならエンリの姐さんに変わって、俺らがシバいてやるからな !!! 』
やけに声がデカいその
思わず片耳を怪我を抑えていない方の手で抑えてしまう程だった_____。
_______________________________________
そんなこんなで 、何の因果かこの村の薬師に肩の傷を治癒して貰う事になった黒衣の戦士。付き添いのアフロヘアーのゴブリンにその村を、
道すがらに案内してもらい、幾つか分かった事が有る。
此処の村の名前は、"カルネ村"と言い。ゴブリンと人間が暮らしている極めて稀有な村だ。そして、そのゴブリンを率いている指導者の名前は、エンリ•エモットと言い 。今から会いに行く薬師であるンフィーレアという人物は、エンリの幼馴染に当たるらしい。
『 ____ 姐さんに会ったら、気を付ける事だなっ ... 。姐さんは、普段 ...弱いフリをしているが、一度怒らせちまったら魔物だろうと人間だろうと、そのままキュッとしてドカーンってな感じで次々と敵を薙ぎ倒していっちまうんだぜ..... 。』
「 ... へぇ 、そいつ本当に人間なのかよ 。 」
確かに、指導者と言えば 皆を束ね、尚且つ皆よりも強きものであらばならない。と言うイメージが強いが、まさかここまで想像にドンピシャで当てはまる者が居ようとは、と戦士は真面目にその話を聞いていた。
アフロヘアーのゴブリンが戦慄するような顔で話す中、戦士は飄々とした態度でその話を聞き、いつか会う機会があったらその力の一端を見せてもらいたい 、とバカ真面目に思うのだった。
『 ... さて、到着だ 。此処がンフィーの兄さんのトコだな。』
「 .... ここが、か。 」
ゴブリンが指を差した場所は、薬師の家と言うには普通の民家とは殆ど彩色がないような普通の家であり、戦士が想像していたのは元の世界に有った、摩訶不思議な機械や薬が彼方此方に無造作に置かれている.....などといったロケーションだと思ってたがどうやら違うらしく、少しだけイメージとはかけ離れてしまい、少しだけ落ち込んだ。
『 ンフィーの兄さんに掛かりゃ、どんな傷もイチコロなんだぜ?
お前さんのその怪我も 、一ヶ月そこらすれば簡単に治るだろうよ !!! 』
そこまで信頼されているのか、と戦士は期待に胸を膨らませる。
これほどまでにゴブリンが信用しているのだ 。薬師の実力は信頼性だけでも充分、事足りるだろう。
そしてゴブリンが 、その家の前に行き。軽く扉を数回ノックし薬師の
名前を呼ぶ___。
『 お〜〜い 、ンフィーの兄さん〜? 今、大丈夫ですかいー?』
ゴブリンのその呼びかけに一度は反応しなかったものの、直ぐに間を置いてから。『は〜い』と酷く慌ただしく 、されど少年らしさが感じ取れるような声がした、と思えばその扉の鍵が開けられ ___。
「 ごめんっ、待たせちゃったかな ... !! 」
その扉から現れたのは、薄い黄金色の髪を両目に掛かるまでに伸ばし髪の隙間からは蒼い瞳が透き通るように見えており白いワイシャツと黒色のズボンの上から腰エプロンを巻いている姿がゴブリンたちとは違う者だという事が分かる。
『 いえいえ、こっちも今来たとこですから そんな慌てなくて大丈夫っすよ 、ンフィーの兄さん .... 。』
ゴブリンが 、目の前の男をンフィーの兄さんと呼ぶ辺り。きっとこの人がンフィーレアと言う人物なのだろう。ゴブリンからの薬師としての評価は高いらしいが、果たして実態がどうなのかは今の戦士にとっては
知る由も無い。_____
「 そっか ...、それなら良かった 、ってその人は ... ? 」
ンフィーレアの視線が、ゴブリンから此方にへと移る。その蒼天の瞳は
マジマジ、と見るものでは無いが。いかんせん、元の日本の世界には存在し得なかったようなもので有るので初めて宝物を触る子供のように、ついどその瞳に吸い込まれそうになるのが少し恐ろしい。
『 ああ 、此奴はさっき門前で拾って来た奴で ... 、肩に酷い怪我をしてるみたいなんで 何とかンフィーの兄さんの方で治せねぇかなって思って連れて来たんですけど ... 。』
ゴブリンは 、顔をあげながら此方の顔を睨みつけてくる。怪我人にそんな人殺しを見ているかのような目をするものか、と疑問が頭を過ぎるが、言い出したらキレそうなのでなんとなく口を閉じてそのままじっと我慢した。
「 ああ 、そう言うことだったら僕に任せてよ!! 」
そう言いながら、屈託のない笑顔で接するンフィーレア。先程のアフロのゴブリンは警戒心が高すぎるのが少々問題だったがこの少年は逆に、
警戒心が無さすぎる。普通、見ず知らずの人間を余裕で受け入れることが出来るだろうか。有る意味、豪胆と言うべきかもしれないが。矢張り、ゴブリンによる平和維持が幸を成しているのかもしれない。
「 ... あ、そういえば 、まだ自己紹介してなかったですよね。 」
「 初めまして。僕の名前は 、ンフィーレア•バレアレと言います。
貴方の御名前を聞いても ...... ? 」
名前 。_____ 、そうだ名前だ。この世界に来てから、まだ一度も自分の名前を認知したことが無い。否、死者に名前は必要無いとは聞くが。此方は蘇りを果たした身だ。ちゃんとした、名前が無ければこの先
不便になることだろう。平和な村に入った瞬間、戦士に一筋の焦燥が迸る。_____
( 不味いな ... 、俺の名前って何だったんだ?? )
必死に頭を回して、自身の名前が何だったかを思い出そうとする。
何処か、あの墳墓の何処かに自身の名前が刻まれていた筈だ。こんな
大層な鎧を付けられているのならば 幾らか英雄として弔われているのならば、名前も出ている筈だ、と今まで此処の村に来るまでの間に起こった出来事を超高速で振り返り、___ 。
( 確か、オレの名前は_____。)
その瞬間、戦士の頭の中に己の名前の記憶が唐突に流入して来たのを感じた。まるで、自分の頭の中に元よりあったかのように。その肉体が記憶を取り戻さんとしているばかりに、この肉体に名付けられた名前などの記憶が取り戻してくのを感じたのだ____。
「 俺の名前は 、.... 」
戦士は密かにその肉体の元の主に謝意を述べる。勝手に元の主の名前を使ってしまうこと。そして、その名前はこれからも永劫に使われ続けていくだろうと言う事。天に召されたその主が、真に英雄ならば。貴方の代行者となって再びこの地に伝説を残そうとしよう。_____
少なくとも、戦士が出来る精一杯の謝意の態度はこのぐらいしか取れなかった。....
「 ... オレの名前は モラグ•バル、だ。昔はモラグって呼ばれていたんでね。そう呼んでくれると嬉しいぜ。 」
モラグ•バル___ 。知る人ぞ知る、十三英雄の伝承の中にしか出てこない、影の英傑。そしてその者の正体を知る者なぞ何処にも非ず。今となっては影の英傑を信仰する者は居なくなり、そしてその名前は時代が進むごとに忘れ去られて行った、と言う。
これが戦士の名前 、新たな人生を歩む上で名乗る。己の魂に刻まれた己が己だと証明する唯一の手段を得た。名無しの魂はその瞬間から名前を得たのだった。そして、この世界で影の英傑が生きていると知った者らはまだ誰もいない。____
眠い!眠い!眠い!ベットがあったら入りたい!(不眠症)