冒険者になって数ヶ月が経った_____。モラグはミスリル級の冒険者の中でも一際、上澄みの強さをもった者らしく。受付嬢からはあと少しでオリハルコンを超えて、アダマンタイトにもなれると言われておりモラグは、怪物を倒し。金を得ている作業の中でこんなにも早く昇格が可能になる。と言うのは少し得をした気分になる。
「 冒険者ッてのも、案外 ... つまらねぇもんだな 。 」
モラグの冒険者としての人生はまだ始まったばかりだ。それこそ最初期の頃は数多の怪物との死闘に未知なる冒険に、と神秘を暴く行為に高揚していたのは事実だ。しかし、モラグのその冒険者としての仕事はミスリル級冒険者なので危険が伴う任務も多々あったが、やる事としては墓地に大量出現したアンデットの掃除や、貴族の護衛など。神秘を暴くなどというのとは余りにもかけ離れすぎた仕事内容であり、金は貰えるので問題は無いが。裏を返すと、楽しさもクソも無い。と言った所で完全に雇われ傭兵のような扱われ方をされているので少々、モラグとしてはつまらないと言った印象だ。尚、噂程度では有るがリ•エスティーゼ王国の裏社会を牛耳る組織である『八本指』の動きが今までよりも活発化している、と聞いた事が有るので。腹いせついでにその犯罪組織にちょっかいを出してみるというのも良いかもしれない、と考える程にモラグは退屈していたのだ_____。
「 ... ちっ、アダマンタイト級とやらにならねェといけないって訳かよ...マズったな。 」
今日も今日とて怪物退治、難度はそれなりにあるものだが裏を返せばそれ以上のものの依頼は来ず、今日も難度83のギガントバジリスクの討伐の依頼と。モラグがこの前に殺し尽くした怪物らの難度が70ぐらいだったので。歯応えがあるにはあるが、モラグはこのような討伐依頼ばっか引き受けるので、さすがに魔獣だけを相手にしていては此方としても普通に疲れる、と言うより飽きるといった感覚の方が近いだろう。
「 ギガントバジリスク__... ねぇ、 」
他の冒険者からギガントバジリスクの話を聞いてみると、蜥蜴にも蛇にも似たような外見を持ち。全長十メートルに渡るほどの巨躯をしながら
石化の光線や即死級の猛毒の体液を有し、身体を覆う鱗はミスリルのように硬いと言う。本来ならオリハルコン級の冒険者でやっと討伐出来るのだが、モラグはミスリル級の中でも限りなくオリハルコン級に近い実力を持っていると組合側が判断したのか、組合直々の指名によりモラグにこの討伐任務が渡された。良く言えば昇格試験、悪く言えば面倒事の押し付けである。だが、モラグにとってはどのみち。自身が求める冒険をするには、アダマンタイト級とやらにならないといけないらしいので
少しでも近道があれば、存分に利用していきたいと言うのが彼の本音で
あった____。 そして、そうこうしている内にモラグの近くに巨大な獣のような生き物が接近してくるのを察知し、鉄塊に手を添える。
「 ..... 来たな 。 」
モラグの視線の先___ 、そこに居るのは橙色のひび割れた大地が辺りを占める荒野にて巨大な土煙を立たせながら此方に迫り来る一匹の魔獣。緑色の堅牢な鱗に身を包んだ八本足の獣であり、カメレオンのような頭を持ち、蛇のような鋭い尻尾を蓄えている。蜥蜴とも蛇とも見える、と言う情報は間違ってはいないが。蜥蜴、と言うよりかはカメレオンの方が似ている。と訂正した方が良いかもしれない。
「 蜥蜴 ... って言われればまぁそうか。 」
ギガントバジリスクは、大地を揺るがすほどの雄叫びを放ちながらモラグに接近してくる。その巨大な眼窩に映るのはモラグのみであり。あの遠い距離からここまで、モラグの姿が視認できる距離まで速く辿り着いたのは。魔獣としても高位に位置すると言うのを指し示しているのだろう。それに対するモラグは鉄塊を構え、大上段の斬撃をいつでも放てるような迷いのない構えを取る。ギガントバジリスクも、ただひたすら一心にモラグを喰らおうと迫り来ており。
「 来いよ 、腹減ってんだろ?蜥蜴野郎 。今すぐ
その言葉と共に、ギガントバジリスクとモラグの距離は縮まっていく。
20m 、15m 、10m .... 。死闘のカウントダウンは刻一刻と迫って来ており。そして、互いの距離が5mを切った時。闘いの蓋は落とされる_____。
グォンッ!!!!
先手を打ったのはギガントバジリスク、自身の攻撃の射程範囲内にモラグが入った。と認識したと同時に八本ある足の中の右脚に当たる部分を
勢い良く、空中に白く太陽の光を反射し、煌めいている兇刃の如き爪を
モラグに向けて袈裟斬りにしようと振り下ろされる。だが、モラグもそれを黙って受けるほど甘くは無く。
「 おらあっ !!!!!! 」
ガキィンッ !!!
モラグの鉄塊がギガントバジリスクの爪とモラグの身体の間に割って入り、ギガントバジリスクの爪が自身の身体の中に侵食していくのを阻むかのように繰り出され、魔獣の爪と戦士の鉄塊が火花を上げながら互いに力をぶつけ合い、拮抗させる__。
「 グゥゥゥゥゥ..... 」
ギガントバジリスクは自身の爪が何故、戦士の鉄塊如きに阻まれるのかを理解出来ず、激情と焦燥からか。声帯から唸り声が響く。互いに一歩も譲らないような拮抗状態、だがそれを打ち破らなければ両者共に勝機は無い。ならば、とモラグは再度。ギガントバジリスクに攻撃を仕掛ける。
「 そんなに、喰いてェんなら 。鉄の味で我慢しとくんだなッ_____ !!!! 」
鉄塊に込める力を強める、金属音と火花を撒き散らしながら行われる魔獣と戦士の拮抗状態は次第に戦士の鉄塊がギガントバジリスクの身体を押し上げて行く。ギガントバジリスクはそれに負けじと爪に掛ける力を
強くするが、モラグの鉄塊はその魔獣の膂力すらも上回る事になる。
ドォンッ!!!
轟音、鉄塊がギガントバジリスクの身体を弾き飛ばし。その魔獣は振り上げた体勢から一気に崩され、体幹のバランスを失い思わずよろめいてしまう。そして、その愚かな隙をモラグが見逃す筈も無く。
ダァンッッッ !!!!
跳躍、地面が割れる音と共にモラグの身体は打ち上げられたかのように舞い上がる。モラグの鉄塊が狙う先はギガントバジリスクの脳天ただ一つであり。その正確無比な狙いに体勢を崩された魔獣はその鉄塊の侵入を許してしまい____。
ザンッッ____。
鉄塊がギガントバジリスクの脳天に向かって振り下ろされる。ミスリルの如き硬さを誇るそのギガントバジリスクの皮膚は鉄塊によって容易に切り裂かれ、魔獣の脳天には深い鉄塊の斬撃の傷が残り、そこから青白い血液がドクドクと流れて行く。頭を真っ二つに両断する事は叶わなかったが、ギガントバジリスクに大ダメージを与えるには十分過ぎる成果を残し、完膚なきまでにその斬撃を喰らった魔獣は 脳天に流れる血の河を見るなりに激怒の感情を見せる_____。
「 オォオオオオオオオ !!!!!!!! 」
怒号が迸り、魔獣のこめかみに青筋が走る。そして魔獣は口を大きく開けたかと思うと。その口から丸く纏められたような唾液を吐き出す。ギガントバジリスクの体液には即死級の猛毒が仕込まれている為。命の危機と感じ取ったギガントバジリスクはこうして相手に唾液を撒き散らすのだ。
「 けっ 、マナーが成ってねェんだことォっ !!! 」
モラグはその撒き散らされた唾液を避けるように重装鎧と鉄塊からでは出さないような軽やかなステップと共に魔獣の懐にへと進んで行く。
モラグの立っていた位置は、ギガントバジリスクの即死級の猛毒にて
僅かに生えていた草木がジュクジュク、と腐食の音を立てながら腐って行き。新鮮さを演出していた植物の緑はやがて灰となって荒野の風に吹かれて消えてしまったのだ。
「 ォオオオオ .... !!!! 」
ギガントバジリスクは先程、闘っていた戦士が自身が唾液を撒き散らしたのと同時にその視界から消え失せた事に困惑を示す。雄叫びを上げながら、先程の戦士を探し出そうと躍起になっているが。その戦士が自身の視界から出てくる気配は無く。唾液によってその身体を溶かされて死んだのか、と"誤認"する程だった_____。
「 何処見てんだ、クソトカゲ 」
声がする、あの戦士の声だ。自身の脳天を切り裂いた憎き人間。だが声がしてもその姿は見えない。何処だ、何処だと探るようにギガントバシリスクは首を動かしながら索敵するがその姿は未だ見えず、と言ったような感じで見つからずに気のせいか、とその戦士がいなくなった事を魔獣が理解しようとした瞬間。
ザンッ
ギガントバジリスクの右脚が斬り落とされる。断末魔を響かせる余裕すら無く、己の体躯を支えていた八本足の前脚を切り落とされた事により
ギガントバジリスクの体幹は崩壊し、高く添えて合った頭部は一気に地面にへと叩き落とされ_____。
「 言ったろ 、今すぐ
戦士の嘲笑、そしてギガントバシリスクの視界に映る。青白い血を浴びた鉄塊を両手で握りしめる戦士の姿。モラグの鉄塊はもう既に振り翳されており、その狙いは脳天では無く。ギガントバジリスクの首。身体から斬り落とす為に魔獣の頭部と身体を繋ぐ接合部に鉄塊の刃を振り翳しており、ギガントバジリスクはそれに対抗しようと最後の力を振り絞り
雄叫びを放ちながらその蛇のような眼窩から石化の光線を放とうとするが .......... 。
バ"ゴ"ォ"オ"オ"ン"!!!!!!!!!!
漆黒の戦士の鉄塊の一撃が、正確無比に。そして無慈悲にギガントバジリスクの首を叩き斬り。鉄塊は糾弾となりて。魔獣の首は空中にへ青白い血を撒き散らしながら高く、高く打ち上げられたのだった_____。
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リ•エスティーゼ王国 、王都の大通り。市民や衛兵、または犯罪者紛いの忌避される人々も通るこの大通り。その通りには冒険者組合も設置されている為。冒険者などの行き来も盛んになっており、良くも悪くも活気に満ちている、とも言えるだろう。そしてその冒険者組合では少し前から持ちきりになっている噂が二つあり、一つ目が新たなアダマンタイト級冒険者の誕生の話であり。漆黒の英雄とも呼ばれている戦士である
【モモン】と美姫という異名を持っている【ナーベ】の二人組の冒険者
が、アダマンタイト級冒険者としての新たな筆頭として立つのでは無いかと噂されている。そしてもう一つが_____。
『 おい、聞いたか?...今日、ギガントバジリスクを単独で討伐した奴が居るって話 ... 』
『は? お前、そんな噂何処で聞いて来たんだよ。あれってオリハルコン級冒険者でもちゃんとチームを組んでようやく倒せるってレベルだろ?あれをどうやって .... 』
『... それが、この前にスカウトでミスリルの新参入りしたあの戦士さんだとよ 。』
『 ... マジで?、眉唾とかじゃねェの ?』
『 ああ 、マジマジ .... 。鉄塊なんじゃねぇかって見間違えるぐらいのどでかい剣と漆黒の鎧一丁で殺したんだと .... 。それに、ギガントバジリスク討伐の後はオリハルコン級に昇格するとか、』
『 うっそだろお前!? ... ミスリルの新参が数ヶ月でオリハルコンに昇るとか普通に異例だろそれ ... 。こりゃ、アダマンタイト級冒険者が3人増えそうだな。.... 』
『 だな .... 』
最近、ミスリル級冒険者になった例の漆黒の戦士がオリハルコン級相当であるギガントバジリスクを単独で討伐した。という話。アダマンタイト級のモモンとナーベが討伐するのはまだ分かるが。アダマンタイト級よりも二段階下の階級であるミスリルの新参が戦士にとって最悪な相手とも称される程のギガントバジリスクを殺した、と言う事例は今まで聞いた事も無かった為。話題を掻っ攫うには十分過ぎたのだ。そして今の話を本心で在らずとも聞いている人物が二人_____。
「 ... どう思うよ 、ギガントバジリスクを単独で殺したっつうー話 」
「 普通なら、有り得ないな。アダマンタイト級の冒険者ならまだしも
オリハルコン級でもないミスリル級の冒険者が単独で難度83の任務を
遂行するなんて ... 信憑性は低いだろうな。 」
一人は、筋骨隆々とした肉体を持った女性であり。その喋り方からは
何処か男らしさを感じさせるような声色をしており、いかにも戦士のような雰囲気を放っている。もう一人は 、真紅色のローブに身を包み、顔を仮面で覆っている小柄な少女であり。戦士風の女性とは違い、此方は冷静に話を勧めており、男らしさと言うよりかは知的で冷静な印象が見受けられる。
「 けどよ 、例の百匹斬りの剣士がやったってんなら話は別なんじゃねぇのか? あれだって難度70超えだったらしいじゃんか。 」
「 .... そうだな 、だがそれでも難度83のギガントバジリスクとは10以上の差が有る。それを一人で 、... となると。やはり実際に見てみないと分からない所も有るだろうな。 」
百匹斬りの黒い剣士、その噂はリ•エスティーゼ王国内ではかなり話題になっており。漆黒の英雄の噂よりも早く、その噂は流れ出している。
難度70超えの正体不明の怪物の群れを単独で制圧した黒い剣士。冒険者内では一部、憧れの指標になっている者も居れば。少し懐疑的な印象を持つ者も居るなど、その黒い剣士に抱く印象は人それぞれだった。
そしてこの少女も懐疑的な印象を持つ側の者で有り_____。
「 ... 成程ねぇ 、俺としちゃその噂の剣士とやらに直接会ってみてぇ気もすんな。その剣士サマの闘い方とか見てて面白いかもしんねぇからな.... お前はどうなんだ?"イビルアイ"___。 」
「 ... 私は、お前と違って 頭まで戦士に侵食されていないからな。
闘い方とは良く分からんが 、まあ 。一度会ってみるのも面白いかもな。 」
イビルアイと呼ばれた少女は仮面越しの表情を露見させずにそう淡白に答える。戦士風の女性が戦士気質、と言う思考回路なのならばイビルアイの思考回路はどちらかと言うと
( 鉄塊と見間違える程の大剣 ... 、全身を覆う漆黒の鎧 ... 。否、まさかな ... )
イビルアイ は、一瞬だけ。その脳裏に"かつて居た誰か"を思い浮かばせた。だがその誰かは最早、この世界の何処にもいない。だから、彼女が思い描くその誰かが姿を現す、なんて言う事はあり得ない事。だから彼女は自身の頭に思い浮かばせた人物の姿を静かに掻き消し、またいつものように冷静に、淡白に。言葉を紡ぐのだった_____。
ヒロイン確定が一人現れたよ!皆はどれだか分かるかな?
正解はギガントバジリスクだよ!(大嘘)