映画クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ『   』   作:カシ

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上手く書けているのか心配になっていますが、今後ともよろしくお願いします。





第7話 光と闇

 

 目の前で、一つの命が物言わぬ石の塊へと変わった。

 たった数日、会ったばかりの、この世界の本当の恐ろしさなんて知らないはずの、ただの高校生。それなのに、彼はボクの背中を守るために迷わず地を蹴り、その身を投げ出した。

 突き飛ばされた衝撃で地面に倒れ込んだボクの視界で、灰色の侵食が彼を飲み込んでいく。

 

「かける――!!」

 

 ボクの声は、震えていた。

 伸ばした指先が、冷たく、硬く変わってしまった彼の手に触れる。

 ついさっきまで、ボクを安心させるように笑っていたあの優しい熱は、もうどこにもなかった。

 

 彼の胸元で揺れる『月』のネックレスが、カチンと硬い音を立てる。ボクの胸元の『太陽』と対になるはずのそれは、今はもう、ただの冷たい石の一部でしかなかった。

 

(……なんで。なんで、ボクなんかを庇ったんだ。君はただ、ボクを応援してくれるって言っただけじゃないか……!)

 

 父さんを失ったあの日と同じ、逃げ場のない絶望が胸を締め付ける。

 けれど、石になった彼の口からこぼれた最期の言葉が、ボクの震える心を強く、力強く繋ぎ止めた。

 

『ちゃんと……応援してるからな……』

 

 そうだ。彼は、命を賭けてボクに希望を託したんだ。

 ボクは唇を噛み締め、涙を拭って立ち上がった。

 自分を責めている暇なんてない。彼が命を懸けて守ってくれたこの命を、戦士として、勇者の導き手として燃やし尽くさなきゃいけない。

 ボクは石になったかけるの背を隠すように前に立ち、闇の中から嘲笑を向けてくる二体の化け物を、燃えるような瞳で射抜いた。

 


 

「かける兄ちゃん……嘘だゾ……?」

 

 オラは、信じられなかった。

 さっきまで「漢同士のお約束」だなんて言って、オラと笑い合っていたお兄ちゃん。

 マタに「応援してる」って、とってもかっこいい顔で約束していたお兄ちゃん。

 そんなお兄ちゃんが、今は灰色の石になって、動かなくなっちゃった。

 オラは、石になっちゃったかける兄ちゃんの足をぎゅっと握った。

 冷たい。ひんやりして、とっても硬い。

 とーちゃんも、かーちゃんも、ひまわりも、みんな時間が止まって動かない。

 ――許さない。

 お兄ちゃんとの約束を邪魔して、マタを悲しませて、世界を暗闇にしちゃうこんな奴、オラ、絶対に許さないゾ!

 オラは涙を拭いて、マタと一緒にダークを睨みつけた。

 

「オラが、オラがお前を……フーインしてやるゾ!」

 

 オラは勇気を振り絞って、呪文を、全力で叫んだ。

 

「『フーイン・フーイン・ボインボイ~ン』!」

 

 オラの声が、鉄とパイプの冷たい空間に響き渡る。

 けれど……。

 

 絶望に満ちた空間に、虚しく五歳児の叫びが木霊する。

 分裂した二体のダークは、ピクリとも動かなかった。それどころか、漆黒に染まった個体と、白を基調とした個体が、それぞれ醜く顔を歪めて同時に嘲笑を上げた。

「ふはははは!」「……あー、痛い痛い」「恐ろしい呪文だ」「体がバラバラになりそうだぞ」

 黒いダークが大袈裟に身悶えし、胸を押さえて芝居がかった声を上げる。

 白いダークがそれに合わせるように、冷酷な笑みを浮かべて追い打ちをかけた。

 

「……などと、本気で効くとでも思ったか? この阿呆(あほう)なおバカめ」

 

 ダークは一転して真顔になり、無機質な黄色い瞳でしんのすけとマタを見下ろした。

 

「オレ様の空間(ア・ホウ・ワールド)で、そんなア法(ア・ホウ)が使えるわけがないだろうが。所詮は人間の生み出した紛い物の術よ」

 

 絶望は、加速する。

 二体のダークはゆっくりと、円を描くようにしんのすけたちの周囲を回り始めた。

 鉄板の床を蹴る音、引きずられる巨大な剣の金属音。

 その中央には、盾となって石化した少年の像が、まるで墓標のように静かに佇んでいる。

 ダークたちの手には、いつの間にか身の丈を超える巨大な黒剣(ダーク・ブレード)が握られていた。

 圧倒的な力を持つ二体の支配者。

 対するは、石になった仲間を背負う、十五歳の少女と五歳の少年。

 鉄と枯れ木に支配された死の世界で、最悪の剣戟が幕を開けようとしていた。

 

 圧倒的な力の差。二体のダークから放たれる漆黒のプレッシャーが、マタとしんのすけを押し潰そうと迫り来る。

 金属の床を引きずる巨大な黒剣の音が、死へのカウントダウンのように響く。

 けれど、マタの心は折れていなかった。

 背後で冷たい石像となった少年の姿が、脳裏にあの夕暮れの記憶を鮮明に呼び起こす。

 

『俺はいつでも、どこでも、マタのことを応援してる。これから先、どんなにキツい戦いになっても、絶対に諦めないでほしい』

 

『もし、どうしても辛くなって心が折れそうになったら、俺が応援してるってことを思い出してくれ』

 

(そうだ。かけるが、ボクを『応援』してくれている。なら、ボクは絶対に諦めない……!)

 

 マタは胸元の『太陽』のネックレスを強く握りしめた。その瞬間、石になった彼の首元にある『月』のネックレスが、呼応するように微かに光を帯びた気がした。

 

 


『ドン・クラーイ世界に金の矛と銀の盾あり』

『ドン・クラーイ世界が乱れしとき、金の矛と銀の盾は失われる』

『銅鐸が金の矛と銀の盾の場所を指し示すとき』

『新たな地平が開け、選ばれし者が現れる』


 

 

 マタは横に立つ小さな勇者を見つめ、力強く頷いた。

 

「しんちゃん!1人じゃだめだ!……2人でならきっと!合わせれるかい?しんちゃん!」

「おぉ! オラできるゾ!」

 

 二人は同時に正面を見据え、構えを取った。

 マタの内に眠る魔法の力と、しんのすけの選ばれし者としての無限の可能性。二つの力が強く共鳴し合い、鉄と枯れ木の絶望空間に、嵐のような風を呼び起こす。

 

 


『選ばれし者が現れる時』

『ドン・クラーイ世界に をもたらす』


 

 

 

「「ヘンジル!!」」

 

 

 空間を揺るがすほどの、渾身の叫び。

 マタとしんのすけの全身から眩い光が溢れ出し、闇を切り裂く巨大な光の柱となって天高く立ち昇った。世界を書き換えるほどの、強烈な祈りの光だった。

 だが――。

 数秒後。光がフッと収まっても、世界には何の奇跡も起きていなかった。

 伝説の武器が現れるわけでもなく、空間が元に戻るわけでもない。ただ、静寂だけが降りた。

 

「……ふはははは!」

 

 白と黒、二体のダークが同時に腹を抱え、冷酷な笑い声を響かせた。

 

「それが最後の足掻きか?」「派手に光を放って」「何か起きるとでも思ったか」

 

 ダークが、無機質な黄色い瞳でマタたちを嘲下す。

 

「無駄だ。貴様らの希望など、とうにその後ろの石くれと共に死に絶えている。さあ、仲良く塵に変えてやろう」

 

 巨大な黒剣(ダーク・ブレード)が、マタとしんのすけの頭上に無慈悲に振り上げられた。

 

 

 ピキッ……。

 

 

 その時。

 微かな亀裂の音が、冷たい空間に響いた。

 ダークの腕が止まる。マタとしんのすけが、弾かれたように振り返った。

 音の出処は、背後。完全に石化して、永遠の時間を止められていたはずの石像。

 

 ピキッ、ピキキキキッ!

 

 胸元の『月』のネックレスを中心に、灰色の石の表面に無数の亀裂が走っていく。そしてその亀裂の奥から、マタたちが放ったのと同じ、温かく力強い光が激しく漏れ出していた。

 

 マタとしんのすけの渾身の『ヘンジル』は、決して無駄に消えたわけではなかったのだ。二人の決して諦めない強い祈りは、彼を縛り付けていた絶対の呪縛そのものを内側から打ち砕こうとしていた。

 

 パァァァァンッ!!

 

 ガラスが砕け散るような甲高い音と共に、かけるを覆っていた石の殻が完全に吹き飛んだ。

 舞い散る光の破片の中、一人の少年が静かに立ち上がる。

 

「……2人とも、すごいな」

 

 ゆっくりと顔を上げた彼の瞳には、絶望の影など微塵もなかった。

 胸元で月のネックレスを輝かせながら、かけるはゆっくりと首を鳴らし、二体のバケモノを真っ直ぐに睨み据えた。

 

「俺の『応援』、ちゃんと届いてたみたいだな。

……さあ、反撃といこうぜ

 

 


 

 

 深い、冷たい闇の中にいた。

 五感が塞がれ、思考すらも凍りつくような泥沼の底。そこへ唐突に、眩い光と温かい風が吹き込んできた。

 全身を縛り付けていた硬い殻が吹き飛ぶ。

 肺に冷たい空気が流れ込み、心臓が大きく脈打った。

 

「……2人とも、すごいな」

 

 まさか石化を解くなんて、原作にもなかった展開だ。

 ゆっくりと顔を上げると、驚きに目を見開くマタとしんのすけの姿があった。

 

「馬鹿な……!」

 

漆黒の空間に、ダークの驚愕の声が響いた。

 

「私の……このオレ様のア法(ア・ホウ)を、こんな子供二人の力が上回ったというのか!?」

 

 自分の絶対的な呪縛が打ち砕かれた事実に、二体に分裂したダークは信じられないものを見るように顔を歪めた。だが、暗黒世界の支配者はすぐに冷酷な余裕を取り戻した。

 

「……ふん。だが、二匹のネズミが三匹に増えたところで、何が変わる? 所詮は脆い人間だ。この私に勝てる道理などない」

「それに、その小娘はもう限界のようだがな」

 

 

 ダークの言う通りだった。

 俺の呪縛を解くために、限界を超える『ヘンジル』の力を使い果たしたのだろう。振り返ると、マタは肩で激しく息をし、膝から崩れ落ちそうになるのを必死に堪えていた。それでも、彼女は俺を見て、涙ぐみながらも安堵の笑みを浮かべてくれた。俺が戻ってきたこと、ただそれだけを喜んでくれている。

 

「さて、復活して早々だが……仲良く塵になってもらおう」

 

 二体のダークが巨大な黒剣(ダーク・ブレード)を引きずり、死神のようにじりじりと距離を詰めてくる。

 絶体絶命の死地。だが、不思議と俺の頭は異常なほどクリアだった。

石化という理不尽な魔法を直接体に受けた影響だろうか。それとも、2人のヘンジルによるものだろうか。

 思考と肉体の動きが、かつてないほどピタリとリンクしている感覚があった。今の俺なら、あの恐ろしい黒剣の軌道を見切り、紙一重で躱せる。体がそう確信していた。

 

――でも、俺が避けたら、後ろで限界を迎えているマタとしんのすけが真っ二つになる。

どうすればいい…

 

「マタ!」

 

俺は二人の前に立ち塞がりながら、背後へ声を飛ばした。

 

「俺が石になってから、どのくらい経った!?」

「えっ……?」

 

死を目前にした状況で飛び出した場違いな質問に、マタは戸惑いの顔を浮かべた。

 

「じゅ、十分も……経ってない、けど……」

 

十分……!

俺は唇を強く噛み締めた。

俺が知っている本来の歴史なら、あいつが駆けつけるまでにはもっと長い時間がかかっていたはずだ。野原一家との激しい戦闘を丸ごと飛ばしている今の時間軸では、この場に到着するにはあまりにも早すぎる。

だが、もう俺たちに残された希望はこれしかない。

二体のダークが頭上に巨大な剣を振りかぶる。逃げ場はない。

俺は防御の姿勢すら捨て、迫り来る死神の刃から目を逸らさずに、虚空に向かって一か八かの叫びを上げた。

 

「お前は『選ばれし者』の盾なんだろ! 今護らなくてどうするんだ『ギンギンッ!』

 

 自分の叫び声が、歪んだ絶望空間に木霊する。

 二体のダークが振りかぶった巨大な黒剣(ダーク・ブレード)が、俺の頭上を覆い、死の影を落とす。一秒後には、俺も、後ろにいるマタとしんのすけも、塵になっているだろう。

 それでも、俺は目を逸らさなかった。防御の姿勢すら取らず、虚空の一点を見つめ続けた。

 原作知識という、この世界における唯一の武器を信じて、命を賭けた。

 

「……死ねぃ!!」

 

 黒いダークの声と共に、剣が振り下ろされる。

 その瞬間、闇の奥から一筋の漆黒の閃光が飛び込んできた。

 あまりの速さに、ダークすら反応が遅れる。俺はその『黒い塊』の軌道を捉えていた。

 塊は、ダークの黒剣と、俺の頭上のわずかな隙間に、割り込んだ。

 そして、空中でカッと銀色の光を放ち、その姿を瞬時に変貌させる。

 

 ガキィィィン!!

 

 凄まじい金属音が空間を震わせた。

 飛び込んできた黒い塊は、ジト目の顔がついた銀色の盾(ギンギン)へと変身し、頭上に振り下ろされた二本の黒剣を見事に受け止めていたのだ。

 

「大丈夫! 護るさ!」

 

 盾の中から、力強い男の子の声が響いた。

 

「おぉ! クロがヘンタイしたゾ……」

 

 背後で、しんのすけの呆気にとられたような声が聞こえた。いつものおふざけだけど、今はその一言が、緊張の糸を少しだけ緩めてくれる。

 ダークの巨大な剣が、ギンギンの放つ銀色のオーラに弾き返され、二体のダークがたたらを踏む。

 

「……本当に、来た……」

 

 俺は、目の前でダークの剣を防ぎきった、ジト目の盾を見つめ、声にならない声を漏らした。

 

 叫んどいてなんだけど、正直、来るかどうかは五分五分だと思っていた。俺の介入で原作の展開が変わり、野原一家との戦いを丸ごと飛ばしている。ギンギンの到着は、本来ならもっと遅いはずだったから。

 

「来ないと思ってたの!?」

 

 俺の内心の驚きを見透かしたように、ギンギンがジト目をさらに細めてツッコミを入れてきた。カッコよく防いでくれたのに、いきなり呆れ顔だ。

 

「……だって、助けに来るの相当遅いはずだし、今まで警戒しすぎて、マタにすら姿現さなかっただろ」

 

 ギンギンは、巨大な剣を弾き返した衝撃をいなして、俺の目の前に浮かび上がった。

 

「助けるのが遅れたのは、ア・ホウ・ワールドのこの空間が、あまりにも歪で入り乱れすぎてて、僕の感覚が狂わされてたからだよ。どこにいるのか、全然わからなくて迷ってたんだ」

「迷ってた……?」

「そうさ。でも、さっき君たちが放った『ヘンジル』の、あの強烈な光と魔法のパワー。……それを感じ取って、ようやく場所を特定できたってわけさ!」

 

(……俺が、石になってから十分も経っていない。マタたちが限界を超えて俺を元に戻そうとした、あの『ヘンジル』の光が……ギンギンをここに呼び寄せるビーコンになったのか……!)

 

 俺の介入で未来が最悪の形へ変わったけれど、マタとしんのすけの決して諦めない強い想いが、その絶望を打ち破るための『希望』を、この場に手繰り寄せたのだ。

 

「……なっ、銀の盾だとっ!?」

 

 それまで絶対的な余裕を崩さなかった二体のダークが、弾き返された黒剣(ダーク・ブレード)を構え直し、無機質な黄色い瞳を大きく見開いた。

 その声には、明らかな動揺が混じっていた。ドン・クラーイの伝承にある、自分を封印する存在を目の当たりにしたのだ。

 

「忌まわしき伝承の道具め……! この私を封印する盾が現れたというのか!」

 

「忌まわしいとは失礼だな」

 

 ギンギンは、俺の前に浮かび上がりながら、ジト目を向けて呆れたように言い返した。

 俺は、宙に浮くギンギンの裏側の持ち手を、迷いなくガシッと掴んだ。

 不思議な感覚だった。頭で考えるよりも先に筋肉が反応し、まるで自分の手足の延長のように、盾を構える動作がピタリと決まる。先ほどまでのパニックが嘘のように、今の俺は絶望的な状況に反して異様に体が軽く、感覚が冷たいほどに研ぎ澄まされていた。

 息を呑むマタと、決意に満ちた顔のしんのすけを背にかばい、俺は二体のダークを真っ直ぐに睨み据えた。

 

「行くぞ、ギンギン。しんのすけが『キンキン』を手にするまで、俺たちで時間を稼ぐ!」

「君、キンキンのことまで知ってるの!?」

 

 俺の頭の中には、これからやるべきことの道筋がはっきりと見えていた。ダークの凶刃をいなしながら、背後へ向かって叫ぶ。

 

「しんのすけ! マタを連れて二階へ行け! しんのすけも、わかってるだろ!」

 

 しんのすけなら、あの不思議な物差しの存在に、薄々感づいているはずだ。俺の切羽詰まった声に、しんのすけは一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに力強く頷いた。

 

「ほ、ほいっ!」

 

 しんのすけはマタの手を強く引き、空間の端にある横の扉へと一直線に駆け出した。

 

「逃がさん!」

 

 黒色のダークが地を蹴った。恐ろしい速度で二人の背中に迫り、巨大な黒剣(ダーク・ブレード)を無慈悲に振り下ろそうとする。

 

「行かせるかよっ!」

 

 この距離じゃ間に合わない。そう直感した瞬間、俺は左手に持っていたギンギンを、迷うことなく全力で放り投げた。

 さながらキャプテン・アメリカの盾投げだ。

 空気を切り裂いて飛んだ銀色の円盤は「えええええぇ〜!?」という奇声をあげながら、マタとしんのすけに迫っていたダークの刃を見事にガキィィィンッと弾き飛ばし、そのままの勢いで奥の鉄の壁にドスッと深く突き刺さった。

 

「僕を投げないでよ!!?」

 

 壁に刺さった盾からの悲痛なツッコミが響く。

 だが、そのおかげでダークの足が止まった。しんのすけとマタが無事に横の扉の向こうへ消えるのを確認し、俺は右手を前に突き出して、自信満々に叫んだ。

 

「よしっ、戻れギンギン!」

「そんな機能ないけどぉ!!?」

「えっ、ないの!?」

 

 予想外の返答に、俺は変な声を出した。マジかよ、自動で手元に返ってくるんじゃないのか。

 カッコつけている場合ではない。俺は焦って壁際まで猛ダッシュし、「よいしょっと」と間抜けな声を漏らしながら、鉄の壁から力任せにギンギンを引き抜いた。

 何事もなかったかのように咳払いをして、パンパンと埃を払い、再び左手に嵌め直す。

 ふと盾の表面を見ると、ギンギンがそのジト目を限界まで細めて、呆れ果てた顔で俺をじっと見つめていた。

 

(……なんだよ)

 

 その痛い視線に内心で毒づきながら、俺は急いで盾を構え直した。

 視線の先では、標的を逃してあからさまに苛立った二体のダークが、今度こそ俺を確実に葬ろうと、ゆっくりとその鋭い殺意をこちらへ向けていた。

 

 長い長いバトル(時間稼ぎ)のスタートだ…

 

 

 





石化解除RTA


原作で、クロもっと早く助けに来てよというしんのすけの愚痴に対して、ゴメンネだけで対応したギンギンが許せまセン…

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