「なあ霊夢ー」
「なに魔理沙」
博麗神社の縁側で、二人の少女がお茶を飲んでいる。
「最近おもしろいこと全くないんだぜ~...」
「あんた何言ってんのよ。退屈ほど平和なことってないわよ」
「わたしは退屈ほど苦痛なことはないんだぜ!」
「ズー...おいし」
「まったく...あっそうだ」
魔理沙は何かおもしろいことを思いつき、お茶を飲む霊夢をニヤニヤしながら見つめる。
「おーい霊夢ぅ、人里のアイツとはウマくいってんのか~?」
「ブフゥーッー!!」
お茶を勢いよく引き出し、縁側に虹がかかる。ちなみに“人里のアイツ”とは、最近よく神社へ参拝に来てくれるとある青年のことである。霊夢は彼が参拝にきた後はとても機嫌がよくなる。魔理沙はそのタイミングを狙ってお茶などをたかりにくるのだ。
「ば、ばか言わないでよっ!アイツとはなにもないわよ!」
「ふーん...?」
「な、なによ」
「恋人ってのはいいもんだぜ。私もできて初めてそれが分かった」
「あー、もうすぐ付き合って半年よねあんたたち。ほんと、魔理沙に恋人ができるなんて夢にも思わなかったのに」
「なにをー!」
魔理沙が霊夢に突っかかろうとしたところで、誰かが神社の鳥居をくぐったのが見えた。
「あ、今日もユキオがきてくれたみたいだから行ってくるわね~」
「ちょ、霊夢!...まったく、あいつにも春がきたみたいで何よりだぜ」
桜の花びらが入った浮いた湯飲み茶わんを見て、魔理沙はそうつぶやいた。
「やっほ、霊夢さん。今日はいい天気だね」
「そ、そうね~」
「ん?縁側の方に魔理沙がいるみたいだけど、邪魔しちゃったかな」
「(!?魔理沙ったら...)大丈夫よ、暇つぶしに遊びにきてるだけだから気にしないで。さ、せっかく来てくれたんだからこっちで話しましょ」
「そうかい?それならお邪魔します!」
霊夢は青年を連れて、魔理沙のいない方から社殿をまわる。
「(魔理沙ったら、空気読んではやく帰りなさいよ!)」
「(へへっ、邪魔しちゃ悪いぜ。あばよ霊夢~!)」
地面に落ちた花びらを巻き上げ、魔理沙は箒で飛んでいってしまった。
ここは幻想郷。結界で隔離された山奥の里である。神様や妖怪、そして人間などの雑多な種族が、そこでは一緒に暮らしている。
ここ博麗神社の巫女である博麗霊夢はとても重要な人物だ。異変とよばれる怪事件や怪現象の解決や、外界と幻想郷とを隔てる博麗大結界の維持を任されている。博麗神社では、この役割を「博麗の巫女」として代々受け継いでいるそうだが、霊夢が何代目かを知る者はとても少ない。
「このお饅頭おいしいな!どこで買ってきたの?」
「ふふっ、それは私の手作りよ~。ユキオのために心込めて作ったんだから味わってよね」
霊夢はこんな感じでゆる~く毎日を過ごしているが、堪のよさと実力は幻想郷トップクラスである。しかし本人はそんなことに興味はなく、最近はもっぱら人里の彼にご執心のご様子。
「あ~こんな幸せな日がずっと続いてくれたらいいのにな」
「ちょ、ちょっと!照れるじゃない...」
「思ったことを言ってるだけだよ~最近は変わった事もないしさ。これも霊夢のおかげだよ」
「今日はやけに褒めるわね。でもほんと、異変を起こす連中って一体なにを考えてるのかしら」
時は2003年の4月初旬。
幻想郷に山桜が咲きほこっている。ゆったりと流れる幸せな時間を霊夢とユキオは過ごしていた。
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