まあ一日休んでその次の日にいきなり男の転校生がやってきたら驚くよな……いや、そうはならんか。
「うちのクラスに男子が3人も……!」
「やっぱり織斑先生が担任だからかな…!」
「もしかして私達のクラスってラッキー…?」
「どっちが攻めでどっちが受けか……!」
クラスの女子達はやんややんやと騒ぎだす。3人もいたらそりゃ当然か。最後らへんの攻めか受けかは聞かなかったことにしよう。
「騒ぐな。たまたま受け持つことになっただけだ。自分のクラスは特別だと浮き足立っていると足元をすくわれるぞ」
織斑先生の一喝でクラスは静かになった。特別扱いされるのは嫌だし浮かれるつもりもない。気を抜かないようにしなくては。
「そういえば、クラス代表の件は……」
一夏とセシリアのクラス代表を決める試合が行われ今日で1組のクラス代表が発表されるとか。俺もその試合見たかったなぁ
「それなら「そのことでしたら私は辞退し、一夏さんにクラス代表を譲ることに決まりましたわ!」って、ええっ!?」
一夏が試合の結果を話そうとしたらセシリアがスラッと優雅に立ち上がって告げた。いや当の本人がめっちゃ驚いているのだが。
「ちなみに試合は…」
「試合では一夏さんは私に負けてしまいましたわ」
あらら、やっぱり代表候補生は強いようだ。試合内容がかなり気になるが詳しい話は本人から聞こうかな。
「――ですが、IS操縦は実戦が何よりの糧。クラス代表になれば事を欠きませんわ。一夏さんの技量ならば積み重ねで磨きがかかる、私はそう思いましたの」
それ褒めてるのか?有難迷惑のような気がするのだが……それよりもセシリアが先程から『一夏
「そ、そのためにも!私が一夏さんをサポートしようと思うのですが……」
セシリアの一夏を見る様子が明らかに可怪しい。一夏を見るたびにセシリアは顔を赤らめ恥ずかしそうにしついる。
「それでレックスさんは……い、一夏さんをクラス代表するのは賛成でよろしくて……?」
まさか、セシリアは一夏にホの字なのか!?
一夏よ、お前セシリアに何をしたんだ……
貴重な経験を積めると既に納得してる生徒達、一夏をクラス代表にしたいホの字のセシリア、そのセシリアをがん睨みしてる箒、状況を察してニヤニヤしているアンジー、状況が分からず助けを求め視線を向ける一夏……この状況からして俺の答えはただ一つ。
「ウン、イイトオモウヨ」
許せ、一夏。俺に拒否権はない。
「フフっ、レックスさん感謝いたしますわ!」
生徒達は嬉しそうに拍手をする。うん、クラスが団結するというのはいいことだ。一夏がジト目で見てくるのは気のせいにしておこう。
「へいへーい、セシリアちゃんやるじゃないの~」
あっ、アンジーいたの忘れてた。アンジーがニヤニヤしながらセシリアを小突く。
「アンジーさんでしたっけ?お生憎ですが一夏さんのクラス代表の席はお譲りいたしませんわ」
「いやいやいや、すごいと思うよ。セシリアちゃん、一夏のすごいところ知ってるんだろ?」
「エッ、そ、そ、そ、そのようなことは……!!」
セシリアが何かを思い出したようで、顔を赤らめもじもじとする。一夏よ、お前本当に何をやらかしたんだ。
「つまりあれだろ〜?セシリアちゃんはー、一夏くんのことがー……」
「アッ、い、い、いけませんわ!アンジーさん、それ以上は……ダ、ダメですの!」
何見せられてんだろこれ……ツッコミを入れようとするがそれよりも先に織斑先生がアンジーとセシリアに出席簿チョプをお見舞いした。
「馬鹿者共、漫才は授業を終えてからにしろ。ミグラントはさっさと席につけ」
「「は、はい……」」
流石は織斑先生だ、全く動じてない。ちなみに山田先生はドキドキしながら見てました。
「なあレックス、セシリアはなんで顔を赤らめたんだ?」
「……一夏、お前絶対それをセシリアには言うなよ?」
別の意味で動じてない奴がもう一人いた。
_______
「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらおう」
世界で3人目の男のIS操縦者が現れたと騒がれたがあっという間に収まり、俺もアンジーもクラスに馴染みだした4月の下旬。本日も鬼教官こと織斑先生の実践授業がグラウンドで行われる。
「織斑、オルコット、ロスチャイルド、ミグラント、ISを展開しろ」
「よーやくですか!」
アンジーが待ってましたと言わんばかりにドヤ顔をする。うざいけど仕方ない、アンジーは学園に入って早々にISの適正検査を受けISの展開の許可を得られるまでISの使用を待たされた。確か俺と同じC判定だったか。ちなみに一夏はB判定らしい。
そしてアンジーのISお披露目と同時にクラウドブレイカーも微調整が終わりやっとこさクラスの皆にお披露目となる。
確か0,7秒以内で展開するのが基準だったよな。もたもたしていると織斑先生に怒られる。集中して待機形態である赤いブレスレットからクラウドブレイカーを展開させる。
光に包まれる感覚から全身を纏う鎧のような重厚感とふわりとした軽い感覚へ。上手く展開できたと確信しながらゆっくりと瞼を開くと、鮮明な視界と物珍しそうに見つめるクラスメイト達が見えた。
「これがレックスくんのIS……」
「へー、全身装甲なんだ」
「ブースターユニットもカッコイイね!」
そこまでマジマジと見られると恥ずかしいな。
「クラウドブレイカー……統合企業『Raven's Nest』が造ったIS。独特なデザインですわね……」
すでに専用機『ブルー・ティアーズ』を展開しているセシリアもやたら見つめてくる。流石は代表候補生、情報を得ようとしっかり観察してくる。
「お、俺のはともかくアンジーのISも見てやったらどうだ?」
なんとか皆の注目を逸らそうとアンジーへと向けさせようとする。だが俺の横でISを展開したアンジーは……
「はっはー!どうよ、カッコイイだろ?」
ダークブルーの装甲、複眼のカメラアイが備わったフルフェイスの頭、F1カーを彷彿させるような胸部装甲、重厚のある長めの腕、そして何よりも目立つ『>』の形に曲がった逆関節の脚とISらしくない形をしたISだ。
「アンジー……なんかちょっとゴツいな」
「そこがいいんだよー。レイレナード、ローゼンタール、シュナイダー、アーキバス・グループ、コジマ技研、その他の企業の技術ガッチャンコして創り上げたIS。その名も『
父さんとRaven's Nestが造ったもう一つのIS……独特のデザインをしてるせいか皆不思議そうに見つめている。
「少し変わった形をしてるのはしゃあない。第一世代の最初、黎明期に製造されたレイレナード社の『アリーヤ・シュープリス』をベースに他社の良いところを上手く取り入れた機体だ。第1世代はゴツい全身装甲が多かったのさ」
最初の頃は全身装甲が多かったらしいが、あまり女性受けせず第2世代から全身装甲ではないISが造られたことにより全身装甲をメインにした製造社は競争に敗れ次第に姿を消していったという。
「逆関節……珍しい形をしていますわね」
「さぁすがセッシー、見どころがいい!普段の脚型とは違う逆関節型は機動性、ジャンプ力に長けて空中戦に強い。更にはエネルギー消費量を抑えたりと燃費もいい!だけど安定性を保つために重量があったり積載量に制限がかかるのがネックなんだよねー。しかーし、シュナイダー社の第一世代IS『ナハトライアー』による技術で軽量化に成功!アリーヤの機動性の強みを活かせることが出来たのさ」
逆関節の脚なだけあってクラスメイト達はあまり受けてはないようだが、
「すっげー!アンジーのISってなんだか男のロマンって感じだな!」
専用機『白式』を展開していた一夏が目を輝かせて興奮していた。
「同士よ、わかってくれたか!逆関節に慣れるまで大変だったよー、最初は足が変な方向にグニャっとした感覚だったから……」
「ここで蘊蓄を話すな。さっさと飛べ」
織斑先生に注意されアンジーの苦労話はここで終わり。長々話してるともっとどやされる。昨日急上昇と急降下について授業でやったからな…習った通りにやれば問題ないはず。
素早く、ぐっと踏み込んで高くそして速く翔ぶイメージで速く急上昇。やっぱり空を飛ぶって楽しいな。
「イヤッフー!この感覚はたまんないな!」
アンジーもウッキウキでクラウドブレイカーに劣らない速度で上昇していたようだ。
「まあ、レックスさんとアンジーさんは慣れているのですわね」
俺とアンジーよりも速く上昇していたセシリアは感心していた。これもナターシャさんとイーリスさんに鍛えてもらったおかげだ。
「いやぁ訓練の賜物ってやつ?でも流石はセッシーだな!」
「も、もう!煽てても何も出ませんわ!」
アンジーはセシリアを茶化す。というか『セッシー』とあだ名つけられて気にしてないのか?
「あれ、一夏は?」
一夏はセシリアや俺達の後に飛んだようで、何やらしょんぼりしている。さては通信で織斑先生に叱られたか?
直ぐ様セシリアが一夏に近づき励ましアドバイスをする。いいなぁ、俺達もアドバイスして欲しいなぁ。地上では……うわ、箒がめっちゃ睨みつけてる、怖っ。
『全員上昇したな。次は急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ』
織斑先生から指示が。地表から十センチっていきなりは難しくないか?
「フフっ、では皆さんお先ですわ」
一夏とお話できて上機嫌なセシリアが先に急降下した。急降下からの完全停止も上手くやってのけたようだ。
「訓練やシュミレーションで少しはやったが……いくか!」
「そんじゃあ俺もっ!」
アンジーと同時に速度を上げて降下する。地表に接近するまで数秒もかからない、後はタイミングだ。ここだというタイミングで体勢を戻してブレーキをかける。ブワッと風が巻き上がりなんとか完全停止できた。
「ふ、ふう……上手くできたか?」
クラスメイト達は感嘆の声を上げているが織斑先生は無表情で見据えている。
「完全停止はできたが地表から五センチだな。タイミングを間違えるな」
厳しいご指摘が……
「レックス、危なかったな~。地上とゴッツンコするところだったな!」
「ミグラント、お前は二十センチだ。途中日和ったな?」
「ぐふっ……ぐうの音も出ません……」
やはり厳しいご指摘が。先生はよーく観察している。
「完全停止をするタイミングを見誤るな。見誤ると―――」
織斑先生が説明しようとした直後、一夏が急降下したのが見えた。急降下したのはいいだが、完全停止することなくアンジーの真横で、地面に衝突。大きな音ともにグラウンドに大穴をあけた。
「えっ、こわっ……」
アンジーは絶句、箒は呆れてため息をこぼす。
「――こうなる。馬鹿者、誰が地上に突撃しろと言った」
白式の速さには驚いたが……一夏、大丈夫か?
この後も授業は続いたが授業の終了してから一夏が責任を持ってグラウンドに空いた穴を埋めた。
_________
「というわけで織斑くん、クラス代表決定おめでとー!!」
クラスメイト達の『おめでとー!』の声と同時にクラッカーが乱射され拍手がかかる。
夕食の自由時間、寮の食堂にて一夏のクラス代表就任のお祝いパッが開かれた。
「へいお待ち!アンジーお手製イチゴのレアチーズタルトだ!」
アンジーがカットされたイチゴが沢山詰まったタルトを保ってきた。食堂の厨房を貸してもらって作ったとのこと。
「これアンジーくんが作ったの!?」
「すごっ、かなり凝ってる……!」
「け、ケーキは別腹!ケーキは別腹!」
クラスメイト達もアンジーのタルトの出来栄えに喜びの声を上げる。
「あ、イチゴと一夏と準えてるつもりはナイからねー」
アンジーは茶化すが当の本人はどうしてこうなったと遠い眼差しをしていた。
「全く、めでたい奴だ……」
箒はムスっと不機嫌そうに一夏を見つめる。
「まあまあ、俺達で一夏をサポートしていけば大丈夫だろ」
「む……そうだといいが」
やいのやいの祝ってる最中、新聞部の生徒が一夏にインタビューをしようとするのが見えると早速一夏の側にセシリアが接近。出遅れたと箒が焦って向かっていった。
「はー、随分と人気だな一夏は」
アンジーは自分が作ったタルトを食べながら彼らの様子を見ていた。
「ほい、レックスの分もよそっといたぜ」
「サンキュー……美味いなこれ」
「いいよなー、俺もキャッキャウフフしたいなぁ」
アンジーは羨ましそうに一夏を眺めるが……一夏の側にいたい箒と積極的にアタックするセシリア、一夏を巡ってバチバチと火花を散らす二人に対して全く気にしてない一夏。
あれ、入学早々に修羅場じゃないか?
「俺は……見守っている方がいいな」
「うん、違いねぇや」
「はーい、そこの男子二人も写真撮りますから来てくださーい!」
新聞部の生徒に呼ばれ1組の集合写真を撮ることに。一夏を中心とするから両サイドはセシリアと箒の方がいいよな。ここは彼女達に譲って……
「レックス、アンジー!二人も真ん中に来ようぜ!」
「は」
「え」
一夏が俺とアンジーを引っ張り一夏の両サイドに並ぶことに……
「……一夏くん?ちみ、空気読めないって言われたことある?」
「ん?なんのことだ?」
こいつはたまげた。これは攻略難易度がかなり高いぞ。
全く気にしてない一夏のせいでアンジーの隣にいる箒が、そして俺の隣にいるセシリアが俺達をめっちゃ睨んでいた。
うん……怖い。修羅場すぎて怖い。
この時撮られた集合写真は俺とアンジーの笑顔は引きつっていたとのこと。
_______
「レックスくん、おはよー!ねえ、転校生の噂聞いた?」
朝のトレーニングを済まして教室に入るとクラスメイトの相川さんが話しかけてきた。教室ではその話で盛り上がっているようだ。
「まだ4月なのに転校生が次々と入ってくるみたいだな」
3人目の男の操縦士であるアンジーがいきなり入ってきた影響なのだろうか、他の国も遅れは取るまいと画策しているのかもしれない。
「だねー、なんでも中国の代表候補生とか」
「代表候補か……ライバルがまた増えそうだな」
「気にすることはありませんわ。同じ代表候補生である私に敵うことはないですわ」
セシリアが自信満々に告げる。お嬢様みたいな人ってなんで自信満々なんだろうな……
「一夏は気になるか?」
「うーん……まあまあかな」
一夏はもっと自信持ってほしい。なんならセシリアの自信満々さを分けてほしいくらいだ。
「一夏、もっと気合入れろ。それだと来月のクラス対抗戦で負けてしまうぞ!」
箒がプンスカと一夏に喝を入れる。クラス対抗戦とはクラス代表同士のリーグマッチであり、本格的なIS学習の始まる前の実力指標を作るためとのこと。
他クラスとの交流、クラスの団結のためのイベントであり、生徒達の士気を上げるために優勝クラスには食堂のデザート半年フリーパスが配られる。
「まあ、やれるだけのことはやってみるさ」
「やれるだけでは困りますわ!一夏さんには勝っていただきませんと!」
「そうだぞ!男たるもの弱気になってどうする!」
「まあまあ、一夏のためにも俺達がサポートしてやらないと」
クラスが団結してやらないと一夏だけの力では勝つのは難しいもの。
「整備、特訓、メンタル、みんなで協力して一夏を鍛えてやらないとな。俺もできるだけ力を貸すよ」
「レックス……ありがとな!おかげで頑張れそうだぜ」
「そうだね、じゃあ整備は任せて!」
「織斑くん、プロテイン飲む派?」
「放課後、アリーナの確保しておくわね!」
よかった、よかった、一夏も自信がついたしクラスメイト達も各々できることを模索してくれた。
「「………」」
箒、セシリア、そんなに俺を睨まないでくれ。これも一夏のためなんだ。
「なあ相川さん、他のクラス代表の情報とかあるかな?」
「そうだね……今のところ専用機を持ってるクラス代表は1組と4組だけだから余裕だよ」
ふむ、専用機の情報も欲しいな。ここはアンジーに聞いてみるか。
「―――その情報、古「その情報は古いみたいだぜ?」」
アンジーが欠伸しながら教室に入ってきた。あれ、さっき誰か声をかけてたような……気のせいか。
「情報が古いってどういうことだ?」
「転校生の中国の代表候補生が急遽2組のクラス代表になった。しかも専用機持ちだ」
いきなりの情報でクラスメイト達はざわつく。代表候補生で専用機持ちと聞いてセシリアも焦りだす。
「あ、アンジーさん、それは確かでして?」
「ああ、中国が製造したIS、『
パワータイプのISか。スピードタイプっぽい一夏には厳しい相手になるかもしれない。
「色々と対策をしておかないとな。一夏、気合入れないといけないな」
「お、おう!よくわからないけど頑張るぜ!」
一応一夏もやる気を出したし問題はない、かな……
「それにしてもアンジーさん、よくその情報を得たものだな?」
「ぶふふっ!それがなー、昨夜その転校生が2組のクラス代表の部屋のドアをぶち破って圧かけたようでな」
アンジーがクスクス笑いながら詳しい話をする。
「そのゴリ押しさと図々しさ、なんというパワーゴリ「あたしの出番を返せええええっ!!」ラアアアアっ!?!?」
突然、茶色のツインテールの生徒がアンジーに飛び蹴りをぶっ放した。もろにくらったアンジーはふっ飛ばされて倒れている。
「あ、アンジーさん!?大丈夫ですの!?」
「ぐふっ……美女に看取られるたぁ、俺は幸せ者、だぜ……ガクリ」
「れ、レックスさん!!アンジーさんがやられてしまいましたわ⁉」
「あーほっといたらいいと思うよ?」
「アンジーっ⁉おのれ何奴だ!!」
どうしてこういう時だけ箒はノリノリなんだろうな……一夏はというと、あれ、一夏が目を丸くしている?
「鈴?……お前、鈴か?」
「そうよ。中国の代表候補生、
ツインテールのアグレッシブな制服を着た生徒、凰鈴音はドヤ顔で頷く。
「一夏、この人知ってるか?」
「ああ、俺の幼馴染なんだ!」
………幼馴染?2人目の幼馴染?
目が点になっている箒とドヤ顔している鈴音さんを交互に見る。
あ、これ……面倒くさいことになる。
アリーヤのシュープリスもいいと思ったけど壽屋のAliciaのデザインがよくてティンときた。
Alicia型はテルミドールのアンサングが有名だけどアンサングは重量過多なので他の企業の技術を取り組んだオリジナル機体、ということになっちゃった……