中には10連休の人がいるとか
私はゴールデンウイークはお仕事だけどね!(血涙
その日、グレイスを呼んで再び父があのIS開発を行っていたラボへと向かう。
俺がついた頃には既に助手のキャロルと執事のアルフ、そしてグレイスが待っていた。キャロルは俺の答えが気になるのか深刻な面持ちで緊張し、グレイスは俺の姿を見るや否や期待に満ちた笑みを見せた。
「やあやあ待っていたよレックス君。ここに私達を呼んだということは漸く返事が決まったようだね?」
「‥‥ええ、答えは決まりました」
昨日からもう答えは決まっている。俺の返事に期待しているのかグレイスは上機嫌に頷く。アルフは冷静に見つめていたがキャロルは物言いたげに口を挟むの躊躇っていたがゆっくりと口を開く。
「レックス‥‥貴方の答えに私とアルフは文句は言いません。ただ、貴方のお父様は貴方の事を最期まで思っていた事は決して忘れないで下さい」
「果たしてそうかね?あいつはこのISの製造の目的を私にも教えてくれなかったが、これは我らアメリカの最大戦力になる。彼も国を思っているのなら、私はこれを最大限に利用すべきだと思うのだがね」
「グレイス!このISを兵器として利用するつもりですか!?これはあなたの為なんかには使わせはしません…‼」
「ふふふ、好きなだけ言いたまえ。これをどうするか、全ては彼に託されているのだ。レックス君、私は君の重荷を代わりに背負う覚悟はできている。辛いのなら、捨ててもいい。そうすれば君も楽になるはずだ」
あの時は親父を嫌っていた俺の事をしか見ていなかったのだからグレイスは上辺は優しそうにしてくれるのだが、本当は早くよこせと思っているのだろうか。
喉から手が出るほどこのISが欲しいようだ。そろそろ答えを言うべきだ。俺は深呼吸して父が遺したISの方へと歩み寄りそっと手を触れる。
「このISは‥‥俺が引き継ぎます」
「‥‥なに?」
聞きたくない言葉でも聞こえたのだろうかグレイスはピクリと反応し目を細くしてこちらを見つめてくる。
冷静さを見せつけてはいるが怒れる獣のように鋭く睨みつけている。だが俺は怯まない。こんな状況、もう慣れている。
「父さんが遺したISは俺が引き継ぎ、使いこなして見せます。俺も父さんがやりたかった事を成し遂げたい」
「レックス‥‥‼」
俺の答えを聞いてキャロルは目を潤ませて嬉しそうに笑顔を見せた。無愛想な表情しかみせてくれなかったが、ちゃんといい笑顔もするじゃないか。アルフは満足そうに何度も頷いてる。
「レックス様、よくぞご決断をしてくださいました」
「レックス君‥‥君はそれでいいのかね?君はこれから父親の十字架を背負うことになる。それだけじゃない、世界中から注目されプレッシャーが伸し掛かったり、君の命を狙う者も現れるはずだ。その覚悟ができているのか?」
グレイスは目を細くして声を低くして尋ねてきた。彼の言う通り、女性しか扱えないはずのISを使える男性が現れるという事は世界中で一大事となるだろう。
唯一ISに乗れる男としてありとあらゆる期待と注目が殺到するだけでなく、その構造を調べるためにこのISと俺を狙う者や、俺を邪魔者として命を狙ってくる者も出てくるだろう。
だがこれはいずれぶつかる道だ。覚悟はできている。
「承知の上です。決して挫けるつもりません。それに‥‥父の遺志を継ぎたいのは本望です」
「‥‥そうか。君の答えなのだから、私はもう何も反論するつもりはない。だが、これだけは知った方がいいぞ。たった一人で全ての宿命は背負いきれんぞ?マイケルがその例だ。君も父親の二の舞にならんよう気をつけるのだな」
「ええ‥‥分かっています。それと少しだけお願いが」
「……なんだね?」
先ほどまでにこやかにしていたグレイスは強面な顔で見つめてきた。やはりこっちが彼の本当の顔か。機嫌を損ねるかもしれないが、これだけは頼んでおかなければならない。
「男のIS乗りが現れたという情報を公表するのはしばらく待っていただけませんか?それと俺を主とした部隊は作らないで欲しいんです」
「む……それはつまり君1人でこのISを完成させるというのかね?」
「俺はISについては全くの知識はありません。これもまだ乗っていませんし。それとこれのシステムや製造などの権利は全てキャロルとアルフに」
ISに乗ったこともないし、機械いじりはやったことはあるがこれは別物だ。
詳細も知らないのだ、いきなり日本にあると言われているIS専門の学園に連れて行かれても何もできない。ちだから準備が必要だ。俺の言いたい事を理解しているキャロルとアルフは頷く。
「レックス、システム等のサポートは私が全力をもっていたします。だから安心して専念してください」
「グレイス様、レックス様の言う通りではないでしょうか?このISを乗りこなすのに準備が必要かと」
「ふむ……」
グレイスは低く唸りながら考え込む。自分の利益の事を考えているのなら、自分の顔に泥を塗りたくないのならすぐに公表するつもりはないはずだ。
「わかった。君が乗れるまで私も待とう。それと君の訓練の為に基地の提供及びISのパイロットも派遣しよう。しかしいいのかね?世界は君のことを世界最初の男性のIS操者と注目されるというのに」
それは愚問だ。俺は首を横に振って答えた。
「俺は親父のような『ヒーロー』になるつもりはありません。俺なりに突き進んでいくだけです」
グレイスは俺を『英雄』にしてそれをだしにして自分の地位を高めるつもりだ。そのことに気づいたのかグレイスはふんと軽く笑って再び上辺だけの笑みを見せた。
「そうかそうか、それならば頑張るといい。だが私は諦めるつもりはないことは肝に銘じてくれ。その気になればいつでも私に相談してくれたまえ」
グレイスはぽんと俺の肩を叩いて去っていった。きっと俺が挫けるまでずっとつきまとい、このISを手に入れるまで虎視眈々と狙っているだろう。
俺は挫けるつもりはないし父が遺したISを譲るつもりもない。
漸くグレイスが帰り、静かになった。緊張感がどっと抜けて俺は深くほっと一息つく。
するとキャロルが俺の手を握って涙を流しながら微笑む。なんだ、いい笑顔もするじゃないか。
「レックス、ありがとう!貴方を信じて良かった…‼」
「べ、別に褒められることじゃない。それにまだ一歩踏み出したばかりだ。キャロル、アルフ、これからよろしく頼む」
「レックス様、このコアに手を」
アルフは懐からタブレットを取り出してタップすると、父の遺したISの胸の部分が開いた。そこには白く半透明の球体が光っていた。
これがISの心臓部といわれているやつか?俺は躊躇わずそのコアに触れる。すると機械の起動音が鳴り出し、シャットダウンしていたパソコンやその他の機材が続々と再起動する。
そしてISも再起動したのかコアが一段と光り出す。いままで沈黙していたこの鉄の塊がまるで息を吹き返したかのようだ。俺は何が何だか戸惑っていたがアルフはにっこりと頷いた。
「レックス様、承認完了致しました。今日からこのISは貴方のモノです」
「システム再起動…これよりこのISを完成させます」
これでやっと軌道に再び乗り出した。色々と苦難が降りかかるかもしれないが、まだ始まったばかり。これから乗りこなして見せるさ。俺は親父の遺したISを優しく撫でてニッと笑う。親父が俺だけに教えてくれた、このISの本当の名前を口ずさむ。
「これからよろしくな、クラウドブレイカー」
___
ISを再起動させ、システムなどの微調整を行いクラウドブレイカーを完成へと近づけさせる作業を行って3日経った。
システムというのは厄介な相手なのだろうか。俺が引き継いでから未だにこいつに乗せてもらえない。
まずは座学で知識をつけろと言うわけでブースターがどうのこうのやら装甲がどうのこうのとやら、物理だ力学だ整備と何だかややこしいことばかりだ。
こればかりはキャロルやアルフに教えてもらうしかない。なんとか理解しようと勉強をしているがなかなか難しい。
そして今現在、俺達はキャロルと共に軍用トラックに乗って移動していた。後続に特大のコンテナにクラウドブレイカーを積んだトラックも続いている。
ワシントン.D.Cから離れた地図にも乗っていない荒野だ。一体何処へ行くのかとキャロルに聞いても到着してから説明するとの一点張り。
もうなにがなんだか。そう項垂れていると遠くからドーム状の建物が見えてきた。地図にも乗ってない場所だし、もしかしてここはエリア51じゃあるまいな?
そのドーム状の場所へと到着するとようやく全容が見えてきた。ゲートの前に見張りの兵士がいるからしてここはもしや軍事基地のようだ。
「そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?ここってどこの基地だ?」
「ここは
つまるところ我が国におけるIS部隊専用の基地ということか。ドーム状の建物の付近にあるグランドには幾台ものISが見える。
「しかし、なんでこんな所へ?わざわざここへ運ばなくても」
「ここで貴方のISの最終調整とフィッティングを行い、訓練をやってもらいます‥‥グレイスの要望だそうで」
詳しく聞くとグレイスは一日でも早く俺がこのクラウドブレイカーを飛ばす姿を見たく、そしてそれをいち早く世界へ宣伝したいという。
なるほど、それでキャロルは少し不機嫌そうになっているわけか。
グレイスの要望はいいとして、俺も早くこいつに乗って訓練をしたいとは思っていた。日本のIS学園は4月から始まるという。未だ2月と言えども時間の経過は速い。
軍用トラックから降りると、金髪の長い髪で穏やかそうでおっとりした女性と茶色の短い髪の勝ち気で好戦的な笑みを見せる女性が出迎えてきた。おっとりした女性は俺を見るとニッコリと笑顔を見せるが、好戦的な笑みを見せる女性はマジマジと俺を見つめてきた。
「ふーん‥‥あんたが『胡散臭いおっさん』が言ってた例の男のIS乗りか?どんな男かと思いきやまだまだ坊やじゃないの」
「こらイーリ、初対面の人に失礼でしょ。ごめんなさい、貴方がレックス・ロスチャイルド君ね?」
なんと言うべきだろうか、思った通り凸凹した性格の二人だというべきか。もう見た目からわかるいいコンビの雰囲気が漂って来た。
「あ、ああ。俺がレックス・ロスチャイルドです。今回は訓練という事でここへ来た‥‥らしいのですが」
「へっ!そう畏まらなくていいんだよ。あの『リアルダイ・ハード』の息子なんだろ?シャキッとしな!」
好戦的な笑みを見せる女性は大声で笑いながら俺の背中をバンバンと叩く。本当に親父はそう呼ばれてたのか……
IS操縦者と言えど軍人か、叩く力が強くて痛い。金髪の女性はあたふたしながら何度も頭を下げる。
「だからイーリだめだってば!?ご、ごめんね?彼女こう力加減を知らないというか‥‥」
「い、いや構わないさ‥‥」
「そんじゃあたしから自己紹介。イーリス・コーリングだ。気軽にイーリスって呼んでくれてかまわないぜ?あんたの噂はかねがね聞いてるわよ?かなりの暴れ馬だって?」
「私はナターシャ・ファイルス。今回はイーリと一緒に貴方のISの訓練のコーチをすることになったの。暫くよろしくね」
イーリスは力強く、ナターシャは優しく俺と握手を交わす。願わくばナターシャさんだけに教えてもらいたいのだが‥‥これも修行だ。仕方ない。
「ISの訓練は軍校での訓練や戦車とか戦闘機での訓練とは大違いだ。それにあたしとナタルの訓練は厳しいぜ?親の七光りと笑われないようにへばんなよ?」
挑発的に笑みを見せるイーリスに俺は少しカチンときた。あっちでも一度も弱音も反吐も吐いたことは無いし、吐くつもりもなかったんだ。その挑戦、受けてやるよ。
「ただの七光りだと甘く見るなよ。絶対にあっという間に乗りこなしてやる」
「おう、その意気だ!ちゃんとついてこいよな!」
「もうイーリったら……それじゃあレックス君、貴方のISの準備が出来次第ISスーツを着てこちらの訓練所へ来てね?」
ん?ISスーツ?
それはなんだそれ。キョトンとする俺にキャロルは眼鏡をクイっとしてから俺に銀色のアタッシュケースを渡してきた。
「ISスーツとはISを効率よく動かすための専用のスーツの事です。バイタルデータを収集するためにセンサーと端末が組み込まれているのが普通ですが‥‥今回はデータ収集のため、試作品を着用してください」
「えーと‥‥これ、何処で着替えるんだ?」
着替えるのはいいが、問題が一つ。これを何処で着替えればいいのやら。最初の難関にナターシャは苦笑いしイーリスは爆笑していた。
「そうね、更衣室は全部女性専用だし、トイレも女性専用だし‥‥困ったわね」
「別にここでもいいんじゃないの?あたしは見せても構わないぜ?」
「そんな趣味はねえよ!?コンテナの中で着替えてくるっての‼」
女性しか扱えないのが普通だもの、仕方ない。見られるつもりもないし見せるつもりはないのでトラックのコンテナの中で急ぎISスーツに着替える。
着替えるのだが、なんだこれは。上下ピッチピチのような生地だし、サイズも少し小さい気がする。大丈夫なのかこれ……
ウェットスーツ状の生地で体にフィットしすぎて居心地悪い気がしてならない。文句を言ってもしょうがないのですぐに着替えて外へ出る。
「キャロル、もう少し落ち着けるような生地はないのか?」
「そのスーツが主流ですし、かなり性能もいいものですよ。レックス、慣れるまで我慢してください」
なんてこったい。ISというのはなんてややこしい仕様なのか。疑問に思うのは山々なのだが、今は急ぎ二人が待っている訓練所へと向かう。
運ばれるクラウドブレイカーが入っているコンテナと共に訓練所へと来てみるとナターシャとイーリスが待っていた。待っていたのはいいが‥‥
「お?随分と逞しい体をしているじゃないの。優男かと思ったが中々鍛えてるわね」
「それじゃレックス君、貴方のISのフィッティングをしてから基礎の動きの訓練を‥‥って、どうしたの?」
「あの‥‥色々と言いたいのだけど、まず一つ聞いてもいいです?」
俺は片手で顔を覆い尋ねるが、ナターシャはキョトンと首を傾げイーリスはニヤニヤとしている。
「お二方、どうして水着みたいなの着ているんです‥‥?」
二人は先ほど着ていた迷彩柄の軍服を脱いで、レオタードのような、タンクトップのような、競泳水着のようなピッチリとした水着のようなISスーツを着ていた。
「普段これが支給されているISスーツなの。初めて見るから驚くわよね?」
「おぉ?やっぱ男だもんなぁ。気になるよな!じっくり見ても構わないぜ?」
「見るか!?」
本当にISというのはややこしい使用なのか疑問に思えてきた。
ISのスーツはえっちぃと思います。