インフィニット・クラウドブレイカー   作:サバ缶みそ味

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 この世界線のイーリスはオラオラ姐さん系、ナターシャさんはユルフワお姉さん系です。


5、迫る乱入者

 ISスーツの見た目を気にしてばかりでは進むことはできない。ここはそういうものだと理解しなければ。いつかキャロルにピッチリしすぎないISスーツを作成してもらおう。

 

 そんな事を考えていたら訓練所内にクラウドブレイカーが運ばれてきた。男でも操縦できるISを初めて目の当たりにするイーリスとナターシャはマジマジとクラウドブレイカーを見たり触れたりした。

 

「この子がレックス君のIS…」

「へー、全身装甲(フルスキン)に少し長い腕…変わった形してんなぁ」

 

 初めて他人に父さんの遺したクラウドブレイカーをお披露目しているのだがなんというかこちらまで少し照れるというか少し恥ずかしい気分だ。

 

『レックス、聞こえますか?』

 

 訓練所内にキャロルの声が響く。何処にいるのか辺りを見回せばモニタールームらしき場所からキャロルがタブレットを操作しながら俺の方を見ていた。

 

「ああ、ちゃんと聞こえる」

『レックス、これから貴方のISのフィッティングを行います。まずは貴方のISにお乗りください』

 

 乗れと言われても…コクピットらしき物もないし、これどうやって乗るんだ?

 

 パワードスーツみたく取り外してから着替えるものだろうかと悩んでいるとクラウドブレイカーがプシューッと音を響かせるとあちこちの装甲の隙間が開き、胸部装甲がパカリと開く。

 

 なるほど、そこから乗れってわけか。迷いなく俺はクラウドブレイカーに乗り込んだ。脚や腕のパーツが自然に装着され、胸部装甲が閉じ、頭部の装甲が装着される。鉄の仮面に透明のバイザー、まるでスポーツバイクの時に被るフルフェイスのヘルメットのようだ。

 

「キャロル、装着完了だ。こっからどうすんだ?」

『まずはフィッティングを開始します。システム、起動。シールドバリアON、コア・ネットワークオープン…コンタクト開始』

 

 すると各部位の装甲に空いていた隙間が閉じ、キュっと締まるような感覚がきた。そして暗めだった画面がより鮮明にくっきりと映りだす。

 

「おおっ!?これがISに乗るっていう感覚か‥‥‼」

 

 絶対に関連することがないだろうと思っていたISに触れ、初めて乗るという感覚に少しワクワクしてきた。

 

『レックス、違和感はありませんか?』

「全くない。初めての感覚に驚いているだけだ」

『では少し手足を動かし歩いてみてください』

 

 キャロルの指示通りに手を動かしてみる。目の前で機械の少し長い腕を動かし、両手を開いたり閉じたり何度も動かす。

 今度は脚が動くかどうか試してみた。左脚を上げ、一歩前へ。右脚を上げ前へ。それを何度も繰り返しゆっくりと歩いて見せる。

 

 これはすごいな!本当に自分の手足になったかのように思いのまま動くことができる。変な感覚ではあるが次第に慣れてきたので早め軽く走って見せた。

 

「うん!レックス君、上手くできてるわよ!」

「ナタル、まだこれからだろ?まだ基礎中の基礎だ。これぐらいできて当然さ。キャロル、さっさと次のステップに移せ」

 

『了解しました。レックス、動きが慣れているようですのでこれからハイパーセンサーをONにします』

「ハイパーセンサー…?」

 

「いわば高知能な知覚センサーみたいなもんよ。あたしらに足んねぇ感覚をIS自身が補佐してくれるんだ」

「目視できない遠距離や視覚野の外を感知してくれるの。最初は少し酔ったりより変な感覚がするのだけど‥‥慣れば大丈夫!」

 

 なるほど、かなり高性能機能があるのか。比べ物にはならないと思うが乗り物酔いは一度も酔ったことはない。すぐに慣れてみせる。

 

「キャロル、すぐに始めてくれ」

『了解しました。ハイパーセンサーON』

 

 ハイパーセンサーが起動したようでブオンと機械の起動音が聞こえた。目の前に映る視野がさらに広がったような感覚と頭にグワンと揺れるような感覚が伝わり始める。

 

「うっ!?」

 

 ナターシャが言う通りこれは酔う。視野が広がるというか、度がキツイ眼鏡をかけて何時間もバク転している気分のようでクラクラしそうだ。思わず躓きそうになったが何とか持ち堪える。

 

「な?絶対これで躓くと思ったんだ」

「でもレックス君、ちゃんと持ち直しているわ。これならすぐに慣れるわよ」

 

 ナターシャは満足気に頷いているがイーリスはニヤニヤしながら不敵な笑みを見せる。

 

「どうだ?これをうまく熟さねえと何にも始まらないぜ?お坊ちゃんにはきつかったか?」

「冗談。ちょっと驚いただけだ‥‥!」

 

 舐められているようでムッときた。開始直後で躓くつもりはない。今に見てろよ……!

 

 酔いなど気合いで吹き飛ばし、手脚を動かし再び走り回る。先ほどよりも感覚が研ぎ澄まされたようで動きもより機敏なものに変わり、なんなら側転も宙返りも難なく熟せた。

 

「レックス君、その調子!これなら飛行訓練もすぐにできそうね!」

「まあ形はできてるし、一応合格としてやるか…そんじゃあレックス、準備運動はここまでにしてISでの動きに慣れる訓練だ」

 

 イーリスは腕を軽く回して軽いストレッチをしながらこちらに歩み寄ってくると急に光り出した。一瞬眩しい光が放たれた途端に、目の前にタイガーストライプのカラーリングされた頑丈そうな装甲と大きな腕のついたISが現れた。

 

「な、それは……?」

 

「これがあたしの専用機、『ファング・クエイク』。専用機を見るのは初めてか?」

 

 専用機。特定のパイロット専用に製造された特注のISか。イーリスのISは武骨と言うべきかワイルドな力強さが感じられる。

 

「それで動きに慣れる訓練ってまさか……」

「軽いスパーリングだ。ちゃんと防げよ?」

 

 あ……嫌な予感がする!

 

 

 これから何が始まるか察した俺は防ごうとするが、それよりも早くイーリスの、ファング・クエイクの左の拳がゆっくりと引くと勢いよくこちらにしかも顔面を狙ってストレートを放ってきた。

 

 拳が直撃する寸前、俺は慌てて両腕でガードをして防ぐ。ガツン!!と鈍い音と衝撃が両腕に響く。

 

「‥‥っ‼」

 

「どうだ痛いか?ISは乗れるだけじゃない。こんな感覚もある事を忘れんなよ?」

 

「ちょ、ちょっとイーリ!?いきなりそれはいくらなんでも急すぎるわよ‼レックス君が怪我するわ!?」

 

 ナターシャは焦りながらイーリスを止めようとするがイーリスは首を横に振る。

 

「ナタル、甘えさせる必要はねえ。こいつはあの『やらかしアホリアルランボー』の息子だ。あいつにはたっぷりとお返ししてやりたかったが……

 

 

 また親父の変な異名が出てきた!なんかちょっと私恨を感じるし親父は一体何をやらかしたんだ⁉

 

「こいつもその才能がある。こんな訓練もこいつなら苦じゃないさ。どうだレックス、まだやれるか?それとも今すぐ休憩したいか?」

 

 イーリスは挑発するように指をクイッと動かしながら尋ねてくる。

 

 愚問だな。俺は痛みを払うように腕を振ってから拳を構える。それを見たイーリスはニヤリと笑って打ってこいと身構えた。それに答えるように俺は拳を放つ。

 

「言ったはずだ。俺は一日でも早くこいつを乗りこなしたい…!」

 

 放った拳は軽々と片手で受け止められたのは悔しいが、イーリスは好戦的な笑みを見せて頷いた。

 

「はんっ……へなちょこな拳だ!だがその意気だ!あたしは教えるの下手だからな。だからお前は実戦で身につけろ‼」

 

 ここから数時間、イーリスとのスパーリングが続いた。イーリスの専用機であるファング・クエイクはかなりのパワーだ。一発一発が重い一撃。荒々しさがイーリスの性格を具現しているようだ。

 

 『相手の動きを見て殴れ‼』だの『エネルギーに気を配れ‼』だの、教えるのは下手といいながら流石はISパイロットと言うべきか適切なアドバイスはくれた。

 

___

 

「うっし、今回はこんぐらいにしとくか」

「もう、イーリったら集中すると周りが見えなくなるんだから。もう日が暮れちゃったじゃないの」

 

 イーリスとの組手が終わり、気が付けばもう日が沈んで外はもう真っ暗。そこまで時間がかかっていないと思っていたが長い時間が経過していたようだ。

 

「だってよぉー……こいつ思った以上にタフだからついつい」

 

 ISのエネルギーが切れても生身で立ち会い、エネルギーが回復したら展開して立ち会いの繰り返したが俺はバテることなく続けた。

 

「まだ荒削りだが中々やるじゃねぇか、大したもんだぜ!」

 

「あ、ありがとうございました……」

 

 ずっとスパーリングを見ていたナターシャが優しく微笑みを見せる。

 

「レックス君お疲れ様。今日はここまでにして休む?」

「いえ、まだまだやれますよ。もっと指導をお願いします」

 

「男の子は元気いっぱいね。でもこの時間じゃこれといった訓練は…」

「ナタル、気にしなくていいぜ?外で飛行訓練すればいいじゃないか」

 

 飛行訓練…待ってました!ぜひとも指導してほしい。ナターシャはどうしようか迷っていたが俺の熱い視線を見て仕方ないと苦笑いして頷いた。

 

「仕方ないわね、でもその子も貴方も無理しちゃダメよ?キャロルさん、レイン君のISのPICをお願い」

 

「PIC…?」

 

 キョトンとする俺にISを解除したイーリスが軽く小突く。

 

「パッシブ・イナーシャル・キャンセラーの略だ。ISの基本的なシステムで…えーと、そいつで飛んだり加速したりできるぜ!」

 

 大雑把な説明だな!?軽くツッコミを入れたいがだいたい把握できた。それで空を駆けることができるというのだが、俺が気になっていたことと同じくイーリスも不思議そうに首を傾げる。

 

「どのISもフィッティングの時でもブースターユニットがあるんだが、レックスのISにはこれといったもんがついてねえのな」

「どういうシステムなのかまだ分かってないけど…キャロル、一応これでも飛べるんだよな?」

 

『ええ、現段階では問題はありません。ですのでご安心ください』

 

 いやそう楽しそうに答えられても、どうしてそう言い切れるのか根拠がわからないのだけど…

 

 多少心配しながらもナターシャと共に訓練所の外へと出る。外は屋内の照明とぽつぽつと置かれている外灯だけのせいか夜空には満天の星空が見えた。この光景に俺は思わず息を呑む。

 

「どうした?飛ぶのにビビったか?」

「そんなまさか。こんな夜空で飛べるのが嬉しいんだ!」

 

 この星空の中を飛行できるというのなら喜んで訓練を受けよう。寧ろ…この光景を父さんに見せたかったな…

 

 そうしんみりとしている間にナターシャはISを展開していた。イーリスの専用機とは違い、ウィングのような物がついたダークグリーンの装甲でシンプルかつスマートなデザインのISだ。

 

「この子は量産型のIS、ラファール・リヴァイブ。訓練用だったり実戦配備用に普及されているの」

 

 なるほど、ISは多種多様なのか。奥が深いというか俺ももっと学ばなければな。

 ナターシャのラファール・リヴァイブはブースターをふかしふわりと軽く浮遊し、ナターシャは優しく微笑んで手を差し伸べる。

 

「それじゃあレックス君、さっそく飛んでみましょ!まずは浮くことをイメージして」

 

『レックス、PICは既に起動させてあります。彼女のアドバイス通りに飛んでください』

 

 そう言われてもなぁ、何処をどうやって飛ばすのやら。要は飛び立つ鳥のようにイメージをすればいいんだな?

 

 イメージしつつ力を軽く込めた途端に脚部のスラスターが勢いよく火を吹き、俺はナターシャを通り過ぎてかなりの速さで空を飛んだ。

 

「ちょおおおおっ!?」

 

 勢いよく飛び出たので俺は慌てふためく。ISは戦闘機とは違う。まさかこんなに勢いよく飛ぶとは思いもしなかった。

 

「えとブレーキ……いやブレーキってあんのか!?」

 

 慌てているがこれは車じゃないのでブレーキもない。どうしたらいいのかと混乱しているうちにどんどんと夜空高く飛んでいく。

 

 その時、ガッとぶつかるというよりも受け止められる衝撃がきた。よく見ればナターシャがクラウドブレイカーを止めてくれていた。

 

 なんか柔らかい感触が……思い切り胸に飛び込むような形になってしまっていた。

 オイオイオイまじでか……さあっと血の気が引く感覚がしたがナターシャはにっこりと優しい笑みを見せた。

 

「レックス君大丈夫かしら?」

「えっ!?ええっと……すんませんっ!」

 

「大丈夫よ。私も最初はこんな感じに慌てふためいたもの。落ち着いてゆっくり頑張りましょ!」

 

 ナターシャは再び手を差し伸べた。今度は勢いよく飛び出さないように注意しつつナターシャの手を取る。

 

「スラスターとブースターで飛ばしながらバーニアで調整してバランスを取っていけばいいわ」

「は、はい…!」

 

 星が輝く夜空の下でナターシャについて行くように飛行訓練を続けて行った。彼女の優しさと包容力だけでなく、軍人らしいアドバイスもあってかコツが掴めて行ける。

 

 これなら早く乗りこなすことができる…はず

 

 基地に戻るとキャロルがジト目で此方をじっと睨んでいた。あれは不可抗力だ……

____

 

 この基地で特訓を始めてから6日が経過した。

 

 

 イーリスとの組手やスパーリングの訓練やISに乗ったまま腕立て伏せや懸垂、肉体を使うイメージをしたハードなトレーニング。ナターシャとの外周の飛行、トップスピードや少しアクロバティックなメニューが組み込まれた飛行訓練。厳しい特訓の数々だったが次第に難なくこなせるようになってきた。

 

 飲み込みが早いと言われているが…未だに気になる事も幾つかある。

 

「はあ‥‥」

 

 6日目のトレーニングが終わり、俺はクラウドブレイカーを見つめながらため息を漏らした。

 

「レックス君、お疲れ様!今日はゆっくり休んで‥‥どうしたの?」

 

 俺の考え事をしている様子に気付いたのかナターシャが不思議そうに顔を覗かせてきた。

 

「何か悩み事?よかったら相談に乗るわ」

「ナターシャさん、この特訓で色々と教わり基礎的な動きや飛行を学ぶことができたのですが‥‥未だに違和感が取れないんです」

「違和感…?」

 

 この6日の間、イーリスとの組手やナターシャとの飛行訓練を受けてきたがこのクラウドブレイカーに乗り続けしだいに違和感を感じていた。

 

「イーリスさんやナターシャさんのISを見ていると乗りこなしている、というよりも何だか『一体化』しているような感じがするんです。でも、俺のISは乗っていても何だかそんな感覚がしなくて‥‥」

 

 最初のフィッティング時は確かに『乗っている』感覚はした。しかし彼女達は自分の体の様にISを動かし、飛んでいる。それに比べて俺はまだ『機械』にただ乗っている感じしかしない。

 

 このクラウドブレイカーはもともと彼女達のISとは造りが違うのだ。それが原因なのだろうか。

 

 するとナターシャは優しく微笑み、クラウドブレイカーを撫でた。

 

「レックス君、ISには形態移行(フォームシフト)というのがあるの」

「形態移行?」

 

「データ入力時、フィッティングの時からISはそのパイロットにふさわしい最適な形になるように学んで変化していくの」

 

 つまりはISのAIが搭乗者の動きや癖などを見て学び、搭乗者が動きやすい最もふさわしい形態へと変化する。まるで生物の進化みたいだな。

 

「この子は生まれたばかりの赤ちゃん。少しずつ貴方という存在を知り、貴方の為に変わっていくわ。だからレックス君、貴方はこの子の事を信じてあげて」

 

 ナターシャは最初の形態移行は大体30分ぐらいというがこの場合は例外であり、時間をかけてこのISを学ばせていけばいいと言った。

 

「ナターシャさん、ありがとうございます。もっともっと鍛えて、いち早くこいつにふさわしいパイロットになれるよう励みます!」

「うんうん、その調子よ!私もイーリも貴方の事を応援してる。だからもっと頼っていいからね」

 

 なんというか、まるで姉さんができたかのような安心感がした。イーリスの場合、姐さんなのだが。

 

「レックス、少しいいですか?」

 

 そこへキャロルが少し不機嫌そうな表情でやってきた。この様子だとまさかグレイスが何か言って来たのだろうか。

 

「キャロル‥‥もしかしてグレイス関連か?」

「ええ、そのようで。グレイスは貴方の飛ぶ様子を見たいようです。明日、フロリダ州のフォートローダーデールの海沿いにて是非とも披露してくれとのことです」

 

 やはり仕掛けてきたか。恐らく俺の飛ぶ様の映像を映し、これを世界へと発進し『世界初男性のIS乗り』とでも公表させるつもりだろう。

 

 確かに訓練を熟して一応飛べるっちゃ飛べるが‥‥完全ではない。

 

「しゃあない…一応、情報は漏洩させないためにマスコミや他の軍部には知らせないようにオフレコを条件でやらせてもらおう」

「よろしいのですか?」

 

「何時まで経っても乗れないなんて無様な様を見せるわけにはいかねえだろ?今はとりあえずやるしかない…」

 

 正直に言えばもっとイーリスやナターシャと一緒にトレーニングしたかったが…ナターシャも申し訳なさそうにしていた。

 

「レックス君、ごめんね。明日は私もイーリも別の任務で出動しなきゃいけなくて…」

 

「いいんですよ、ナターシャさん。本当にありがとうございました。またご指導お願いしますね?」

 

「ええ、イーリにも伝えとくわね。レックス君、頑張って…!」

 

 ナターシャは手を差し伸べ、俺は握手を交わす。優しくそして温かみを感じた。

 

___

 

「やあ待っていたよ、レックス君。調子はどうかね?」

 

 フロリダ州、マイアミにある海岸沿いの都市、フォートローダーデール。その近海にて泊められている空母にて設立された簡易基地にてグレイスがニンマリと俺とキャロルを迎えた。

 

 相変わらず猛禽類のような鋭い視線で見てくる…やっぱり、俺のISの件は諦めていないようだ。

 

「ええ、いい調子ですよ所長」

 

「それは良かった。自身のコンディションにISも影響すると聞いている。さて、披露という名の飛行テストを行ってもらうのだが、特訓中に無理矢理呼んだことは詫びよう」

 

 グレイスは深く頭を下げる。一応は無理強いをしていることには反省しているようだ。が、油断はならないとキャロルはジト目で睨んでいる。

 

「今回は海上での海軍によるISと合同の訓練、という事にしている…だがそれだけでは物足りない。サプライズとして少しゲストを呼んでしまった」

 

 グレイスは上っ面の笑みを見せつけて視線を別の方へ向ける。俺とキャロルも同じように彼の向く方へと向けると、そこには俺の母さんと妹のアンリがいた。

 

「ちょ、か、母さん!?それにアンリ!?」

 

「レックス、ごめんね?少しでも貴方の頑張っている所を一目で見たくて‥‥」

「お兄ちゃん、本当にISに乗れるの?私も見てみたい!」

 

 秘密にはできないからいつかは知られると思っていたがまさかこんなにも早く知られてしまうとは‥‥それを呼んでしまった原因(グレイス)を睨みをつける。

 

「安心したまえ、ご家族には安全な場所で見てもらう」

 

「そうしてくれるといいのですが……キャロル、早く支度をしようか」

 

 さっさとこの飛行訓練を終わらせよう。持ち場についてキャロルの最終調整を終えると、俺は早速クラウドブレイカーを展開する。

 

「おお‥‥‼なかなかいいISじゃないか」

 

 最初に見た時よりも動いている様子を見たグレイスは低く声を漏らす。

 

 合図と共に空へと飛ぶ。ナターシャのアドバイス通りに動かし、飛んでいく。ある時は空へと高く、ある時は海面スレッスレを駆けるように飛んだ。

 

「素晴らしい!実に素晴らしい…‼うまく乗りこなしているじゃないか‼」

 

 グレイスは感動して満足そうに拍手を送っていた。他の見ていた軍人達もその光景に息を呑み見つめている。

 

 しかし俺は全く満足していない。まだ、まだこの違和感が拭えない。IS、ではなく未だに機械そのものに乗っている感覚がしている。

 

 

 

 なにかが‥‥何かが足りないんだ‥‥

 

 

 

 その時、画面に何かアラートが点滅し始めた。こんな時に不調か?不審に思っていたがどこも異常はない。

 

 いや、これは何かが近づいているのか、クラウドブレイカーが何かを察知したのか。

 

『レックス‼聞こえますか!?』

 

 キャロルが慌てながら通信してきた。

 

「何か異常があったのか!?」

『違います!正体不明の飛行物体が貴方の所へと急接近しています‼』

 

 正体不明?そんなUFOじゃあるまいし…と返したかったがこれはマジのようだ。『Danger』と赤い表示が何度も点滅している。

 

「その正体不明とやらが急接近って‥‥何処にもいねえぞ?」

『上空です!気をつけて!今、貴方の真上です‼』

 

 真上?一体何が来るのかと見上げていたら俺にめがけて赤い光が迫ってきていた。

 

 あれは‥‥ビームじゃねえか!?

 

 俺は焦りながらも真上から放たれたビームを躱し、撃ってきた方向を睨む。上空に見える黒いシルエット。それは次第にこちらへと降りてくる。

 

「なんだあれは‥‥!?」

 

 それは両腕がかなりでかい、全身装甲の象牙色のIS。見たこともない、形をしたISだった。

 

 

 

 




 
 クラウドブレイカーのプラモがほちい
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