インフィニット・クラウドブレイカー   作:サバ缶みそ味

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あれやこれやしてたら長文になってしまった……

 戦闘描写。すんごい難しいや!


6、空を駆けろ

 突如現れた正体も所属も不明のIS。全身装甲で顔も様子も見えないがどこか意思の無いロボットのような見た目だな。いや今はそんな事を気にしている場合ではない。

 

「キャロル!これはドッキリかそれともイベントか!?」

 

クラウドブレイカーの性能を試すテストのようなものなのか、それとも軍からのドッキリサプライズなのか、状況からしてどちらもあり得ないのだが願わくばそうであって欲しい。しかしキャロルの声の様子からしてこれは良くない事態なのだろう。

 

『いいえ…!そのISはどの国にも所属されていない、データにもない不明のISです!』

 

 やっぱりそうだよな。言葉一つ発しない相手は完全にこちらに敵意剝き出しだ。そいつは首と肩が体化したセンサーレンズを剥き出しにした頭で俺を見てくる。そしてバカでかい腕をこちらに向けると腕についている砲口から赤い閃光を放ってきた。

 

「あぶねっ!?ビームて‥‥完全に殺る気満々じゃねえか!?」

『レックス、気をつけてください‼貴方を狙っています‼』

 

 言われなくても分かっている!一体何処の誰かは知らないがこいつは俺をここで殺すつもりだ。俺は後方に見える空母をチラリと見る。俺が狙いならあっちを標的にしないはず……

 

「キャロル、母さん達を連れてこっから離れろ‼俺が引き付けておく!」

 

『レックス!?いけません!今のそのISで戦っては危険です‼』

 

「俺まで逃げたらお前も母さん達も巻き込まれるだろ!誰かがこいつを止めなきゃならねえんだ‼」

 

 突然の非常事態なため応援は来そうにない。それに相手は戦闘機よりも性能が高いIS、対抗するには同じISしかいない。だったら動ける俺がやらなきゃいけないんだ。

 

『レック‥‥ザザッ‥‥いま…ザザッ‥‥電‥‥ザザッ‥‥逃げッ――—―』

 

「キャロル?おいキャロル!?」

 

 通信にノイズが響き、遂にはキャロルとの通信が切れてしまった。まさかこいつが通信妨害をしたのか?だったら尚更こいつをほっとくわけにはいかない。

 

 不明のISは再び俺に狙いを定めてビームを放つ。スレスレのところを躱し、一気に迫って蹴りを入れた。そいつは片腕で防ぎ後ずさりし、こちらを凝視する。

 今の蹴りはダメージにはなってないがいい挑発にはなったはずだ。

 

「狙いは俺だろ!だったらこっちにこい!」

 

 空母が狙われないように、空母から離れるように飛ぶ。そいつは身を翻してこっちへ追いかけてきた。良かった、これで母さん達に飛び火しないで済む。さあ問題はこっからだ。こいつをどうやって倒す?

 

 

「何か、何か武器になるようなもんはねえのか!?」

 

 必死に画面から今のクラウドブレイカーに搭載されている武器はないか探した。しかし、どのパーツにも武器になりそうなものは搭載されていなかった。

 

「くそったれ‼武器はねえのかよ!?」

 

 なんてこった、今のクラウドブレイカーには武器がない。じゃあ、どうやってこいつを倒せばいいんだ!?

 

 不明のISは容赦なく両腕からビームを乱射してくる。狙いは正確ではないが初めて見る光学兵器に俺は驚愕と困惑と焦りがごちゃ混ぜになりながらも必死にスレスレを躱す。戦う術もなければ防ぐ術もない。

 

 キャロルが助けを呼び、ナターシャかイーリスの誰かが助けに来てくれるまで時間を稼ぐか?いや、俺がこんな為体ではいつかエネルギー切れを起こして撃墜される。助けを待っていては間に合わない。じゃあどうすればいい‥‥!?

 

 畜生……避けてばかりじゃ、逃げてばかりじゃダメだ。こうなったら一か八かだ。武器がないのなら‥‥殴るしかねぇな‼

 

 相手のでかい腕よりも小さい腕と拳だが、今は自分の体のような物。きっと力一杯殴ればダメージになるはずだ―――‼

 

「うおおおおおっ‼」

 

 俺は気合いの雄叫びをともに、相手が乱射してくるビームを躱しながらスピードを上げて一気に迫る。ビームを掠め、痛みと熱さを感じるが俺は止まることなく肉薄する。

 

 そして力いっぱい溜め込んだ握り拳を相手の顔面へと思い切りぶん殴る。鈍い金属音が響き、顔面を思い切り殴られた不明のISは仰け反った。

 

「どうだっ………って、やっぱり痛いな畜生!」

 

 

 殴った拳がヒリヒリする。どんだけ頑丈なんだっての!相手にダメージが入ったことを願うしかしないなこれ。

 

 仰け反っていた不明のISはすぐに体勢を立て直す。俺が驚く暇さえも与えることなくそいつはバカでかい手で腕を掴み握りつぶそうとしてきた。

 

「あっ‥‥‼あがああああっ!?」

 

 相手は容赦なく俺の腕をメキメキと握り潰していく。まるでプレス機で片腕が潰されるような激痛だ。俺が激痛で声を上げている間にそいつは開いた片手で思い切りクラウドブレイカーの腹部へと拳を放ち殴り飛ばす。

 

「はあっ‥‥はあっ‥‥ああくそっ!そうだよな、あっちはマジで殺す気だんな‥‥‼」

 

 俺に休ませる間もなく、そいつは何度もビームを放ってきた。突っ立ってる場合じゃない痛みに耐えながらも避ける。

 背中に冷や汗が滝のように流れている。これは喧嘩じゃない、本気の戦いなんだ。ただ握りつぶされただけで片腕は損傷が激しく動かない。思った以上にダメージは深刻か。

 

「させるかよ‥‥親父が造ったISを壊されてたまるかよ‼」

 

 これは、クラウドブレイカーは、親父の願い。親父のやりたかった、成し遂げたかった願い。親父はその願いを俺に託したんだ。そしてこいつは俺に残された唯一の親父との思い出だ。

 

 こんな奴に、命をかけて守り抜いた親父の大事な証を消させたくはない。だからと言ってここで逃げたら、キャロルが、母さんが、妹が危ない。

 

 

 だけど今の状況で俺にこいつを倒す力も術がない――――じゃあ、どうすればいいんだ!?

 

 

 戦っては親父の遺したモノが消える。逃げたら母さん達が消える。どうしたらいいのか俺は焦りと混乱に呑まれていく。

 

 

 親父なら――――――父さんだったらどう乗り越えた?

 

 

 

『レックス――‼レックス‼聞こえますか!?』

 

 遮断されていた通信が回復したのか、キャロルが必死に悲痛な声を上げて俺の名を呼んだ。キャロルの声の他に緊急事態で焦る人達の声がざわざわと聞こえる。

 

「キャロル!通信が直ったのか!?」

 

『誰かが通信と空母のセキュリティを阻害してきましたが、直しました‼今貴方を助けにナターシャさん達が来てくれます、だから逃げて‼』

 

 ナターシャやイーリスが助けに来てくれる。キャロルの言葉に俺はすぐに従い、すぐにこの場から逃げたかった。だが、目の前の敵はそうはさせてくれなかった。

 

 そいつもキャロルの通信をキャッチしたのだろうか、顔は俺の方ではなくキャロル達のいる向こうの空母へと向いていた。

 

「おい…?まさか!?」

 

 俺の嫌な予感が当たったのか、そいつは砲口がついている両腕を空母へと向ける。そして肩部、両腕の砲口から赤い光がバチバチと電気を帯びながら光り出す。

 

 そいつは俺よりも空母にいるキャロル達が邪魔だと判断し、空母を破壊するつもりだ――――‼

 

「このっ………やらせるかよっ‼」

 

 俺は必死に空母へと飛ばす。それと同時にそいつは先ほど大きなビームを空母に向けて撃った。このままじゃ空母に直撃してキャロルと母さん達が危ない‼

 

 急げ、駆けろ、間に合え‼

 

 

 それだけを考えてクラウドブレイカーのスピードを上げていく。ビームを追い抜き、空母に当たる前に、俺はそのビームを受け止めた。

 

「ぐっ⁉こんのぉ……うおらあぁぁぁっ‼」

 

 痛みを、熱さを感じるよりも俺は叫んで、必死に叫んで空母に当たらせまいと全身をもってあいつの撃ったビームを受け止めた。微かに聞こえるキャロルの声が、母さんの声が掻き消すほど俺は叫んだ。

 

 全身に伝わる自分の体が焼けるような感覚‥‥ああ、これがSFやロボットものによくある敵機がビームに直撃して堕ちる感覚ってやつか……?

 

 あいつが撃ったビームを全部受け止め切れたのだろうか、体を包んだ赤い光は消え、光の中に包まれたかと思えば青空が見えた。

 なんだこりゃ……力が、落ちていく感覚が感じた瞬間に冷たい感覚が一気に伝わっていく。

 

 俺は海へと落ちたのか?いや……溺れる感じはしない。まさか爆発四散したのか?何が起こったのかわからない。ただただ茫然と立つことしかできなかった。

 

 すると次第に視界が薄暗くなっていき青空が段々と見えなくなっていく。これは……俺は死んだのか。

 

 あの不明のISはどうなったんだろうか?俺を始末できたのだから満足して消えてくれればいいが。いや、きっとナターシャさん達が駆けつけて倒してくれるはずだ。

 

「父さん―――ごめん、俺、何もできなかった」

 

 今感じるのは悔しさだ。俺は父さんの遺したISを、父さんの願いを、約束を、何一つ守ることができなかった。

 

 俺ではこいつに乗る資格もない。俺じゃ父さんの成し遂げたかったことを叶えることができないのか。ああ……きっと今頃、母さん泣いてるだろうな。母さん達を悲しませないでくれと言ってたのに、俺は約束を破ってしまった。

 

 見える世界は暗闇に包まれる。もう考えるのをやめようか‥‥どんどんと体が冷たくなる。俺は目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ックス‥‥――――レック‥‥――――レックス!

 

 

 

 

 

 

 何かが、誰かの声が聞こえる。なんだか懐かしい声だ。俺はゆっくりと目を開いた。

 何も見えない暗闇の中、小さな光がキラキラと光っているのが見えた。そして、俺の名を呼ぶその声は誰なのか、すぐに分かった。

 

 

「……親父……?」

 

 この声は親父だ。もしや俺はもうあの世に来てしまったのか?いや、体に暖かさが伝わる。俺はまだ生きている。キラキラと輝く光から父の声は段々とハッキリと聞こえてきた。

 

 

 

————レックス、最後まで諦めるな――――

 

 

 あの時、俺に言ってくれたあの言葉を、父さんは再び言ってくれた。そうだ、諦めちゃダメだ‥‥最後まで、こいつを、クラウドブレイカーを、父さんを信じなきゃいけないんだ。

 

 

———こいつを、この力を、お前の力を信じるんだ。信じれば自ずと道は拓ける‥‥だから手を伸ばせ、レックス‼―――

 

 

「父さん‥‥‼」

 

 俺は力いっぱいに、その光へと手を伸ばす。鈍く動くその手は光を掴んだ。暗闇で見えなかった視界が一気に白い光に包まれていく。

 

————レックス、お前に託す。頼んだぞ――――

 

 

 分かってるさ、父さん‥‥もう後戻りもできないこの運命と向き合う覚悟はもうできた。だから、ここでくたばってたまるか‼

 

 光の中に包まれ体に感じていた冷たい感覚は消えた。暗闇を抜けて一気に駆ける。そして眩しい程の光は消えて次第に当たりの景色が鮮明になっていった。

 

「こいつは‥‥!?」

 

 気づけば、自分の纏っている装甲が変化していた。先ほどまでの少し武骨な装甲が丸みが取れたようなデザインに、そして初期に搭載されていなかったメインブースターが後部にしっかり備わっている。

 

『レックス――‼レックス‼無事ですか!?』

 

 聞こえなかった通信が、キャロルの声がしっかりと聞こえてきた。

 

「キャロル‥‥これは……」

 

 今、自分の身に何が起きたのか、説明もつかない。簡潔に言えばその時不思議な事が起こったと言えばいいのだろうか。

 

『成功です‥‥‥‥遂に、形態移行(フォームシフト)に成功しました‼』

 

 言うなればIS自身が搭乗者に最適な形へと変わった。クラウドブレイカーは初めて、俺の専用機へと進化したのだ。これで、これでやっと戦える!

 

 急に復活して急に変化したことに不明のISは驚いているのだろうか、少しの間動きは止まっていたがすぐさま俺に向けてビームを乱射してきた。避けようとするが、体に痛みが走り動けずに直撃した。

 

「くそっ…‼変わっても自身の体にダメージ負ってりゃ意味ねえよなっ‼」

 

 今は体を酷使して動かなければいけない。俺は体に鞭打たせてクラウドブレイカーを飛ばす。メインブースターから勢いよくブースターを噴き、スピードを上げて飛んだ。

 

「初期の時よりも比じゃない速さだ‥‥!?」

 

 

 クラウドブレイカーは先ほど迄の状態よりも想像以上に速くなっていた。

 

 

 俺は今…空を駆けている

 

 

 相手を圧倒する程の速さか、相手のビームは当たらない。それよりも、このクラウドブレイカーに戦える武器は搭載されているのか。画面から武器を検索した。すると、一つだけ搭載されていた。

 

 

「あるのは………【月光】?」 

 

 それは折り畳みナイフのような形をした大型のブレードだった。今のところ、これしかないがないよりかはマシだ。すぐさま俺は動ける片腕でその大型のブレードを展開させる。

 

 こいつで決着をつける‥‥‼父さんの願いを、壊させはしない‥‥‼

 

 ブレードに力を込めた途端、ブレードが急に赤く光り出した。ブレードだけじゃない、ブースターから装甲の透き間から赤い粒子の様なものが噴出していた。突然の事で俺は何事かと驚く。

 

「おわっ!?なんだ!?」

 

 突如画面に映る『単一仕様能力』、そして瞬時に映る『天之叢雲』という文字と速まるエネルギーの減り。戸惑うが、要は一撃必殺のようなものでも発動したのか!?

 

「だったら……思い切りぶつけるしかないよな‼」

 

 俺はスピードを上げて不明のISへと迫っていった。相手はこちらに近づくよりも先に落とすと言わんばかりの勢いでビームを撃ち続けていく。

 

 装甲に直撃しようが、痛みを受けようが、俺は構わず、気にせずこれをぶつけようと迫っていく。

 

 

「こいつを―――くらいやがれえええっ!!」

 

 真紅に輝くブレードで思い切り斬りつけた。紅の剣閃が不明のISに直撃すると大きく開いた斬り傷からISの部品のようなものが飛び散り、センサーアイの光が消え海へと落ちていった。

 

 水飛沫を上げて沈んでいくと、反応が消えた。どうやら相手は完全に沈黙、不明のISを倒すことができたのだ。

 

「どうだ‥‥ざまあ……みやがれ―――――」

 

 ふつりと緊張の糸が切れると、俺の視界がブラックアウトしていった。どうやら力を使い果たしてしまったのだろう。俺も海へと落ちていった。

 

_____

 

 

 何も見えなかった暗闇から光が漏れる。意識が戻った俺は重たい瞼をゆっくりと開けていく。

 

「ん‥‥ここは、どこだ‥‥?」

 

 

 目を開ければ知らない天井、窓からは眩しい陽の光が射す。ここは一体何処なのか半身を起こす。よく見れば片足は包帯を巻かれ、片手はギブスがついている。

 

 

「レックス君‥‥‼よかった、目が覚めたのね」

 

 ふと優しい声が聞こえる。すぐに近くにナターシャさんが俺を心配そうに、そして安心して優しく微笑んでくれていた。

 

「ナターシャさん‥‥ここは…?」

 

「安心して、ここは軍の治療室よ」

 

 安心していいものかと少し疑問に思ったが、ナターシャさんがいるから大丈夫だろう。

 

「あの後、私達が駆けつけて気を失っているレックス君を助けたの。もう、こんなに無茶して怪我をするなんて、心配したんだからね?」

 

 ナターシャさんは軽く苦笑いして俺の頬をつつく。確かにこんなに怪我をしてナターシャさんだけでなく母さん達にも心配をかけさせてしまっているだろう。

 

「す、すみません‥‥でも、ああするしか考えれなくて‥‥」

「でも、じゃあないわ。誰かのために頑張ろうとしても、自分がケガしちゃ結局その誰かを心配させるだけなんだから。いい?一人で無理をしたらダメよ?」

 

 確かにナターシャさんの言う通りだ。沢山の人に迷惑をかけたのかもしれないな…

 

「けど…レックス君、よく頑張ったわ。この子も、貴方の力になりたいと答えてくれたのよ」

 

 ナターシャさんは優しく俺の手を握ってくれた。よく見れば、俺の腕に鈍色のブレスレットのような物がついていた。いわばこれがISの時機形態というやつか。

 

「ナターシャさん。俺、父さんに助けてもらったんです‥‥『最後まで諦めるな』って、叱咤してくれた」

 

 あの時の事を俺はしっかりと覚えている。父さんは最後まで俺の事を見ていてくれたんだろう。

 

「……たぶん、この子の中に貴方のお父さんの意思が残っているのかもしれないわね」

 

 普通ならばそんな馬鹿なと、笑うだろう。ナターシャさんは微笑んで俺の手を優しく撫でた。

 

「ISのコアにはね、人と同じように考えるAIがあると言われているわ。意思を持ち、思考して、搭乗者と一緒に成長していくの。私はこの子達が何を考えているのか、向き合う事がISを乗る中で大事な事だと考えているわ」

 

 人工知能とは違うものだろうか。もしそうなら、このクラウドブレイカーのコアの中に父さんの魂が宿っていたのかもしれない。

 

「最後まで不器用でお節介焼きなんて‥‥父さんらしいや。俺の父さん、なかなかの不器用な人でさ‥‥子供の頃、俺が野球したいって言ったらグローブを買うよりも庭の芝を刈ってまずは草野球からだ!なんて言うしさ。俺が熱で寝込んだ時はこの世の終わりみたいな顔して慌てふためいて、看病してくれた母さんの横で右往左往してたし」

 

 俺はナターシャさんに、覚えている限りの父さんとの思い出を話した。ナターシャさんは、嫌そうな顔一つもせず、俺の話に優しく微笑んで、頷いて、真剣に聞いてくれた。

 

「俺が星を見たいって言った時は、おもちゃの望遠鏡をプレゼントしてくれて『星を見に行こう』って言ったんだけどあいにくの雨で、父さん俺よりもかなりしょんぼりしてたな。今度晴れたら見に行こうて言ったけどあれっきりだったんだ‥‥それから―――それから‥‥あれ?」

 

 

 気づいたら、俺の目からポロポロと涙がこぼれていた。身体にじんと熱を帯びて、涙が止まらない。

 

 

「…おかしいな‥‥俺、泣く事じゃないのに……俺、父さんに…あれっきり話すことがなくて‥‥」

 

 そうだ。父さんとの思い出は自分が幼い時だけだ。これまでずっとが父を避けていたから、父さんの思い出がこれだけなんだ。

 

 すると、ナターシャさんは俺を抱きしめてくれた。優しく、温かく、ギュッと抱きしめた。

 

「レックス君――――誰かのために、家族のために、泣くことは悪い事じゃない。だから‥‥思い切り泣いていいのよ」

 

 

 

 その言葉に、俺は救われた。ずっとずっと胸の中に溜まっていたものがあふれ出るかのように、俺は声を上げて泣いた。涙を流して思い切り泣いた。

 

 

 

 

 俺は、後悔した。父さんとちゃんと向き合っておけばよかった。大事な人は失ってしまったらもう二度と戻ってこない。

 

 

 だから‥‥だから次こそは、二度と失わせはしない。俺はそう誓う。

 

____

 

 

「ナターシャさん、すみません‥‥」

 

「いいのよ、レックス君はよく頑張ったんだから」

 

 ナターシャさんは優しく笑って頭を撫でる。涙で服を濡らしてしまった事は本当に申し訳ない。

 

「これで落ち着いた?」

「はい‥‥!もう大丈夫です」

 

 もう後悔はしない、進み続ける覚悟は完了した。今度は俺が、誰かのために為さなければいけないんだ。

 

「そういえば‥‥不明のISは一体どうなったんですか…?」

 

 あの時襲って来た所属も不明のIS、俺が斬りつけてしまったのだが、あれからどうなったのか。ナターシャさんは頷いて少し困惑したように口を開く。

 

「あの後、軍で回収したのだけど‥‥あのIS、無人機だったの」

「無人機‥‥!?」

「回収して調べていると、人は乗っていない上にどの国にも所属していない未登録のコアが搭載されていたわ‥‥IS法では限られた数しかISは存在していないのに、誰かが秘密裏にこのISを開発したということなの」

 

 人が乗っていない、AI自身で動く無人のIS。一体、誰の仕業だったのだろうか。しかしながら、あの時は正当防衛であったとしても無人であったのは少し安心した。

 はっきりわかったことは、どこかの誰かがクラウドブレイカーの存在に気づき、それを消そうとしていた事だ。気っとこの先にもそんな刺客が現れるだろう。

 

「上等だ‥‥受けて立つさ」

 

 もしかしたら‥‥父さんを殺した犯人がわかるかもしれない。今は体を休ませ、次へと備えておこう。

 

 すると治療室の扉が開き、キャロルが入って来た。少し神妙な面持ちだったが俺を見ると急いで駆けよって来た。

 

「レックス!?大丈夫ですか、どこか痛みませんか!?」

「あ、ああ、大丈夫だ‥‥その、心配かけてすまなかったな」

 

「当たり前です!あんなに無茶して…それにお母様まで心配かけさせて!」

 

 やっぱり怒るよな。まあ当然だ。これは重く受け取っておこう。キャロルは怒っていたが、すぐにほっと安心したように微笑んだ。

 

「でも‥‥無事でよかった」

「ああ、後で母さん達にも謝っておくよ。ところで、さっき何か考え詰めていたようだが、何かあったのか?」

 

 あの様子じゃ、きっとグレイスがまた何かしたのだろう。クラウドブレイカーの進化、そして強襲してきた無人機を倒したのだ、これ以上隠しきれない。

 

「ええ‥‥レックス、貴方に無理をさせてしまうのだけど‥‥グレイスの独断で貴方にはこれから日本にあるIS学園に入学してもらうことになったの」

 

 やはりそうきたか‥‥いつかは来ると思ったがやはり早い。グレイスが世界中にこの事を知らせ、注目の的になるように仕組んできたのだろう。

 

「今のクラウドブレイカーは損傷レベルがD…今すぐ修理しなければなりません。この事はIS学園の関係者だけに知らせ、他には内密しておきます」

「そうか‥‥こいつにも無茶させたな」

 

 クラウドブレイカーにも迷惑をかけてしまったな。しかもこの怪我している体で入学することになるだろう。

 俺の場合は牛乳でも飲めば治るだろう。だがクラウドブレイカーの場合は少し時間がかかるかもしれない。

 

「しばし家族と別れちまうが……キャロル、俺はやるよ」

 

 ISには知らない事が多い。だから、今は沢山学ばなければいけない、身につけなければならない。学園に入学することは丁度いい機会だ。キャロルはすまなさそうに頷いた。

 

 

「IS動かせる男性は俺だけだし大変だろうが大丈夫だ」

 

「レックス、その事なのですが‥‥貴方には()()()2()()()()()()()()()()として入学してもらいます」」

 

 

 

 ‥‥ん?世界で二番目?少し聞きなれないことに俺は首を傾げた。

 

「キャ、キャロル?それってどういう事だ‥‥?」

 

「実は‥‥レイン、貴方が無人機と戦っていた間に起きたようです。日本で、『織斑一夏』という男性が‥‥ISを起動させた、と」

 

 

「――――はぁ⁉」

 

 

 ‥‥なんじゃそりゃ。というか誰だよ。

 

 

 

 

 

________

 

 

 

 

「ほほー……なかなかやるじゃーん♪」

 

 

 

 未完成の状態だから徹夜で適当にカスタマイズした無人機『ゴーレム』で瞬殺できるかとら……まさかの土壇場で覚醒するとは。

 

 

「最初は邪魔者は排除抹殺していっくんだけのハーレムルートにしようと思ったけどなぁー……」

 

 

 赤い粒子……まさかあの人、【星の火種】を完全させてたとはねぇ。またまた天災を出し抜くたぁやってくれるじゃねぇか。

 

 

「ン〜……面白くなってきた。合格だよ、レックス君!」

 

 

 君がこれから先、立ちはだかる壁をどう乗り越えていくのか見たくなってきた!

 

 

「ンフフフ〜♪君も束さんの台本に加えてあげよう!」

 

 

 君の答え、聞きたいから

 

 

 

 火種によって生まれたその炎、燃え尽きちゃダメだからね?

 

 





 ひとまずプロローグ終わり

 ようやく学園編に入れる……
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