ハーゲンダッツがたべたい
7、いざIS学園へ
この日、女性にしか扱えないISを起動させた男性が現れた。
その男の名前は織斑一夏。
高校受験の試験会場が何処か道に迷っていたところ、会場を間違えてその会場にあった起動前のISに触れて起動さたという。そのニュースは瞬く間に日本中、世界中へと広がっていった。世界で初めてISを使える男性という訳で世界中の誰しもが注目をした。
注目だけではなく『もしかしたらうちの国にもいるかもしれない』と思ったようで、どの国でも男性を対象とした検査が行われた。日本だけでなく世界の何処かにもう一人か二人いるかもしれないという期待と日本に後れを取るものかという対抗心を抱き血眼で探したようだが結局誰一人見つからなかった。
どうして彼だけISを動かせたのか、秘められた能力があるのか、メカニズムがどうなっているのか、彼を実験に使えば男性でもISを動かせるかもしれない、といった期待と嫉妬と興味の眼差しで織斑一夏を注目していたが、その数日後アメリカでISを二人目の男性のIS適性者が現れた。
アメリカのIS技術開発部門かつ秘密兵器開発部門である『クレスト・インダストリアル』の所長、グレイス・ホークが記者会見で発表した。男性でISの適正検査を行ったところ、前所長であった故マイケル・ロスチャイルドの息子レックス・ロスチャイルドがISの適正があると判明した、とグレイスは説明した。
日本に続き、アメリカで2人目の男性の適正者が現れたことに世界中は衝撃が走った。
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「あれから一月過ぎったってのにまだ取り上げられてるとか‥‥でっち上げにも甚だしいだろ、これ」
自宅のリビングにてゴシップ記事を読み終えた俺はため息をつく。2人目がこの国に現れたこと余計に注目が集まってしまった。
「仕方ありませんよレックス、これでも説得したんですから」
キャロルは苦笑いをする。しかし彼女のその上機嫌の様子からしてあのグレイスに一杯食わせることができた事にざまあみろと思っているようだ。
他国に先越されたという訳ですぐに発表するとグレイスが顔を真っ赤にして言い放ってきた。
こちらは所属不明の無人機のISに襲撃されてクラウドブレイカーは損傷している上に、世界中にクラウドブレイカーを公表するわけにはいかない。
流石に対抗してすぐに発表するのはまずいという事でキャロルやアルフ、更にはナターシャさんまでもがグレイスを説得させて落ち着かせたのであった。
すぐに公表しては怪しまれる。そこで父の研究とクラウドブレイカーの情報は伏せることを条件に、恐らく世界中で男性の適正者を探すために検査を行うであろうその時期に公表することにした。
なんとかこれで説得はできたが、短期間で2人目が現れたせいなのかアメリカが対抗するためにでっち上げの嘘をついたとか、エリア51で行われている最新兵器の開発をしているとか、誰かの陰謀論だとか、噂に尾ひれがついてこの報道は止むことは無かった。
「マスコミやメディアにはグレイスにでっち上げてもらったから何とかなったけど‥‥多少面倒な事になったなぁ」
メディアはいいとして世界中の科学バカ達がどうして男性でISを起動できたか、メカニズムを知る為に解剖までして判明したいと考えたり実験のモルモットにしようと手を伸ばしてくるだろう。
または男性のIS操縦者なぞいらんと憎しみいっぱいで襲い掛かってきたり殺しにやってきたりするとんでもない輩も現れるかもしれない。家族は保護対象、悪く言えば人質にされる可能性はある。
「レックス、安心してください。貴方の家族は私達が守ります」
「ま、国の諜報機関に睨まれるよりかは安心できそうかな‥‥」
肩を竦めてため息をこぼす。だがこれは自分が決めた道、迷わないで進まなければならない。
「しっかし、公表されたその翌日に送られてくるなんて用意周到すぎんだろ‥‥」
対応の早さには驚いたな。デスクに置かれている辞書よりも分厚い教科書をジト目で睨む。すぐ傍にはIS学園のパンフレットが。
世界中に2人目男性のIS適正者として公表されたその翌日に日本のIS学園から学園の入学手続きの書類と分厚い教科書の幾つかが日本のIS協会からの手紙と共に送られてきた。最初は罠かもしれないと疑う程驚かされた。
「最初はびびったが‥‥大丈夫だよな?」
「学園ではどの国どの企業にも干渉されません。信頼できるかと思いますよ。日本でのことはあちらの先生方が手助けしてくれるでしょう。ところで、支度はできましたか?もうそろそろ出ないと飛行機の時間には間に合いません」
「あ?もうそんな時間か。わーってるって」
キャロルに急かされ面倒ながらも支度を済ませる。この日は日本のIS学園に向かわなければならない。入学式はまだ数日前だがメディアに見つかる前に出ないとマスコミやメディアに引っかかり、質問攻めの渦に巻き込まれてフライトに間に合わなくなる。
面倒に巻き込まれるのが嫌、という理由もあるが他に理由もある。
「キャロル、クラウドブレイカーの修理改造はまだ終わらないのか?」
あの無人機の襲撃でクラウドブレイカーはかなりの損傷を負ってしまった。修理と更なる改造のためにかなりの時間を費やさなければならない。キャロルの申し訳なさそうな表情から察するに入学式には間に合いそうにないようだ。
「キャロル、気にすんな。完全に直るまで待つさ」
「‥‥申し訳ありません。損傷の修理とこれまでのデータと貴方に合う武器の開発に少し時間が」
「確か‥‥父さんはクラウドブレイカーの設計は別の所でやってたとか」
執事のアルフの話で、父は生前にクラウドブレイカーの設計の際にアメリカにあるIS製造会社の一つである企業と秘密裏に設計し、開発を行っていたと聞いた。
「えーと、何だっけか?父さんはアメリカだけじゃなくて他の企業も色々集めた……」
ISの開発第一世代時、世界中で様々な企業が我らが一番だと熾烈な開発競争が行われていた。第二、第三世代となるに連れて競争に敗れる企業が続出。その最中に父さんはその敗れた企業を集めて一つの開発企業を創り上げたという。
「はい、世界に点在する企業を渡り歩くことから渡り鳥名を借りた……『IS技術統合企業』通称『
「そっか‥‥」
しかし父さんはなんで今グレイスが仕切っているクレスト・インダストリアルで開発しなかったんだろうか……グレイスにあまり関わせたくないのはよく分かるけど。
「レイン、何かリクエストとかありますか?搭乗者として何か意見が欲しいのですが」
リクエストかぁ、少し考えたのだが幾分疎いもので中々思いつかなかった。寧ろキャロルに任せた方がいいような気がしたが、これだけは譲れない物が一つだけあった。
「じゃあ‥‥カラーリングは赤にしてくれ」
「赤ですか?」
「ああ。俺も父さんも好きな色だからな」
「‥‥かしこまりました。って、レックス!急がないと本当にフライトに間に合いませんよ!?」
母さん達が待っている。急がなければ、キャロルにプンスカと急かされながらそそくさと荷物をまとめた。
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怒涛の勢いで空港に辿りいた。これから乗るフライトには間に合ったが……キャロルのドライブテクには度肝を抜かれた。速すぎるのなんの……あ、思い出したら鳥肌が立った。ワスレヨウ
「あのな、まだ怪我は完治してねえんだぞ?怪我人を急かすなよ」
「レックスなら大丈夫です。お父様も怪我した時は牛乳を飲んでその次の日は治ってましたから」
「だからあれはおかしいってば」
まあ俺もあれから毎日牛乳を飲んでたら傷があっという間に治った。遺伝とは恐ろしいや。
ギブスをつけていない方の腕で松葉杖を突きながら大きなリュックを背負いゲートへと向かう。ふとこちらに手を振っている人達の姿が見えた。ゲートの前には母さんと妹のアンリ、そして執事のアルフがいた。
「母さん、アンリ!ごめん、ちょっと遅くなった」
「レックス、やっと来たわね。中々来ないから寝坊でもしちゃったのかと思ったじゃないの!」
「母さん大丈夫だよ。お兄ちゃんがおっちょこちょいでもキャロルさんがいるから」
「少しは怪我人を気遣って欲しいなー‥‥」
いつもの雑な扱いには少しガックリと来たがそれでも変わらない家族のやり取りに嬉しさを感じた。
「レックス、IS学園は女の子が沢山いるけど手を出したり、泣かしたりしちゃダメよ?」
「わかってるさ」
「忘れ物はない?教科書は持った?着る物はちゃんとある?歯ブラシは?」
「か、母さん?」
「困ったことがあったらちゃんと電話するのよ?えーとそれから」
「母さん、大丈夫だから!心配しすぎだって」
焦りながらずいずいと迫ってくる母を宥める。母ははっとして苦笑いをしながらはにかむ。
「レックスなら大丈夫よね‥‥ちょっと遠い所に行くから心配しちゃって‥‥」
「大丈夫だよ。夏休みとか長い休みは帰ってくるからさ」
「‥‥あまり無茶しちゃダメよ?貴方も父さんと似て少し無理するところがあるんだから」
「ああ、大丈夫。ああ、アンリ、俺がいない間母さんを頼んだぞ?」
「お兄ちゃんこそ。あっちで女の子に囲まれて鼻の下を伸ばさないようにね!」
「こいつぅ、言うようになったなぁ〜」
これなら母さん達は大丈夫だ。自分が遠い所に行くから不安になっているだろうと思ったが、家族ってこんなにも温かい。母さん、アンリ、俺の我儘に付き合ってくれてありがとう。和気あいあいと話しているところアルフがポンと肩を軽く叩いた。
「レックス様、そろそろお時間です‥‥」
「そっか、もう行かなきゃな。キャロル、アルフ、クラウドブレイカーを頼んだ」
「お任せください。修理と改造が終わればすぐにお届け致します」
「レックス様もお気を付けて」
キャロルとアルフに任せておけばクラウドブレイカーもすぐに修理が終え、更なる改造も仕上がるだろう。話によるとおおよそ80%も完了しているようで、そんなに時間はかからないとみた。
「それじゃ母さん、アンリ‥‥行ってきます」
IS学園には3年間、ISの勉強をしなければならない。知識と技術を習得し卒業後は技師、軍の教官、警備会社等々道はあるようだ。今の俺は力をつけなければならない。
「レックス‼行ってらっしゃい‼」
ゲートを通り抜けた時に振り向くと、母が明るい笑顔で手を振っていた。顔は笑顔だが目は少し涙ぐんでいる。息子の門出に泣くまいと、必死に涙をこらえて笑顔で見送ってくれていた。アンリも母と同じように少し涙目ながらも笑って手を振ってくれている。
俺も目頭が熱くなって少し泣きそうになったけど、笑顔で返した。しばしの別れだが、必ず戻ってくる。
____
アメリカから日本の東京までフライトで14時間程。入国審査を終えて入国ゲートを抜けるとそこからもう見知らぬ土地。
「ここが日本、か‥‥」
日本には一度だけ言った事はあるがそれは俺が5歳の頃か。家族で旅行に来たときだけ。日本料理の『寿司』とやらが美味しかったこと以外にはあまり記憶にない。
人混みの多さはアメリカと変わりの無い。だがここの空港はあまりにも広く少し迷子になりそうだ。ここで学園の先生が迎えに来てくれるらしいのだが、探したほうがいいのだろうか‥‥
「レックス・ロスチャイルドだな?」
人混みの中、急に尋ねられてドキッとしたが声を掛けてきた人物を見てホッと胸をなでおろす。黒いスーツの凛としたクールな黒髪の長身の女性。この人が俺に手紙と入学するにあたっての教材一式を送って来た人だ。
「急に声を掛けられてビックリしましたよ。えっと‥‥」
「すまないな、私が織斑千冬だ」
織斑千冬と名乗った女性は苦笑いて握手を交わした。『織斑』と聞いてハッと気づく。日本でISを起動させた男性の名前は『織斑一夏』。ということはこの人は‥‥
「も、もしかして…織斑さんって…」
「ああ、織斑一夏は私の弟だ」
なんという偶然なのだろうか。彼女は元日本代表のIS操縦者であり、第1回IS世界大会『モンド・グロッソ』で優勝し、公式戦は全勝無敗という驚異の記録を持った世界最強といわれている。その彼女の弟がISを動かしたとなるとこれは一大事だ。
「さて、ロスチャイルド。ここで長居するのもなんだ、早速学園へ向かうとしよう」
「は、はい…!」
世界最強と恐れられている彼女だが、今はIS学園の教員をやっているという。クールで凛としている様子と裏腹にどこか鬼教官を漂わせる威厳あるオーラ。よくドラマや映画で見る軍校の鬼教官を思わせるようだが厳しくも正しく指導してくれる良き先生に違いない。
「ところで、その怪我はどうしたんだ?」
「え!?あ、あーと‥‥派手に転んじゃいまして」
「‥‥そうか。ISに乗っての訓練はまだ先だが、それまでに治しておけ」
「い、イエッサー‼」
「普通に返事をしろ。私はお前の教官ではないぞ?」
所属不明の無人機の襲われた、と言いたいが、これはあくまで秘密にしている。織斑先生はじっと見つめていたがあまり追及しなかったので安心した。
織斑先生の車に乗って学園へと向うことになったのだが、運転してから長い時間ここまで一言も会話せず沈黙が流れている。話しかけにくい、という訳ではないのだが‥‥なんというか気まずい。
「あ、あのー‥‥」
「なんだ?」
「織斑教官…じゃなかった、織斑先生は弟さんがISを動かしたと知って驚きましたか?」
突然の質問に織斑先生は少し目を丸くしてちらりと横目でこちらを見てきた。すこし無言のまま考えているようだ。
「‥‥驚いたさ。まさかあいつがIS操縦者になるとはな」
「や、やっぱり家族として心配、ですよね?」
この時、織斑先生はアクセルを踏んで車のスピードを上げた。少し気に障るような事を言ったかもと焦ったが、ある日突然たった身内の弟が一人の男性として女性にしか扱えないISの世界に投げ込まるんだ、家族の誰しもが心配するはずだ。
「‥‥確かに、心配はする。あいつは抜けてる所が多いからな。私から見てあいつはまだまだ半人前、いやそれ以下だ。どこか一人で無茶をするかもしれないと気になるところもある‥‥」
織斑先生は車を停める。どうやら目的地に到着したようだ。
「だが、弱音ばかりはいている場合ではないぞ?行動を起こさねば何も変わらん」
織斑先生は苦笑いして俺の質問に答えた。心配ばかりだけじゃ何も変わらない。どうしたらいいか、考えて動かなければならないのだ。
「入学式は明日。寮の部屋割りは当日に伝える。今日はすまないが教員の空き室で一夜過ごしてくれ」
男子も入学することになったんだ、寮の部屋の配置も慎重に考えてなければ色々とまずい気がする。うんまずい気がする。
「ロスチャイルド、この学園は大変だぞ?やっていけるか?」
織斑先生はふっと笑って尋ねた。確かにこの学園は女子ばかり。明日IS操縦者として入学する男2人にとって天国となるか地獄となるか、恐らく地獄になるであろうが愚問だ。
「その覚悟でここまで来たんですから。上等、ですよ」
俺は色々と学ばなけばならない。力をつけなければならない。そんなことで挫けるわけにはいかないのだ。
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「‥‥‥」
昨日、織斑先生にああは言ったのだが‥‥もう一度辺りを見回す。
広い教室に、囲まれるように左隣も前の席も後ろの席も、座っているのは女子ばかり。
同じ制服を着た女の子がじっと、じーーーーーっとこちらを見つめてきている。
「‥‥」
きっと右隣に座っている
(やばい!!めっちゃ見られてる!?)
物珍しさで見ているのか、汚物を見ている眼差しなのか、それとも違う考えで見ているのか、考えが分からないのでかなり怖い。
本当にやっていけるのか‥‥心配になってきたよ‥‥
メインヒロインだけでなくのほほんさんとか夜竹ちゃんとか他の子もかわいいと思うの