ダークライは出ません
なんというプレッシャー……!ここまで締め付けられるような感覚は初めてだ。後ろも左も正面も女子ばかり。釘を刺すような鋭い視線がじっと自分と右隣の席にいる男子を凝視してくる。
それも当然、ここはIS女性のみが扱えるISの操縦者や技師としてイロハを学んで技術を身につけるための学園。Iそんな代物を扱う男性が現れて、しかもこの学園に入学することになったというのだからこんなにも注目されるものも仕方ないなよな。
でもなぁ、ここまでじーーーーっと見られていると落ち着かない。以前まで通っていた学校とは違う雰囲気だからか?居心地がむずがゆさと緊張感が張り詰める。
いやいや考えすぎだ。IS学園も普通の学校に変わりないはず。まずは自己紹介で雰囲気を和らげクラスの皆と話し合って仲良くしていけばきっと大丈夫だ。
前の学校ではヤンチャしすぎたからなぁ。よし、この学園、このクラスでは皆仲良くやっていきたい。おっ、これを話せば自己紹介は問題ないな!よし!
しかし俺の期待は裏切られる。
「えー…ええっと、織斑一夏です。よろしくお願いします…………以上です!!」
あっという間に終わる自己紹介、ずっこける女子生徒達、そして期待の眼差しを俺に向ける生徒達……この野郎、やりやがった。俺のハードルを走り高跳びのバー並みに高々と上げやがった!!
おおおちおちおちち落ち着け俺!まだ大丈夫のはずだ!あいうえお順なら俺は最後らへんだ。もっとまともな自己紹介を考える時間はある!
「馬鹿者、まともに挨拶もできないのか?」
自己紹介を一瞬に終わらせた彼に出席簿でチョプする先生……昨日学園を案内してくれた織斑先生だ。
織斑先生の姿を見るやいなや教室に響く生徒達による歓喜感激の声。歯止めが効かない生徒達にどうすればいいのかオロオロする副担任の山田麻耶先生。『千冬姉ぇっ!?』と言った彼に再び出席簿チョプする織斑先生。そしてクラスの自己紹介の最中なのにSHRの終わりを告げるチャイム。
「さあSHRは終わりだ。諸君らにはISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後は実習だが、基礎動作を半月で体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ」
鬼教官並みに告げる織斑先生によりSHRは終了してしまった……
あ、あれぇ!?自己紹介しないまま終わっちゃったよ!?
「お、俺……やっていけるかなぁ……」
故郷にいる母さん、アンリ、キャロル……IS学園は思った以上にカオスだったよ……
____
1時間目の授業で山田先生がISについての軽い解説とこの学園の説明を始めた。このIS学園は世界唯一ISの操縦者を教育する教育機関。日本やアメリカは勿論、世界中から操縦者になる為にこの学園に入学している。主に女子しかいないこの学園に野郎が入学してしまったが果たして本当に3年間やっていけるのだろうか。俺は再び授業が終わったらどうするか考え事に集中した。
授業が終わったら気分転換でとりあえず外へ行こうと思っていたがどうやらその考えは浅はかだったようだ。その直後、一目男子を見ようと教室を覗く女子達で廊下はうまっていた。
何度もチラ見するが明らかに俺と隣の男子をまじまじと凝視している。そしてざわざわ、きゃあきゃあとこちらを見ながら話す少し騒がしい声が聞こえてくる。
『あの二人が唯一ISを動かせる男性ね!』
『二人ともカッコ良いいわね!』
『爽やか系とワイルド系ね!素敵!』
『どうする?今のうちにメアド交換する?』
うわぁ……出たらダメなヤツだコレ。
立ち上がっていた俺はスッと静かに座る。まさかこれが毎日続くわけじゃないだろうな?俺は深くため息をついて自己紹介の時に織斑先生のげんこつをくらってうずくまっていた俺と同じようにグロッキーな表情になっている彼に声を掛けた。
「お互い大変だなこれ‥‥」
隣の席の彼は俺に向けて苦笑いすると、同じ男子がいてくれて良かったのか助かったと言わんばかりに明るい笑顔を見せた。
「ほんと俺だけなんじゃないかと不安だったんだけど、同じクラスで助かったよ」
「違いないや。俺もどうなるか焦ったさ」
自分も同じ境遇だったら間違いなく彼と同じように不安に押しつぶされて落ち着けなかっただろう。同士よ、気持ちはよーく分かる。
「レックス・ロスチャイルドだ。レックスって呼んでくれ」
「俺は織斑一夏。よろしくな!一夏でいいぜ!」
織斑一夏。この一年一組の担任である織斑千冬の弟。良くいえば真っ直ぐで情熱的な雰囲気があり、悪くいえばどこか抜けているような雰囲気がある。だが唯一この学園にいる男子だ。
「まずはこのクラスに馴染めるようお互い頑張っていこうな」
「ああ!まずはクラスの皆と仲良くやっていかないと。頑張ろうぜ、レックス」
俺達はニッと笑って握手を交わす。その光景に女子達が『おぉ…』と感嘆の声を漏らしていた。『これが男の友情…!』とか『どっちが攻めか受けか』とか『濡れるっ』とか何か色々とおかしいとツッコミを入れたかったがとりあえず聞かなかったことにした。
「ところでレックス、その怪我どうしたんだ?」
「あー‥‥うん……道路に突っ立ってる猫を助けようとしたら派手に転んでトラックに轢かれた」
「こ、転んで轢かれた!?大丈夫なのか!?」
「だ、大丈夫だ。牛乳飲んだらどうにかなる」
「マジか……困ったことがあったら遠慮なく言ってくれ。力になるぞ」
一夏、めっちゃ優しい奴だな……だけど所属不明の無人機型のISの襲撃をくらったとは言えない。それに少々罪悪感が。未だにギブスと松葉杖の状態だが今朝牛乳飲んだらなんだか調子が良くなってきているような気がしてきてるからなぁ……
「ちょっといいか‥‥?」
さてこれから一夏とどのような事を話そうかと乗り出したところに黒髪の長いポニーテールをした凛とした雰囲気の女の子が声を掛けてきた。俺はどちら様かと不思議そうに首を傾げるが一夏は更に嬉しそうな顔をしていた。
「箒、久しぶりだな!六年ぶりか?」
「あ、ああ…」
その女の子とは何年ぶりかの再会の様子で一夏は喜びの声を上げていたが、一方の女子は照れ隠しなのだろうかしかめっ面でそっぽを向いていた。
「一夏、彼女とは知り合いなのか?」
「ああ。彼女は篠ノ之箒。幼馴染なんだ」
篠ノ之と聞いて俺は目を丸くした。篠ノ之といえばあのISを開発した篠ノ之束と聞くが、もしかして彼女は篠ノ之束の妹ということか。そんな博士の妹と幼馴染とは、世界というのは意外と狭いものなのか。
「レックス・ロスチャイルドだ。よろしく」
「ああ‥‥」
俺は握手を交わそうとしたが、篠ノ之さんはしかめっ面のまま握手をしようとしなかった。緊張しているのかそれとも嫌っているのかと考えたが、篠ノ之さんはさっきから一夏をまじまじと見つめている。一夏とは幼馴染の仲と聞いてすぐにピンときた。
「一夏、篠ノ之さんはお前と話したい事が山程あるらしい。二人っきりで話して来いよ」
「え?レックス、けど‥‥」
「幼馴染なんだろ?折角の仲なんだ、幼馴染は大事にしねえと」
俺はポンと一夏の背を叩く。いきなり二人きりになる状況ができて驚いていたが頬をわずかに赤らめる篠ノ之さんを見て全てを察する。彼女は一夏にホの字だ。
俺に押されて一夏は席を立ち、篠ノ之さんは一夏の腕を掴んで廊下へと出ようとする。その最中篠ノ之さんがチラリと俺の方へ顔を向けると一夏と二人きりで話せることに嬉しいのか軽く微笑んでいた。
「すまないロスチャイルド、感謝する」
軽く会釈をして篠ノ之さんは一夏を連れて教室を出て行った。しかし女子ばかりの学園に入学していきなり幼馴染に再会するとかこれは偶然なのだろうか。出来過ぎている偶然にいささか疑問に感じていたが今はそれを考えている場合ではない。
織斑一夏が幼馴染の篠ノ之さんに先越されて話しかけるタイミングを逃してしまった女子達は残念そうにしていたが教室に残された俺の方へと標的を変えた。その眼は待ってましたと言わんばかりに煌々と輝いている。全てを察した俺はもう天を仰ぐことしかできなかった。
(ふ‥‥わかってるさ、もうどうにでもなーれ☆)
その直後、俺は滅茶苦茶質問攻めされた
____
「一夏、お前あの参考書を間違えて捨てるとかある意味天才か?」
「レ、レックス……もうその事は忘れてくれ‥‥千冬姉すっげえ怖かったから」
休憩時間の間、俺は参考書と教科書を見せながら一夏に今日の授業のことを教えていた。
事の顛末は最初の授業に遡る。山田先生が教科書よりも物凄く分かりやすく教えてくれていたのに一夏は全部分からないと言った。
座学は覚える項目が多い。そのため入学前に予習しなければならない。しかし本人曰く入学前に必読と書かれていた分厚い参考書を電話帳と間違えて捨ててしまったとのこと。お前まじか。
その直後に織斑先生の出席簿チョップをくらい、再発行するから一週間以内に全部覚えろという沙汰をくらった。
一週間以内というのは流石に厳しいのでは?と助け船を出し、俺に参考書と教科書を見せて教えてもらい一週間以内に全部覚えろと少し軽い沙汰になった。
「レックス、助かった‥‥俺だけだったらこんなに進めれなかったかも」
「後でジュースな。しっかし、物覚えははやいよな」
参考書を捨てたというおっかなびっくりな事をした一夏だが飲み込み早い。一つ一つ丁寧に教えて行けばすぐに理解する。やはり織斑先生の弟と言うべきなのだろうか。この調子なら3日で全部理解するのではないだろうか。やっぱり後でジュースよりも御飯を奢ってもらおう。
「ちょっとよろしくて?」
「へ?」
「む?」
またしても俺達に話しかける声が。ロングスカートの制服を着た長い金髪で碧眼の女の子だ。明らかにプライドの高いお嬢様らしい恰好の彼女を見て、納得する。これは絶対に何か食って掛かってくるやつだ。
案の定、一夏の生返事にプライドの高そうなお嬢様は額にしわを寄せて憤然とした態度をとる。
「まあ‼何ですのそのお返事!私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度という物があるのではないかしら?」
思っていた通りこのお嬢様はかなりのプライドはお高い性格をしている。そして、女性しか扱えないISを動かした
「悪かったな。俺はレックス・ロスチャイルド、そんでこっちが織斑一夏だ。初対面なんだからそこら辺は大まかに見てくれ」
「ふん‥‥まあ仕方ありませんわね。殿方がこのイギリスの代表候補生にして入試首席のセシリア・オルコットをご存知でないなんて、聞いて呆れますわ」
代表候補生、国家代表のIS操縦者として選出される操縦者の事だ。代表に選出されれば世界大会に出場できるうえに国の顔にもなる。代表候補生になるだけでもそれ相応の力量が必要なのだ。つまり、セシリア・オルコットは候補生としてのそれなりの腕前があると言っても過言ではない。
「代表候補生か‥‥あんた、かなり強いんだな」
「言い方は野蛮ですがわかればよろしいのですわ。まあ、殿方と私とでは天と地の差がありすぎて分からないでしょうが」
自分がどういった生徒なのか理解してくれたことに感心したのかセシリア・オルコットはフンと鼻で笑って頷く。少し気には障るが、このタイプは変に気を逆撫でるとヒステリックに怒るタイプだ。ここは穏便に済ましておこう……
「なあレックス、代表候補生ってなんだ?」
一夏の一言にセシリア・オルコットを含め聞き耳を立てていた女子達が盛大にずっこけた。一夏よ、お前は天然か。
「し、信じられませんわ‼常識ですわよ常識‼」
「そう怒るなって。こいつ参考書捨てちゃったんだから知らないもんは知らん。一夏、2ページ捲った所に書いてあるからそこを読め」
「おお本当だ!代表候補生について書かれてある!なるほどなるほど‥‥つまりセシリアは偉いんだな!」
「そう偉い!だから早く覚えような!謝ろうな!オルコットの奴もうメッチャ怒ってるから‼」
「でもレックス、代表候補生ってなんであるんだ?」
「そこはもうちょっと読んだ先にあるからそのうちな!オルコットの奴無視されたことに激怒してっから‼」
「ふむふむ…それでレックス、この項目の意味がよく分からないんだが‥‥」
「ちょっと‼私を無視するなんてどういうつもりなの!?」
一夏は偶発的に人の気を逆撫でるのが得意のようだ。しかも悪気の無いのだから余計に厄介。いつか刺されるんじゃないかこいつ……
悉く俺達にスルーされたセシリア・オルコットは憤然として猛抗議しようとするがチャイムが鳴り、言いたい事が言えなかったことに苛立ちながらも続きはまた改めてと席へと戻っていった。
これまた突っかかってくるだろうなぁ……少し面倒だ。
___
次の授業は山田先生に変わって織斑先生が教壇に立って行われた。教鞭をふるうは元世界大会の覇者であるせいか生徒もより真剣な面持ちで授業を聞き、山田先生はノートを手に持って時には板書していた。
「さて次は実践で使用する各武器種の特徴だが‥‥ああ、その前に再来週に行われるクラス対抗戦でる代表者を決めなくてはな」
ふと思い出したかのように織斑先生はクラス対抗戦とクラスの代表について話を進めていく。クラスの代表とはいわば普通の学校でいうクラス委員長みたいなもののようだ。そしてクラス対抗戦は入学時点での各クラスの実力推移を決めるものとのこと。
「今の時点ではたいした差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はできないからそのつもりでいろ」
確かに今はまだスタートラインで一歩進んだ程度だが、実力そして努力次第で差は開いていく。クラスの顔を務めるという物だから生半可な覚悟でクラスの代表なるわけにはいかない。クラスの代表に誰がなるか生徒達はざわつく。やはりここはよく話し合って決めるべきだろう。
「はい!私は織斑君を推薦します!」
‥‥はい?クラスの女子が手を挙げて一夏を推薦し始めた。それを皮切りに他の女子達も一斉に手を挙げていく。
「賛成!それが良いと思います!」
「え!?お、俺!?」
イヤイヤイヤ!?もう少し考えるべきじゃないのか!?まわりは『彼ならきっとなんとかしてくれる』という眼差しで一夏を見つめてくる。そしてつい立ち上がってしまった一夏は俺に助けを求めるかのように見つめてくる。
「じゃあ‥‥私はレックス君を推薦するわ!」
「いいわね賛成!」
「へ!?」
待てい。じゃあ、ってどいうつもりだおい。というか一応怪我人だぞこちとら。いや牛乳飲んだらなんだか治ってきているような気がするけど。というか織斑先生も『いい考えだ』みたいに納得しちゃダメでしょ。これはあまりにも無理矢理すぎる推薦じゃないか!?
本人の意見も聞かなければいけない。一夏に助け舟を出そうとした時、バンとオルコットが机を叩いて立ち上がった。
「待ってください!納得いきませんわ‼」
ほら言わんこっちゃない。勝手すぎる推薦にオルコットは再び憤然として一夏を睨み付けて指をさす。
「そのような選出は認めませんわ‼大体、男がクラス代表だなんて恥晒しですわ‼この私に屈辱を一年間味わえと!?」
言いたい事はごもっともだが、セシリアは男を毛嫌いしているようでさらに熱を上げて一夏を睨んで猛抗議を続けていく。
「実力を考えれば私が選ばれるはず…なのに物珍しさで極東の猿にされては困ります‼だいたい、文化も後進的なこの東国の島国へISの技術を学びにわざわざ来たというのに、私にとっては苦痛ですわ‼」
……ん?一夏への猛抗議のはずが路線がずれているような気がする。というか熱が上がり過ぎて国辱をし始めたセシリアは周りの女子が睨んでいることすらも気づかないまま文句を言い続けていく。
い、いかんクラスの雰囲気が悪くなっている。ここはセシリアを落ち着かせなくては!
「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」
セシリアの文句に一夏はカチンときていたようで口を滑らした。一夏のやつ怒れる火山に爆弾を投げ込みやがった!!
というかそれは偏見ではないか?フィッシュアンドチップスはうまいぞ。ハギスは‥‥人によるけど。案の定国辱による国辱返しをされたセシリアは更に顔を真っ赤にして一夏を睨んだ。
「あ、あ、あなたねえ‼祖国を侮辱してますの!?」
いやさっきあんたも人の国を侮辱してましたけど?お互い睨み合っておりクラス内の雰囲気も最悪だ。
前の学校では喧嘩ばかりで本来の学校とはどんなものかよく分からない。折角新しい学園生活をスタートしたばかりなんだ。喧騒な面倒事はもう二度とごめんだ。だからここを楽しいものにしていきたい。
ならば、止めるしかないな!
「ストップ!二人共言い過ぎだ」
互いを睨みつける両者の間に割り込むように二人を落ち着かせる。ヒートアップしているせいか突然の割り込みに一夏とオルコットは俺を睨んだ。
「だけどレックス…‼」
「一夏、頭ごなしに侮辱されて頭に来るのはよく分かる。けどな、お前オルコットの立場を考えてるか?」
「え‥‥?」
急に尋ねられて一夏はキョトンと戸惑う。
「国の代表候補生ってのは、生半可な腕じゃ決まるもんじゃないし最初から決まるもんじゃない。候補生になりたい奴は沢山いる。その中で厳しい訓練や試験を乗り越えて、国の顔を背負うプレッシャーにも耐えて競争し、勝ち抜いた1人が得られるものだ。だけどな、成績は悪けりゃすぐにその称号は捨てられてしまうんだ」
クラウドブレイカーの訓練の最中にナターシャさんとイーリスさんが代表候補生について教えてくれた。代表候補生というのは確かにエリートだが、簡単になれるものではない狭き門なのだと。
「その看板を捨てられないように必死に期待に応えなきゃなんねえし、腕も磨かないといけない。オルコットもその一人だ。覚悟とプレッシャーを背負っていざ学ぼうとしているところを物珍しさに男がクラス代表に勝手に選ばれたら、己のプライドが傷つけられるもんだ」
「そうなのか‥‥」
一夏は納得しようとしているがどう答えたらいいのか戸惑っていた。こればかりは難しいよな。
「一夏、自分の大事な家族を馬鹿にされたら怒るだろ?」
「そりゃ当然だ‼千冬姉を馬鹿にする奴は許さねえ‼」
「今、セシリアの傷つけられたプライドもそれと似たもんだ」
ようやく納得したようで一夏ははっとして驚き、上がっていた熱もだんだんと下がっていった。
「確かに男のIS操縦者は珍しいし注目の的になる。だけど他の国から来た生徒もいる。その人たちの立場を考えてもうちょっと話し合って決めたらどうだろうか?」
周りに言い聞かせながら次にオルコットの方へ視線を向ける。オルコットは訝しげに目を細めて腕を組んでじっと見つめている。
「‥‥あなたに助けられる義理はありませんわ」
「それは百も承知だ。でもな、国の代表候補生ならもう少し自分の言っている事に責任を感じたらどうなんだ?」
「なっ!?貴方、どっちの味方ですの!?」
「どっちでもない。それでオルコット、ISを最初に開発した人の出身国はどこか分かってるか?」
「……っ!」
答えられない、いや答えにくいか。自分が言い過ぎだ事には気付いた。
「その国は後進的か?それに一夏を含めてこのクラスのほとんどが東の島国出身だ。候補生なら荒い発言は少し控えた方がいいんじゃないか?」
「ぐぬぬ…!」
こちらは怒りが収まらないようで顔を真っ赤にして睨んできた。こ、怖いなぁ…落ち着いてほしいなぁ……
「お、お互い納得してないならさ……ISの学園なんだからISで決めたらどうかなぁ…?」
さりげなーく提案を出すと一夏とオルコットはその手があったかと言わんばかりに目を合わせた。
「いいですわね…!織斑一夏さん、貴方に決闘を申し込みますわ!」
「おう、いいぜ。受けて立とうじゃないか!」
二人は闘志を燃やして睨み合う。クラスの皆も納得してくれたようで、少しはクラスの雰囲気は良くなっただろうな。
「織斑くんとオルコットさんの喧嘩を上手く収めた……」
「なんだかレックスくん、ママみたい」
「おかんだ……おかんがいる!」
「「「「ママだ」」」」
「誰がママだ!?」
なんでそうなるんだ……まあひとまずクラスの代表は一夏かオルコットか、上手く丸めれたからいいか。
「―――それから貴方にも決闘を申し込みますわ!」
「……………………what?」
え、俺!?何故だ!?
「さんざん言っておいて見逃すとお思いで?この屈辱、倍に返してあげますわ!」
「いや待て、こっちは一応怪我人なんだが!?」
ふつう決闘申し込むかなぁ!?折角丸く収まると思ったのになんで飛び火するかなぁ!?
「俺もレックスと戦ってみたいぜ!」
「一夏、話聞いてたか!?」
お前は火にガソリンを撒き散らすな!!
「ふむ、話はまとまったようだな。それでは織斑とオルコット、ロスチャイルド、お前達はクラスの代表を決める為一週間後の月曜、第三アリーナで勝負を行ってもらう」
織斑先生!?話はまとまっておりませんが!?ていうかフォローしてくれませんか!?
「見てなさい?ぐうの音も出ない程にコテンパンに差し上げますわ‼」
「ああ、望むところだ‼」
「いやだから「両者ともそれぞれ用意しておくように‥‥では授業を続ける。席につけ」話を……聞いて……!!」
パンと織斑先生が手を打って話を締めた。一夏はやる気まんまんで闘志を漲らせ、セシリアは余裕と言わんばかりに優雅に席についた。俺はどうしてこうなったと遠くを見つめて座ることしかできなかった。
もうどうにでもなーれ
この後山田先生が(一応)怪我人だから無理させるのはどうか、と鶴の一声で決闘は免れました。
山田先生、貴女は女神だ……
山田先生もかわいい