遊戯王DM 正午の星座 作:オプション
「XZ—キャタピラー・キャノンの効果! 手札1枚を捨て、相手が伏せているマジックかトラップを1枚破壊する!」
「ああっ! ミラーフォースが……!」
「バトル! 地雷蜘蛛を攻撃! コストにしたビック・バイパーが攻撃宣言と共に復帰し、味方の攻撃力を底上げする!」
「ば、馬鹿な……俺のレアカードデッキが……」
「人から強奪したレアカードの寄せ集めで勝てると思うなよ。ビック・バイパーのダイレクトアタック!」
「うわあああ!?」
名蜘蛛 LP2000→600→0
違う……コイツじゃない。ネオグールズとやらのデッキ狩りに便乗している点では骨塚と同じだが、デュエリストとして最低限のプライドすら持ち合わせていないやつだった。
「もしもし。模倣犯を捕らえたぜ」
「本当か! 分かった。すぐに向かわせる!」
今回の一件を探る前に俺は海馬コーポレーションに協力を申し出ていた。白いスーツに青いネクタイをした少年……いや、青年と言った方が相応しいか。彼と直接会えたことで話はスムーズに進んだ。こういう時は名声を博していて良かったと思えるな。
「だが、悪いな。こんな危険な任務を一人で担わせてしまって。本当は兄サ……元社長から任を引き継いだ俺の責務なのに……」
胸が張り裂けるような思いが電話越しに伝わってくる。若い彼だが、今の立場に人一倍責任を感じているようだ。
「いいんだ。俺はまだ日本では顔を知られていない。あんたほど顔を知られてると奴らも姿を見せない……。適材適所ってやつさ。事後処理は任せたぜ」
「……ああ。任せてくれ!」
さて……問題はここからだ。海馬コーポレーションが手を尽くして見つからないというなら、今回のような屋外でのデッキ狩りをネオグールズはしてこないだろう。屋内でデュエリストの方から来る場所……カードショップか。
バトルシティの時にディスクの受け渡し場所だったということで詳細に教えてもらった。そしてしらみ潰しに回っていると、僻地にある『RPG HOBBY トレーディングカード』に辿り着いた。違和感の正体に気付くのに時間はかからなかった。ウィンドウに飾ってあるレアカードが精巧に作られた偽造カードだ……。
「いらっしゃいませぇ」
そして中を見て回っていると、動きがあった。童実野町の住人ならカードをプレゼントするということで、ディスクにより認証が行われる。デッキの強奪も警戒していたが、それはなくプレゼントと共に返される。中々汎用性が高いレアカードだ。……偽造カードだがな。
店を出つつ、俺は考えていた。思えばカードショップ内で犯行が行われれば、そのカードショップが黒という結論になるだろう。つまり……二段階な訳だ。
「そこのお兄さん。ただ今こちらでデュエルショーの告知映像を撮っておりまして、ワタクシに勝てれば賞品のカードを差し上げますよ」
「へえ……そりゃ興味あるね」
提案されるがままに移動式のサーカスのテントへと入らせてもらう。タダより怖いものはないなんて言葉があるが、先程ので警戒も緩んでるってわけか。新しいカードを手に入れたら試してみたいってのは分からないでもないしな。
「ワタクシは人呼んで奇術師パンドラ! 最高のショーに致しましょう」
「そうなることを願うぜ!」
「「デュエル!」」
「ワタクシのターン、ドロー! ……!?」
モクバ社長が被害者から集めてくれた情報である程度は予想していた。奴らの手口は至って単純。ディスクのプログラムを弄り、不正カードの検知を単なるエラーからスタンガンのような高電圧を流すシステムへと変更するだけ。さっきのカードがキーな訳だ。少々回りくどいが、誘い出した男以外に疑いを強く持たせない為だろう。回収されたディスクからは変わった点は見つからなかったらしいしな。変更にかかった時間からして気絶している間に正常な状態に戻すのに苦はないだろう。
「くっ、モンスターを場に伏せてターンを終えます……」
勿論全てのデュエリストがデッキに加える訳じゃないだろう。その場合のプランBとして……デュエルで負けた場合も高電圧が走る。負けた途端に気絶した者がいたようだからな。つまり奴は……相応の実力者なんだろう。
「ふふ……」
「な、なんですか?」
「いや……なんでもない」
負けから学ぶものがあると言いながら、負けたら魂を奪われる場に身を投じる。そんな真似をしてまで彼らに未知の可能性を期待してしまう自分に、つい呆れ笑いを漏らしてしまった。
「おかしい……こんな状況で笑うなんて。やはり貴様……気付いているな!」
言わんこっちゃない。デュエルを楽しみにするだけで確信に変えてしまった。それが……望みだってんだから救えないよな。
「そうだよ。だから死に物狂いで倒しに来な! もし負けても大きな被害は無い……そんな思いを抱かずにな」
「……いいでしょう! 演目の内容は……コナミ、あなたの惨殺ショー! 精々楽しんでくださいね?」
「ああ! ただ一人の観客として楽しんでやるよ!」
パンドラ LP4000
フィールド 裏側守備表示1
セット0
手札5
「俺のターン、ドロー! ビック・バイパーT301を召喚! そしてトランスターンによって生贄に捧げ、レベルが1つ高いセイクリッド・エスカを特殊召喚だ!」
セイクリッド・エスカ 攻撃力2100
「効果により2体目のエスカを手札に!」
「ほう。1ターン目から攻撃力2000超えとは……これは手応えがありそうだ」
「ならもっと感じてくれよ! エスカの攻撃宣言と同時にビック・バイパーを復帰させ、味方の攻撃力を上げるぜ!」
ビック・バイパー 守備力800
セイクリッド・エスカ 攻撃力2100→3300
「ほう……! ならばワタクシも魅せましょう! 伏せていたのはキラー・トマト! 戦闘破壊されたことにより魔道化リジョンを呼び出します!」
人形の機械騎士がサソリのような長い爪で敵を切り裂いたが、種も仕掛けもないトマトの中からピエロが姿を現した。
魔道化リジョン 攻撃力1300
「攻撃力1200のビック・バイパーを守備表示とは……中々勘が鋭いですね」
「この前似たような状況があってな。学んでみたってわけだ。カードを2枚伏せてターンエンド!」
コナミ LP4000
フィールド 『セイクリッド・エスカ』(攻撃表示) 『ビック・バイパーT301』(守備表示)
セット2
手札3
「ワタクシのターン! 怨念のキラー・ドールを召喚! さらにリジョンの効果により魔法使い族の生贄召喚を行えます。よって二体を生贄に……本日の主役のご登場〜!」
「……!? そ、そのモンスターは……!」
ケタケタと笑う二体のモンスターの代わりに現れたのは赤紫色のローブに身を包んだ黒魔術師。対峙したのは初めてだが……名は知っていた。いや、デュエリストならば誰でも知っているだろう。
「ブラック・マジシャン……! キングオブデュエリスト武藤遊戯のエースとして名高いモンスターか……!」
ブラック・マジシャン 攻撃力2500
「キングオブデュエリストォ? ヒャハハハ! ご冗談を。やつはこのワタクシに敗れましたよ」
「なに……? そ、そうなのか!?」
「ええ。そのおかげでグールズの中でも立場が良くなりまして。いやはや困ったものです」
グールズだと? 既に解散したと聞いたが……。それに武藤遊戯がキングオブデュエリストの称号を手にしたのは事実だ。今の反応は嘲笑ったのかとも思ったが……そうではなく、本当にあり得ないと思っているのか?
「さらにリジョンの効果により二体目のブラック・マジシャンを手札に加えるとしましょうか」
「……! 複数枚入ってるのか」
「ええ。それが奴とワタクシの器の違いでもあるでしょうね。それでは行きますよぉ! まずは邪魔なビック・バイパーを消し去りましょう。
ロッドを左手に収めたかと思うと突き出された右手から閃光が放たれ、ビック・バイパーは墜落してしまう。
「だがダメージはねえ! もっとも自身の効果で呼び出したビック・バイパーは除外されちまうけどな」
セイクリッド・エスカ 攻撃力3300→2100
「そしてあなたのモンスターに掛かっていた強化魔法は露と消えます。どうです? ワタクシのイリュージョンは!」
「まだまだ! どうせならハトくらい出してみろってんだ!」
「ふふ……威勢のいいお客さんがいるとショーも盛り上がるものです。カードを1枚伏せてターンを終了します!」
パンドラ LP4000
フィールド 『ブラック・マジシャン』(攻撃表示)
セット1
手札4
「ならもっと盛り上げてやるよ! 俺のターン! ドローだ! 手札のモンスターを墓地に捨て、サイバー・ドラゴン・ネクステアを特殊召喚! 効果で墓地の攻撃力2100の機械族を復帰させる!」
「あなたの墓地にいるモンスターは……なるほど。今のコストで捨てられたモンスターのみ。つまり……」
「エスカを特殊召喚し、効果で三体目のエスカを手札に! さらにネクステアを生贄に捧げて召喚だ!」
セイクリッド・エスカ×3 攻撃力2100
「ほー? 中々の布陣と言いたいところですが、その程度の攻撃力では及びませんねえ」
「なら手を伸ばすさ! エスカの効果でセイクリッド・アクベスを手札に加えて、と。バトル! エスカで攻撃だ!」
「ふむ……まさか血迷ったわけではないでしょう。となればコンバットトリックですか」
「ご名答! だが防げるかどうかは話が別だ! ダメージ計算前に永続トラップ、アクアの合唱! 同名モンスターが存在するフィールドのモンスターは攻守が500上がる!」
「……! 全員を強化してきましたか……!」
セイクリッド・エスカ×3 攻撃力2100→2600 守備力1400→1900
仲間の指示を受けながら機械騎士は腕に取り付けた皿を盾代わりにし、ロッドから放たれた魔導弾を弾いて懐に潜り込んだ。接近戦の有利を活かし、ブラック・マジシャンを切り裂くことに成功する。
パンドラ LP4000→3900
「よっしゃ! このまま一気に決めるぜ! 二体目のエスカでダイレクトアタック!」
「ククク……甘い! トラップカード、マジシャンズ・ナビゲート!」
「うわっ!? ハトが出てきた!?」
「このカードにより手札とデッキからブラック・マジシャンを呼び出します!」
「な……最上級モンスターを相手ターンに二体もかよ!」
「これぞワタクシが奇術師と呼ばれる所以です!」
逆さに置かれたシルクハットから二匹のハトが出てきたかと思うと、その種は最上級魔術師による変身だった。
「そしてアクアの合唱の効果ぁ!」
「あっ……!?」
ブラック・マジシャン×2 攻撃力2500→3000 守備力2100→2600
なるほどね……。アクアの合唱はお互いに有効。なら同名モンスターを扱う相手には逆に利用されることもあるって訳か。勉強になったぜ!
「なら俺もお前を利用する! その特殊召喚に反応してトラップカード、スリップ・サモン! 手札のレベル4以下のモンスターを守備表示で呼び出す! 頼んだぜ、アクベス!」
セイクリッド・アクベス 守備力2000
「ヒャハハ! 自分のバトルフェイズに守備を考えるとは、謙虚なお人だ」
「悪いが俺は強欲で貪欲だぜ! アクベスが呼び出されたことでセイクリッドモンスターの攻撃力は500上がる!」
「な、なに!?」
セイクリッド・アクベス 攻撃力800→1300
セイクリッド・エスカ×3 攻撃力2600→3100
「バカな……上級モンスター3体が攻撃力3000超えだと……あり得ないぃぃ!」
「アリさ! それがデュエルだ! 二体目のエスカで同じく二体目のブラック・マジシャンに攻撃!」
パンドラ LP3900→3800
「三体目! そいつの攻撃力は2500に戻ってるぜ!」
「くっ……! ワタクシのブラック・マジシャンがぁぁぁぁぁ……。ぜ……ぜん……め……めつめつめつ……」
パンドラ LP3800→3200
「ブラック・マジシャン三人衆撃破! ターンエンド。スリップ・サモンで呼び出したアクベスは手札に戻る!」
コナミ LP4000
フィールド 『セイクリッド・エスカ』(攻撃表示)×3
セット0 『アクアの合唱』
手札3
「わ、ワタクシは武藤遊戯に勝ったデュエリスト……マリク様もそれを認めて下さった! そんなワタクシが負けるはずが……」
どうもおかしい。パンドラの言っていることは事実から外れている。だが同時にパンドラ自身はそれを信じている……。
「……騙されてないか? マリクとやらは投降したって聞いてるぜ」
「なっ……! し、信じるものか!」
「本人に会ったのか?」
「……この前初めてお会いしてくださった。そして言われたのだ。負けたと思い込んでいたワタクシにお前は勝ったのだ……と! だからワタクシは救われた! 敗北による耐え難い衝動から解き放たれた!」
……事実から考えれば明らかだ。パンドラは傀儡。事情は分からないが、どうしてもパンドラは負けを認めたくないらしい。それは俺が今まで見てきた勝敗だけに囚われた者とは、意味合いが違うと感じられた。
「なら証明してみせな! お前の強さを!」
「……! いいでしょう! ワタクシのターン……ドロー! 闇の誘惑により2枚ドローし、代わりに手札のキラー・トマトを除外します。……来た……来た来たぁー!」
正であれ負であれ、強い思いというのは時にとてつもないエネルギーになる。そして集約されたエネルギーが今、ぶつけられようとしている。
「来な! 受け止めてやるぜ!」
「出来るものなら! 墓地のリジョンを除外し手札の魔導書を見せることで、ネクロの魔導書を発動! ブラック・マジシャンを呼び戻します!」
ブラック・マジシャン 攻撃力2500
「マジか! 最上級モンスターだぜ……。4回も呼び出してくるか!」
「……ワタクシのデュエルはブラック・マジシャンなくしては成り立ちませんから」
「……! へえ……」
「そして墓地のマジシャン・ナビゲートを除外して効果発動! このターンアクアの合唱の効果は無効になりまぁす!」
「なに!? 墓地からトラップか……! だが! まだアクベスの強化が残ってるぜ!」
セイクリッド・エスカ×3 攻撃力3100→2600
「大した問題ではありませんよ。ワタクシはブラック・マジシャンを……生贄に捧げます!」
「なっ。どういうつもりだ!?」
「この方法でのみ呼び出すことができるのですよ……。あなたを死へと誘う処刑人をね! イッツ……ショータイム!
ブラック・マジシャンが闇に覆われてよく見えなくなると、パンドラが指を弾いてスポットライトを当てる。……闇を司る黒魔術師は元々ダークな印象を兼ね備えている。しかしその姿を目にした俺の印象は血も凍るような冷たさだった。
黒魔導の執行官 攻撃力2500
「攻撃力は変わらない、が……」
「お察しの通り。あなたの命を刈り取る特殊能力を持っていますよ。私は先程見せたグリモの魔導書を発動します。まあこれ自体はなんて事はありません。ヒュグロの魔導書を手札に加えるだけです。しかし……」
「うわっ!?」
鎌のような形をしたロッドが紫色に淡く光ると、たった一振りで周囲を薙ぎ払ってしまい、巻き込まれてしまった。
コナミ LP4000→3000
「このモンスターがいる限り、通常魔法が発動される度にあなたは1000のダメージを受けるのです!」
「嘘だろ!? 合わせて4回使うだけでジ・エンドじゃねえか……!」
「そうそう。そんなあなたに良いお知らせです。ヒュグロの魔導書も通常魔法なんですよねえ!」
「げっ……」
「アッハハハ! 良い顔ですねえ! ヒュグロの魔導書を発動!」
「くそっ。こんな簡単にライフが無くなるなんて……!」
コナミ LP3000→2000
「楽しいですねえ! 最高ですねえ! 相手が何も出来ないまま苦しむ様は!」
「ほざきな! このまま何もできずにやられてたまるか!」
「それでは脱出ショーと参りましょう! 効果でエクスキューショナーの攻撃力はこのターン1000上がります。バトル! 先程の恨みをそのまま返してやりなさい!」
騎士団に単独で攻め入ってくる。無謀な挑戦かと思われる突撃だったが先程の魔導書に刻まれた炎の魔法が壁となり、分断された一人が容赦のない一振りで仕留められてしまう。
黒魔導の執行官 攻撃力2500→3500
コナミ LP2000→1100
「ヒュグロの魔導書の恩恵を受けたモンスターの戦闘破壊により魔導書を手札に加えられますが……ふむ。悪運の強いお方だ。まさしく首の皮一枚繋がっておられる」
「へっ。ライフ管理も実力のうちだろ!」
「おっしゃる通り。ですので……グリモの魔導書を手札に加えましょう。1ターンに一度しか使えませんがね。ふふふ……カードを1枚伏せてターンエンド!」
「この瞬間、アクアの合唱は復活する!」
セイクリッド・エスカ×2 攻撃力2600→3100
黒魔導の執行官 攻撃力3500→2500
パンドラ LP3200
フィールド 『黒魔導の執行官』(攻撃表示)
セット1
手札1(グリモの魔導書)
次のターンを回せば終わり。問題はこのターン……このまま攻撃すれば勝てるという状況。グリモの魔導書を使うつもりなんだから、パンドラは耐えられると確信している。しかもエクスキューショナーを場に残した上で……だ。
「俺のターン、ドロー! ……!」
俺はドローカードを見ながら思案した。そして自分の推測の範疇で結論に至った。
「アクベスを召喚し、セイクリッドを強化する!」
セイクリッド・アクベス 攻撃力800→1300
セイクリッド・エスカ×2 攻撃力3100→3600
「怖い怖い……」
「……そして、マジックカード発動!」
「……!? 正気ですか? やれ、エクスキューショナー!」
コナミ LP1100→100
「正気か狂気か……そんなことはいいのさ。俺は自分の考えを信じる!」
あの伏せカードは……エクスキューショナーに破壊耐性を与えるカードだ!
「発動したクロス・アタックの効果で片方のエスカの攻撃を封じる代わりに、もう一方のエスカはダイレクトアタックが可能になる! さあ、脱出ショーの答え合わせといこうか!」
機械騎士はもう一人が身に付けた皿の上に乗ると、天秤状の身体をシーソーのようにして扱い、エクスキューショナーを飛び越えた。
「な……なにぃ〜!? ば、バカな! そんな……そんなことがあああ!」
そして指示を出す相手の大将を直接切り裂き、戦いを制したのだった。
パンドラ LP3200→0
「み、見抜いていたというのか! ワタクシのブラック・イリュージョンを!」
攻撃力2000以上の闇属性魔法使い族に、戦闘破壊耐性を与え相手の効果を受けなくさせるトラップか。
「近い予想はしていた。だがそれ以上に感じたのはお前の固執だ」
「固執……?」
「俺と会話をしようとせず、あんた自身が事前に用意したエクスキューショナーとのコンボで仕留めようとしたことだ。アンタのデッキに防御系の魔導書があったかは知らないが……少なくとも通常魔法の魔導書をヒュグロの効果で持ってこれたはず。実質俺の通常魔法を封じる選択肢だ」
「し、しかし。それでは次のターン魔法カードを持ってこれなかったら……」
「そういうリスクもある。だから今回の選択肢がまるっきりダメって訳じゃないんだ。だがな。そうして固執することで、恐怖から離れたかった……。それがお前から受け取った言葉だ」
「……本当は薄々感じてはいました。遊戯に勝ったシーンなどどうしても思い出せない。しかし、その後に湧き出た衝動……! 愛する者を失った時の悲しみが湧き出し! ——する寸前まで行った……」
「…………」
「不思議とある時期からそれは薄れていった。だが! またそうなることが怖かった……! いや、そうなったこと自体が……怖かった」
「……だから偽りの過去に固執したのか」
「しかし勝敗は変えられなかった。もはや……運命なのかもしれない。なにせワタクシは愛するフィアンセを奇術の失敗により殺めてしまった身なのだから……!」
「待ちなよ。あんたはきっと既に変わっているんじゃないか?」
「なにを勝手なことを……そんなこと分かるものか!」
「あんたの固執が分かったように、分かるさ。デュエルからな。……あんたグールズだったんだろ。その割には随分カードを大事にしていた。とりわけエースのブラック・マジシャンをな」
「……! それは……」
「そしてブラック・マジシャンもそれに応えていた。デュエリストとしてのプライドを失ったあんたに、デュエルを通してそのことを教えた者がいたんじゃないか?」
「……遊戯……」
「あんた……パンドラは負けから学んだんだ。だから負けたら何もないなんて言わないでくれよな。俺との負けからも学んで、変わっていってくれよ」
「……そうか。奴がデュエルで語った言葉を、無意識に……認めていたのか。ありがとう……コナミ。あなたからは、敗北が絶望の始まりではないことを……教えてもらった」
紆余曲折あったパンドラとのデュエルだったが、最後には俺の手を受け入れてくれた。こうしてショーの幕は閉じたのだった。
……そしてパンドラのサポートもあり、彼にマリクと名乗ったネオグールズの総帥とコンタクトを取ることに成功した。対峙した俺は強い衝撃を覚えながら、帽子を外す。
「……おいおい! まさかお前が会いに来るとはなあ!
「
そこにいたのはキース・ハワード。かつて……俺にデュエルを教えてくれた師だった。
ストックが早速無くなったので、モチベ沸かなかったらごめんなさいということで。