ハンドラー・ウォルターは、アーキバスが占領しているバートラム旧宇宙港に来ていた。計画されているベイラム、アーキバス両社連名の共同作戦実施の、最終調整のためだ。ウォルターは、621をヘリに残し案内役に従って、会議室までついていった。
会議室の中には、ミシガン、V.Ⅱスネイル、カーラが待っていた。会議室の床には、中央氷原全体の地図が映しだされ、そこに赤色の点、青色の点と、様々に交差する矢印が引かれていた。
「駄……猟犬の飼い主も来たようですね。では早いところ始めましょう」
スネイルが、部屋にいたオペレーターに指示を出すと、床に表示されていた地図が拡大され、内容が変わる。そこは、中央氷原でも未だ調査が進んでいない場所だった。封鎖機構のデータから奪取した、衛星写真が写されている。
「問題の化け物は、この観測不能領域を徘徊しているようです。我がアーキバスで調査を行い、わずかですがデータも入手しました」
スネイルが言うと、今度はいくつかの画像が表示された。そこには、巨大なミミズのような兵器がうねりながら迫ってくる姿が、鮮明に写されていた。
「件の兵器は、強力なパルス防壁に守られています。従来の武装では、防壁を破れずかすり傷すらつきません」
「ではどうする?」
ミシガンが聞くと、カーラがスネイルを遮るように説明を始める。
「うちの秘蔵のオモチャと、アーキバスの新兵器を利用するのさ。アイスワームの防壁は、プライマリとセカンダリ、二枚で構築されてる。両方剥がせなきゃ意味がない。
セカンダリの方が、防壁としての強度は厚い。こっちは、うちのオーバードレールキャノンで突破する。プライマリは、アーキバスが開発していたスタンニードルランチャーを使う。こいつは、ACにも搭載可能なサイズの代物故に、うちのオモチャより威力が低いからね」
「……さて、今日の本題は、この任務への人選です。封鎖機構の拠点に対する同時攻撃も行う以上、化け物退治に割ける人員は少ない」
「大部隊を展開できる相手でもないな。下手に集まれば一網打尽だ」
「故に、少数のACによる作戦を立案しました。囮役の前衛、スタンニードルランチャーを装備した
「なるほど、ウォルターを呼んだ理由が分かったぞ。確かに、G13なら信頼がおける」
ミシガンが、ニヤリと笑いながらウォルターを見る。
「腕だけは折り紙付きですから」
スネイルは対照的に、ウンザリした顔で嘆息している。
「うちからは、弾幕要員としてチャティを出そう。無口な奴だが、仕事はこなすよ。それと、レールキャノンの射手がいる。私がやってもいいが、精度は当てにしないでくれよ」
「アーキバスからは、V.Ⅳラスティと、現場監督として私が出ます。寄せ集めには統率が必要です。射手は……射撃成績のいいラスティが適任でしょうか」
「我がレッドガンからは、総指揮を俺が、実働でイグアスを出すつもりだったが……奴は今負傷中で出撃はできない。代役が必要だ」
ミシガンが、スネイルに視線を投げる。
「ふむ、ではメーテルリンクを代わりに。やれやれ……こちらばかり人員を出して、割りに合いませんね」
スネイルが、ため息をつきながら言う。ミシガンに対する当て付けなことは明白で、ウォルターは助け舟を出そうとした。
「先日のアーキバスからの要請で、レッドガンは戦力を提供したはずだが?」
ウォルターに話しかけられ、スネイルが睨み返す。
「それとこれとは別問題です。確かに支援は要請しましたが、所属不明機の介入は想定外でした。あれは現場で対応すべき事柄で、生じた損害の責任は指揮官にあると思いますが」
引き下がらないスネイルに、ウォルターが更に口を開きかけた時、ミシガンがそれを遮った。
「V.Ⅱの言い分には、一理あるな。だから、総指揮は貴様に任そう。現場指揮は、俺がやる。それで異存は無いな?」
ウォルターが驚いてミシガンを見る。あのミシガンが、これだけの喧嘩言葉を受け流したことが意外だった。
「なるほど、それは心強い。精々足元に気を付けることですね」
ミシガンが、不敵に笑いながら答える。
「ふん、上等だ。殺せるものなら殺してみろ」