地中探査の話に少しだけ追記があります。イグアスが戦闘中に行方不明になった、というだけなのでこちらにも書いておきます。上手いこと話に混ぜれなかったので……。
ベイラムから、お前に指名の依頼が来ている。内容を説明しよう。
先ほど、ベイラムの哨戒部隊が未踏深度へ降下していく機影を確認した。お前が破壊したレーザー障壁の奥だ。恐らくは、ヴェスパー所属のACだろう。アーキバスはいよいよ、コーラルを目指すつもりらしい。
ベイラムからは、このアーキバスの調査を阻止するために、降下したACを追跡して撃破するように依頼が来ている。
企業の監視がある中で、未踏深度に踏み込める絶好の機会だ。コーラルは近い。お前も、覚悟をしておけ。
レイヴンが、第三深度に合ったレーザー障壁発生装置を越えて、降下していく。その先へ向かうのは、記録上はレイヴンが二人目だった。ベイラムからの依頼によれば、先行するアーキバス所属機が存在するはずだ。
技研の無人機と交戦したジェネレーター区画を越え、その足場が伸びる巨大な穴へと、レイヴンは降りていく。灯りと言えば、機体に取り付けられた照明機器ぐらいなもので、レーダーが無ければ地形の把握も難しい。が、深度を増すにつれ、頼みのレーダーにもノイズが走り、最終的には何も観測できなくなった。
「レーダー障害が発生しています。活性コーラルによる干渉でしょう。あなたの目と耳が頼りです」
レイヴンは、返事をしない。ただ無表情に、計器を確認して操縦に専念していた。レイヴンの機体は、先日のV.Ⅰとの交戦でひどく損傷していたが、緊急の依頼だったために応急的な修理を済ませただけだ。失った武装の代わりは、行方不明になっているG5の予備の武装を買い上げた。破損した右腕は、ベイラム社製の量産フレームに替えている。そのため、レイヴンの機体は左右の腕で規格が違う、非常にアンバランスな状態になっていた。
機体が終点の地面に近づき、レイヴンがペダルを踏みこむ。ブースターを噴射し、機体が減速していく。噴き出る炎に、周囲の岩盤が照らされ、岩を覆うように結晶化したコーラルが張り付いているのが確認できる。
着地したレイヴンは、ACが通れるような巨大な横穴へと入っていく。その穴は、さらに奥へと続いており、微弱ながら熱反応も残っていた。先行する機体も、ここを通って行ったのだろう。
レイヴンが機体を走らせ進んでいると、何かが
「それは……ミールワームか?異常成長している……」
全長だけでいえば人間よりも巨大な虫の姿に、ウォルターも驚いた反応を見せる。レイヴンが周囲を見渡すと、そこかしこにミールワームが張り付いていた。
「害はないはずだ。無視して進め、621」
レイヴンが再び機体を進める。レイヴンは、なるべくミールワームを避けるように進んでいたが、狭い空間を通り抜けようとした時、そこに張り付いていたミールワームが赤く光始めた。センサーが、急速な熱反応を感知する。
「生体内部からコーラル反応……!?危険です!」
直後、ミールワームが爆発した。その爆発は、ミサイルに匹敵するほどの衝撃で、流石のレイヴンも回避できずに機体が揺れる。幸いにも大きなダメージには至らなかったが、その爆発に呼応してか、洞窟の中にいたミールワームたちが一斉に光を放ち始める。
「まずい、すぐに突破しろ!」
連鎖するように、ミールワームが爆発していく。レイヴンはブースターを吹かして一気に洞窟を抜けた。狭い道を抜けると、巨大な空間が広がる。そこには、ミールワームの養育ポッドがあり、破損したカプセルは空になっていた。恐らく、あそこから抜け出したミールワームが、コーラルを餌に繁殖していたのだろう。
そして、ミールワームの養育ポッドに囲まれた空間の中に、エアは一つの反応を発見した。
「レイヴン、前方に機体反応。停止してこちらを待っています」
『追跡してくる敵機を迎撃しろ、という命令だったが……なるほど、君が来ることも想定済みか。ベイラム側で動かせる戦力は、もう君だけだからな』
レイヴンが機体を停止させ、待ち構えていたACの前へ飛び込む。向かい合うのは、V.Ⅳのスティールヘイズだった。
『今後の調査に、独立傭兵は不要。あわよくば、不穏分子も共倒れ。上の連中の考えそうなことだ』
レイヴンの顔つきが、わずかに変わる。虚ろだった目に、闘争心が灯るのを、エアは見逃さなかった。
『このラスティには……ルビコンで為すべきことがある』
スティールヘイズも、武装を展開して戦闘態勢に入る。
『戦友、君はどうだ』