レッドガンの死神   作:抜殻

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未踏領域調査阻止(2)

 621、お前に伝えておくことがある。

 お前が、解放戦線の依頼に出ている間に、ウォッチポイントの入り口で大規模な戦闘があった。痺れを切らしたベイラム社が、遂に本隊を投入しての調査に乗り出した。ミシガン自身も、指揮のために出撃したそうだ。アーキバスが、それを迎撃した。

 迎撃は成功し、レッドガンは壊滅状態に追い込まれた。ミシガンは死んだ。奴らしい最期だったと、そう聞いている。成功させたのは、ヴェスパー第四隊長ラスティだそうだ。

 コーラルが絡むと、死人が増える。過去から未来まで、変わらない事実だ。……ミシガンのことは忘れろ。お前は、お前の仕事を果たせ。

 ベイラムはどうやら、まだ手を引きかねているようだ。ベイラムから、お前に指名の依頼が来ている。

 

「ACスティールヘイズ、来ます!」

 対峙していたV.Ⅳが、プラズマミサイルとともに動きだす。レイヴンも、回避を起点に機動を始める。

『踊らされるつもりもないが、いずれ避けては通れない道だ。行くぞ、戦友』

 V.Ⅳが待ち受けていた場所は、洞窟の中でも比較的開けた場所だ。AC二機が機動するのに充分な広さがある。瓦礫も少なく、養育ポッドから漏れた用水の溜まった円形の足場は、闘技場を連想させる。

「……互いが抹殺対象というわけか」

 だが、この地形はレイヴンの武装とは相性が最悪だった。広さはあっても、逃げるには狭すぎる。ましてや相手は機動力に長ける軽量機だ。圧倒的に、V.Ⅳが有利だった。

「621、まずは生き残れ。それがお前の、今すべき仕事だ」

 プラズマミサイルが、空中に電撃の華を咲かせる。レイヴンは後方に跳びながら、お返しばかりにスティールヘイズにミサイルを撃ち込む。飛来していくミサイルは、スティールヘイズを追尾するが、その機動性の前には玩具のように軽くあしらわれ、目標を見失って瓦礫を吹き飛ばすだけだった。

『変わらないな、君は』

 引くレイヴンを、スティールヘイズが追う。機動力の差が出る前、レイヴンの背後を岩壁が阻んだ。逃げ道を失ったレイヴンに、V.Ⅳが近接戦を仕掛ける。

『死ぬことも……殺すことも恐れていないようだ』

 左腕のレーザースライサーから、光の刃が現れる。ACの装甲すら容易く焼き切る数千度の刃が、レイヴンに迫る。V.Ⅳがスライサーを回転させて振るおうとした刹那、レイヴンが機体を突っ込ませる。そして、ACの右足を振り上げ、スティールヘイズを蹴りつけた。装甲が激しくぶつかり合う音が、コックピットにまで直接響く。凄まじい衝撃が伝わり、火花が散り、衝突で装甲が潰れる。

 まさか、ACで肉弾戦を仕掛けてくるとは思わなかったのだろう。激しく体勢を崩したV.Ⅳに、レイヴンが左腕の機関銃を弾倉一丁分撃ち込むが、そちらは何とか回避する。

『……敵に回すと実感するよ』

 空になった弾倉を排除し、太腿に付いている予備弾倉に切り替える。左腕を下ろして武装と弾倉を噛み合わせれば、自動でロックを掛け装填する。右腕のリニアライフルは、スティールヘイズの方を向いたままだ。機関銃の装填が終わると、レイヴンは引いていくV.Ⅳを追撃した。

『君の強さと、そして危うさを……!』

 スティールヘイズの点射拳銃が放たれるが、シールドを貫通するには至らない。蹴りつけられたスティールヘイズの胴体部は激しくひしゃげ、内部構造を露わにしていた。

『幾度か機体を並べたが、私には未だ見えずにいる』

 対するレイヴンの右足も、蹴りつけた影響で変形していた。計器類には、右足部が表示され、一部のスラスターが故障していることが分かった。

『戦友、君に引き金を引かせるものは何だ?』

 レイヴンの機動性の低下を見破ったV.Ⅳが、勝負に出る。レーザースライサーの刃を回転させ、突進する。レイヴンは機関銃を放ちながら後方に跳ぶが、思うような飛距離を稼げない。機関銃の弾は、回転する刃に焼き切られてスティールヘイズには届かなかった。

 だが、レイヴンはこの瞬間を待ち構えていた。あえて距離を詰めたのは、V.Ⅳがレーザースライサーを盾代わりに突進してくることを誘うためだ。かつて「壁」で戦った時、G5に狙った手段だ。レイヴンは、V.Ⅳが突進の構えを見せた瞬間から、右腕のリニアライフルの電磁気の蓄積を始めていた。

 レイヴンがリニアライフルを構え、蓄積されたエネルギーを一気に射出した。従来の弾速を遥かに凌ぐ一発は、回転するレーザースライサーの刃では防ぎきれない。弾自体は切り裂かれたが、そのエネルギーは衰えることなくスティールヘイズに命中した。辛うじて、コックピットへの直撃だけは避けて。

 弾道の逸れた弾は、スティールヘイズの右腕を吹き飛ばす。胴体との接合部から切断された右腕が、水しぶきを上げながら地面に落ちる。

『流石だな……』

 射撃の勢いに吹き飛ばされたスティールヘイズが、膝を付く。損傷が激しいのか、V.Ⅳからの通信にはノイズが混じった。

『だが、終わるわけにはいかない』

 レイヴンが、止めを刺そうと残ったミサイルを撃ち込む。が、スティールヘイズの排熱弁が開かれ、電撃が機体を包み始めた。

『戦友。理由なき強さほど、危ういものはないぞ……!』

 スティールヘイズを中心に、電撃の爆発が起こる。蒼白い光が洞窟を見たし、飛来していたミサイルは空中で爆発する。レイヴンが巻き込まれないよう距離を取り、光が落ち着いた時には、既にそこにスティールヘイズの姿はなかった。

「スティールヘイズ、機体反応消失……撤退したようです」

「……よくやった、621。追う必要はない。それよりも……依頼にはないが、先に進もう。企業よりも先に、確かめておくべきことがある」

 

 ルビコン技研都市……やはりな、探しても見つからないわけだ。この中心に、コーラルはある。

 621、企業に使われるのは終わりだ。企業の追手が来る前に、コーラル集積地点に到達しろ。

 ……621、ここからは俺に……いや、お前自身の感覚に従え。

 

 

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