G13、状況を説明する。お前が囚われている間に、ベイラム本社はルビコンからの撤退を決定した。レッドガンにも撤退命令が下ったが、我々は命令を放棄した。現在は独断で、アーキバスのコーラル輸出を阻止するために解放戦線と共闘することにした。
目標は、コーラル吸上施設「バスキュラープラント」のコントロールセンターだ。コントロールセンターを奪取、破壊できればアーキバスによるコーラル輸出を一時的に妨害できる。最終的にはルビコンに駐留するアーキバス勢力を一掃する必要があるが、輸出の阻止は一刻を争う。
現在、アーキバスは星外からの増援を待っている。増援が到着すれば、勝ち目はない。最重要拠点のバスキュラープラントの強襲を成功させる可能性があるのは、今だけだ。
お前を助けたのは、ミシガンの借りを返すためだが、この作戦に参加してもらうためでもある。レッドガンとの契約はまだ生きてる。お前が要だ、G13。
G2ナイルが救助に訪れた後、レイヴンを乗せたヘリはG2の護衛の元、技研都市を脱出した。技研都市には、ウォッチポイントからのルート以外にも、幾つかの侵入路があったらしく、その中にはヘリが飛行できる広さがある洞窟もあった。レイヴンは、そこを案内されて地上へと出た。
地上からは、他の
地上に出た後、ヘリは地図を南下していった。G2の話では、中央氷原南方の大陸で、解放戦線と合流することになっているらしい。アーキバスは価値のなくなったベリウス地方からは撤退し、全戦力を中央氷原各地の防衛に回している。対する解放戦線も、各地の戦力を中央氷原に結集していた。
合流地点に近づいてきた頃、ヘリのセンサーが何かを捉えたのが、ヘリに収容されたジャンク機にも伝わる。それは集音マイクが拾った、何かの音だ。木槌を鉄板に思い切り振り下ろしたような重低音が、一定のリズムを刻んでいる。その音は、だんだんと大きくなっていた。
『こいつは……』
通信機からは、G2の息を吞む声が聞こえてくる。レイヴンは機体をヘリに接続し、外部カメラの映像を映した。そこには、地平線から飛び出した、揺れる影が映っていた。大型の草食動物のような長い六本の脚が、連結した三つの胴体を支え、歩んでいた。
『驚いてくれたようで何よりだ。色々と根回しをした甲斐がある』
通信機から、聞きなれた声が聞こえた。レイヴンが争い、時には背中を預けた男の声。
『久しぶりだな、戦友』
ストライダーの収容区画の中を、整備兵たちが慌ただしく動き回っていた。大多数を占める解放戦線の整備兵の中に、紺色のツナギを来たベイラム社の整備兵たちが混ざっている。解放戦線の兵士たちが忌々しく見上げる機体を、共に整備していた。
「また君と、肩を並べられるとはな」
ぎこちない雰囲気で協力し合う整備兵たちを見下ろしながら、レイヴンはラスティと並んでいた。
「君と地下で戦ったあと、私はアーキバスを離反した。今頃は未帰還による戦死扱いにでもなっているだろう。
私はルビコニアンだ。ミドル・フラットウェルがシュナイダー社を通じて送り込んだ、解放戦線のスパイだった」
ラスティは、彼の足元で働く兵士たちを見下ろしながら、話を続けた。
「何も知らぬ同胞を、ヴェスパーとして屠ってきた。それはより大きな大義のためで、こうしてストライダーの撃破を捏造することもできた。それが、贖罪になると考えるのはおこがましいが、彼らの犠牲は無駄ではなかった」
ラスティが、レイヴンに向き直る。その目には、確固たる意志を秘めた人間特有の強さがあった。それは、レイヴンとは対照的な目だった。
「私は、この灼けた空を切り開き、ルビコンに夜明けをもたらしてみせる。戦友、君はどうだ。あの地下での問いに、答えてくれるか」
レイヴンとラスティは、視線を交わし続けた。しばらくの後、レイヴンが口を開こうとした。
「ここにいたのか、ラスティ」
だがレイヴンの言葉は、通路を歩いてきた男によって遮られた。疲れたような顔をしながら、煙草を吹かしている。
「それと……初めまして、だな。独立傭兵レイヴン……いや、強化人間C4-621」
目の前の男は、ウォルターしか知らないはずの型式番号を口にした。レイヴンは驚き、男をじっと見つめた。
「おっと、そんなに警戒するな。俺はV.Ⅲオキーフ。ヴェスパーの情報担当官でもあった。元だがな」
「解放戦線に属しているわけではないが、彼もルビコン出身だ。ストライダーの存在を隠蔽することにも協力してくれた」
「ラスティ、フラットウェルがお前を呼んでいたぞ」
ラスティが、欄干から体を離す。レイヴンは彼を呼び止めた。
「いや、戦友。君の答えは、分かったよ」
そう言って、ラスティは去っていった。残されたレイヴンに、オキーフが話かけてくる。
「アーキバスには恩があるが、解放戦線とやり合うつもりもない。だから、
オキーフは短くなった煙草を落とし、靴の裏で揉み消す。
「どこか遠い
オキーフはレイヴンを一瞥すると、満足気な笑みを浮かべて去っていった。地面には、潰れた煙草が白い煙を上げていたが、それもすぐに消えた。