『てめぇはいったい誰だ、野良犬』
『あれは……G5か。どうやら味方ではないらしいが……』
G5と戦闘に入ろうとしたラスティを、レイヴンが行く手を遮って制した。そして、コントロールタワーを指さす。
『……分かった。ここは任せるぞ、戦友』
レイヴンの意を汲んだラスティが、コントロールタワーへ向かって移動するのを、G5は止めなかった。ラスティはG5の脇を通り抜け、建物の陰へと姿を消した。
『これで邪魔は入らねぇな、野良犬』
「ヘッドブリンガー」が動き始め、レイヴンもそれに続いた。
『俺があの女に捕まってた間も、随分暴れ回ってたみてぇだな』
両者はどちらも銃を抜かず、睨み合いながら並行に移動していた。適切な距離を保ったまま、動き出しを待っている。
『目障りなんだよ、野良犬。てめぇを殺して、俺はこの星を去る』
G5……イグアスの声は、だんだんと荒々しくなっていく。「ヘッドブリンガー」の右腕に握られているリニアライフルが、蓄電したエネルギーで輝き始める。
『初めて会った時から、ずっと気に入らなかった。てめぇを殺さねぇと、この耳鳴りは収まらねぇんだよ!』
そして遂に、イグアスが銃口を向けた。リニアライフルの引き金を引き、溜められたエネルギーが一気に放出される。それが、撃ち合いの合図になった。
『ジャガーノートも、あの独立傭兵も、化け物も、全部片づけやがった。俺と同じ、くそったれの旧世代型のてめぇが!』
イグアスが、普段の戦術を崩して、自ら接近してくる。レイヴンが左腕でカウンターを狙うが、イグアスは直前で停止し、パイルバンカーは空を切る。さらけ出した隙を、イグアスは空中から蹴りつけた。
『ヴォルタも、ミシガンも死んだ。もうレッドガンに用はねぇ!』
ミサイルでの追撃を、レイヴンは左腕のパイルバンカーを盾にして防ぐ。爆風で機体が揺れ、各部が損傷するが、機体自体のダメージは少ない。ただし、爆発でパイルバンカーは展開機構が破損してしまった。
レイヴンが後退しながら、右腕の拳銃を放つ。が、イグアスはシールドは展開せずに回避した。見れば、イグアスの左肩には普段の武装ではない追従型のレーザーオービットが装備されている。腕のパーツも、今までの「ヘッドブリンガー」とは違っていた。企業の登録に無い物だ。
右腕の拳銃が、弾切れする。予備弾倉も既に使ってしまっていたため、投げ捨てる。その隙に、イグアスが再び距離を詰める。レイヴンに残された武装は、壊れたパイルバンカーと左肩に掛けた拳銃のみだ。
レイヴンは、ハンガーの拳銃をそのままパージした。そして、その場で転回し、落下している拳銃を空中で掴む。そのまま、突っ込んでくるイグアスに銃弾を叩き込んだ。
『野良犬が、調子に乗りやがって。邪魔なんだよてめぇは!』
銃弾が装甲を貫通し、機体をバラバラにしていくが、それでもイグアスは突進を止めなかった。イグアスの蹴りを、今度は回避する。そして、左腕のパイルバンカーを構え、装填されている炸薬に点火した。
リミッターを解除したパイルバンカーは、残っていた炸薬全てが爆発し、機体の左腕が吹き飛ぶ。が、その杭は矢となって「ヘッドブリンガー」に撃ち込まれた。杭は胴体部にめり込み、左腕を引き千切って貫通した。
左腕を失い、胴体にも損傷を負って体勢を崩したイグアスに、レイヴンが止めを刺すために接近する。
『てめぇは先に、地獄に行ってろ』
「ヘッドブリンガー」が排熱弁を開くのを、レイヴンは見逃さなかった。コンマ数秒の差で、反射的にレイヴンもコア拡張機能を使用した。両機体が、ほぼ同時に電撃を纏っていく。そして、パルス爆発がぶつかり合った。
コア拡張機能のアサルトアーマーは、自身の機体が爆発に巻き込まれないよう、一瞬だけ自機をパルス防壁で包む。つまり、アサルトアーマー同士がぶつかり合った場合、爆発は中和され、両者のダメージは相殺される。
その人間離れした反射能力で、自身のカウンターを封じられたイグアスが息を飲む音が聞こえてくる。勝利を確信していたであろうイグアスは、その後の対応で遅れた。レイヴンの右腕に握られていた拳銃が、コックピットに撃ち込まれる。
『クソが……俺とお前で……何が違う……!』
ジェネレーターが暴走し、「ヘッドブリンガー」は内側から爆散した。恐らく、パイルバンカーで受けた損傷状態では、アサルトアーマーの過負荷に耐えきれなかったのだ。レイヴンが止めを刺さなくても、機体は自壊していただろう。
「レイヴン……」
レイヴンは、火を吹いて倒れた「ヘッドブリンガー」を見つめていた。拳銃が弾切れしていることを知らせるブザーが鳴っていた。レイヴンは武器を捨て、落ちていたリニアライフルを拾うと、広場を背にコントロールタワーへ向かった。