海越え
あなたは……?
第四世代、旧型の強化人間
あなたには、私の交信が届いているのですね
私は、ルビコニアンのエア
目覚めてください
あなたの自己意識が……コーラルの流れに散逸する、その前に
レイヴンは、永い間眠っていたようだ。だがそれが、どれくらいの時間だったのかは、エアには読み取れない。
レイヴンは、穏やかな顔で気絶していた。カーゴランチャーが発射された時の衝撃で、意識を失ったのだ。脳内
エアは、レイヴンの脳内に埋め込まれているコーラル管理デバイスに記録された、レイヴンの記憶を見ていた。エアは後ろめたさを感じつつも、初めて会うことのできた人間のことを、どうしても知りたかった。その欲求を抑えることが、できなかった。
レイヴンの記憶は断片的だ。強化人間となる以前の記憶は、当然ながらない。それどころか、ルビコンにやってきてからの記録も所々で飛んでいる。これはきっと、ウォルターが言っていた、強化人間手術とは別の処置による後遺症だろう。脳を
レイヴンの最も古い記憶は、冷凍睡眠から目覚めた時だ。
耳には声が届く。二人の男が話し合っている。一人は、
起動したレイヴンは、急激に肉体の感覚を取り戻していく。心臓の鼓動が電流のように全身に伝わり、血液を走らせている。繋がれていた
「621。お前に意味を与えてやる」
視界が暗転し、次の記憶が見える。既にルビコンにやってきた後らしく、レイヴンは汚染市街の一画を見下ろしている。視界の先には、ヘリポートを備えた工場があり、停まっている輸送ヘリに、一機のACが積み込まれようとしていた。
ウォルターからの指示に従って、レイヴンはACに襲い掛かる。ヘリを破壊されて逃げ道を断たれたACは、反撃してくる。相手の動きは
接近すると見せかけて、敵が応戦するために振ったブレードを空振りさせる。その隙に、レイヴンが敵を切り裂いて、戦いは呆気なく終わった。相手の若いパイロットは、悲痛な
レイヴンが受けた依頼の多くは、解放戦線を狙ったものだった。ルビコニアンであるエアは、複雑な気持ちをレイヴンに抱く。レイヴンは独立傭兵として、当然のことをしているまでだ。生きるために他者を喰らうのは、生物として至極真っ当な行いだ。だがエアは、レイヴンに、このルビコンで生きる人々のことを知ってほしいと思った。彼らの依頼を持ち込めば、その糸口になるかもしれない。
レイヴンの読み取れる記憶は、これくらいだった。壁越えと呼ばれる仕事の後、ウォルターの友人の依頼で封鎖機構の施設を襲撃している。エアと会った時のことだ。その後のことは、エアが自身で見てきた。RaDが占拠するグリッドに侵入し、その統領シンダー・カーラに認められ、カーゴランチャーまで辿り着いた。
目的の中央氷原は近い。そこではきっと、また新しい戦いが待ち受けているのだろう。そこには、大量のコーラルが眠っている。生きた
連載開始前のストックが尽きたので、以降は不定期の更新になります。