G13レイヴンに伝達!これは、ベイラムグループからの緊急依頼だ。
現在、我々の調査拠点である「壁」に、封鎖機構の執行部隊が接近している。「壁」が陥落すれば、ベリウス地方に展開している部隊は孤立に陥る。貴様には、「壁」に急行し、執行部隊を撃退してもらいたい。
執行部隊の中には、新型のHC機体も確認されている。こういった相手には、貴様が適任だ。今回は、俺も防衛部隊指揮のために出撃する。貴様と肩を並べて戦える日を、待ち望んでいたところだ。壁越えの傭兵の実力、しかと拝見させてもらおう。
G13レイヴン!確実な遂行を期待する!
ベイラムからの緊急の依頼を、621は承諾した。カーゴランチャーを使って渡ったアーレア海を、今はヘリで渡っている。
「621、作戦宙域では現在
ウォルターが、ヘリ後部のガレージコンテナで待機している621に、通信で伝える。621からの返事はない。だがそれは、いつものことだ。
ウォルターのオペレーティングシステムには、621の機体のデータが表示されている。そこには、代わり映えないRaD製フレームが映っている。カタフラクトとの戦闘の後、機体の
手に入れた金で、内装パーツは現行世代のものへ入れ替えた。これまでのパーツでは、もはや621の方についていくことができていなかったからだ。武装も、失った両肩の武装の代わりに、右肩に六連装ミサイルポッドを、左肩にはタキガワ・ハーモニクスのパルスシールドを装備した。新しい武装は、どちらも621が希望した物だったが、整備をしたカーラには面白みのない機体と酷評されていた。
「そろそろ飛行不能空域に入る。ここから先は、陸路で向かえ」
ヘリ後部のガレージを開け、機体を吊り下げる。「壁」には、ベイラムの部隊もいる。ザイレムの調査の時も、621は一人でうまくやったと、ウォルターは自分に言い聞かせた。
621が機体を起動し、ロックを解除する。フックの外れた機体は落下していき、可視化された白い風の中の影へと変わった。やがて、見えなくなった。
「どうやら、吹雪の影響でセンサー類の機能が低下しているようです。戦闘の際には注意を、レイヴン」
機体のカメラが捉える映像は、ホワイトアウトしていて、少し先の視界も見渡せない。既に幾度か、露出した
「すいません、レイヴン。今回は、私もサポートできそうにありません」
レイヴンは、構わないと言うように、軽く指を上げた。たったそれだけの意思疎通でも、エアは嬉しく思う。最近のレイヴンは、エアのことを幻聴扱いしなくなった。それはエアにとって、生きていると認めてくれたことに等しかった。
「座標ではそろそろ、到着するはずです」
かつて、レイヴンが越えた「壁」へ戻ってきた。今度は、ここを守る存在として。
『G13!やっと来たか』
ぼんやりと赤い光が灯り、白い暴風の中から、G6のハーミットがぬるりと現れる。
『今回はハンドラーの支援は無しか。まぁいい。封鎖機構も、この吹雪では強襲艦を飛ばせないだろう。条件は同じだ。さぁ、配置につけ!』
G6に先導され、「壁」の屋上へと上がる。
『貴様の仕事は、HCの排除だ。それ以外の敵は、こちらで引き受ける。同士討ちにだけは気を付けろ』
G6は、MT部隊の指揮のために市街地へと降りていった。防衛部隊の配置図が、通信で送られてくる。ベイラムのMT部隊は、市街地に布陣している。この天候では砲台からの支援も期待できない以上、混戦に持ち込んでLCの機動力を削ぐつもりなのだろうと、エアは思った。が……
「レイヴン、HCの火力と至近距離で戦うのは、無謀です。市街地を越えた広場に誘い込むのはどうでしょうか」
レイヴンが「壁」の配置図を見ながら考え込み、首肯した。あとは、封鎖機構が現れるのを待つだけだ。
「ザイレムの時と続いて、ウォルターのいない依頼になりましたね。こんな状況です、私にできることがあればなんでも言ってください」
レイヴンは再び首を動かすが、先ほどとは違い、心ここにあらずといった感じだ。ベイラムから提供されたHCのデータを、じっと眺めている。まるでデータから飛び出してくるのを、待っているかのように。