べリウス連峰を、雪の嵐が吹き荒れている。時が立つほど深くなっていく白い闇の中に、閃光が灯る。レーザーの熱が、雪を振り払うように天を
「壁」では、封鎖機構とベイラム部隊との戦闘が始まっていた。人工物の森の中で、封鎖機構のSGと、ベイラムのMTが入り乱れていた。レーザーが装甲を溶かし、機関銃の響きが断末魔を
そこから、やや「壁」に近づいた広場で、レイヴンとHCは交戦していた。ACの二回りは大きいであろうHCは、吹雪の中でも目立つ。
『優先排除対象、レイヴンを捕捉。確実に排除する』
レイヴンは、シールドを張りながらライフルとミサイルを撃ち込んでいくが、HCのパルスシールドに防がれて有効打には至らない。
『システムと通信が繋がらない。雪のせいでライフルの威力も落ちている。
HCが、ミサイルとともに接近してくる。その強力な推進力と、巨体の質量を持った突進は、それだけで脅威になりうる。レイヴンがブレードを起動し、応戦の構えを取る。
『こんな星はな、誰も立ち入るべきではなかったんだ!』
HCが、パルスシールドを構えたまま突進する。それを、レイヴンはパルスシールドで受け止めた。パルス波形が干渉し合い、過負荷を起こす。目がくらむような閃光とともに、両者のシールドが消滅した。
盾を失ったHCに、レイヴンがパルスブレードで切りかかるが、HCはさらにブースターを噴射してタックルで予備動作を潰す。レイヴンは体勢を崩され、攻撃の機会を逃した。
『それを、貴様が壊した!』
そこへ、HCのレーザーライフルが撃ち込まれるが、冷却を済ませたパルスシールドの展開時の最大出力で持って、受け止める。シールドを
『チッ……
エアから見て、機体の性能差は歴然だ。HCを倒すには、レイヴンが敵のパイロットを上回るしかない。
『クソッ!すまないG13!一機抜かれた!』
G6と交戦していた執行部隊の二機のLCの内、一機がHCの加勢として広場に来る。もう一機は、G6が辛うじて食い止めていたが、彼の実力ではそれが精一杯だろうと、エアは思った。
援護を得たHCは、先ほどとは違い射撃主体の戦法に移る。支援型のLCの火力と合わせて、レイヴンを封殺するつもりだ。二機から放たれるミサイルを回避する先に、レーザーライフルやバズーカの弾が待ち受けている。
「レイヴン、このままでは……」
避けきれない分を、パルスシールドで受け止めてはいるが、このままでは、敵の火力に押し切られてしまう。
レイヴンが、標的をHCからLCに移す。LCを倒して一対一に持ち込まない限り、勝機は無いと判断したのだろう。その隙を、HCが突いてきた。
『ようやく餌に釣られたな、レイヴン!』
レイヴンがLCを狙おうとした瞬間を狙って、HCが突撃してくる。先ほどと同じく、シールドを構えたタックルで、こちらの体勢を崩そうとしている。
だが、罠にかかったのはHCの方だ。レイヴンにとって、この行動こそが餌だった。距離を詰めてくるHCに対して、レイヴンが機体を屈める。
それは、新たに搭載した機能の予備動作だった。胴体ユニットの排熱弁が開き、レイヴンの機体を電撃が包み始める。
『しまっ……!』
HCのパイロットが、自身の失敗に気づいた時には、機体に近づき過ぎた後だった。その推力ゆえに、回避も間に合わない。レイヴンの放電が、HCを包み込む。
強制放電によって発生したパルス爆発に巻き込まれたHCは、回路が焼ききれて機能が完全停止した。そして、そのがら空きの胴体部へ、レイヴンがパルスブレードを叩き込む。斬撃はHCの装甲を破り、ジェネレーターにまで到達する。損傷によって故障したジェネレーターが暴走し、HCの内部で熱と電気の奔流となって循環する。
『独立傭兵レイブン……秩序を乱す……』
HCがあちこちから火を吹き、爆散する。
『准尉!コード31C!現状戦力での執行は困難!応答を乞う!』
LCが、パニック状態になりながらレイヴンを攻撃する。空中からミサイルを降り注ぐが、その背後を、バズーカ砲が撃ち抜いた。
『待たせたな!G13!』
市街地で交戦していたLCを撃破したG6が、援護に駆けつけてくれたようだ。彼の機体はボロボロで、断線した回路から蒼白い火花がバチバチと光っている。
『市街地の敵も殲滅した。なんとか……撃退できたな。礼を言うぞ、G13。……ぐあっ!?』
戦闘が終わったと気を抜いた直後、どこからか飛んできた砲弾がハーミットに命中する。頭部が吹き飛び、ハーミットは倒れ込んだ。
「レイヴン、どうやら新手です!増援でしょうか?」
しかし、砲弾の飛んできた方を向いても、そこには視界を遮る雪が映るばかりだ。
「!レイヴン、回避を!」
機体の熱源センサーが、かろうじて飛んでくる二発の砲弾を探知する。レイヴンが、ほとんど勘といってもいいような方向へ機体を跳ばす。二発の砲弾は、レイヴンが先ほどまで立っていた場所で爆発した。
ハーミットへの砲撃は、まぐれではない。敵は、正確にレイヴンの姿を捉えている。だが、荒れ狂う天候が、襲撃者の姿を隠していた。