「おーい、マーサ!」
「戻ったよ!」
「ああ、あんたたち!無事だったのかい!」
あれからクロウと別れ、俺は子供たちの案内でマーサのところへとやってきた。
子供たちが帰ってきて安心したのか、マーサは子供たちを抱きしめていた。
「まったく心配かけるんだから....ところで、あんたはいったい....」
「初めまして。俺は白波遊護って言います。」
「あらあら....なんだか遊星に似てるわね。でも遊星よりは明るい子みたいね。」
「アハハ...」
「それで...あんたが子供たちを?」
「ええ...ただ他の子たちはクロウが探しに行きました。」
「クロウが....とにかく、あんたもありがとね。」
「いえ、困ったときはお互い様ですよ。」
「あらあら!本当に良い子ね!」
そんなこんなで俺はマーサに気に入られたのか、マーサが管理している家に案内されることになった。どうやら最近はダークシグナーの影響か、サテライトの人間が行方不明になる事件が多発しているらしい。
サテライトの人間がどうなってもいいと思っているのか、セキュリティも真剣に取り合ってくれないとマーサも嘆いていた。
「それで...あんたはどうしてこんなところに?その身なり、Dホイールも持ってるし...シティの人間だろう?」
「俺は、俺自身にできることを探すためにここに来ました。サテライトは今、ダークシグナーによって恐ろしい場所へと変貌している。俺はダークシグナーを倒すために、ここに来たんです。」
「ダークシグナーを.....じゃあ、遊星たちとは仲間なんだね。」
「ええ。遊星たちとも約束しました。必ずダークシグナーを倒そうって。」
「そいつはありがたい話だね。」
俺とマーサが話していると、突然扉が開いて誰かが入ってきた。
白衣を着ているあたり、何かの科学者...か?
「っ!茜......い、いや...別人か。それに男だ...茜のはずがない。」
「神崎さん、突然どうしたんだい!」
「神崎?」
そんな人、原作にいたか...?
いや、心当たりがない...それにこんな見た目の人、見たことがない。
「マーサさん....ちょっとね。それで君....名前は。」
「白波遊護です。」
「遊護......いや、まさか....そんなはずは....あの子たちは17年前にゼロ・リバースで...」
「あの...一体どうしたんです?」
「そうだよ、神崎さん。顔色が悪いよ?いつもの発作かい?」
「い、いや....大丈夫....今日はもう薬を飲んでいるからね......それより遊護くん。君はダークシグナーを倒して、このサテライトを救ってくれるのかね?」
「はい、必ず。」
「そうか.....」
俺の言葉に頷いた神崎さんは、そのまま部屋を出ていった。
一体何だったんだろうか...年齢はそれなりにいってそうだが、俺を誰かと見間違えていた...?茜...心当たりはある。だが....いや、そんなはずは...
「気を悪くしないでおくれ。神崎さんは17年前のあの日、大切な娘さんを亡くしてるんだよ。」
「17年....ゼロ・リバースの日ですよね。」
「ええ...それからは無気力になっちまって、持病も悪化して...ほとんど1日中部屋にこもりっぱなしなのさ。」
「そうなんですか.....」
もし、17年前のあの日...俺が記憶を取り戻していたとしたら、あの人の娘さんも救えていたんだろうか。俺が記憶を取り戻していれば、あの人の凶行を止めることができたかもしれない。
「(そう考えると....むしろ俺の方が罪悪感を感じてしまう....)」
「ん?この音.....クロウが戻ってきたかもしれないね。」
「.....っ!確かに...子供たちの声が聞こえますね。」
「無事でよかった....とにかく、今日はもう遅いしあんたは泊まっていきなさい。」
「いいんですか?」
「もちろんだよ。困ったときはお互い様、だろ?」
「ふっ...じゃあ、お世話になります。」
こうして俺はクロウと子供たちを出迎え、ともに一夜を過ごした。
神崎さんのことは気になるが、俺はダークシグナーを倒す....そのためにサテライトへ来たんだ。今はそっちを優先しなくちゃな...
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その日の夜
「ふぅ.....風が気持ちいいな。」
普段と違う場所だからか、寝付けなかった俺は外へと出ていた。
この辺は黒い霧が届いていないからか、比較的明るい雰囲気を保てている。
「お前さん......まだ寝てなかったのか。」
「っ!...神崎さん。あなたこそ、こんな時間にどうしたんです?」
「うむ.....ちょっと休憩でな。」
「休憩.....何か作ってるんですか?」
「ああ....」
神崎さんは俺の隣に腰を掛け、空を見上げていた。
「ここは私のお気に入りの場所でな.....星が良く見えるんだ。」
「そうですね.....確かに、キレイに星が見える。」
「......17年前、私はこの地で科学者として働いていた。」
「....」
「娘と、義理の息子と一緒にな。孫もいた。だがとある理由で研究は中止となり、私は娘たちとともに研究の後始末を行おうとしていた。だが....私はそのころから病を患っていってな。私は娘たちを残して一人、研究所を離れたのだ。」
「....」
「そして、ゼロ・リバースが起きた.....私一人だけが助かってしまったんだ。あの時、私が無理にでもあの子たちを連れていけていれば...!娘も、息子も、孫も...私は失わずに済んだのかもしれん...」
「生き残った....」
「...?」
「生き残った意味が、必ずあると思います。17年前のあの日...俺もあのゼロ・リバースから運よく生き残りました。」
「なんだと?」
「俺もあの日、旧モーメントのところにいたんです。まだ子供だったけど、両親が二人とも科学者で、俺は二人と一緒にあの地にいた。生まれたばかりの弟もね。」
「....」
「旧モーメントの研究チームにいた人たちは、みんな良い人たちだった。関わりのなかった人たちもいたけど...みんなが俺にいろんなことを教えてくれた。」
前世の記憶を取り戻す前、俺はただの子供だった。
ただ純粋に、モーメント研究に夢中だったんだ。
そんな俺をみんなはかわいがってくれた。
"あの人たち"だって、そうだったんだ。
「だからこそ、俺はこう考えるんです。生き残った意味がきっとあるんだって。」
「生き残った意味...」
「俺は、あの日散ってしまったみんなのためにも...必ずモーメントの研究を続けてみせます。みんなが夢見た世界を実現するために....それが俺の生き残った理由....生きていく理由です。あなたにもきっと、生き残った理由があるはずです。」
「私が生き残った理由...か.....ありがとうな、遊護くん。私も少し考えてみるよ。」
そう言って、神崎さんは再び部屋へと戻っていった。
暗くてあまり表情は見えなかったけど、なんだかうれしそうにしていたような気がする。
「さて....俺も寝るか....」
「(ありがとうな....お前はきっと、私の........)」
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翌日....
「遊護兄ちゃん!起きて!」
「っ...う...うぅん.....もう朝か。」
「最近は曇っててわかりにくいよね。マーサが呼んでたよ!」
「ああ...ありがとな。」
「うん!」
子供はそう返事をすると、走って去っていった。
俺は起き上がって身だしなみを整え、マーサが待つ部屋へと歩いていく。
「(あれは....神崎さん?何かの機械をいじってるみたいだが....何をしてるんだろ。)」
歩いている途中、外で神崎さんが機械をいじっているのが見えた。
それが何なのかはわからなかったが、すごく真剣な表情をしている神崎さんを見て、それがとても大切なものなんだろうってのがわかった。
「おはよう、マーサ。」
「あら、起きたんだね。よく眠れたかい?」
「ああ。飯まで用意してもらって...本当にありがとう。」
「気にすることないよ。それに子供たちの相手や、部屋の修繕なんかもやってもらって...こっちこそ助かったよ。」
「当たり前のことをしただけさ。」
「ほんと、良い男だねえ!私がもう少し若かったら、あんたに唾つけてたのに。」
「アハハ...マーサは十分若いよ。」
「あら~!」
「ところで...話があるって?」
「あら、そうだった!どうやって調べたかわからないけど、あんたに手紙が届いてたわよ。ほら、これ。」
「手紙...?」
確かに妙だな...俺がここにいるなんて、ここにいる人たちくらいしか知らないはずだ。その人たちが手紙を用意する必要もない。一体誰が....
「っ!」
俺がそう思いながら手紙の確認すると、そこにはこう書かれていた。
『17年前の真実を知りたければ、今日の夜、この手紙に記された場所へ来い。』
「17年前の真実....これはいったい....」
「どういうことだい!?17年前って言ったら、ゼロ・リバースの...」
「わからない...もしかしたら、17年の生き残りが...いや...そんなはずは...」
「それで...どこに呼び出されてるんだい?」
「あ、ああ....どうやら、旧モーメント跡地の近くみたいだ。」
ガタッ!
「っ!誰かいるのか!」
俺とマーサが話していると、廊下から物音が聞こえたので急いで扉を開けた。
だがそこには誰もおらず、近くの窓が無造作に開けられているだけだった。
「逃げられた...?」
「一体誰だったんだろうね....もしかして、この手紙を送った人かしら。」
「いや...それは違うはず。俺の行動が筒抜けなんだ。わざわざ俺が手紙を受け取ったことなど、確認に来るはずがない。」
「う~ん....ま、考えても仕方ないね。」
「ああ.....(一体誰が....いや、まさかな....)」
あれから俺は念のためデッキの準備を行った。
これからの戦いは正真正銘、命がけの戦いだ。
憧れた世界に来て、憧れの人たちとデュエルして、俺は楽しかった。
だがこの世界を救うためには、楽しいデュエルだけではダメだ。
「(クロウとのデュエルの時も思わず使ってしまったが...もう出し惜しみしてるような次元ではなさそうだな。)」
俺は持っている複数のデッキをしっかりと懐にしまう。
そして数枚のカードを手に取り、それもケースにしまった。
「(お前らも使うことになるかもな.....)」
「遊護、行くのかい?」
「マーサ....ああ、行ってくる。」
「そうかい....気を付けていくんだよ。帰ってこないと怒るからね!」
「うん。わかってるよ。」
マーサは俺を抱きしめてくれた。なんだか母さんを思い出す。
17年前...8歳の俺を優しく抱きしめてくれた母さん...そして、厳しくも暖かい目で見守ってくれた父さん...今もきっと、俺を見守っていてくれている。
「ありがとう、マーサ。」
「いいんだよ。なんだかあんたは遊星に似てるからね...思わず抱きしめちゃったよ。」
「ああ.......じゃあ、行ってくる。」
「ええ。行っといで!」
俺はマーサと離れ、Dホイールにまたがる。
何者かはわからないが....17年前の真実とやらを聞かせてもらおうじゃないか。
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No side
「くくく...一人威勢よくやってきたかと思えば....久しぶりだな。」
「ぐっ....なぜだ....なぜ君がこんなことを...!」
「なぜと問うか。ならば答えてやろう。私がダークシグナーだからだ!」
「ダークシグナー....お前が.....!」
「あの男を始末する前に、とんだ邪魔が入ったと思ったが....くくく....これも一興だな。」
「ぐっ....あの子に手を出すな!」
「くくく....その口ぶり、どうやら気付いたようだな。あの男の正体に。」
「黙れ!」
「安心しろ。あの男はシグナーではない....私が手を下すまでもないのだからな!」
「っ....一体何を.......ぐ、ぐああああああああああああ!」
「さあ、早く来い....白波遊護......!17年前の因縁に、決着をつけようではないか!フフフ......フハハハハハハハハハハハ!」
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