遊護 side
「いい加減にしろ、ジャック!」
「ええい、うるさい!俺に合う仕事がないのだ。仕方あるまい!」
聞きなれた怒鳴り声に、周囲の人たちはまたか、とあきれた表情を浮かべていた。
俺はというと、本当にこんなセリフを吐く人間がいるんだと、逆に関心しながら二人の言い争いを聞いていた。
事の発端は、俺がクロウに相談を受けて、遊星たちの拠点の近くにある喫茶店へと出向いたことだ。俺がコーヒーを頼んで席に座っていると、しばらくしてクロウが来たのだが、なんとそこにジャックもおり、堂々とブルーアイズマウンテンを飲んでいたのだ。
クロウの相談というのも、ジャックが働かないにも関わらず、こうして浪費しているので何とかならないか、という話だったようだ。
「1年後の大会に向けて今が大事な時だろ!どうして協力できねえんだ!」
「俺だって協力しているではないか!日頃の疲れを、こうして癒しているのだ!」
「疲れを癒すために、1杯3000円もするコーヒーを頼むんじゃねえ!しかも何杯飲んでやがる!」
「このジャック・アトラス、安物のコーヒーで満足する舌ではない!」
「馬鹿野郎が....!」
あー、さすがにそろそろ止めないと、店にも被害が出そうだ。
というか、これが彼らの日常か...クロウは本当に苦労してるんだな。
ジャックもまあ、ジャックらしいというか....
「はい、二人ともストップ。」
「っ...遊護...」
「遊護...でもよ...!」
「落ち着けって、クロウ。...ジャック、どうしてクロウがこんなに怒っているか、少しは考えたか?」
「っ...俺とて、金を稼ごうと考えた。だが俺に見合った仕事がない以上、仕方あるまい!」
「見合った仕事、ねえ....ジャック、それは甘えじゃないか?」
「何っ!?俺が甘えているだと!?」
「仕事ってのは、何も楽しいばかりじゃない。むしろ大変で、できれば誰だってやりたくないものだ。でもやらなきゃならない....どうしてかわかるか?」
「それは....」
「生きるためだ。なのに、ジャックは自分には合わない、やりたくないことはやりたくないと言っている。これは甘えだろう?」
「ぐっ....し、しかし...」
「ハァ.....そんなジャックに、俺が仕事を取ってきた。」
「なんだと!?」
「ま、まじかよ、遊護!」
俺の言葉に、ジャックもクロウも驚きの表情を浮かべていた。
はっきり言って、普通の仕事はジャックには向いていない。
だったら、普通じゃない仕事をやらせればいい。
「これだ。よく見て、受ける気があるなら、明日一緒に現場に向かうぞ。」
そう言って、俺は1枚の紙きれをジャックに渡す。
ジャックとクロウはその紙を真剣に見つめている。
「何々....デュエルライブ...?」
「あなたのデュエルを生放送で配信...出演だけで、10万...デュエルに勝てば、さらに50万をお支払いします....こ、これは...!?」
「簡単に言うと、デュエルしている様子をインターネットに生放送するって企画だ。開催元は治安維持局。主催者は御影さん。だから安心できる。」
「ふん....よくわからんが、デュエルして勝てばいいということだな。面白い!俺は出るぞ、遊護!」
「お、おい...これってもしかしなくてもよ...」
「ああ、まあ...俺が頼んだ。」
そりゃ、こんな都合の良い企画があるわけない。
俺が御影さんに頼んで、ジャックのために用意したものだ。
御影さんはジャックのことが好きだし、頼めば何とかしてくれると思っていたが、ここまで簡単に用意してくれるとは思わなかった。
「それで...相手は誰だ?」
「それは...当日のお楽しみだな。」
「ふん....誰であろうと、このジャック・アトラスが蹴散らしてくれる!」
「へえ...それは楽しみだ。」
「あん...?(あ、もしかして.....ジャックのやつ、ご愁傷様だな。)」
--------------------------------
そして、デュエルライブ当日。
『さあ、皆さんお待たせしました!本日は治安維持局が、1年後のワールドライディングデュエルグランプリを盛り上げるため、イベントを企画させていただきました!グランプリにも出場を表明しているデュエリスト、ジャック・アトラス様によるライディングデュエルを、皆さまにお届けします!』
「この俺の出番のようだな!」
『さあ、ジャック選手、見事なライディングテクニックで華麗に登場!本日の主役は華やかです!』
『み、御影さん...私情は抑えて......あー、ええっと、今回の企画担当の牛尾だ。今回はさっき御影さんが言ったように、1年後のワールドライディングデュエルグランプリを盛り上げるための企画となっている。そのために最高のデュエリストを用意したつもりだ。だから存分に楽しんでくれ。』
「ふん...どんなデュエリストが来ようと、この俺が蹴散らしてくれる!」
「そうか...なら、その実力を存分に見せてもらおうか!」
「こ、この声は....!」
『さあ、アトラス様の対戦相手がついに登場です!白波遊護!現在は休職中ですが、モーメント開発の第一人者!フォーチュンカップでは決勝まで勝ち上がり、不動遊星と激闘を繰り広げたデュエリストです!』
「ま、まさかお前が相手なのか...!」
「ああ、当然だろ。」
「ぐっ...ま、まさかお前が相手とは...」
「ふっ...どうしたよジャック。さっきまでの威勢がまるで感じられないな。」
「ぐぅ....こ、このジャック・アトラス、どんな相手だろうと我が力で蹴散らしてくれる!」
「ふっ....その意気だ。さあ、俺に勝って、50万を手に入れてみせろ!」
『さあ、いよいよデュエルが開始します!果たしてデュエルを制し、大金を手に入れるのはどちらでしょうか!』
「「『スピードワールド2』、セットオン!ライディングデュエル、アクセラレーション!」」
互いにDホイールのアクセルを踏み込み、サーキットを走り出す。
ジャックとのデュエルは久しぶりだが、どれほど実力をつけているか俺が試してやる!
「「デュエル!」」
「先攻は俺だ!ドロー!」
遊護 手札5→6
『最初のコーナーを取ったのは白波遊護!果たしてアトラス様にどう立ち向かっていくのでしょうか!』
『遊護のデッキは展開力に優れていて、毎ターン、シンクロ召喚してくるくらいだ。ジャックのデッキはパワータイプだが、遊護のテクニカルデッキとどう戦うかが見ものだな。』
「俺は『ジャンク・フォワード』を特殊召喚!このカードは、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚できる。さらに『アサルト・シンクロン』を通常召喚!」
「チューナーモンスター...やはり、いきなり来るか!」
「当然!俺はレベル3の『ジャンク・フォワード』に、レベル2の『アサルト・シンクロン』をチューニング!集いし想いが、歴戦の英雄を呼び覚ます!光差す道となれ!シンクロ召喚!『スカー・ウォリアー』!」
まずはこのモンスターで、ジャックの出方をうかがう。
ジャックも当然、次のターンで魂である『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を出してくるはずだからな。
「俺はカードを2枚セットして、ターンエンド。」
遊護 手札6→2
スカー・ウォリアー ★5 ATK:2100
リバースカード ×2
「俺のターン、ドロー!」
ジャック 手札5→6, SPC:0→1
遊護 SPC:0→1
「遊護、俺の進化したデュエルをお前に見せてやろう!」
「へえ...じゃあ見せてもらおうかな!」
「思う存分見せてくれる!俺は手札から『バイス・ドラゴン』を特殊召喚!このカードは相手の場にのみモンスターが存在する場合、ステータスを半分にして特殊召喚できる!さらに『ダーク・リゾネーター』を召喚!」
出たか...ジャックの『レッド・デーモンズ・ドラゴン』最速召喚パターン!
攻撃力3000のモンスターが1ターン目から出てくるのは、やっぱりこの時代においては強烈なインパクトだよな。
「俺はレベル5の『バイス・ドラゴン』に、レベル3の『ダーク・リゾネーター』をチューニング!王者の鼓動、今ここに列をなす!天地鳴動の力を見るがいい!シンクロ召喚!我が魂!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!」
『出ました!アトラス様の魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン!』
『いきなり遊護の出したシンクロモンスターの攻撃力を上回ったな。だが遊護のモンスターは、1ターンに1度、戦闘では破壊されない。ダメージは受けるが、次のターンに活かすことができる。』
「ふん...このジャック・アトラス、次のターンなど恐れはしない!いけ!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!『スカー・ウォリアー』を攻撃せよ!」
「ふっ...やはり向かってくるか、ジャック!」
「当然だ!我が魂の一撃を受けるがいい!アブソリュート・パワー・フォース!」
「『スカー・ウォリアー』は1ターンに1度、戦闘では破壊されない!」
「それがどうした!我が力の余波を受けろ!」
「くっ!ライフで受ける!ぐああああああああああ!」
遊護 LP4000 - 900 → 3100
『遊護がいきなり900ポイントもダメージを受けちまったな。だがモンスターは場に残ったまま...次のターンがどうなるかだな。』
『さすがアトラス様....』
『み、御影さん...一応これ、全国放送ですよ...』
さすがだな、ジャック。いきなりエースの『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を召喚してくるとは...だが、俺も負けてはいられないな。
「俺はカードを1枚セットし、ターンエンドだ!」
ジャック 手札4→3
レッド・デーモンズ・ドラゴン ★8 ATK:3000
リバースカード ×1
「俺のターン、ドロー!」
遊護 手札2→3, SPC:1→2
ジャック SPC:1→2
「さて...ここからどう動くかな。」
「遊護!この俺とのデュエル、手を抜くことなど許さんからな!」
「ハハ...俺はいつでも全力でデュエルするさ。」
「そう来なくては...リベンジの意味がない!」
「じゃあ、早速行かせてもらおうか!俺は『ジャンク・シンクロン』を召喚!そしてその効果により、墓地から『アサルト・シンクロン』を特殊召喚する!」
「レベル5の『スカー・ウォリアー』に、レベル3の『ジャンク・シンクロン』...来るか、貴様のエースが!」
「いいや...君が相手ならこっちを使わせてもらおうかな!俺はレベル5の『スカー・ウォリアー』に、レベル3の『ジャンク・シンクロン』をチューニング!漆黒の闇を裂き、天地を焼き尽くす孤高の絶対なる王者よ!万物を睥睨し、その猛威をふるえ!シンクロ召喚!『琰魔竜 レッド・デーモン』!」
「っ!来たか、『レッド・デーモン』!」
「その効果、よく知っているよな!」
「ああ!だからこそ、使わせるわけにはいかん!俺はトラップカード、『デモンズ・チェーン』を発動!これにより、『レッド・デーモン』は効果が無効化され、攻撃できない!」
ジャックが発動したトラップカードから鎖が放たれ、俺の『レッド・デーモン』を縛り上げる。『レッド・デーモン』はうめき声をあげながら拘束されてしまった。
「どうだ!これで俺の『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を効果で破壊することはできなくなったな!」
「ああ...だが、それで俺を止めたつもりなら甘いぞジャック!」
「何!?」
「ジャック...お前に新たな力を見せてやる!俺はレベル8の『琰魔竜 レッド・デーモン』に、レベル2の『アサルト・シンクロン』をチューニング!」
「っ!レベル10...『サテライト・ウォリアー』か!」
「否!お前に見せてやる!シグナーの竜...そして俺の決闘竜たちの可能性を!泰山鳴動!!山を裂き地の炎と共にその身を曝せ!!シンクロ召喚!『琰魔竜 レッド・デーモン・ベリアル』!
俺が新たなシンクロモンスターのカードを天にかざすと、『デモンズ・チェーン』によって縛られていた『レッド・デーモン』が咆哮を上げ、その鎖を力で引きちぎる。
さらにそこに『アサルト・シンクロン』が光となり、調律の輪を生み出し、『レッド・デーモン』はその輪をくぐる。
そして、そこに現れたのは新たな姿をした『レッド・デーモン』だった。
「『レッド・デーモン・ベリアル』....これが、『レッド・デーモン』の新たな姿...!」
「そうだ!ジャック...お前たちの持つシグナーの竜も、俺の持つ決闘竜も、それぞれが新たな力を得る可能性がある。それを今、お前に見せてやろう!」
「くっ!」
「俺はトラップカード、『エンジェル・リフト』を発動!その効果により、墓地の『アサルト・シンクロン』を復活!」
『遊護のやつ、一体何をしようとしている...すでにレッド・デーモンズ・ドラゴンより攻撃力の高いモンスターを召喚したんだ。わざわざ攻撃力の低いアサルト・シンクロンを出す理由は...』
「さらに俺は『ベリアル』の効果発動!自分のモンスター1体をリリースすることで、墓地に眠る『レッド・デーモン』をよみがえらせる!」
「なんだと!?」
「俺は『アサルト・シンクロン』をリリースし、墓地の『琰魔竜 レッド・デーモン』を復活させる!」
俺の効果発動の宣言を聞いた『ベリアル』が咆哮を上げると、地面から炎が湧き出し、『アサルト・シンクロン』を包み込む。するとその炎の中から『琰魔竜 レッド・デーモン』の腕が飛び出し、ついにはその炎を吹き飛ばして姿を現した。
「さあ、バトルだジャック!」
「くっ!」
「『ベリアル』で『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を攻撃!割山激怒撃!」
「ぐっ!ぐおおおおおおおおおおお!」
ジャック LP4000 - 500 → 3500
『ベリアル』から放たれた炎をまとった拳が、『レッド・デーモンズ・ドラゴン』の腹を突き破り破壊する。その衝撃がジャックを襲う。
「これで終わりじゃないぞ、ジャック!『ベリアル』の効果発動!このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、自分のデッキ、墓地からそれぞれ1体ずつ、レベルが同じチューナーを守備表示で特殊召喚する!俺は墓地の『ジャンク・シンクロン』、デッキの『スチーム・シンクロン』を特殊召喚!」
「くっ!」
「そして、『琰魔竜 レッド・デーモン』で追撃する!アブソリュート・ヘル・ドグマ!」
今度は『琰魔竜 レッド・デーモン』の炎をまとった拳が、ジャックへと襲い掛かる。
この攻撃が通れば、ジャックのライフは一気に削れて500。新しくなった『スピードワールド2』には、スピードカウンターが4つあるとき、手札のスピードスペルの数だけ、ダメージを与える効果がある。
『これが通れば、ジャックは一気に追い込まれるぞ!』
『ダメ!アトラス様!』
「通してなるものか!俺は手札の『バトルフェーダー』の効果を発動!攻撃を無効にし、このカードを特殊召喚!その後、バトルフェイズを終了させる!」
寸前まで迫っていた『琰魔竜 レッド・デーモン』の拳を、突如現れた『バトルフェーダー』が阻止する。
「命拾いしたな、ジャック。」
「っ...まだ俺は負けていない!お前を倒してみせる!」
「ならやってみせてもらおうか。俺はこれでターンエンド!」
遊護 手札2
琰魔竜 レッド・デーモン・ベリアル ★10 ATK:3500
琰魔竜 レッド・デーモン ★8 ATK:3000
ジャンク・シンクロン ★3 DEF:500
スチーム・シンクロン ★3 DEF:800
リバースカード ×1
ジャック 手札3→2
バトルフェーダー ★1 DEF:0
デモンズ・チェーン(対象なし)
「くっ...(さすがは遊護だ。罠を仕掛けても、容易く突破してくる。だがWRGPで勝つためにも、簡単に負けるわけにはいかんのだ!)俺のターン、ドロー!」
ジャック 手札2→3, SPC:2→3
遊護 SPC:2→3
「...よし!俺は『SP-リベンジ・シンクロ』を発動!自分のスピードカウンターが2つ以上あるとき、前のターンに破壊されたシンクロモンスター1体を墓地からエクストラデッキに戻し、その後、墓地にそのシンクロモンスターのシンクロ素材があれば手札に戻す!俺は『レッド・デーモンズ・ドラゴン』をエクストラデッキに戻し、その素材とした『バイス・ドラゴン』、『ダーク・リゾネーター』を手札に戻す!」
ジャック 手札3→2, 2→4
「ただし、このカードを発動したターンに、この効果でエクストラデッキに戻したモンスターをシンクロ召喚しなければ、俺はその攻撃力分のダメージを受ける。」
「へえ...でも、君の場には『バトルフェーダー』がいる。『バイス・ドラゴン』が特殊召喚できないなら、シンクロ召喚は難しいんじゃないか?」
「何の!俺は繋げてみせる!俺はさらに『SP-王の錬金釜』を発動!自身のスピードカウンターが2つ以上の時、自分の場の永続罠を墓地に送ることで、カードを1枚ドローする!俺は『デモンズ・チェーン』を墓地に送り、1枚ドロー!」
ジャック 手札4→3, 3→4
「よし!俺はさらに『SP-デビルショック』を発動!」
「っ!」
ここまでスピードスペルでデッキを回して...パワータイプなのにこういったテクニカルな動きをできるのが、ジャックの強さだな。
「俺のスピードカウンター以下の悪魔族モンスター1体をリリースすることで、相手の場のモンスター1体の攻撃力を、このターン中、1000ポイント下げる!俺は当然、『琰魔竜 レッド・デーモン・ベリアル』の攻撃力を下げる!」
「くっ!」
遊護
琰魔竜 レッド・デーモン・ベリアル ★10 ATK:3500 - 1000 → 2500
琰魔竜 レッド・デーモン ★8 ATK:3000
ジャンク・シンクロン ★3 DEF:500
スチーム・シンクロン ★3 DEF:800
リバースカード ×1
『これでジャックの場のモンスターはいなくなったな。』
『つまり、手札のバイス・ドラゴンとダーク・リゾネーターの召喚で...』
『ええ、再びレッド・デーモンズ・ドラゴンがシンクロ召喚される!』
「行くぞ、遊護!俺は手札の『バイス・ドラゴン』を特殊召喚!このカードは俺の場にのみモンスターが存在しない場合、ステータスを半分にすることで特殊召喚できる!さらに『ダーク・リゾネーター』を通常召喚!」
「さすがだな、ジャック...!」
「見るがいい!これが俺の魂!俺はレベル5の『バイス・ドラゴン』に、レベル3の『ダーク・リゾネーター』をチューニング!王者の鼓動、今ここに列をなす!天地鳴動の力を見るがいい!シンクロ召喚!我が魂!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』!」
ジャックの魂、『レッド・デーモンズ・ドラゴン』。
まるで地獄から甦ったかのように、地面から噴き出した炎の中から飛び出してきた。
その気迫に、俺の場のモンスターたちはかすかにふるえているように見える。
「行くぞ、遊護!『レッド・デーモンズ・ドラゴン』で、『琰魔竜 レッド・デーモン・ベリアル』に攻撃!アブソリュート・パワー・フォース!」
「くっ!迎え撃て、『ベリアル』!」
『レッド・デーモンズ・ドラゴン』が炎をまとった拳で殴りつけてくる。
負けじと『ベリアル』も拳に炎をまとわせて殴り掛かるが、ジャックの使ったスピードスペルによって、『ベリアル』の力は弱っていた。
『レッド・デーモンズ・ドラゴン』と『ベリアル』の拳がぶつかり合うが、『レッド・デーモンズ・ドラゴン』の方の勢いが強く、『ベリアル』の腹を突き破るように拳が通り抜けた。
「ぐああああああああああ!」
遊護 LP3100 - 500 → 2600
「くっ...やるな、ジャック...!」
「まだだ!『SP-リベンジ・シンクロ』の効果はまだ残っている!この効果でデッキに戻したシンクロモンスターによって、相手モンスターを破壊した場合、俺のモンスターはもう一度攻撃でき、このターン中、攻撃力が500ポイントアップする!」
「何っ!?」
ジャック
レッド・デーモンズ・ドラゴン ★8 ATK:3000 + 500 → 3500
「今度は『琰魔竜 レッド・デーモン』に攻撃だ!灼熱のクリムゾン・ヘル・フレア!」
「くっ...負けるか!アブソリュート・ヘル・ジャッジ!」
2体の『レッド・デーモン』のブレスがぶつかり合う。
お互いに全力をぶつけあうが、ジャックの『レッド・デーモンズ・ドラゴン』の放つブレスの方が勢いが強く、徐々に俺の『琰魔竜 レッド・デーモン』のブレスが押されていく。
「いけえええええええええ!」
そしてそのまま、『レッド・デーモンズ・ドラゴン』のブレスが『琰魔竜 レッド・デーモン』を包み込み、大きな爆発を起こした。
「ぐああああああああああ!」
遊護 LP2600 - 500 → 2100
まさかたった1ターンで、俺の2体の『レッド・デーモン』が破壊されてしまうとは...これがジャックのデュエル、チーム5D'sの底力...!
「俺はこれでターンエンドだ!」
ジャック 手札1
レッド・デーモンズ・ドラゴン ★8 ATK:3000
『すげえな、ジャック...絶体絶命の状況から、遊護のシンクロモンスターを2体も破壊しやがった。』
『さすがアトラス様...』
「どうだ、遊護!これが俺の力だ!」
ジャックが並走しながら、俺にそう言ってくる。
確かに、今のターンの攻撃は驚いたな。ジャックもダークシグナーとの戦いを経て、強くなっている。だが...!
「このデュエル、勝つのは俺だ!」
「っ!」
俺はアクセルを踏み込み、スピードを上げる。
確かにジャックも力をつけた...だがまだ、俺は負けるつもりはない!
「俺のターン、ドロー!」
遊護 手札2→3, SPC:3→4
ジャック SPC:3→4
「『SP-オーバー・ブースト』を発動!エンドフェイズにスピードカウンターを1にする代わり、スピードカウンターを4つ増やす!」
遊護 手札3→2, SPC4→8
「さらに『スピード・ワールド2』の効果発動!スピードカウンターを7つ取り除き、カードを1枚ドロー!」
遊護 手札2→3, SPC8→1
「さらにトラップカード『活路への希望』を発動!相手ライフと1000ポイント以上の差がある場合、ライフを1000ポイント支払って発動できる。ライフ差2000ポイントにつき、カードを1枚ドロー!」
遊護 LP2100 - 1000 → 1100、手札3→4
『これで遊護のライフは1100....そして、ジャックのライフは3500だ。』
『つまり、1枚ドローできるってことね。』
「手札交換か...だが、我が魂を突破できるカードが、そう簡単に引けるか!」
「いや.......俺の勝ちだ。」
「何っ!?」
「俺は『ブースト・ウォリアー』を特殊召喚!このカードはチューナーが場に存在する場合、手札から特殊召喚できる。さらに『マックス・ウォリアー』を通常召喚!」
遊護 手札4→2
ジャンク・シンクロン ★3 DEF:500
スチーム・シンクロン ★3 DEF:800
ブースト・ウォリアー ★1 DEF:200
マックス・ウォリアー ★4 ATK:1800
「俺はレベル4の『マックス・ウォリアー』に、レベル3の『スチーム・シンクロン』をチューニング!集いし信念が、七つにきらめく刃となる!光差す道となれ!シンクロ召喚!抜刀せよ!『セブン・ソード・ウォリアー』!」
「何っ!?ここで『セブン・ソード・ウォリアー』だと!?だがこのデュエルはライディングデュエル!装備魔法はない!」
「装備魔法は、な。」
「何!?」
「俺は続けて、レベル1の『ブースト・ウォリアー』に、レベル3の『ジャンク・シンクロン』をチューニング!シンクロ召喚!『アームズ・エイド』!」
「こ、ここで『アームズ・エイド』だと!?」
そう、ライディングデュエルでも装備カードを用意することは可能!
『セブン・ソード・ウォリアー』の真価も発揮できる!
「『アームズ・エイド』の効果発動!1ターンに1度、このカードを装備カードとしてモンスター1体に装備可能!俺は『アームズ・エイド』を『セブン・ソード・ウォリアー』に装備!これにより、攻撃力が1000ポイントアップ!」
遊護
セブン・ソード・ウォリアー ★7 ATK:2300 + 1000 → 3300
アームズ・エイド(装備)
「さらに『セブン・ソード・ウォリアー』の効果発動!このカードに装備カードが装備されたとき、相手に800ポイントのダメージを与える!」
「ぐお!」
ジャック LP3500 - 800 → 2700
「さあ、これで終わりだ!『セブン・ソード・ウォリアー』で『レッド・デーモンズ・ドラゴン』を攻撃!抜刀・武装巨腕一閃!」
『セブン・ソード・ウォリアー』は装備した『アームズ・エイド』に持たせた剣で、『レッド・デーモンズ・ドラゴン』に切りかかる。『レッド・デーモンズ・ドラゴン』も負けじと炎を拳に纏わせて対抗してくるが、剛腕となった『セブン・ソード・ウォリアー』のパワーには敵わなかったのか、そのまま一刀両断され破壊された。
「くっ...ぐおおおおおおおおおお!」
ジャック LP2700 - 300 → 2400
「ぐっ...俺の、負けか。」
「ああ。『アームズ・エイド』の効果発動。このカードを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し、墓地に送った時、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。」
『レッド・デーモンズ・ドラゴンの攻撃力は3000...つまり、ジャックは3000ポイントのダメージを受けることになる。』
『アトラス様の負け....』
「くっ...」
ジャック LP2400 - 3000 → 0
---------------------------------
ジャック side
「見ろよジャック。今日もアーカイブが放送されてるぜ?」
「ふん...自分が負けたデュエルなど、何度も見るやつがいるか!」
あれから遊護のおかげで、クロウに文句を言われんほどには稼ぐことができた。
遊護には感謝せねばならんが、あの日のデュエルがこうも何度も放送されているのは、はっきり言って不愉快だ。
「(あの日のデュエル、俺は全力でぶつかり、勝ちを確信していた。だが、結局のところ簡単に逆転負けしてしまった。)」
あの日、遊護は語った。奴のシンクロモンスターのように、俺たちのシグナーの竜にも新たな可能性が秘められていると。つまり、すでに奴はその新たな可能性...力を手にしている。だからこそ、奴は俺たちのさらにその先を進んでいるのだ。
「(ならば、俺もその可能性とやらを掴む必要がある....だが、果たしてそれはいったい何なのだ...)」
もしもその力を手にした時、俺は遊護を超えることができるのだろうか。
いや、遊護だけではない....遊星、俺はお前にも....
「(遊護....お前とともにいれば、俺は強くなれる。そう考えると、もしも奴がチームに入ってくれれば......否、このチームは俺と遊星、クロウのチーム。WRGPは3人のリレー形式のデュエルである以上、遊護が入ったところで....だが、もしも....)」
「ジャック、どうしたんだ?」
「っ!遊星......いや、なんでもない。」
「そうか。疲れているなら、テストはあとにするか?」
「ふん!このジャック・アトラスに疲れなどありはしない!」
「ふっ...なら頼んだぞ、ジャック。」
「おう!」
-----------------------------------------------
??? side
「キヒャヒャヒャ!見てよ、これ!」
「なんだ。」
「この前、急激にサーキットが現れたんだ。なんでだと思う?」
「いいからさっさと答えろ。俺はお前と違って暇じゃないんだ。」
「チッ...相変わらずむかつくな。...まあいいや。どうやらその日、不動遊護とジャック・アトラスがデュエルしたみたいだよ。」
ほう...不動遊護と、シグナーであるジャック・アトラスのデュエルか。
「それで....理由はわかったのか?」
「まだはっきりとはわかってないから憶測だけど、シグナーが不動遊護の近くでデュエルをすると、通常よりも多くのサーキットが描かれているみたいだよ。」
「なるほど...不動遊護による共鳴現象ともいうべき事象か。」
「共鳴現象?」
「あの人も言っていただろ。不動遊護には特別な力があり、それはシグナーとともにいることでさらなる力を発揮すると。」
「ふ~ん...それってつまりさ、僕たちの計画をより進めるなら不動遊護とシグナーを引き合わせてデュエルさせればいいってことだよね。」
「そうだな....それも悪くないかもしれんな。」
「ならその計画、僕がちょっと試させてもらおうかな!」
「おい、ルチアーノ。今は俺がメインのはずだが。」
「まあいいじゃん、プラシド。僕はこっそりやるからさ。」
ふむ...ルチアーノに任せるのは少々不安だが、プラシド一人に任せるのも同じか。
ならば儂はここで動きを確認し、二人に任せてみるのも一興か。
「良いだろう。ルチアーノとプラシド、それぞれで動くといい。」
「チッ...仕方ねえ。」
「キヒャヒャヒャ!さすがホセ。わかってるじゃん。」
「だが目立つ行動は避けよ。今は急く時ではない。」
「わかってるよ。」
「ふん...」
さて、不動遊護よ。悪いが儂らの計画の礎となってもらおう。
あの方もそれを望んでいるのだからな。
.