俺はギャンブルなんてしないぞ!絶対に!(フラグ)   作:カリ梅

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久しぶりに賭ケグルイを見かけたから書いてみた。


第1話

 

 

 

「──ち、チェックメイト…」

「ふぅ……負けね」

 

 

 

校舎屋上。

一角の休憩スペースにてテーブルを挟んで向かい合う男女。

 

頬に手を当て微笑む女。テーブルに突っ伏した男。

間のテーブルに置かれたのはチェス盤。

 

勝負は男の勝ち。

 

だが、その様相は真反対の印象を受けるものだった。

 

「し、しんどすぎる…」

「私は楽しかったわよ?」

 

「そらそうでしょうね!」

 

 

叫ぶ男を見て、目を細めさらに笑みを深めた女は傍らに立つ仮面をつけた女へと声をかけた。

 

「リリカ」

「………」

 

呼ばれた女は無言で水のペットボトルを男の側へと置いた。

 

「やっぱり、あなたとのゲームは面白いわ」

「俺は面白くないですけどね…!」

「次は将棋でもどうかしら?」

 

「連戦は無理ぃ!!」

 

 

どこから取りだしたのか。

女の手には将棋盤。傍らに経つ女の手には駒が入った箱。

 

それを見て男は全力で首を横に振りながら頭を掻き毟った。

 

「頭がパンク寸前なんですよ…!アンタ方に付き合うといつもこうだ…!こっちは全力でやってヘタるのにそっちは涼しい顔して負ける…!全力出してないくせに面白いとかイヤミですかねぇ…!」

 

「あら、これでも本気で戦ってはいるわよ?全力かどうかは別として」

「じゃあイヤミじゃん!……あー、俺って惨め」

 

ぐでーとつぶれる男を眺め……そして舌なめずりをした目の前の女。

その目は妖しく、獲物を狙う獣のように、蛙を睨む蛇のように、鋭く舐めまわすように男を映していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺こと、九十九(ツクモ)(カケル)は平凡な男だ。

 

花の中学2年生。クラスメイトと馬鹿やったり、左手に闇の力が滾るようなそんな時期。

 

勉強は苦手、運動は得意。

趣味特技はゲームで同年代の中じゃまず負けることは無い。それくらいしか特徴がない至って極々平凡な男子中学生。

 

朝起きて、登校して、授業を受け、放課後は駅前とかで友人と買い食いをする。そんな日常を送っていた。

 

その日(▪▪▪)もそんな一日を過ごせる。そう思っていた。

 

 

 

 

 

「──次の数学小テじゃん」

「うっわ、自信ないわ〜」

「カケルは?勉強した?」

 

廊下を友人3人と歩く休み時間。

投げられた質問に手を振りながら首を横に振った。

 

「するわけ」

 

半笑いをうかべそう言うと、だよねーなんて声が返ってくる。

 

3人の友人。次の少テストに自信がない。そんな様子を見せて嘆いている。ように見せているやつが1人いる

 

2人は投げやりに、どうでも良さそうに。

ただ1人は声のトーンが若干高い。つまらなそうな演技を見せて余計な動作が多くもなってるし、口元が少しばかり上がってる。

 

──それなりに勉強したな、こいつ。

 

フッと呆れたように笑えば目が合った。

と思ったら他2人に見えないように口に人差し指を当てるそいつ。

 

俺が気づいたことに気づいたな。

 

別に勉強を真面目にやってることは悪いことじゃないのになぜみんな他人に隠そうとするんだろうな。

ふー、やれやれ勉強してないのに高得点だぜムーブをしたいのか。アホくせ。

 

ま、黙っとけと言われたのなら黙っておこう。

 

と、そんな何気ない会話をしつつ廊下を進んでいくと、目の前から女子生徒数人が歩いてきていた。

 

「………っ」

 

「お、あれ会長達だ」

「美人すぎてあそこだけ世界が違いすぎる」

「副会長さんの仮面の下、見てみたいよな?……見てみたくない?」

 

友人3人のそんな会話を耳に入れつつ、俺は1歩後ろに下がった。

知り合い……じゃない。ただ苦手だ。

 

生徒会長、桃喰綺羅莉と副生徒会長、桃喰リリカ。

1コ上、つまり3年の2人。

 

副会長はまだいい。仮面は気になるが素顔は見た事ないし、人の趣味に口を出す気もない。

ただ会長だ。会長のあの目。あの目が嫌だ。

 

人を見下す……と言うよりも観察するような目。

狙われたら逃げられないような、そんな錯覚が起こる程の鬱陶しい視線。

 

「……ん?どうした?カケル」

「あ、ああ、俺便所……」

「おう、そっか。じゃあ俺ら先行ってるぞ」

「お、おう」

 

そう言って別れ踵を返しトイレへと向かおうとした、その時だった。

 

「……………」

「………っ」

 

会長と目が合った。

 

一瞬、たかが一瞬。それでも背筋に走った寒気。

そして、微笑むだけだったその口が開き、小さな赤い三日月が見えた俺はすぐに視線を外して足早にトイレへと向かった。

 

 

 

目が合った。目が合った、よな?

 

用を足しながら考える。

そもそもなんで目が合ったのか。偶然?

口を開いて笑っていたのも副会長と話してその会話で笑っていただけかも?

 

そうだ。考えすぎだ。

 

成績優秀、なんでも出来る完璧な生徒会長。

そんな人がまさか俺なんかをどうこう思うはずもない。

 

手を洗い、ハンカチで拭いてから鏡で髪を整える。

 

「……よし」

 

手を振り、ダメ押しの水切り。

それをしてからトイレの戸を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた……どうして私から逃げるの?」

 

 

 

 

 

息が詰まった。時間が止まった。

 

背後からかかった声に恐る恐る振り返ると。

そこにいたのは──

 

「……ふふ」

 

──生徒会長、桃喰綺羅莉だった。

 

「ひぇ……」

「あら、そんな怯えなくてもいいじゃない。私は聞いてるの。なんで逃げるの?」

「に、逃げてなんて「嘘」……」

 

「去年、あなたが1年、私が2年の頃からよね?喋ったこともなければ何か関わりがあった訳でもない。それでもあなた……一目見た瞬間から私を避け始めたわね?」

 

「…………」

 

へ、へへ……バレテーラ。

クソ、こうなれば強引に逃げ……おい、逃げようとした先に副会長いんじゃないの。終わったわ。

 

……こうなればやるか、必殺技。抜くか、伝家の宝刀。

 

俺は、ビシッとキレよく指を立て明後日の方向にその指を向けながら口を開いた。

 

 

 

「あ!UFOッ!!」

 

 

 

今だ!

 

 

 

──ガシッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな手が通用すると思ってるの?」

 

「ひえぇ……!」

 

何この人怖いめぅ…。

チビりそう……あ、さっき用足したからチビるもんがねえや。

 

「質問に答えなさい?なぜ逃げるの?」

「え、ええ…?なんでこんな男にそんな固執してるんです…?」

 

「質問に質問で返されたら困るのだけど。……そうねえ、端的に言えば気になったから、ね。他とは違う、そう感じたからこうして直接来た。それだけよ?さて、私は答えたわ。次はあなたの番」

 

無理やり目を合わせてくる会長。

後ろに足を進めれば1歩近づいてくる。

 

冷や汗が垂れる。

目の前の女の目が妖しく光る、そんな錯覚を覚えるほどの眼光。

 

後ろに1歩にげる。

 

目の前の女は1歩近づいてくる。

 

それを続けると背中に硬い感触がぶつかった。壁だ。

やばい、そう思った次の瞬間、顔の横に突き立てられた会長の腕。

 

ま、まさか俺が壁ドンされるとは。しかも両手でされてるから逃げられない。

 

微笑む顔がすぐ近く。なまじ美人だから恐怖に拍車がかかっている。

引きつった笑みしか出ない。

 

「ほら、早く答えて?」

「あ、あぅ……」

 

なんて言うべきか。

怖い、苦手、嫌い。なんかどれをとっても神経を逆なでさせるだけな気がする。逃げ場がねえぜ……。

 

万事休す。そう思っていたらスっと会長は腕をどけ距離を空けた。

 

「……まあいいわ。話はあとにしましょう。放課後、屋上に来なさい?……来なかったら、分かってるわね?」

 

そう言って立ち去る会長と副会長。

その場に残るのは腰を抜かした俺だけ。

 

助かった……けど放課後……延命しただけ。

 

しかも最後は脅された。

 

「………こっえぇぇぇぇぇ…!!」

 

やっぱり俺の直感は間違ってなかった。

 

あの女は異常だ。みんなはそれに気づいてないようだけど、わかる。

 

喋ったことがない、遊んだことがない、関わったことがない人でも俺は"顔を見れば考えてる事が分かる"。

 

でも、あの女は"何を考えてるのか分からなかった"。

 

初めてのタイプ。初めて味わう恐怖。

 

「……胃が痛い」

 

そう呟くとチャイムが鳴った。

授業か……保健室行こ。小テストは……もういいや。

 

重い足を引き摺って俺は保健室に向かった。




会長が高校に編入する前の話。

……ラスボスさんの中学時代とか想像つかんね。
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