俺はギャンブルなんてしないぞ!絶対に!(フラグ)   作:カリ梅

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書く気力があるときに書いとけ(戒め)


第10話

 

 

「ジャンケン、ですか?」

 

首を傾げる蛇喰。

そんな彼女にチッチッチッと指を立てる。

 

「当然ただのジャンケンじゃないぞ?それじゃ完全な運勝負。ギャンブルは運も絡むが"運だけで決まる"ものじゃない。ちょいとした工夫をひとつまみ」

「ふむふむ、それはどのような工夫ですか」

 

「うむ、鈴井よ、ブレザーを脱いで」

「……え?ぼ、僕?わ、分かったけど……」

 

俺の言葉におずおずとブレザーを脱ぐ鈴井。

そのまま脱いだ其れを手渡そうと──

 

「ああ、渡さなくていいよ。それを広げて蛇喰と俺の間に仕切りみたいな感じで持っててよ」

「え?あ、こう?」

 

広げたブレザーを俺と彼女の間に壁のようにして垂らした鈴井。

ちょうど顔は見えるが、首から下は隠れた状態。

 

「おっけ。この状態でジャンケンだ。でも"ジャンケンポン"で出すわけじゃない。勝負が始まってから手を繰り出すが、自分でセットを宣言するまで"手は変えていい"。セット後は手は変えちゃダメ。両者セット後にオープン……てな感じかな?」

「なるほど!自分は今グーを出してますよーなんてことを言って相手と心理戦を繰り広げるジャンケンってことですね!」

 

「ま、そゆこと。審判は鈴井な。不正がないかちゃんと見ておいてな」

「わ、分かった…!」

 

ま、息抜きがてらのゲーム。

気軽にやるにはまぁいい感じのやつでしょう。

 

「では次に何をかけるか決めましょうか!」

「……ん?」

 

「やはりギャンブルですから賭けるものは必要でしょう」

「んー、まあそうねー」

 

じ、ジュースとか?それくらいの緩いやつにしたいなあ。

 

「先程は2000万の神経衰弱をしましたから3000万とか!」

「……スゥーーー」

「ゆ、夢子……」

 

2000万?皇と?

蛇喰も蛇喰だけど、あいつもなにやってんの?馬鹿じゃね?馬鹿だわ。この学園の人らは馬鹿しか居ないんだった。

 

なんでこの学園はこんな人しか集まらないんだろう。

 

こんな人が集まるからこんな学園になるのか、こんな学園だからこんな人しか集まらないのか。もう分かんねえなこれ。

 

「お金じゃないものとなると……あ、先程私"爪"をかけたんです!どうでしょう!私達も爪を賭けませんか?」

「そんなの受ける人いないって……」

 

なんちゅうもんを賭けとんじゃ。

皇ィ!!人の生爪集める趣味は程々にしろゆーとりましたよね!?まだやってたんかあの馬鹿!いい加減にして欲しい!

 

「爪貰ったとこで何も嬉しくないんだけどね」

「そうですか……」

 

しゅんとする蛇喰。

なんでぇ?怖いて。

 

……なるほどね。賭けるもの、賭けられるものにさして興味は無いのか。あくまでそれは勝負を盛り上げるスパイス。

蛇喰の目的は"リスク"だ。リスクがでかいほどに楽しむ変態。とんでもねえ性癖だな。ねじ曲がりきってんじゃないの。

 

……なら、こうするか。

 

「んじゃ蛇喰が勝ったら"生徒会長"とギャンブル出来る機会を俺が設けるよ」

「生徒会長さん、ですか?」

 

「うん。うちの魔お……会長はギャンブルで相手の左目を3億で買ったりするイカレだから蛇喰も楽しめるギャンブルが出来ると思うよ」

「まあ!それは凄いですね!ぜひひと勝負してみたいです!」

 

「おっけ、じゃあそれでいくか。俺が勝ったら……あー、決まってないから保留で。何か一つ俺の頼み事聞くみたいな感じでやろ」

「分かりました!」

 

フンスと気合を入れてる蛇喰。

こう見ればただの美少女なんだけどね。

 

世の中怖いね。

 

「んじゃ、鈴井よろしく」

「あ、うん……」

 

蛇喰と俺の間に垂れ下がる鈴井のブレザー。

両者手を構え、そして──

 

「じ、じゃあ始め…!」

 

──鈴井の始まりを告げる声が聞こえた。

と、ほぼ同時に目の前の女は口を開いた。

 

 

 

「セットです」

 

「……………」

「え?ゆ、夢子…?」

 

「ちなみに私は今グーを出してます」

 

「……うへぇ、なるほど。こりゃ厄介」

「か、カケル…?」

 

 

 

セットしてからの揺すり。

これが嘘かほんとか。難しいねぇ。

 

まあ──

 

「セットだな」

 

「……っ。あ、開けるよ」

 

「あいよ」

「はい♪」

 

バサッと避けられるブレザー。

ジャンケンの勝負の行方は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー参った参った」

 

廊下を1人歩く。

頭をかきながら思い浮かべるのは先のジャンケン。

 

ポーカーフェイスという技術はギャンブルにおいてほぼ必須と言ってもいい。

自分の感情を表に出さない。そうすることで表情を読まれ、そこから自分の持つ手札を察せられないようにする。

ブラフでも勝負時でも使う技術。

 

だが、あの女。蛇喰夢子はポーカーフェイスとは真逆、勝負の場でも表情が前面に出ていたのだ。

だが、"読めなかった"。

 

何故か。それは"楽"一色の顔だったからだ。

不安も恐怖も何も無くただただ楽しいという気持ちだけがそこにはあった。

 

故に読めない。分からない。

勝負中は多少の気持ちの変化は起こるもの。その変化からあいての考えを読む俺からすると、変わらぬ楽しいという感情だけしか無いのはもはやポーカーフェイスと言っても差し支えないものだ。

 

「ま、鈴井がいて良かった」

 

だからこそ俺が見たのは蛇喰ではなく、審判の鈴井。

俺らの手が見える鈴井の反応を見て勝てる手を探した。

 

だから、俺がパーで蛇喰がグー。

 

勝ちは取れた。

だが──

 

「もうあの子とはやりたくないね」

 

──まさか宣言通りグーだったとは。

リスクを楽しむものだからこその選択なのか。

 

だからこそ読みづらい。

俺はリスクを極力避ける。蛇喰はリスクへ嬉々として飛び込む。

 

相反する考えだからこそさらに読みづらい。

 

「俺の"弱点"をつける人物3人目か。やだねぇ」

 

思い出すのは去年までいた風紀委員長。

俺の勝負師としての弱点を見抜いて苦しめてきた女。

 

 

 

『カケル、お前が"思いやり"を覚えてしまったらお前に勝てるものはいなくなるだろうな』

 

 

 

この言葉の意味をまだ俺は分からない。

思いやり?残念だがめちゃくちゃあるぞ。俺は優しい男だからな。失敬なヤツめ。

 

……あと定期的にメッセージアプリにスタ爆してくるのやめて欲しい。

 

ピコンピコンうるせえのよ。卒業生は大人しくしててくれ。

 

「はあ……また去年に引き続きめんどい1年になりそうだなあ」

 

ため息がこぼれる。これからの学園生活を考えると億劫だ。

 

 

 

 

 

それにしても、蛇喰夢子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

似てたなぁ、俺に"勝ち方"を教えてくれた人に




ギャグ要素少なめに、伏線多めに。

この主人公、弱点が一つだけあるけど、でもその弱点を克服したら魔王も勝つのは厳しくなるんだろうなあって。

ちなみに主人公の弱点をつける天敵は今のところ、桃喰綺羅莉と蛇喰夢子と元風紀委員長の3人だけ。
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