俺はギャンブルなんてしないぞ!絶対に!(フラグ)   作:カリ梅

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賭ケグルイの映画って見た事なかったなあ…


第2話

 

 

 

放課後になった。

 

「………」

「………」

「………」

 

屋上に来たら魔王とその側近がいた。

帰りたい。なんなら転校したい。もうここに来たくない。空気が重い。胃が痛い。

 

来なければよかったじゃんって?バッカヤロウ。来ない代償と行く代償を天秤にかけてみろ。もう行く一択なんだよなぁこれ。

 

「来たわね」

「来ましたよ」

 

「まあ腰を落ち着かせて、ゆっくりしてちょうだい」

 

ゆっくり出来ません。心臓バクバクです。たしけて。誰かたしけて。

 

指定されたベンチへ恐る恐る座る。

……爆弾とか仕掛けられてないよね?大丈夫だよね?

 

「………」

 

挙動不審な俺を見つめるお目目が4つ。そんな注目しないで。怖いから。

 

「……あなた、名前は?」

「九十九賭です……」

 

「そう。じゃあカケル。あなたチェスは出来る?」

「……まあ」

 

そう言うと控えていた副会長さんがテキパキと準備しだした。

 

会長さんと俺の間に挟まれたテーブルに置かれる板が一枚。そこに並べられる様々な形の駒。

 

……チェス盤と駒一式……え?常に持ち歩いてんの?

変人かな?……変人か。

 

「気晴らしに1ゲームやりながらお話しましょ?準備して」

「……え?……いや、そんないきなり──」

 

 

 

「早く」

 

「へい!ただいま!」

 

 

有無を言わせぬ静かだが迫力ある一声に敬礼を返す。

拒否権は無し。

怖いもんね。しょうがないね。

 

「さて……先攻と後攻はどうする?」

「じ、ジャンケン…?」

 

「……それでいいわ」

 

結果は俺が負け。

つまりは後攻。

 

……チェス、というよりボードゲームってだいたい先攻が有利なんだよなあ。会長さんミスしてくれないかなあ。しないよなあ。完璧超人だし。挑んで来た側だし。

 

「じゃあ始めましょ」

 

そう言って駒を手に取り動かす会長さん。

それに合わせてこっちも駒を動かす。

 

「……休み時間の話の続き……どうしてあなたは私を避けるのか?そろそろ教えて貰えるかしら?」

「………っ」

 

聞かれるとは思ってた。

根深そうな人だし。いや違うか。"気になったことは確かめたい性分"なんだろう、この人は。

どんな手を使おうと、一度気になればそれを知るために何でもする。

 

これは……逃げられないなあ

 

「……苦手、というより怖いんですよ」

「私が?話したこともない相手なのに?」

 

「俺って顔とか仕草とか。相手を見れば考えてることがそれなりに分かるんですよね。あとは顔色見れば感情も分かるし、会話してるところを見てたりすると本性とかそういうのも過敏に感じられる体質……っていうのか」

「……へぇ。で?私はどう映ったの?」

 

「分かりません。何を考えてるのか全く分からない。だから怖いんですよね。癖も仕草も表情も、人間味が無さすぎて何も分からない。いつ爆発するか分からない爆弾を見てるみたいで怖いんですよ」

「……そう」

 

怒らせたかな。

そう思って、盤に落としていた目を目の前の女に向け……動きが止まった。

 

顎を上げ、暗く淀んだ目を真っ直ぐにこちらに向け微笑む……"化け物"がそこにいた。

蛇、肉食獣。そんな存在が可愛く見えるほどの恐怖。

 

生唾をごくりと飲み込み、視線を外す。

 

「私の……本性も分からなかったかしら?」

「え、あー、いや、その……」

 

 

「いいなさい?」

 

「……一言で言えば、究極的なワガママ……ですかね。自分の願いがどんな形であれ叶えられるのが当たり前、みたいな?自分以外の全てが己の欲を満たすための駒のようにして見てる。そんな感じです」

「……ほんと、面白いわねあなた」

 

視線は外してる。

それでも分かる。笑っている。

 

そして、今、目を合わせれば俺の体は動かなくなる。蛇に睨まれた蛙のように何も出来なくなる。

それを理解して、俺はチェスに集中することにした。

 

チェスは先攻有利ではあるが最善手を打ってれば負けることはほぼ無い。

それは会長さんも理解してるだろう。

 

互いが互いに最善手を打ち続ける。そうなるとどうなるか。

結果は引き分けになることが多い。

 

こっちの狙いは引き分け。先行有利で引き分けは実質的な後攻の勝ちとも言える。

そんなルールを設定した訳じゃないが気分的な話だ。やるなら"負けは"したくない。

 

「……話をチェスにしましょうか。カケル、あなたは10の120乗と聞いて何を思い浮かべるかしら?」

「……チェスですね。10の120乗の手を全て読めれば必勝……でしたっけ?」

 

「ええ。でもこれは──」

 

「間違っている。いや、正確な数字じゃないですよね」

 

「……ふふふ、そうね」

 

「チェスの一手辺りの選択肢は平均で35ほど。そして、1ゲームにかかる手番数は平均80ってとこですね。まあ、選択肢35はゲームが進むにつれて選択肢は増しますし、敵の配置やら駒の数で増減しますけどこれら全部ひっくるめての平均が35です。だから10の120乗ではなく35の80乗のほうがまだ近しいです」

「……知っていたのね」

 

「まあ、そうですね」

 

ボードゲームは得意だ。未だ負け知らず。

インターネットのネット対戦でもそれなりのランキングに入り込めるくらいには強い。

 

「……チェスは両者最善手を打てば引き分けになるのがほとんど。あなたも理解してるわよね?」

「はい」

 

「そうよね。なにせ、ここまであなたノーミスで最善手を繰り出し続けてるもの」

「………」

 

「私もこのまま続ければ引き分けは必至。でもそれじゃあつまらないわ

 

 

 

──ピタッ

 

 

 

動きが止まった。

会長じゃない俺がだ。

 

盤を見る目が揺れる。

いつからだ?

 

「……思ったより気づくのが早かったわね」

 

会長さんの声が耳に入るが今は無視だ。

 

このまま今の打ち方を続けていたら7手……いや8手先で詰まされていた。

ここまで既に63手終わっている。

 

どこから仕掛けられていた。

 

いや今は考えるのはどう打ち直していくか。

恐らくここが分岐。ここでミスればまず負ける。

 

今あるルートを全部虱潰しでシミュレーションするか?

 

「……長考させてもらっても」

「構わないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の男を楽しそうに眺める桃喰綺羅莉。

 

一目見て己を見抜き、そして、ゲームに関しての頭の回転の速さ。

彼女は全力で勝負してはいない。だが、本気で勝つための打ち方を以て相手をしている。

 

まず、並の人間なら気づかずに負けるだろう。

それなりの実力者でも気づいた時にはもう遅い時。

取り返しがつかない前に気づいても正解を引けるものは少ない。

 

その中で見せる目の前の男の実力。

 

彼女は驚きと嬉しさと興味を持ち、同時に獲物として見初めていた。

 

目をかっぴらき、口は半開き。指は空中で何かを書くように忙しなく動き、目玉は盤を行ったり来たりと忙しなく動いている。

 

驚異的な集中力。

今彼の頭では勝つための一手を探りに探っている。

 

果たして彼の頭の中ではいま"いくつのルートの何手先まで"を読み切っているのか。それはこの女、桃喰綺羅莉でも分からない。

 

やがて、

 

 

 

──ポタ……ポタ……

 

 

 

「あらあら……」

 

男の鼻から赤い液体が垂れた。

 

鼻血が出るほどの集中力。

そして──

 

「会長。13手目でアンタを詰ませます」

 

──そう宣言した男は親指で鼻血を拭った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」チーン

 

屍と化した俺氏。コンクリの地面が涼しい。

てか頭痛すぎ。

 

いやー、舐めてたわ。マジで舐めてた。

 

まさか、"勝つために負ける可能性のリスク"を取ってくるとは思わなんだ。

 

結果を言えばチェスは俺の勝ち。

へ、へへ、へへへ、俺の連勝記録は途切れないぜぇ…!

 

「想像以上だったわカケル」

「そらどうも」

 

「ねえ、カケル。あなた私のものになる気は無い?」

 

「無いですね!はい!」

 

 

この女のものになる?美人に首輪つけられるとか人によっちゃご褒美かもだけどね!あたしゃノーマル男子なんだよい!

あと、こんなアブナイ女について行ったら俺の身が持たん!やめてくれ!

 

「……そう、まあいいわ。勝ったのはあなたなんだし今回は引いてあげる」

 

うっひょい、勝ってよかったー。

 

………………………………………………………………………………ん?今回は?

 

「また遊びましょ、カケル。それじゃあ」

「え、いや、ちょ、待って──」

 

静止の声虚しく屋上を後にする御二方。

 

パタンと閉じられた屋上の扉を見つめること数分。

 

 

 

 

 

スゥー………明日から胃薬常備しよ。




チェスは触りしかやった事ないから経験者からするとん?ってなるかもだけど許して欲しい。お願いします。
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