俺はギャンブルなんてしないぞ!絶対に!(フラグ) 作:カリ梅
「………」
「………」
気まずい。
そう思いながら箸を進めるお昼時。
ここは食堂。現在、俺はとある人物の横に座り腹を満たしていた。
だがしかし!その空気は楽しいものでは無い。むしろ重い。重苦しい。
まあこっちから顔出しに来た手前そんなことは口が裂けても言えないわけだけど。
そんな気まずい空気の中、横に座る人物が口を開いた。
「……で?私のこと笑いに来たわけ?」
生気のない目でそうつぶやくように言葉を吐く彼女は"早乙女芽亜里"。
去年、1年の頃から交流のある友達……なのかなあ?ギリギリ友達?俺は友達と思いたいけど彼女の方はどうなのだろうか。
まあそんな関係の御人である。
そんな彼女は昨日、とある転校生にギャンブルでコテンパンにされ1000万の借金を負っている。
首には"ミケ"のネームプレートが下がっており、家畜へと変貌を遂げた。
学生の身で1000万の借金ねぇ。怖いねぇ。
まあ俺は魔王に数億……いや、数十億かな?の借金あるんだけどね!がはは!……はぁ。
「笑うって……そんな性格悪くないんだけどねぇ。いやまあ笑って欲しいなら笑うけど」
「………」
無言。
空気重いって。明るく行こうよ。
家畜がなんだ。俺なんて歴戦個体の家畜だぞ。練度が違うんだ練度が。
……言ってて悲しくなるね。
「やったギャンブルは投票ジャンケンとか?」
「……そうよ」
"投票ジャンケン"
早乙女のクラス、華組オリジナルのギャンブル。
クラスの人たちがそれぞれグーチョキパーのどれか1つを紙に書いてそれを箱に入れ、早乙女と対戦相手の2人が3枚引き、引いた手札でジャンケンするというもの。
「大方サクラ使って調子乗ってたらそれ利用されて負けた感じかな」
「……っ」
ふむ図星か。
早乙女は分かりやすくていいなあ。魔王にも見習って欲しいものである。
にしてもこの戦い方ができるとなるとその転校生はそれなりの手練か。そもそも早乙女に勝つのもなかなかなものだ。
……いや──
「調子に乗ってたところを足元を掬われたか」
「〜〜〜!」
挑発に乗りやすいのもあるが1番の敗因は慢心だろう。
去年の経験を経て性格がねじ曲がっちゃったもんなあ。初めましての頃は純粋だったのになあ。
まあこれもいい経験か。
大きな挫折は人を強くする。去年は確かに追い詰められることもあったけどドン底まで落ちたことはなかったし、ここいらで1発やられたのは良かったかもしれない。
これを機に初心を思い出してもらいたいものだ。切実に。
「で、こっからどうするおつもりで?」
「……生徒会に挑む」
「まじ?それはやめといた方が──」
「うるさい…!全部取り戻すにはもうこれしかないのよ…!」
うーむ、これはいかん。これはいかんぞ。
よくないループにハマっておる。ドン底まで落ちるのは強くなるのには必要だけど這い上がれなきゃ意味が無い。
生徒会はあたおかで一癖も二癖もある変人集団だがギャンブルの強さはモノホンだ。今の早乙女の状態で勝てるほど甘くは無い。
「ちなみに誰と勝負を?」
「……伝統文化研究会よ」
ふむ、西洞院パイセンか。
……俺なら勝負しないね。イカサマ使ってくるからそれを利用したとしても勝てる確率は50%ってところ。
しかもしくじれば借金はかなり膨れ上がる。リスキーにも程があるて。
「俺はおすすめしないよ」
「あんたの意見なんて聞いてないから…!」
プンスカプンプンプンのまま立ち上がりどこかへと去ってしまう早乙女。
……飯残ってるがな。俺の奢りのお昼を残すとはけしからん。
俺が食べておこう。
「………」
早乙女の使った箸。間接キスか。
あんな性格でも美人ではある。
ふむ…………。
馬鹿野郎、自分の箸を使うんだよォ!
危ない危ない。あやうく理性が負けるとこだった。
……こんなこと考えるとか俺も思春期の男の子なんだなぁ。
でも早乙女のお残しを食べるのもなかなか興ふ……この話はもうやめよう。俺が俺で無くなっちゃう。
さて、早乙女と別れて幾ばくか。
せっかくだし転校生を一目見ておこうと華組にやってきたわけなんだが──
「食堂に行ったの?」
「は、はい……鈴井と一緒に……」
クラスの人から話を聞いたら我が友と食堂へ向かったと。
なんてこったい、入れ替わりか。
にしても鈴井め。俺に会いにこない癖に転校生にうつつを抜かしおって。鈴井には後で千年殺しをお見舞いしてやる。
「あーまあ、ありがとう」
「あ、はい」
手を振りすぐさまその場を後にする。
急ぎ足で食堂へ向かう途中。前から歩いてきた生徒の会話を耳にした。
「あの転校生すげーな」
「ああ、まさか生徒会の皇に勝つとは……」
「まあ皇が弱かったってのもあるかもしれないけどな」
「それはある」
ふーむ、転校生が皇とギャンブルしたのか。
で?皇が負けたと………え?まじ?
おいおい転校生さんよぉ、台風の目か?
転校してまもなくではっちゃけすぎだろ。最初からクライマックスタイプなのかな?
さて、そんなこんなでまたもややってきた食堂。
中を見れば項垂れる皇と人集りが見えた。
もはや集団イジメにしか見えない。もうこの学園怖い。もっと平和的に遊ばない?
と、そんな時だった。
「あれ?カケル?」
っ!?この声は!
声のした方に目を向けるとそこには黒髪ロングの美少女を引き連れた鈴井がいた。
「鈴井ぃ!」
「カケ……ぐぇっ!」
飛びつきざまに首元へラリアット。
そのまま後ろに回り込んでケツへ向けて指を突き立てた。
「ちょっ…!な、何でラリアットと千年殺しを…!?」
「全然逢いに来てくれなかったから恨みが積み重なって」
「それはほんとにごめんね!」
謝られた。ならば許そう。
俺は寛大な心を持っているのさ。
「それで?そっちの方が──」
そうしてもう1人。鈴井の隣に控える美少女に目を移す。
「蛇喰夢子と申します。よろしくお願いしますね。鈴井さんのお友達ですか?」
「……九十九賭。よろしくね」
「九十九を賭ける……素晴らしい名前ですね!」
ははは、面白い感性の持ち主のようだな。
それでいて……かなり危ない人とみた。分かる分かるぞ。その笑顔の裏に秘めた狂気性。魔王と似たようで違うタイプのイカレ具合。
うーむ、今すぐ踵を返して逃げ出したいね。
「あ、そうです!お近付きの印に私とギャンブルをしませんか?」
「ちょ、夢子…!」
夢子ぉ!?鈴井、貴様既にそこまで、名前を呼ぶまでに仲を深めているというのか!?
敗北感ががが…!
それにしてもギャンブルねぇ…。
「やるとしたら何?」
「んー、そうですねぇ……あまり準備に時間かからないものがいいですよねー」
「……んじゃ、"ジャンケン"でもする?」
そう言って俺は"グー"の形に握った拳を突き出した。
久しぶりに描くとノリを忘れる。
気が向いた時にしか書かないのは作者の良くないところ。