後、オリキャラの名前が出てきます。ナギサ様がいないことにより生まれた存在です。
「……。」
「……。」
気まずい空気が流れる、なんとも言えない空気の中、静寂が病室を満たしていた。
取り合えず何か話してくれないだろうか?ここに来たという事は私に何か用事があるのだろうから、私から話すにしても何を話せばいいのやら。あまりに静寂が長すぎて脳内の”私”にどうする?と相談する始末だ。
「あ…。」
何かを言おうとして口を閉じる。少しだけ迷いが見えたものの心を決めたらしく口を開いた。
「あの、ごめんなさいっ。」
「……?」
頭を下げられるも、正直何を謝られているのかわからなかった。日本から帰ってきてから彼女に会ったのはすれ違った一回のみ。こっちを見て驚いていただけで何かを言われたわけでもされたわけでもない。
「えっと…何の謝罪ですか?」
そう言うとあちらも、え?という顔をする。いやそのような顔をしたいのはこちらなのだが。
「その…子供の時に…桐藤さんの事…怖がって、友達になろうって言ってくれたのに断っちゃって…。」
それを聞いてああ、と納得した。だけれどその原因は私の例の力にあり、彼女はそれを感じ取ったが故に拒絶されたのだろうという事はもう分かっている。現に力の制御が出来ている私にはそういう気持ちを感じていないようだし。
「それでしたらもう気にしていません、寧ろ、その後はこちらが散々迷惑をかけてしまいましたよね?何度も追い回すようなことをして申し訳ありませんでした。」
そう言うと聖園様は、手をぶんぶん振りながら気にしないでと言っていた。割とやっていたことはお互い様だった。
「それでね…勝手なことだとは…分かってるんだけど…。」
彼女は恥ずかしいのか、不安からか身体を揺らしていたが、突然頭を下げて口を開いた。
「あ、わ…私とっ、お…お友達になってくだひゃい!」
「……。」
噛んだ、盛大に噛んでいた。彼女は恥ずかしいのか顔を真っ赤にしている。思わず黙ってしまったが、聞こえなかったことにして私は返事を返した。
「いいですよ。」
「う、うん。そうだよね、そんな簡単には…え…?」
ぽかんとした表情をする彼女、あの時の事は私の中で清算が済んでいるし、別に彼女自身が嫌いなわけでもない。彼女は悪意があって私と友人になりたくないわけではなかったから。
「いいですよ、と言ったんです。でもどうして私と?」
そう、聖園ミカという少女は家柄もよく、本人も天真爛漫、少々感情を重視して自分勝手にふるまう事はあるものの地頭は良い。好き嫌いはハッキリしており身内にはべったりだが、敵対者はことごとく嫌う。
ここに来ていることから私は嫌われている訳ではないと分かるのだが、何故今更私と?という疑問は残る。
純粋な疑問として彼女に質問したのだが、ミカはとても言い辛そうにしていた。
「…実は私…。」
重苦しい空気が充満する。重い話なのだろうか。
「友達がね…?セイアちゃんしかいないの。」
「…は?」
思わず淑女らしくない声が漏れる、いやいや、彼女は6歳の頃だって人に囲まれて楽しそうにしていたし、彼女の性格上、人とそれなりには仲良くなりやすいとは思うのだが。
そう思ったのでそれについて聞いてみたのだが。
「オトモダチはいっぱいいるよ?でもね?本音を話せる、なんてことない日常を一緒に過ごせる友達がいないの。セイアちゃんだけ。」
何を言ってるのかよく分からず少し考えたのだが、ああ、成程と思った。つまりはオトモダチとは心の許せる友人ではなく、高位の家に侍り仲良くすることでその特権のおこぼれを貰ったりする、所謂取り巻き、という事か。
「セイアちゃんともね、偶然友達になったんだ。オトモダチを撒いて逃げてたら木陰のベンチですやすや眠ってるかわいらしい子がいてね。なんとなく惹かれたから隣に座らせてもらったんだ。」
なんとなく、仲良くなれそうな気がすると思って近付いたんだけど今思うと変な人だよね、反省。と言いながら彼女はあはは…、と小さく笑いながら少し目を逸らし気まずそうにしていた。
「それでね。隣に座ってたら唐突に眠くなって……夢を…見たの。」
「…夢?」
セイア、百合園セイアと夢、というものには特殊な要素が含まれる。彼女は予知夢を見ることで、未来の観測が出来るのだ。
聖園ミカにはそんな力はないはずなのだが、彼女の見た夢とはどういうものなのだろうか。
「うん。私が見た夢は、私と、セイアちゃんと、ナギちゃ…桐藤さんの3人でお茶会をしたりする夢かな。」
それは…まさか「原作」の。
「私が大騒ぎしてセイアちゃんが頭を抱えたり、我慢の限界を超えたナ…桐藤さんが私の口にロールケーキを突っ込んだり。」
夢の風景を思い浮かべているのか楽しそうにクスクス笑う聖園さん、さっきから私の名前呼ぼうとしているのか何度か言葉を詰まらせている。今は結先ナギサを名乗っているし、桐藤ではなく別に名前で呼んでくれてもかまわないのだが。
「呼びにくいなら名前で呼んでくれてもいいですよ?今は桐藤ではなく結先を名乗っておりますので。」
「あ…うん…ごめんね。夢の中の私はナギちゃんって呼んでたからつい…。」
名前呼びの許可を得た為か、小さくナギちゃん、ナギちゃん、えへへ。と嬉しそうに笑う、これくらいで喜んで貰えるなら安いものだ。
「それで目が覚めたセイアちゃんと私がね、夢の話をして仲良くなったんだ。一緒にお昼寝してるとたまに同じ夢を見るんだよ。前に検証って言って他の子ともお昼寝したみたいだけどダメだったみたい。」
聖園ミカには百合園セイアと同じ能力は存在しない、つまりセイアの力の恩恵を聖園様のみが受ける事が出来たという事か、原因は不明だが。
「成程、その夢の中に私がいたから仲良くなれるかも、と思ったのですか。」
「う、うん…ごめんね。後、トリニティだと友達が作れないと思ったから。」
トリニティでは友達が作れない?またよくわからない話が出てきたな。
「私が何か話すとね。その…テマリちゃん…。オトモダチの筆頭の子なんだけど…一応ナギちゃんもあったことあるんだけど覚えてるかな?ちっちゃいころにナギちゃんを私に近付けないように警戒してた子。」
…ああ、確かにいた。他の子よりも私に対して圧が強い子がいたのを覚えている。
「その子がね。私の話を曲解して実行するんだ。あの子とお話してみたいな、っていえば私の前に吊し上げるみたいにして跪かせたり、皆とお茶会したいって言えば、政治的な意味合いの含まれるパーティーを開催したり。」
そう口にした聖園様の顔には疲れたような様子が思い浮かぶ。本気で参っているようだ。
「私に対しては、悪意は向けないんだけど。でも私を女王様にしたいのかな…っていうくらい他の子に対して当たりが強くて、だからトリニティでは殆ど話すことも出来ないの。」
私、上級生からも沈黙の女王って呼ばれてるんだよ、似合わないよねー。と笑う彼女を見て戦慄を覚える。原作の彼女とはかけ離れた状況になっている。
「それで…聖園様は、百合園様とは?」
「あ、ミカでいいよ。聖園様って他人行儀だし…オトモダチもそう呼ぶし。」
そう言うミカはそう呼んでほしそうな表情をしていた。ならば遠慮なく名前で呼ばせてもらおう。
「セイアちゃんともね、仲良くはしてたんだけど…派閥が出来ちゃって。」
「派閥?」
そう言ったミカの表情はとても辛そうだった。
「うん、私を中心とした聖園派と、セイアちゃんを筆頭にした百合園派だね。私に唯一意見できるのがセイアちゃんだからっていう理由で百合園派のトップに祀り上げられちゃったの。私の方は私が中心とは名ばかりでさっき話したテマリちゃんが舵取りしてる。」
辛そうな顔のまま、ミカは目に涙を浮かべていた。
「私はただ皆で仲良くしたかっただけだったのに。お姫様も女王様も望んでない、普通の女の子になりたかっただけなの…。」
ミカの綺麗な瞳から涙がこぼれる、私の日用品が入ったバッグが脇に置いてあったので中を漁り私は彼女にハンカチを差し出す。上等なものでなくて申し訳ないがそれで勘弁して欲しい。
「ありがとう、ナギちゃん…。ほんとにね、向いてないんだよ、私には。なのに家の権力で上に立たされて、私の本当の願いには誰も気付いてくれない。」
ハンカチで涙を拭くも止まらない涙でハンカチは水分を含んでいく。
「ほんの少しでいい、偶に息抜きで遊び歩いてくれるだけでいいの。それだけで、私まだあそこで頑張れるから。だから。」
そんな悲しそうなミカの姿を見ていられなくなった私は強引に彼女の手を引き彼女の顔を私の胸に押し付けた。
「ふぅ…我慢しなくていいです。辛いのなら声を出して泣いたっていい。ここで吐き出しなさい。」
「うっ…ふぅっ…う…ああ…あああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
私の声を聞いたミカは堰を切ったように涙を流す。
未だ魔女にもお姫様にもなりえないただの少女の慟哭が病室に響き渡った。
今作ミカは現在、政治に巻き込まれて逃げられなくなったハナコ状態になっております。仲のいい友達とも離されメンタルは日々ゴリゴリに削られています。お姫様。も禁句ワードになりかけています。あの選択肢を選ばれたら吐くかもしれません。支配者タイプが苦手になってきているのでベアおばとかは大っ嫌いになるでしょう恐らく。
夢の中補正でミカ→ナギサ様の好感度が勝手に上がっています。その上ナギサ様にスパダリ対応されたので堕ちそうになっています。いや、もう堕ちてるかも。