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しばらく私の胸で泣いたミカさんは溜まったものを吐き出したからか、若干すっきりした様子を見せていた。恥ずかしそうにしながらこちらをちらちらと見てきたりもするのだが、やはり少々大胆だっただろうか?
「あっ…あの…ナギちゃん、ありがとう。泣いたらすっきりしたよ。」
ハンカチ、洗って返すね?と言うミカさん、それくらいで助けになれるのなら大歓迎だ。いつでも、という訳にはいかないが、余裕のある時はいつでも頼ってくれて構わない。
「それで、私の方の…トリニティの事情はこんな所なんだけど…ナギちゃんは私に聞きたい事とかあるかな?」
正直、現在のトリニティが原作と違い過ぎて聞きたいことは山程あるのだが…今はいいか。それよりも私個人の事情として桐藤家がどうなってるか気になっていた。
「…家を出ていながら勝手ではあるのですが、今の桐藤家がどうなっているかを教えてもらってもいいでしょうか?」
ミカさんにとりあえず私の失踪直後からの話を聞くことにする。流石にいつまでも目を逸らしている訳にもいかないし、桐藤家が今どうなっているのか知りたかった。
「ナギちゃんの実家は…ナギちゃんの失踪直後は凄い大変だったみたい。というか今でも捜索自体は続いてると思うよ?でもナギちゃんが桐藤を名乗っていない事とまさかアビドスにいるとは思ってないみたい。」
成程、気付いているのなら多分コンタクトは取ってくると思うし、やはり気付いてはいなかった様だ。その事に少しだけ安心した。
「それで…聖園家も捜索に協力してたし、桐藤家との交流も今も続いてるからどういう状態かも知ってるけど…。」
どうやら私に気を遣ってくれているらしい。という事はあまりいい情報ではないという事か。だけれどそれでも聞かなければならないと思う。
「大丈夫です。教えてくださいますか?ミカさん。」
うん…。とミカさんが少し曇った表情で口を開いた。
「ナギちゃんの失踪後、ナギちゃんのお母さんが心労で倒れちゃって…その後も後継者問題とか色々あったみたい、親戚筋から養子を取るか、新しい後継者を作るかって。」
わかってはいたがやはり実家も大変なことになっていた。私が逃げ出した事で皆に迷惑をかけてしまったようだ。
だが、私には今のアビドスを捨てる事も出来ない、いや、綺麗事は良いか、ユメ先輩の命を救う事、これが今の私にとっての最優先事項だ。アビドスをどうでもいいとは言わないが、未来のホシノと後輩達がいればなんとかなるだろうとも思っている。
ミカさんは話を続ける。
「それで、ナギちゃんのお父さんも養子は取らないって言ってね。ナギちゃんが生きてることを信じたかったみたいで…。でも親族に色々言われて、身体の弱ったナギちゃんのお母さんに無理をさせたくはなかったけど、新しい子供を作ることにしたんだって。」
それは仕方のないことだろう、名家にとって後継者という存在は重要なものだ。未来に繋げる存在が居なければそこで終わってしまうから。
「それで、ナギちゃんの妹さんが産まれたんだよ、ナギちゃんのお母さんも出産後も無事で済んだんだけど無理をし過ぎて病気がちになっちゃって。」
…お母様…ごめんなさい、私のせいで…。
そして、妹か…。原作では話にも出てこなかったことから恐らく私が消えたことによるイレギュラーな存在だろう…どんな子なんだろうか?
「妹の、名前を教えて貰っても?」
「うん、桐藤ミナミちゃん、ちょっと病弱な子だけど良い子だよ、偶に顔を合わせたりもしてね、私が忙しくなる前は遊んであげたりもしたんだよ。」
桐藤…ミナミ。私の……妹。
本来では存在しなかったであろう子、そして私の代わりに桐藤家を、重い荷物を背負わせてしまっているのだろう。私の事は聞いているのだろうか?恨まれているかもしれない。
「…取り合えず家の事情は分かりました。教えていただいてありがとうございます。ミカさん。」
「これくらい全然いいよ。…あのね。原因の私が言うのも差し出がましいんだけど…。」
ミカさんは両手を組みながら申し訳なさそうな顔をしている。どうやら私が逃げたのを自分のせいだと思っているらしい。切っ掛けではあっても逃げ出したのは私だ。私の心が弱かったせい、両親を信じ切れなかった私のせいだ。
「あのね。生きてるって、それだけでいいんだ、連絡してあげてくれないかな?それだけでナギちゃんのお父さんとお母さん、安心できると思うし。」
…正直、死んでいると思ってくれていてもよかった。だけど、まだ私を探してくれている。私を諦めないでいてくれている。
ああ、私が愚かだった。両親を、優しい人たちを信じ切れなかった馬鹿さ加減が嫌になる。そして、家族の事を教えてくれたミカさんに感謝を。
「…ミカさん、今から手紙を書きます。ですから桐藤家に届けてもらっても良いですか?私はまだアビドスでやることがあるので、それが終わるまでは居場所を知られたくないのです。」
私の言葉にミカさんはわかったよ、きちんと届けるね。と言ってくれた。これでそっちの憂いは無い。このキヴォトスでの事が無事に終わったらきちんと家族に会いに行こう。ごめんなさいと謝ろう。その為にも今出来る事をしなければ。
しばらくして、手紙を書き終えた私はミカさんに渡す。ミカさんはそれを大事そうに受け取った。
ひと仕事終えた気分になり私はふう、と息を吐いた。今更ながら私は怪我人だった。色々な情報が入ってきたため忘れていた。
目を瞑り、これからの事を考えようとしたら病室の扉が開いた。
「なんだ、目を覚ましてたんだ。…誰?お客さん?」
「あ…えっと…。」
ノックもせず、ずかずかと入ってくるホシノ、その姿といきなり話しかけられたミカさんは動揺しているらしい。
「ホシノ、ユメ先輩は?」
「廊下の椅子で寝てたよ。」
どうやらあの先輩は連絡役もこなせないらしい。まったく…。
取り合えず初対面の二人にお互いの事を紹介することにした。
「ホシノ、こちらは子供の頃の知り合いで友人の聖園ミカさんです。ミカさん、アビドス中等部生徒会副会長の小鳥遊ホシノ。同じ3年生です。」
背の小さいホシノを後輩と勘違いしないよう学年も伝えておく。この二人がここで顔を合わせることになるとは思わなかった。
「あ…私は聖園ミカっていうの、ナギちゃんのお友達をさせてもらえることになったんだ、よろしくね。」
「…小鳥遊ホシノ…。ナギサの
ミカさんはニコニコと笑顔で対応するのだが、ホシノは何故か棘を感じる。どうしたのだろうか?
その後、ミカさんはホシノに対し、ナギちゃんのお友達なら私にとってもお友達だね!と言いながら用事は済んだと帰ることになった。本能的にホシノが悪い人間ではないことがわかるのか、かなりフレンドリーだった。初めはホシノも刺々しく接していたものの、先輩に似たタイプかと諦めて最後は普通に接していた。
ミカさんが帰る頃、ユメ先輩がひぃぃん寝ちゃってたよ!ごめんなさい!と病室に入ってくる。私とホシノとミカさんはそんなユメ先輩の姿を見ながら笑い合う。
この光景を無くさないよう、私は未来に向けて絶対にハッピーエンドを掴み取ることを決心した。
ミカはナギサニウムを摂取した為心に余裕が出来ています。その為ホシノにユメ先輩並みの距離感で迫りました。ナギちゃんの信頼する相手なら良い人だと言う確信がある。無敵。なおトリニティに帰るとシナシナモップみたいになる。
何気にナギサ様はホシノ相手には呼び捨て、レアです。
妹ちゃんの見た目は、白い髪の毛先だけ赤いグラデーションが掛かったナギサ様を垂れ目にした感じの子です。