汀渚のアーカイブ   作:buridish

12 / 51
原作アビドス3章過去の時間軸になるまで間の話です。

他視点です。


番外編 落とし物と無法者

 やっほー!私は聖園ミカ!トリニティ総合学園中等部3年生!今日はナギちゃんと遊ぶためにD.Uで待ち合わせ中!

 

 もちろんナギちゃんには迷惑が掛からないようにオトモダチが付いてこないようにはしてるし警戒はしてるけどね。

 

 予定の1時間半も前に来ちゃったんだけど…流石のナギちゃんもこんなに早くは来てないみたい。そりゃそうだよね。でもトリニティにいるよりは別の地域にいる方が心が休まる、もしかしたら野蛮って言われるゲヘナの方が居心地が良いのかもしれないね。笑えない話だけど。

 

 数か月前にナギちゃんと友達になってから私は心がだいぶ安定してきた気がする。こうして一緒に遊ぶのは本当にたまになんだけど、モモトークとかでのやり取りは毎日してるから寂しくはない…嘘、本当は凄い寂しい。

 

 ナギちゃんがトリニティに来てくれないかなって考えたことはたくさんある。けどアビドスにいるナギちゃんはアビドスの借金に追われながらも毎日が充実しているみたいで、楽しそうで。

 

 私が借金をどうにかしようか?って言ったこともあるけど、それは拒否された。いくら友人とはいえ借金はアビドスの問題だし、そういう事はいけないって、どうしようもなくなったら私自身のコネは頼るかもしれないとは言ってたけど。それくらいならいくらでも使ってくれていい。

 

 お手紙についても信頼できる筋で桐藤家に送った。返信はすぐに来たしどうにかナギちゃんに会えないか、どこにいるのか、といった内容が書いてあったんだけどナギちゃんにお願いされてるから申し訳ないけど教えてあげることは出来ない。教えてあげられない事を伝えたらせめて伝言をって事でお互いのメッセンジャーをする事になった。

 

 私の近況はこんな感じ、トリニティでの出来事?特に変わらないよ、セイアちゃんとは遊べないし息苦しいだけ、正直私がいない方がトリニティは安定するんじゃないかなって思う、けど今私がいなくなったら今度はセイアちゃんが辛い思いをすることになるだろう。今の聖園派がどうなっちゃうのかとかわからないし。

 

 ぶらぶらと目的もなしに歩く、すると目の前の少女が何かを落とした。えっと、学生証?ゲヘナの中学校のやつだ。陸八魔アル。凄い名前だね。

 

 学生証を落とした少女に声をかける、いくら野蛮とはいえ流石にいきなり攻撃してきたりはしないだろう。…しないよね?

 

「あの、これ落としたよ?」

 

 私がそう声をかけると、学生証を落とした少女がこちらに振り返った。髪をヘアピンでとめて眼鏡をかけた凄い真面目で清楚そうな優等生風の子。私の手元にある落とし物を見ると驚いた様子でこちらに歩いてきた。

 

「あ、あの。ありがとうございます。落としたまま気付かない所でした。えっと。」

 

 …えっと、思った以上に礼儀正しい子だった。え?ゲヘナってもっとこう、気に食わない事があったら爆破したり、他人の意思を無視してテロを起こしたりで野蛮って聞いてたんだけど。

 

「あ、私はトリニティの聖園ミカ、落とし物を拾っただけだから大したことはしてないよ?」

 

「私はゲヘナ学園の陸八魔アルです。何かお礼を出来る事があれば。」

 

 おお、いかにも真面目って感じの反応、見た目も優等生だし。ゲヘナの聞いていた噂と正直全然違う。

 

 ちょっと興味が出てきた。待ち合わせの時間までまだ1時間以上あるし、ちょっとお話してみようかな。今まで何となく嫌ってたけど、ゲヘナについて少し興味が出てきた。

 

「私、待ち合わせしてたんだけどまだまだ時間あるし、ちょっとお話ししない?ゲヘナに少し興味があって。あ、勿論そっちに時間があるなら、だけど。」

 

「トリニティの人がゲヘナに興味…?」

 

 不思議そうな顔をする陸八魔さん、そうだよね、トリニティのゲヘナ嫌いは筋金入りだ、ゲヘナだってあんまり良い気はしないだろう。私自身もあまりいい印象はないんだけど、陸八魔さんは良い子そうな感じがするし多分大丈夫だと思う。

 

 そうして近くのカフェでお話をすることにした私達はまぁ、話をしたんだけどゲヘナの内情、誇張はされているけど言うほど間違っていないって事だった。ただし陸八魔さんみたいな人が居たり個人差はあるけど。

 

「陸はち…あー、ごめんね?呼びにくいからアルちゃんでいいかな?私もミカでいいから。後、敬語も良いよ。それで、アルちゃんは何かしたい事ってあるの?」

 

 そう、聞いた感じだとゲヘナは自身の欲望に忠実である、と言った感じ、アルちゃんにもそんな欲望はあるんだろうか?

 

「アルちゃん…。あ、したい事?ええと…1つあるわ…。」

 

 敬語を辞めたアルちゃん、こんな感じなんだ。こんな真面目そうな子にも欲望がある。それはどんなことだろう少し興味がある。

 

「実は私…アウトローになりたいの!!」

 

 あうとろー…?

 

 アウトローというとアレだろうか?所謂無法者。法に縛られず、暴力などの犯罪を厭わない人達。

 

 え?こんな真面目そうな子が?と思い、若干引きながら私は詳しく聞いてみることにした。

 

「え…っと、ど、どうしてアウトローになりたいと思ったの?」

 

「かっこいいからよ!」

 

 かっこいい…?アウトローが?と考えてみるのだがもしかしてアルちゃんはフィクションの、映画とか小説のようなもののように考えてるのだろうか?

 

「あー…アレかな。映画みたいなハードボイルドって感じの渋い大人みたいな?」

 

「ええ!そう!何物にも縛られず、自分の好きなように生きるその生き様!ハードボイルドなアウトローになりたいのよ!」

 

 テンションが上がってきたからか声が大きくなっている。それにしてもハードボイルドなアウトロー…まったくもってアルちゃんに合わない気がするんだけど。正義の味方をした方が本質的に合う気がするよ?

 

 話した感じ純粋かつ根が善人、トリニティでもここまでの子は今まで一度もあったことはないね、寧ろ人生で初めて会うレベルかも。

 

 それでもまぁ本人がそれをやりたいっていうのなら…いいんだろうか?まぁいいんじゃないかな?

 

「それで、仲間を作って起業するの!依頼を頼まれれば何でもこなす便利屋。ただし、仁義に反した事はしないクールな悪役!」

 

 キラキラと目を輝かせながら語るアルちゃんが眩しく見えた。ちょっとズレてるけど自分のしたい事を真剣に考えてる、未来に希望を持ってる。

 

 それに対して自分はどうだろう?自分が介入することで周りに迷惑が掛かると、責任から逃げているだけじゃないか、悲劇のヒロイン気取りの子供かな?

 

「ふふ、ちょっと楽しそう。ね、アルちゃん。私がさ、もしトリニティを追い出されたりしたらさ。アルちゃんの便利屋に入れてくれる?」

 

 そう言うと、アルちゃんはキョトンとした表情をする。半分冗談なんだけどね。真面目に考えちゃうこの子は本当にいい子なんだなぁ。

 

「便利屋にトリニティの人を…?ふむ…いや待って。これって最高にアウトローじゃないかしら?」

 

 ぶつぶつとつぶやくアルちゃん。聞こえてるけどね?いや、確かにそうなったらアウトローかもしれない。

 

「ええ!その時はえっと、ミカさんを仲間に入れてあげるわ!ミカさんの役職は…その時になったら考えましょう!」

 

 楽しそうに笑うアルちゃん、アルちゃんは自分がそうなれることを微塵も疑ってない。どこかこの子は放っておけない感じがするし、この人間性だ。すぐに仲間も集まるだろうなぁ。

 

 しかし起業するのがアルちゃんなら、アルちゃんは社長さんか。それなら。

 

「ふふ、お願いね?アル社長、勿論社員にならなくても、何かあったら依頼させてもらうかもしれないね?」

 

「社長…いい響きね!便利屋の出来る女社長。最高にクールだわ!」

 

 楽しそうに未来を妄想するアルちゃん、おっと私の方はそろそろ時間だ。ここらへんでお別れしようかな。

 

「それじゃ、私そろそろ時間だから、ありがとね、色々話を聞いてもらって。」

 

「え?時間?あっ…。」

 

 そう言ったアルちゃんは時間を確認すると白目になった。ハッとすると、ど、どうしようムツキ怒ってないかしら!?と慌てだした。どうやらあちらも待ち合わせだったみたい。悪いことをしちゃったかな?

 

 そして、私達はお互いに別れた。奇妙な出会いだったけど私にとって今後の事を考えさせられる重要な転機に思えた。

 

 待ち合わせ場所に向かうとナギちゃんの姿が見えた。私はすっきりした気分でナギちゃんに向かって駆け出す。その後いっぱいナギちゃんと遊んだ私は、最高の気分でトリニティに戻った。

 

 

 

 

 …最高の気分だったはずなのに…。

 

「ああ、聖園様?お帰りなさいませ。本日はどちらへ?」

 

「うん、ただいま。適当にその辺を。」

 

 いつものように言葉少なく声をかけて自分の部屋に向かう。だけどその日、今までにない事が起こった。

 

「?聖園様?ハンカチを落としましたよ?」

 

 あ、ナギちゃんのハンカチ。今日も渡そうと思って忘れてた。また今度返さなくちゃ。

 

 そう思って、返して貰おうと思い振り返る。

 

「安物ですね。聖園様にふさわしくありませんし私の方で処分……ガッ!?」

 

 思わずその子の首を掴んで壁に叩き付ける。彼女の緩んだ手からハンカチを取り返すと談笑などで賑わっていた声が消え、辺りが静寂に包まれていた。

 

 …あーあ、やっちゃった。

 

 セイアちゃんからいつもミカは直情的なところをどうにかした方が良いって言われてたのに、今まで我慢してきたのに。

 

「…誰がそんなこと頼んだのかな?私が何も言わないからって勝手な事、しないでくれない?」

 

 そう言ったんだけど反応が返ってこない。どうやら気を失ってるみたいだった。

 

 やってしまったことは仕方がない。どうせ人の目のある所でやっちゃったんだから、この事をきっかけにして、私も変わろう。

 

 そうだね。アルちゃんに倣って籠の鳥から悪女にでもなろう。大丈夫だよ、セイアちゃんの邪魔はしないし少しだけ圧をかけるだけだから。

 

 そうして私はその場を後にした。

 

 私のその姿を見ていた視線に気が付かずに。

 

「ああ、やはり聖園様はそうでなくては。」

 

 誰にも聞かれない歓喜の声が小さく漏れて消えた。




意外な出会いその2、何気に便利屋にいても違和感がないかもしれないミカさん。なおミカが便利屋にいた場合、ゲヘナ風紀委員の胃が死ぬ。

最後のハンカチ捨てようとした子はとっても怖かったことでしょう、アリスク追いかけるミカ並の恐怖だったんじゃなかろうか?

アルちゃんは事務所予定地とかを見に来たりしていました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。