―――運命が歪んでいる。
―――我らが大地を侵略せし忘れられた神。
―――あれらが運命を歪めている。
―――しかし、あれらに未来を変えることなど。
―――何者かが異物を招き入れた?
―――それを特異点と呼称する、それを排除しなければ我らが望む未来はない。
―――ならば排除せねばならぬだろう、我らの未来に異物は必要ない。
―――「死の神」はどうする?かの忘れられた神の死によって招致される我らが計画に必要な存在。
―――「死の神」を降臨させるためにも、異物は存在してはならない。
―――ならば共に排除してしまえばよい、どちらにせよかの忘れられた神の死は確定されし未来。一人増えたとて何も変わることはない。
―――ならばどうする。
―――「神名十文字」を利用させてもらうとしよう、あれならば異物共々処理できるだろう。
―――異議なし。
―――異議なし。
―――異議なし。
―――計画を遂行するとしよう。我らが障害に終焉を。
その日は何故か朝からピリピリとした感覚を感じていた。
いつも通りの日常のはずなのだが、嫌な予感が止まらないのだ。
今日は久々にリオさん(名前呼びの許可をもらった)が来て数日アビドスにいると言う。
アビドスの為に色々してもらって本当に感謝しかない。何度も彼女には礼を言ったがそれでも全然足りない位だ。
普段彼女の周りには存在しないタイプのユメ先輩との交流は彼女にとっても気晴らしになるらしい。逆に効率が良くなったと本気か冗談かわからない事も言っていた。あまり冗談を言う人じゃなかった気がするが。
私があまりに落ち着きが無いからかユメ先輩はぎゅーってしてあげようか?なんて言ったりもしていた。彼女に抱きしめられると別の意味でダメージを受けそうなので遠慮したが。なので残念そうな顔は辞めてください。
最近砂嵐の影響で校舎の移転の話も上がっているのだ、その為、重要な書類などを分野別に分けて分校に持っていったりしているのだが、アビドスの歴史というのはかなり長くその数も膨大だ。先輩方や他の生徒にも手伝ってもらっているが終わる気配がない。
リオさんにも心配をかけてしまったようだ、まさかのたまには休んだらどう?というお言葉。そのままお返ししたい言葉だったが、流石に失礼だと思い口を閉じた。
ホシノも私の普段とは違う様子を見ていられなかったのか。
「さっきユメ先輩がアビドス砂祭りのポスター持って来てさ、やりたいーって言ってたよ。本来の砂祭りとは違う形になるだろうけどさ。しばらくしたらさ、皆でバーベキューとかしない?」
と気遣ってくれた。バーベキューか、それなら前のパーティーのようにミカさんも呼んでリオさんにも参加してもらおう。賑やかの方が楽しいだろう。
「ありがとうございます。何故か今日は嫌な予感というか、ピリピリしてる気がして。今日は早めに休ませてもらいます。」
そう言って、申し訳ないが今日の仕事はホシノにお願いすることにした。
私は家に帰って最低限の家事を済ませると早めに眠りについた。
端末がけたたましく鳴る音で目を覚ます。
眠気に意識を飲まれながらも通話ボタンを押す。はい、と若干普段より気の抜けた声を返すとホシノの声が聞こえてくる。
「休んでいるところ悪いんだけど、もう夕方なのに昼に出て行ったユメ先輩が学校に戻ってこないんだ、家に帰ってるかもしれないから確認してくれない?」
またピリピリとしたあの感覚が蘇る。私は了承し、着替えをしてユメ先輩のもとに向かう事にした。いつも使っている2挺の銃とは別の普段は使わない銃を何故か持ちながら。
ユメ先輩の家の明かりはついておらず、鍵も締まっている。連絡もしてみたが反応が無い、杞憂ならいいのだが、嫌な予感が鳴りやまない。
…まさか、今日なのか?
私は急いでホシノに連絡を入れる。杞憂だったらそれでもいい、ユメ先輩に文句を言って終わりだ。
だが、もしも彼女に何かあったら。
「ホシノ、恐らく家にも戻ってません。何かあったのかもしれません。杞憂であればいいですがもしものことがあります。私はアビドス砂漠の方に向かいますので、ホシノもそちらで捜索をお願いします。」
「…うん、分かった。見つけたら連絡して、ナギサも気を付けてね。」
やはりホシノも心配だったようで声がいつもよりも張りが無い。通話を切ると直後にミカさんから連絡が来た、そう言えば明日遊ぶ約束をしていたかもしれない。
申し訳ないがキャンセルすることにした。場合によっては休まずに捜索することになる可能性もあるからだ。
ごめんなさいと謝り、私はアビドス砂漠に向かった。
明日はナギちゃんと遊ぶ日だ。高校生になってより複雑になってしまった派閥争い、セイアちゃんも自分の派閥の発言力を大きくするために忙しくしているし、テマリちゃんは何故か聖園派から抜けて別の派閥を作った。
あれだけ私を女王にさせようと動いていたのにどうして気が変わったんだろう?
まぁ分からない事は考えても仕方ないし息の詰まるトリニティではなくナギちゃんと遊ぶことに考えを向けた。
それで、明日の待ち合わせとかの時間の相談をしようと思ったんだけど、明日は無理かもしれないという返事が返ってきた。
普段なら用事が出来ちゃったなら仕方ないかーって思うんだけど、何故か嫌な予感がした。
セイアちゃんも私の勘は馬鹿に出来ないと言っていた。自分の夢よりよほど信頼が出来ると。
「…ナギちゃん…。」
私はアビドスの方向に顔を向け、「大切な人」を想った。
「えっと…待ち合わせ場所は、確かこのあたりだったと思ったんだけど…。」
昼をちょっと過ぎたあたりにあなたの後輩、桐藤ナギサについて大事な話がある。と連絡をもらったので気になって行く事にしたの。桐藤…?別人じゃないかな?とも思ったんだけどね。
今思えば、また騙されてるかもって思ったんだけど…。ホシノちゃんについてきてもらえばよかったかな?でもホシノちゃん、ナギサちゃんが調子悪くて帰っちゃったから忙しそうで声かけられなかった。
ナギサちゃんもホシノちゃんも私にとっては大切な子だ。私は来年には卒業しちゃうし…もちろん卒業後もアビドスの為に色々やろうとは思ってるけど今みたいに一緒に騒いだりは出来なくなると思う。
あの子達の為にいろいろ残してあげたいし、してあげたい。残していくのが借金だけだなんて最低な先輩になりたくない。
楽しい思い出もいっぱい作りたい、残り少ない青春をあの子達と一緒に過ごしたい。
ナギサちゃんの過去は私もよく知らない、ミカちゃんは知ってるみたいだけど私からはあまり詮索したことがないから。
もしも、ナギサちゃんが過去の事で悩んでることがあるのなら私も力になってあげたい、余計なお世話かもしれないけど解決したい事があるなら私も力になりたいって思う。
それで、しばらく待っても誰も来ないしいたずらだったのかな?と帰ろうと思っていたら。
ふいに声が聞こえた。
―――悪いがお前の神秘、利用させてもらう。
その言葉と共に私の背中に何かを突き入れられた。
「…えっ…?」
何かを奪われるような感覚、徐々に体に力が入らなくなる。
―――安心せよ、まだ命は奪わん。貴様には特異点を呼ぶ餌になってもらう。
力が抜け、座り込む私に対して誰かの声が響く、嫌な予感がする。餌って何だろう。
なんとなくナギサちゃんの顔が浮かぶ、だめだ、そんなこと。
「…だ…め…ナギサちゃ…。」
そう思いながらも私は何もできず砂漠の大地に倒れ伏した。
ちょっと無理やり感ありますがこうでもしないと話が進まないので…。ユメ先輩の善性を利用した最悪の行為です。
恐らく次の話は何話かにかけて投稿します。山場なので。
本当にナギサ様は厄介な存在に目を付けられますね(他人事)。