ナギサ様かわいいよナギサ様。
原作までまだまだです。すみません
ちなみに作者はミカ推しです。
逃げ出したあの後私は、取り合えずパーティー会場に戻り父のもとに向かった、ちょうど父も私の事を探していたようで、聖園の当主様である聖園ミカさんのお父様に私を紹介したいようだった。
聖園様…聖園ミカさんのお父様にはよく出来た子だと褒められた気がする。娘と仲良くなれなかったのは残念だがこれからよろしくと。
…最低限の役割は果たせたようだったが、私にとって最重要ともいえる事を果たせなかった事だけが頭の中に残っていた。
家に帰るまで俯いていた私に気を使ったのかお父様も気にすることはないと慰めてくれた。優しい父…だけど失望させてしまったかもしれない。
考えを切り替えよう、私は頭を軽く振りながら今後の予定について考える、失敗は取り戻せばいい、そうだ一回の失敗でなにもすべてがダメになる訳ではない。ポジティブに考えよう。
それからの私は、勉強などを完璧にこなしながら変わりない日々を過ごしている。たまに同年代の子供たちをメインにしたパーティーに招待されるので、今度こそはと意気揚々と参加させてもらっているのだが…。
参加の度に聖園ミカさんに挨拶しに行っているのだけれど、どうやら本格的に嫌われているようだ。近付くと周りの取り巻きに牽制され近付けないしミカさん本人には怖がられているような反応をされる、どうして?
そんな日々を過ごしていたある日、私はお父様に呼ばれお父様の執務室に呼ばれた。
そこで私は生まれて初めてお父様に叱られることになった。
どうやら私が嫌がるミカさんを追い回している、と報告を受けていたようだ、それについて複数の家から抗議を受けていると。
それに対し父は。
「無理に仲良くならなくていいと言ったはずだナギサ、まだ聖園家から抗議を受けていないが、ご息女から伝われば聖園家から睨まれることになる。我が家の為に動こうとするのは嬉しいが今後彼女にかかわるのは辞めて欲しい。」
まずい、と思った。
このままミカさんと関わるのを辞めれば「原作」の修正が利かなくなる。そうすれば、未来は。
「で、ですが、私とミカさんが仲良くなることに大きな利益があるはずです。大丈夫、これ以上嫌がられることがないようまずはお手紙から。」
どうにか言い訳を探そうとするもお父様の険しい顔は変わらず。
「嫌がる相手に付きまとうのは辞めなさい、ナギサは聖園家のご息女と仲良くなりたかったのかもしれんが、今回は諦めなさい。」
そう、厳しく言葉を返された。
父から叱られてから私は家を出ることが少なくなった。考えることは未来の事、どうすればいい、そればかりが頭の中を駆け巡る。
そうしているうちに私はああ、と少し納得がいった。そうか彼女は未来を知っていたから一人で悩んでいたのかと。
原作軸のトリニティ版生徒会、ティーパーティーには3人の生徒会長がいる、私、桐藤ナギサと聖園ミカ、そして百合園セイア。
その内の百合園セイアには特殊な技能がある。未来が見えると言う能力である。
私も厳密には違うものの原作知識という未来を知っている、だからこそこうして悩んでいる訳だ。
原作は先生と生徒の物語、いくつもの奇跡が重なりハッピーエンドに至った世界線だ。
そう、ハッピーエンドがあるということはバッドエンドも存在する、はっきりと描写されたわけではないがPVなどでそう言った世界線が存在することは示唆されている。
だからこそ私は原作時間軸にたどり着きたい、ハッピーエンドが見たいのだ。だからこそ原作のように、悪辣な事でもやろうと考えた、けれどもこのままじゃその状況までもが発生しない。
缶詰め状態が続いて頭が上手く纏まらない、ならいっそ。
…すべてぶちまけてしまおうか?
お父様にどうしてもミカさんと仲良くならなければだめなのだと、未来の為だと私は血迷ったかぶちまけてしまったのだ。
その時のお父様は私を可哀想な目で見ながら一言。
「ナギサ、お前は疲れているんだ。ここの所外出もしていないだろう?少し外の空気を吸って心を落ち着けなさい。」
そう言って背を向けてしまった。
失望された。
私はその場から去りそのままお父様の言う通り外の空気を吸いに出ることにした。
久しぶりの家の外は夏であることも相まって少々暑かった、日傘を持ってくればよかったとも思ったけれど、そんなことはどうでもいいか。
鬱々とした気持ちのまま私は当てもなく庭先を歩く、信じてもらえないのも当たり前だ。要は気になった子と仲良くなりたくて言い訳をした子供のようにしか思えなかっただろう。
実際に子供であるのは事実だけれども、私は転生者なのだ、普通の子供とは違う。そこに来て私ははっとした。
私は両親から「桐藤ナギサ」を奪っている。
本来ならもっと純粋で優しい子が生まれたはずなのだ、優しさが故に疑心暗鬼になりながら悪役になり切れない優しい子が。
見ないふりをしていたことを考え始めたら怖くなった。両親は本当は自分の事が好きではないのではないか?私がニセモノであると知られたらどうしよう。
怖くなった、知られるはずがないと分かっていても。転生者とは言え私だって今は普通の女の子だ、原作知識以外前世の知識もない、私にとって両親は彼らだけなのだ。
そっと家に戻るすると家の近くの窓から人の声が聞こえる。お父様とお母様の声だった。
「もう少し……たらどう…?あの子……なのよ?」
「分かっ…る。それは、……甘えて…。」
くぐもってよく聞こえない、もう少し近付いてみる。
「大丈夫だ、あの子だってわかってくれる、あの子は聡い子だ。」
「だからと言って、親の庇護も受けられないところに放り出すのは。」
…え…?
「あの子ならば大丈夫だ。それに―」
私は駆け出していた。その後の言葉を聞きたくなかった。
ああ、やっぱり捨てられる。私が失敗したから、私が「桐藤ナギサ」のニセモノだから。
逃げ出したい、この場から逃げ出したい。私は強くそう思った。こんな記憶を持ったまま生まれたくなかった。こんな記憶があるからミカと仲良くなれなかったのだ。
逃げ出したい、私の責任から。そしてこの世界から。
そう思ったその時、私の願いが通じてしまった。
駆け出していた足元が無くなっていた。
「…ぁっ!?」
声にならない声を出しながら私は足元の暗闇に落ちていった。
その数秒後暗闇は消え、その場には何もなかったかのような風景だけが残った。
その日、桐藤ナギサは世界から姿を消した。
「もう少しあの子に優しくしてあげたらどうなの?あの子はまだ幼い女の子なのよ?」
「分かっている…。それは、私があの子に甘えてしまっていることは。」
妻に詰められながら、私は娘の事を考える。
幼くも聡く我が家の為にと尽くしてくれる優しい子。
もう少し子供らしく、と思っているが頭の回るあの子の優しさについ甘えてしまうのは最近の私の悪い癖だ。
「大丈夫だ、あの子だってわかってくれる、あの子は聡い子だ。」
そう言いながらもまたあの子に何も言わずに勝手に未来を決めてしまおうとしている。だけどきっとそれがあの子の為になると信じて。
「だからと言って、親の庇護も受けられないところに放り出すのは。」
人聞きの悪い、放り出す訳じゃないし使用人もきちんと付けるしいつでも連絡が取れるよう準備はしている。
「あの子ならば大丈夫だ。それに行かせる場所は学園都市、治安もいいトリニティにした。」
そう、あの子はどうやら友達が欲しいようなのだ、それ故、聖園様のご息女に迷惑をかけてしまったようではあるのだが…。
問題は起こしてくれたものの娘にも年相応の所があって嬉しいと感じる。だからこそそこで友達を作って欲しいと。
「それに、そう遠くないうちに聖園様のご息女も行くそうだ。親の目がないそこでなら、多少怒られるようなことをしようがお目こぼしされるだろう。」
「…本当にあの子はどうして聖園様のご息女にご執心なのかしらねぇ…とてもかわいらしいのは分かるけど。」
そう言いながら妻はうちのナギサも負けていませんけどね。と笑う。そのとおりだ。うちのナギサは誰よりもかわいい。
「ナギサ、どこまで行ったのかしら?そろそろ時間よ?」
「ああ、それほど遠くには行っていないだろう、何より今日は。」
そう、今日は7月4日。
あの子の生まれた大事な日で。
生まれてきてくれてありがとうと、伝えよう。
ミカがナギサを怖がるのには理由があります。