汀渚のアーカイブ   作:buridish

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変わった運命

 微睡の中、奇妙な空間。

 

 これには覚えがある。”私”と初めて出会った場所。という事は今私は眠っているのだろうか?

 

「眠っている。というのは間違いではありませんが、使った力の反動で身体の中がかなりのダメージを受けたのですよ、何故か凄まじい治癒速度で回復していますが。」

 

 …思い出した。私は自分の中に存在するもう一つのナニカ。その力を使ったのだ、その反動で意識を失ったのだろう。

 

「…自分の事ながら本当に無茶をするものです…。いえ、ですが私も同じ状態だったなら…大切な人の危機には身体が動いてしまうかもしれませんね。」

 

 頭を押さえながら”私”も言葉を溢す、別の魂であっても彼女も私と同じ存在なのだ。お互いの事はよくわかっている。

 

 それで、しばらくここに来てなかったけど、どういう条件でここに来れるのだろうか?

 

「詳しいことは私にもわかりません。ただ、例のナニカ、アレと関係することだと思います。」

 

 アレか、私と”私”の様な関係とは違う別種のもの。私と”私”は恐らく起源が同一なのだがあのナニカは全く別のものだ、無関係と言ってもいい。

 

「そうですね。私達がこうしてお互いを認識できるようになったのは日本に飛ばされる道中。正確には穴に落ちる直前…でしょうか。」

 

 そう、恐らくその時に私達にくっ付いてきたのだろう、何故かはわからないが。

 

「今回はそろそろ目が覚めそうですね。いつでもお話は出来ますが何か聞きたい事はありますか?」

 

 とくにはない、現実に戻れば知りたい事は知れるし。あ、しいて言うなら私達が混ざった事による”私”への悪い影響とかは大丈夫だろうか?半身が突然消えたりとかしたら喪失感がとんでもない事になる。

 

「それは問題ありません。どちらかというとあの力を使った影響でお互いにアレの力が流れ込んだようで、そちらの影響が出ているでしょうか?」

 

 それって良くない事だろうか?私にも何か影響が出ている?

 

「治癒能力もその一つかと、私の方は知覚能力の向上と神秘に多少の影響が出ているみたいですね。そちらの方は分かりませんが目を覚ませば自覚できると思います。」

 

 どうやら私は目を覚まそうとしているらしい、”私”の存在が薄れていき私もこの世界での意識が薄れる。

 

 私は”私”にまた現実で、と返し現実に向け意識を浮上させた。

 

 

 

 

「ん、う…ん?」

 

 閉じていた目を開けると眩しさに目が眩む。白い天井。予想はしていたが多分ここは病院だ。

 

 近くに気配を感じそちらに顔を向ける。何故かその瞬間右手に感じていた温もりが消えたがなんだったのだろうか。

 

「意識、戻った?私が誰かわかる?」

 

 そう言いながら少しだけ不安そうに色の違う瞳を揺らす桃色の少女。私の大切な友達のホシノ。

 

「分かりますよ、ホシノ。」

 

 私がそう言うとホッとしたように表情を和らげる、力が抜けたのか若干ふにゃっとした笑顔だ。

 

「まったく…皆に沢山心配かけて、聖園さんは病院に泊まるって言いだすし、ユメ先輩は泣き止まないし…調月さんだって表情にはあんまり出さなかったけど気にかけてくれてたんだよ?本当にこれからは無茶しないで…と言いたいけど。」

 

 今回は私のせいでもあるから、と珍しくしおらしい態度のホシノ。戦車の護衛から離れたことに責任を感じているのだろうか。

 

「いいえ、あそこでホシノが来てくれてなかったらミカさんもただじゃすまなかったと思います。そうなればこちらも危なかったですから、寧ろ助けに来てくれて感謝してますよ。」

 

 そうだ、そんなことよりユメ先輩は?

 

「あの、ホシノ…ユメ先輩は…?」

 

 そう言うと少し俯いたホシノが言い辛そうにしている。ユメ先輩に何かあったのだろうか。

 

「ユメ先輩は…同じ病院に入院してる。それで…。」

 

 ぎゅっと、両手を握りながら口を開いた。

 

「足に感覚が無いって…動かせないって言ってた。原因も分からないし、なんか眠気がひどいって。気が付けばうとうとしてることが増えてて。」

 

 やはり、何事もなく…という訳にはいかなかった様だ。物語の本筋からすれば全然良い結果と言えるだろう、生きている。それだけでも頑張って良かったと言える。それでも。

 

 私はそうですか、と言葉を漏らす。病室を静寂が満たし、よくない空気になったので話の切り替えとのどの渇きを何とかしたいのがあったので、水を貰う事にした。

 

 ついでに医者も呼んでくる。との事でホシノは部屋を出ていった。

 

 ユメ先輩の生存。喜びこそあれ不安もある、私は本来の運命を変えた。私がアビドスにいる事だけでも大きな揺らぎ、少々あれな言い方をすれば原作崩壊だ。

 

 恐らくユメ先輩の死は何らかの形でストーリーにかかわってくるのだろう。私の原作知識は最終編のものまでしか存在しない。故にこれが良い結果を生むか悪い結果を生むかがわからない。

 

 それでも後悔はしない、自分が選んだ未来。この事で未来に不都合があったなら私はその責を負う覚悟は出来ている。

 

 もうここは物語の世界ではない、ここは私が生きる世界なのだから。

 

 そんなことを考えているとどうやらホシノが医者を連れて戻ってきたようだ。現れた医者に簡単な診察と問診を受ける。どうやら問題無しと判断されたらしい。

 

 病院に連れてこられた当初は血を吐いたという事で緊急手術か?とも思われたらしいのだが医療機器を使い調べてみるとほぼ異常がないという結果に終わった。リオさんすらも頭に疑問符が浮かんでいたみたいなのだから驚いたことだろう。ミカさんはトリニティにもすぐに怪我が治っちゃう子がいた気がするなぁと言っていたらしいが。

 

 どうやら3日ほど入院していたようで、明日には退院できるでしょうと言われた。一応もう一度検査はするようだが。

 

 ”私”が言っていた治癒能力の向上、どうやら実際に効果が出ているらしい。キヴォトス上位勢程の能力があるかどうかはわからないが。

 

 一通り説明を受け終わり、医者が席を外すとホシノからペットボトルの水を受け取ることにする。そしてホシノからそれを手渡された瞬間。

 

 水の入った容器ごとそれが粉砕された。飛び散る水を浴びる私とホシノ、お互いにびしょ濡れである。私なんか病院の薄い生地の服を借りているからか服が透けている始末。

 

「…ナギサ?何やってんの?」

 

「いえ、あの…軽く手に持ったつもり…だったのですが。」

 

 そう、軽く掴んだつもりだったのだ。

 

 ホシノは水の滴った髪を軽くハンカチで拭い、ちょっと拭くものとナギサの着替えを貰ってくると言ってまた出て行ってしまった。

 

 私は呆然としながら自分の手を開閉する。私は”私”に言われたことを思い返す。まさかこれが?

 

 ホシノは手に色々なものを持ってきてすぐに戻ってきた。まずはストローの入った水らしき容器。

 

 それを受け取ろうとしたのだが、口開けてと言われる。少し恥ずかしいが手を出すと躱されるのでおとなしくストローをくわえて水を飲む。

 

 飲み終わると次に差し出されたのは握力計、どこで見つけてきたんだろうこんなもの。

 

 先程の疑問が現実であることを恐れ私は軽く握る。その瞬間破砕される握力計。

 

 私は呆然とする。ホシノは押し黙っている。微妙な空気が病室に流れる。

 

「…アビドスセイトカイゴリラ?」

 

「誰がゴリラですかっ!」

 

 私の叫びが病室に響き渡った。




これがアビドスセイトカイゴリラ誕生の瞬間であった…。

ミカの事をとやかく言えないパワー系と化したナギサ様。やったね!これでミカとふたりはゴリキュア出来るよ!
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