汀渚のアーカイブ   作:buridish

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ナギサ達出ません。20話過ぎて原作に入らない小説とかマ?


黒と白の天才少女

 ミレニアムサイエンススクールの一室、そこで一人の少女が作業を行っていた。

 

「…不便が無いように色々取り付けてはみたけれど…こんなものかしら?」

 

 そう言って一言呟く彼女の目の前にはシンプルながら機械的なものが沢山付いている車椅子。それを作成した張本人の調月リオは誰か試運転をしてくれないかと考えていた。

 

 あまり知り合いが多くないリオは取り合えず出会った相手に頼んでみようと考え部屋を出ると丁度一人の少女が通りがかった所だった。

 

「あらあら、ここしばらく大変お忙しそうにしていた調月さんじゃないですか、今日はボランティアは良いのですか?」

 

 調月リオとは真逆な白をまとい車椅子に乗った少女。優秀な頭脳を持つ生徒が多く集まるミレニアムでもすでに天才と称されるリオと分野は違えど同じく天才とされている少女、明星ヒマリである。

 

 ボランティアとはアビドスに対する支援のことであり、実質大してリオの利益にならない所が多い為にそういう言い方をしている。

 

「…ヒマリ、ちょうどよかったわ。あなたに私が作ったこれの試運転を頼みたいのだけど。」

 

 と言いながらヒマリの言葉を流しながら先程の部屋に戻り車椅子を出してくる。ヒマリは相変わらずユーモアのかけらもない女ですね。と内心思いながら出てきた車椅子に疑問符を浮かべた。

 

「車椅子、ですか?なんというか無駄に色々なものが付いていますが…あなたが使う訳ではないですよね?」

 

 シンプルな見た目ながら、バックパックの様なものが付いており。あちこちに機械類が見える車椅子。まさかこの超天才清楚系病弱美少女の私に対抗して?などと一瞬でも考えたのは彼女の強すぎる自尊心のせいだ。

 

「ええ、アビドスの…友人の足が不自由になってしまってね…。その人の為に作ったアバンギャルド車椅子よ。砂漠用のアバンギャルド君のデータを利用して作った傑作よ。」

 

 いくら天才とは言え訳の分からない事を羅列されれば混乱する。この合理主義の塊にも友人がいるんですね。と思いながら疑問を口にする。

 

「…それでその車椅子の乗り心地を確かめて欲しいという事ですか?そのごてごてしているのは?」

 

 車椅子のバックパックやいろいろな部分についた機械を指さしながら疑問を口に出すヒマリ。それに対し素直に自信にあふれたような態度で言葉を返すリオ。

 

「ええ、このバックパックは隠し腕とブースターが内蔵されていて戦闘行動を可能とした設計になっているわ。小型化した分火力は落ちているけれどその分機動性は折り紙付きよ。」

 

 と、本格的に訳が分からない事を言い出した。車椅子に戦闘用の装備が必要あるか?という疑問、同じ一年にエンジニア部に入った誠実ではあるがロマンを追い求めすぎていると評判の少女が乗り移ったのかと勘違いするレベルである。

 

 少々擁護できるとすれば、送る相手は何者かに狙われている可能性があり自衛の為、という理由はあるもののそれを知らないヒマリからすれば、ロマンを理解しないこの女の気が狂ったかとしか思えない言葉だった。

 

「…どうして車椅子にそんな機能が必要かわかりませんが、そんなものを取り付けて誰が整備をするのですか?あなたが傑作と自信を持って言えるものを弄れる人間なんてそうそういないと思いますが?」

 

 高性能なものというのはデリケートなものだ。機械類を詰め込んでいるこの車椅子はこまめなメンテナンスが必須になるだろう。それほどのメカニックが送り主のいる場所にいるだろうか?

 

 いけ好かない女と思っていながらも、ヒマリはリオの能力は素直に称賛している。リオが天才というのも理解した上での言葉だ。

 

「個人的には無駄を省いて長時間座っていても疲れないようなものが一番だと思います。電動機付きというのも悪くはありませんが、初心者にアレコレと詰め込むのもよくはありませんよ?」

 

 個人的に戦闘武装は要らない、戦いが必要なら護衛を用意した方が断然良い。それを送る相手がどれだけ身体に不自由を感じているかはわからないが、乗り手に色々な物を要求するのは酷だ。

 

「…そうね、色々なものと取り付けたところで運用できなければ意味がないわね。」

 

 自信作を酷評されたことに珍しくしゅんとした様子のリオ。珍しい表情を見たとヒマリは少々目を見開く。

 

「…送る相手はアビドスの方ですか?」

 

「ええ、アビドスの生徒会長。私みたいな相手を素直に友人と言ってくれる珍しい感性の持ち主よ。」

 

 そう言うリオの脳裏に浮かぶのは満面の笑顔、そして様々な感情豊かな表情。

 

「…ヒマリ、一つ聞いてもいいかしら?」

 

 リオが質問してくるのは珍しいな、と思いながら、ええ、構いませんと返すヒマリ。

 

「人の絆は、未来を…定められた運命を変えられると思うかしら?」

 

 ヒマリはその言葉に驚いた。リオから絶対に出ないだろうと思っていた言葉だったからだ。

 

 しかし、この女からこういう言葉が出てくるという事は本気で悩んでいるという事、アビドスに行くようになってから変わったなと思いながら、悪い変化ではないかと思うが故に茶化さずに素直に答えることにした。

 

「状況によりけりだとは思います。けれど、私個人の考えは、まず自分が未来を諦めない事。そして、誰かがいてくれれば出来る事は増えます。人が増えればもっと。」

 

 リオの脳裏に浮かぶのはビナーとの戦い。最終的にはナギサの驚異的な力で撃退したものの、それまでの工程で戦えていたのは実力者が集まっていたからだ。

 

 ユメ一人なら間違いなく死んでいた。ナギサがあの力に目覚めて撃破してもあの場に倒れていれば生存は難しかったかもしれない。

 

 だけれどあの場に集まった者たちがいた。

 

 アビドス、ミレニアム、トリニティ。学校も違う人間が協力し、あれ程の強大な相手を撃退した。

 

 結先ナギサは危険も承知した上で救出に向かった。小鳥遊ホシノはナギサの連絡を受けリオに協力を頼んだ。聖園ミカは友人の危機を察知し自分の意思で戦いの地に乗り込んだ。

 

 ホシノ一人でも無理だった、ミカ一人でもダメだった。そしてリオが一人で行っても無理だっただろう。だが全員がいたから成し遂げられた。

 

 リオは考える。おそらくあの時運命は変わったのだろう。そして運命を変えたのは人の縁。

 

「すべてを一人で為そうと思うのは傲慢だったのかもしれないわね。複数の未来があるのならより良い未来を迎えた方が良いもの。」

 

 そう言ったリオに対して驚きの表情を隠せないヒマリ、今日は本当にこの女に驚かされる日だと思った。

 

「それに彼女がもしも敵に回ってあの力を存分に使われたならどれほどの戦力を集めたところで無理そうだわ、ふふ、本当に厄介な友人を持ってしまったわね。」

 

 小さく笑みを浮かべるリオを見たヒマリはもう今日以上に驚く日は来ないだろうと確信した。珍しいものを見たというレベルではなかった。

 

「私が調べている事、もしかしたらあなたにも協力を頼むこともあるかもしれないわ。未来に絶対が無いと分かった今、いくつかのプランを考えておく必要がある。」

 

 私に頼みごとをされるのは嫌かもしれないけれど、と一言添えながら言ったリオにヒマリも笑みを返して答える。

 

「あなたが何を考えているかはまだ分かりませんが、今のあなたになら多少の手伝いくらいはかまいません。以前のいけ好かないあなたよりは断然良いです。無論、問題があった場合反論はしますが。」

 

 頼まれごとを解決してリオに自分の天才性を知らしめるのも良いですね。なんてことを考えながらヒマリは笑う。

 

 このほんの少しの変化が未来を大きく変える事があるという事を二人の少女が知ることはない。

 

 そして、アビドスに送る車椅子は、ヒマリ完全監修のもと梔子ユメのデータを最大限に考慮し作り上げられることになる。




アバンギャルド車椅子は将来とあるパワードスーツの原型になるとかならないとか。
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