後1話で1年生編終わると言ったな…すみません、一纏めにすると文章量増えてしまいそうなので終わりそうにないです。
その地はまさしく地獄だった。
多くの黒い制服を着た同胞が倒れるその場所で少女は意識のある人物に駆け寄る。
「先輩っ!大丈夫ですか!?先輩!」
「ああ…羽…かわ、もう此処はいい、味方を集めて別の場所へ行け…!」
「ですが…先輩、酷い怪我で。」
「私は大丈夫だ、だからお前自身の正義を果た…せ…。」
はたりと落ちる腕、辺りに広がる慟哭。
そこから離れた場所、別の場所では出会いがあった。
「…大丈夫?戦闘が得意じゃない子が何でこんな所に?」
「無能な風紀委員長と万魔殿の馬鹿どものせいですよ!あれだけの数の戦力を投入して守りを薄くするから!」
「…はぁ、私もこんな事関わりたくなかったけど…見捨ててはおけないか…あなた一年の天雨でしょ?私は鬼方カヨコ、安全なところに連れてくまでの間だけどよろしく。」
そう言ってカヨコは座り込む少女に手を差し伸べた。
次々と増えていく重軽傷者、怪我で意識を失った少女や痛みに喘ぐ声が辺りに広がる。
「怪我が酷い順番にあちらに番号を振ってあります!あちらの治療をお願いします!」
治療しても次々に増えていく怪我人、未だかつてこれほどに救護が必要だった人間がいただろうか。
「救護が必要です…このようなこと…。」
一人の少女が戦場に向けて険しい表情を向けていた。
「げほっ…ああもう、まったく容赦ないんだから…。」
まったく服も身体もボロボロだよ。自分も強い方だと自覚はしていたがゲヘナにもとんでもないのがいるんだね。
友人の要請を受けて行った場所で出会った白い悪魔。単独で大勢のトリニティ生を薙ぎ倒すその姿を見て思わずわーお、という言葉が漏れた。
ややあってお互いに話が通じる相手と分かって、その子と今回の事で会話を行いお互いの情報交換をしたんだけど、タイミングが悪く双方から増援が来ちゃって戦わざるを得なくなっちゃった。
「うぇ…これ絶対折れてるよ…火事場の底力って奴であっちの意識も持って行けたけど…。」
向かいのビルの壁面に叩き付けられ気を失っている白い少女、恐らく怪我の割合で行ったら私の方が圧倒的に多いんだけど、上手いこと意識を奪えたのだから上々でしょ?
「だから…頑張ったねって…褒めてね?セイアちゃん…。」
そう言って私、聖園ミカはその場に座り込み瞳を閉じた。
あの大事件が起きてから数日、私は匿名の連絡を受けトリニティのとある病院に足を運んでいた。そこにミカさんが入院しているという連絡を受けた為だ。
「ですが…警備が厚くて入れませんね…。紹介が無ければ入れないようですし。」
困った。意識の有無は分からないが顔だけは見ておきたかったのに。そう思っていると正面から歩いてくる一人の少女、今生で会ったことはないが私は彼女を知っている。
「初めまして、かな?私としてはその言葉に違和感を感じてしまうのだが…。」
特徴的な獣のような耳、流れるような金髪、華奢な体付きをした少女、トリニティの有力者で未来のティーパーティー首長の一人、百合園セイア。彼女が私に声をかけてきた。
「…初めまして、アビドス生徒会の結先ナギサです。」
「百合園セイア、トリニティのティーパーティー所属だ、ミカの見舞いに来てくれたんだろう?少々話したい事もあるし一緒に行こうか、私の紹介があれば病院に入れるしね。」
そう言ってセイアさんが案内をしてくれる事になった。病院内を歩きながら今回の顛末を聞いてみることにした。
「セイアさん…あ、ごめんなさい百合園さん、どうして今回このような事件が起こってしまったのでしょうか?」
「セイアでいいよ、百合園呼びは違和感が凄い。」
そう言って立ち止まるセイアさん。
「場所を変えよう、堂々と話していい話でもないからね。」
そう言って職員の人に個室を使わせてもらえるように言ってその部屋に入る。
「さて、どこから話したものか…私の私見も含まれているから完全に正解とは言えないと思う、それでもいいかい?」
私は頷く、ゲヘナとトリニティ間の関係は悪くはあってもここまでの事件になることはなかったはずだ、”物語”の記憶を持っていてもその記憶には存在していない。
「事の発端はゲヘナで行方不明の生徒が多数出ている事、そしてゲヘナの情報部が犯人はトリニティ生だと断定したことからこの事件は始まった。」
行方不明、それにトリニティ生だと断定?情報源に自信があったのだろうか?
「断定したという事はゲヘナ側の情報源に自信があったという事ですか?」
「そのようだ、そしてトリニティ側としてはそんな事実は一切ないと反論。行方不明者を返さない場合武力行使も辞さないとあちらのTOPから言われてね。話し合いにもならなかった。」
セイアさんは片手を額に当ていかにも頭が痛いという仕草を取る。それはそうだ、話し合いにならなければどうしようもない。
「私自身も今回の事件、事前情報も詳細も何もわからなかった。…ミカから私の能力の事は聞いているかな?」
頷く、おそらく予知夢の事だろう、という事は今回の事は予知できなかったという事か。
「はっきり言おう、私の”夢”は全く役に立たないものだ。いや、人との関りを作る上では大変役に立ってはいるが、不幸を察知して対策と言った面では無能と言わざるを得ない。」
驚いた。自信を卑下するかのような、自身の強みであろう予知を全否定するかのようなことを言うとは思わなかったからだ。
「私の力は予知ではない、恐らく並行世界の観測だという予測をしている。もちろん夢と似たようなことが起こる可能性はある。だが、見る夢と現実があまりにも乖離している。」
つまりセイアさん、彼女が見ている夢は”物語”の事でこの世界の過去と未来ではないという事なのだろう。
「私は私の”夢”を全面的に信用するのは辞めた、必要な情報を収集するためのツールとして、可能性として受け取るだけにしたんだ。」
話がズレたね。と言って彼女は話を元の話題に戻す。
「要は先ほども言った通り今回の事は私は何もわからなかった。だから派閥も関係なく…多少の打算はあるけれども、友誼を結んだ子に対応をお願いしたんだ。」
そして、辛そうに、悔しそうに手を握りしめ唇を噛むセイアさん。
「そのせいで沢山の子を傷つけた、勿論彼女達に頼まなければもっと酷い状況になっただろう、だがそれとこれとは話は別さ…ゲヘナに憎しみを向ける子もいた。痛みを訴える子達に心を痛める子もいた。何よりも…大切な友人のミカが怪我をしてここにいる。」
彼女の言葉から後悔を感じる。自身の選択で他者を傷つけた事を後悔しているのだろう。
「これほどまでに無力を嘆いたことはないよ、自身に戦える力があったなら、抑止力になれるほどの何かを持っていたならと。」
「セイアさん。」
彼女の言いたいことは分かる。他者に託し自身は何もしていないと感じているのも分かる。だが、彼女の選択は例え何人かでも救っているのは間違いないはずだ。
「あなたのしたことは決して無意味ではありません。最善かどうか、それは分かりませんがそれでも救われた者はいるはずです。」
当事者でもない私の言うことなど慰めにもならないだろう、だけどどうしても伝えたかった。
「ふふふ、ミカの言った通り君はとても優しいね。ミカは君が男だったらお付き合いを申し込んでたかもしれないと言っていたよ。その気持ちもわかるかもね。」
少しは気がまぎれたのか、冗談を口にしたセイアさん。そして真剣な目で私の目を見る。
「そんな君の優しさを利用しようとしている私は最低なのだろうね。ナギサ、君に頼みがあるんだ。」
セイアさんは床に膝をつき頭を下げた。私は驚きのあまり目を見開く。
「どうかトリニティに留学してくれないか、学籍はアビドスのままでいい。これから希望を持ってトリニティに来る子達の拠り所になって欲しいんだ。ミカも私も立場上動けない。私達では救ってあげられない。」
そして彼女の願いも驚きのものだった。今ここでトリニティと関わることになるのか。
「私の出来る事ならなんだってする。アビドスの支援だって惜しまない。トリニティ内のことだって出来る限り便宜を図る。」
だからどうか頼むと頭を下げる彼女の言葉に私は頭を悩ませることになった。
その後、セイアさんにミカさんの病室に案内され、あんな頼み事をした今の私にミカに会う資格はないと言って去っていった。その際に頼みごとの件は一度持ち帰って考えたいと伝えた。
ミカさんの病室のドアをノックする。すると気怠そうな声ではぁい、どうぞー、といった声が聞こえる。それだけの返事が出来る程に元気なようで安心した。
そのまま部屋に入ると、髪を解いて患者衣に身を包みあちこちに包帯が巻かれたミカさんがそこには居た。以前とは逆の構図だなぁと感じる。
ミカさんと目があった瞬間彼女はひどく驚いた様子を見せた。
「えっ!?ナギちゃん!?なんでここに?あっやだっ、こんな格好…っていたたたたっ。」
突然慌てだすミカさん、そして身体を動かしたからか痛みに蹲る。
「ミカさん落ち着いて、良かった。こうして話す事が出来て。」
一時はどうなる事かと思った。いや、見た感じまごうことなく大怪我なのだが、それほど気に病んでる様子もない。
「先程セイアさんに会いましたここまで案内してもらったのです。お礼を言ってましたよ、その、まだやることがあると言って帰ってしまいましたが。」
「そっか…セイアちゃんが…。」
そう言って口元に笑みを浮かべるミカさん、今回の事で二人がすれ違わない事を祈るが…。
「事のあらましはセイアさんに聞きました。しかし、ミカさんにこれほどの怪我を負わせるだなんて。」
相当相手は限られるだろう、多勢に無勢ならわかるが単独なら彼女くらいしか思い浮かばない。
「ああ、これはね。状況が悪くて戦うしかなかったんだ。相手はゲヘナのヒナちゃんって子、すっごく強くてね。相打ちに持って行けたのが不思議なくらいだったよ。」
予想通りの名前、将来のゲヘナ最強、いや、もしかしたら現時点でもゲヘナ最強かもしれない。
そんな相手と相打ちになるミカさんも相当だと思う。言い方を見るにあちらが優勢だったようだが。
「ナギちゃんだから教えるけど、今回の事、恐らく原因はトリニティにあるのは間違いないみたい。」
オフレコにしてね?と言いながらミカさんの考えを聞く。
「派閥の子から聞いた話とヒナちゃんの話、結果を纏めると明らかにおかしいことがあってね。まず今回の行方不明事件、トリニティとゲヘナ自治区の間の所で起こってるみたいなの。そして今回の抗争、いろんな場所で双方に大きな被害を出したみたいなんだけど、問題はトリニティに攻め入ったゲヘナ行政のトップと風紀委員?っていうの。」
ふぅ、と一息ついてからミカさんは口を開く。
「一番戦力を集めてたのに、大して損害を与える事も出来ずに待ち伏せにあって壊滅。偶然にしたら出来過ぎじゃない?」
確かに、それだけの戦力、トリニティ側もただでは済まないはずだ、普通ならば。
「証拠が無いからどうにもならないんだけどね。そこの指揮をしてた子が今回一番の戦績を上げて2年生で次期首長って言われてるみたい。」
その子の名前はね。と難しい顔をしたミカさんは口を開く。
「甘背テマリ、元聖園派でティーパーティーパテル派次期首長って言われてる子だよ。」
驚きの事実を口にした。
ナギちゃん「えっ、ミカさんがパテル派首長じゃないんですか!?」という驚き。
ここのセイアさんが積極的に行っている事は将来の有力者とのつながりを作る事、シスターフッドとも繋がりがあるとか。原作セイア様は自身で溜め込む気質でしたがここのは他人に頼った結果めっちゃメンタルダメージを負いました。
今回の件でゲヘナ側の上層部は大打撃、万魔殿の方はマコトが動いておりヒナが次期風紀委員長に挙げられたりしている感じでしょうか。