汀渚のアーカイブ   作:buridish

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幕間、家族との再会です。

アビドス3章の続きでめっちゃ頭抱えましたねえ…。本気ホシノ強すぎて草、それに対して模擬戦かつ搦手アリとはいえ勝ち星上げてるうちのナギサ様が化け物になってしまう。


ただいま

 送別会後、セイアさんが用意してくれたセイアさんのセーフハウスへとりあえずの仮宿として引っ越しをした。セイアさんはここをただで提供すると言っていたが、流石に申し訳ないのでどこかで部屋を借りようと思ってはいるのだが。

 

 そして、決意したとはいえ、やはり実家へ直接連絡するのは手が震える。届く手紙から愛情が感じられ大丈夫だと分かっていても。

 

 この期に及んで怖気付きながらも、何とか覚えていた父の直通回線の番号を入力し通話ボタンを押した。

 

 しばらくの間呼び出し音が鳴る。出ない、仕事中だっただろうか?

 

 出ないという理由付けをして電話を切ろうとしたその瞬間、呼び出し音が消える。そして。

 

「……もしもし?」

 

 電話口から聞こえた懐かしい声、以前よりもほんの少しだけ重さを感じさせるような声だった。

 

「…どなたでしょうか?この番号を知る相手はほとんどいないはずですが、間違いだったら失礼―――…。」

 

 そうだ、父は通話の相手が私だと分かっていない、黙っていては分からない。私は少しだけ震える声で口を開く。

 

「…ナギサ…です。お久しぶりです。お父様。」

 

「――――――。」

 

 電話の向こうから絶句したかのように息を飲む音が聞こえた。本人かどうか疑っているのだろうか?

 

「あの…私…。」

 

「ナギサ、なのか…?」

 

 その声に含まれる感情はなんだろうか、茫然としたかのような夢か現実かがわからないかのような、そんな声色だった。

 

「はい…長く姿を見せず申し訳ございませんでした…。」

 

 ミカさんにメッセンジャーを頼んでおいたとは言え、いきなりの娘からの連絡だ。疑う気持ちもわかる。

 

「今どこにっ…いや、無事に…元気に過ごしているならばかまわない。…久しぶりだな、ナギサ。」

 

 言いたい事も沢山あるだろう、それは私も同じだ。だが肝心な言葉が出てこずに、一言はい、と返すことしかできなかった。

 

「何か困ったことはないか?聖園家のミカさんとは仲良くやっているようだが…ああ、すまない。連絡してくれたという事は何かあったという事だな、まずはそちらの事情を聞こうか。」

 

 何も言わずとも察してくれたようで、こちらの事情を話すことにした。

 

「はい、その…実は、しばらく桐藤とは別の…お世話になった家の名を使わせてもらっていたのですが…諸事情ありトリニティに通う事になったので…逃げだしておきながら勝手だとはわかっているのですが、桐藤の名を名乗らせてほしいのです。」

 

「逃げたとは思ってはいないさ、ナギサを追い詰めたのには私にも原因はあると思っている。桐藤もナギサなら名乗っても当然の権利がある。だが…しかし、トリニティ…か…。」

 

 すんなりと名乗る許可を貰いながらも今のトリニティに父も思う事があるようだった。恐らくこの間の抗争についてもう情報を得ているのだろう。

 

「色々と話したい事もある。新しく出来た家族も紹介したい、今度時間を作るから会ってはくれないか?」

 

 今まで散々親不孝をしてきたのだ、それくらいなら構わないと私は了承した。

 

 

 

 

 それから数日後、お父様も忙しいであろうに時間を空けてくれた。そして、会うために指定した場所はトリニティの高級住宅街の一角、桐藤家が所有する別荘だそうだ。その場所の門前に到着すると控えていたらしい使用人に話しかけられ、名前を聞かれたので名乗ると門を開けて案内してくれた。

 

久々に感じる上流階級の感覚、以前は毎日当然のように感じていた感覚も現在は割と庶民派な生活をしているが故に少々息苦しく感じる。

 

 そして辿り着いた場所、私はそこの扉をノックする。中からはこの間話したばかりの父の声、了承を得てから扉を開ける。

 

 そこには一人の男性と二人の女性の姿。そのうち二人にはとても見覚えがあった。

 

 女性の内大人の女性…子供の時に会った時よりもやつれたように見えるお母様と目が合うと感極まったかのように瞳を潤わせてこちらに歩み寄り、両手を広げ私を抱きしめた。

 

「ああっ…ナギサ…本当にナギサなのね。夢ではなく…本当に…。」

 

 涙を流しながら抱きしめてくるお母様の背を同じく抱きしめる、抱きしめたお母様の痩せ細った体に申し訳なさを感じた。お母様がこうなった要因は私だからだ。

 

「はい…ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」

 

 ここに来るまでに色々考えていたのに言葉が出てこない。色々考えてきたことも全部無駄になってしまった。

 

 そして、父の隣に立つ10歳ほどの幼い少女、恐らく彼女が。

 

「ナギサ、お互い話はあるだろうがまずは新しい家族の紹介をさせてくれ、この子は桐藤ミナミ。お前の妹だ。」

 

 そう言ってお父様に軽く頭を撫でられながら私に向き合わされた少女、私の妹のミナミがおずおずと私を見ていた。

 

 私よりも色素が薄い白い髪、それと対比して褐色の瞳の色は濃い。顔を見れば成程、瞳が大きく垂れ目がちではあるものの、私と姉妹と分かるように顔立ちは似ていた。

 

 お母様から離れ、私は彼女の身長に合わせるように膝を曲げ笑顔を意識しながらにこやかに自己紹介をすることにした。

 

「初めまして、私はナギサと言います。よろしくお願いしますね。」

 

「…ッ!!」

 

「ミナミ!」

 

 いきなり初めて会う姉を紹介された妹の心境はどうだっただろうか、お父様の静止を受けながらも部屋を飛び出していくミナミ。

 

「突然今まで顔を出さなかった姉を名乗る人物が現れれば仕方ありません。あの子のせいじゃありませんよ。」

 

 そう、どちらかというとあの子にとっての姉はたまに遊んでいたというミカさんの方だろう。私も妹の存在は知っていたもののどう接したものかずっと悩んでいたものだし。

 

 お父様はすまんな、と言って使用人に妹の様子を見てくるように頼む。使用人もかしこまりましたとその場から離れていった。私が関わっても悪化させるかと思い、両親に任せることにする。まだお互いにどうしていいかわからないから仕方がない。

 

 そうだ、色々と話す前にこれだけは言っておかないと。

 

「お父様、お母様。ただいま戻りました。」

 

「「おかえり、ナギサ。」」

 

 私のただいまの言葉に対し二人は優しく私を迎えてくれた。

 

 

 

 

 そして全員が心を落ち着かせた頃、話し合いを始めることにし、事のあらましを説明した。

 

 説明後、父は腕を組みながら難しい表情をした。

 

「成程…どうしてトリニティに通う事になったかはおおよそ理解出来た。友人の頼みという事だが…我々とて今のトリニティの情報は聞いている。」

 

「ナギサ、私達はあなたにトリニティに通って欲しいとは思っていたわ、だけど…今のトリニティは…。」

 

 両親は二人とも抗争の話を聞いているのだろう、今後どうなるかもわからない場所に娘を置いておくのは心配という事だろう。

 

「大丈夫ですよ、お父様、お母様。こう見えて私、実は結構強いのです。現在のアビドスの最高戦力とも勝ち越していますから。」

 

 そう言って相棒のホシノの事を思い浮かべる。…本音を言うとユメ先輩から生徒会長を継いだホシノは何というか更に強くなったように思える。正直今のホシノに勝てる気がしない、以前は私の速度に目が追い付いてなかったのに、シロコさんとの訓練で本気を見せた時ホシノは私の動きを完全に認識していた。

 

 二人は私の言葉に驚きながら、溜息を吐く。危険な場所に向かって欲しくないという気持ちはわかる。

 

「ですが、どうしても友人の頼みを聞いてあげたいのです。このままだとあの子も潰れてしまうかもしれない。」

 

 あの時話したセイアさんの辛そうな顔を思い出す。”物語”とは違い自分自身で溜め込まず他者を頼る事を出来たのは良い事だろう、だけれどその選択で他者の心を傷つけてしまったことを悔やんでいる優しい子、恐らく私がトリニティに行かなかったことで一番大変な思いをしているだろう。

 

「我儘ばかり申し訳ありません、ですがどうか。」

 

 お願いしますと言って頭を下げる。お父様に頭を上げなさいと言われ両親に顔を向けると先ほどと同じように溜息を吐いていた。

 

「この頑固さ、誰に似たのだろうな…。分かった、私達からはもう何も言わない。…ただ約束して欲しい。」

 

 お父様は真剣な顔で私の瞳を見ながら口を開く。

 

「もう私達の前からいなくならないで欲しい、何かあれば相談して欲しい。後は…無事に過ごして欲しい、それだけだ。」

 

 そう言ったお父様は真剣な表情から優しい表情に変えてお前の好きなようにしなさいといった。お母様も笑顔で頷いてくれた。

 

 そしてしばらくの間今まで離れていた分を補うかのようにたくさんの話をした。

 

 アビドスで出会った少し抜けた所のある優しい先輩と頼りになる同級生の友人。

 

 先輩との外回りで縁が出来たミレニアムの天才少女。

 

 ”物語”の通りにはいかなかったものの今では仲良くなれたトリニティのかわいらしい友人。

 

 そして、信じて貰えるかはわからなかったが異界で出会ったもう一つの家族の話。

 

 なぜかお兄さんの話をした時にお父様が引きつった表情を浮かべていたが…お母様曰く男親の宿命らしい、私にはよくわからなかったが。

 

 そうしてしばらくの間話し込んでいると部屋の外があわただしくなり、慌てたようなノック音と共に緊急の要件なのか、家主の許可も得ずに使用人が部屋に入ってくる。

 

「大変です!ミナミお嬢様がご案内したお部屋にいらっしゃいません!」

 

 その瞬間両親の顔が凍り付く。以前の、私の時の事を思い出しているのだろうか?

 

 正直に言って今のトリニティの治安はあまりよくない、この辺りの高級住宅街であれば別なのだが…もしも人通りの少ない場所になんて行ってしまえば誘拐もありうる。

 

「お父様、お母様。大丈夫です。私、人探しは得意なので任せてください。砂漠で行方不明になった先輩を見つけ出した実績もありますので。」

 

「…わかった。だが気を付ける様に。」

 

「あなた…はぁ…ナギサ。どうかあの子をお願いね。」

 

 私は別荘を出ると同時に”私”と繋がり全速力でトリニティを駆けた。




突然姉を名乗る人が出てきたらわけわからなくなりますよね、実は妹の名前かなり悩みました。ナギサが水際としているので水要素を入れたい、なら波でいいかなと。

今のトリニティ治安は良くないです。正実は大打撃を受けているので実質治安維持は急遽自警団組織を増員というような形を取りました。それでももちろん手が足りませんが。

もちろん妹ちゃんは高級住宅地以外は危ない所とは知りません。優しいミカお姉さまがいる場所、としか。
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