少しはセイアちゃんの心労がマシになればいいのですが。
転入初日、要望通りに届いた制服を見ながら私もついにトリニティ生かと感慨深く感じる。
歩んだ道筋は違えどここに辿り着いたのには何かしらの因果を感じる、それでも自分で選んだ道なので後悔はないが。
家族との邂逅は思っていた以上にいい結果に終わった。妹ともそれなりに打ち解けられたようでホッとしている。しかし私の持っているものと同じ拳銃を要求された父は困った表情をしていた。後で扱いやすいものを送っておこうか。
桐藤家の名を名乗る以上転入初日から遅刻するわけにもいかないので、だらしなくならない程度に急いで身支度を整える。真新しい制服に着替えながら慣れた手つきで着替えを済ませていく。
そう、私の制服は改造制服である。トリニティの基本的な制服はセーラーの様な感じなのだが、私はアビドス所属であるという意思を曲げない為に、色合いこそ白くしてあるものの、見た目はブレザー風にしている、スカートには若干フリルが付いているが。
原作の様な制服を着なければだめなのかと思っていたが、アレは一応ティーパーティー所属の意匠になっている為一般生徒では着れないとの事。
私のトリニティでの立場は他学校からの交流のテストケース。改革派とされるフィリウス分派のミカさんが裏からセイアさんに渡された草案を驚きながらも提案、中立であるサンクトゥス分派も実質セイアさんが手を回しており了承。
この事で私の中で問題とされていたのは、現在保守派であるパテル分派の進級後に首長となった甘背テマリ。彼女には幼少期のことで嫌われていると思っていたのだが…意外にもパテル分派は全面的に留学生を受け入れるとの結果になったらしい。
疑問は残るもののスムーズに進むのなら私としては無問題、転入準備を整えながら今に至るという訳だ。
私の転入は連邦生徒会にも話を通しており、私の身分は連邦生徒会にも守られている。つまり私に害があれば一種の外交問題にプラスし連邦生徒会のメンツも潰すという事になる。
故に私はトリニティに居ながら治外法権を認められているという事、特例に特例を重ねた賓客扱いという事だ。
準備を終えて先日両親からどうしてもと言われて譲渡された例の桐藤家の別荘から学校に通う。何故か庭先に存在する見覚えのある戦車を見なかったことにしながら*1…後でホシノに連絡しておこう。
別荘はトリニティ総合学園からそれほど離れておらず徒歩でも十分に通える距離だ、元々私のものにする予定だったらしい、本当にありがたい。
登校中、チラチラと見られはしたものの気にせずトリニティの生徒会であるティーパーティーに顔を出さないといけない為そちらに向かう事にする。
その途中で何故か桃色の髪の少女、私の記憶違いじゃなければ鷲見セリナではないかと思うのだが、何故かこちらをじーっと見ていた。私に何か気になる所でもあっただろうか?
そして指定場所に辿り着いた私を最初に出迎えたのは私の知らない少女だった。
「本日はようこそおいでくださいました。わたくしパテル分派首長の甘背テマリと申します。お久しぶり、ですわね?桐藤様?」
そう言ってこちらを見るのは白い髪に白い肌、そして目の下に濃い隈が存在する少女、ミカさんから要注意人物とされ、セイアさんからも警戒が必要と言われている人物である。
…のだが…幼少期の記憶と彼女の姿が一致しない。彼女の髪色は茶色だったはず。それにティーパーティー所属の制服を着ているものの、左右で袖の長さが違い左手は完全に袖の中に隠れており奇妙に見える。
「久しぶり…だとは思うのですが…以前とだいぶお変わりになりましたか?」
私が思ったままにそう言うと彼女は嬉しそうに笑った。
「あらあらあら、もう長い月日が経つのにわたくしの事を覚えてくださっていましたのね!嬉しいですわ、嬉しいですわね。」
あの頃とは違う、何故か思った以上に私に対し好印象になっている彼女に少々奇妙な感覚を覚える。
「あの、桐藤様?物は相談なのですが。正式にトリニティの一員になってくださいませんか?」
この子は何が言いたいのだろうか?アビドスからトリニティに転校しろという事か?
「えっと…それはいったいどういう…?」
「わたくしはあなたに相応しい立場を用意して差し上げますわ。あなたの力は素晴らしいものです。まさに上に立つものに相応しい方、あなたが望むのならばあらゆるサポートをさせていただきます。」
ぐいっと顔を近付けながら言う甘背さん、妙に過大な評価をされてる気がするのだが何故なのか。少し熱意が強すぎる彼女に少々恐怖を感じながら私は彼女の提案を断る。
「申し訳ございませんが私の所属はあくまでアビドス、私を評価していただいているのは嬉しいのですが…それは断らせていただきます。」
提案を断ると、まるで私の返答が分っていたかのようにくすくすと笑う甘背さん。
「ふふ、砂漠の民を見捨てられるような方ではございませんものね、桐藤様は。それでこそ王の器の持ち主ですわ。」
どうやら私が断るのも想定内らしい、ミカさんから頭が回ると聞いていたし簡単に推し量れるような相手ではなさそうだ。
「あら、ここで話し込んでしまって申し訳ございませんでしたわ。どうぞ皆さんお待ちしておりますわ。」
そう言って部屋の中に案内される。その中に入ると恐らくサンクトゥス分派の首長の女性とセイアさんが並んで座っていて、別の場所にはミカさんとフィリウス分派の首長の女性。そして甘背さんは空いている席に座り私も客人用の席に座った。
ティーパーティーでの話を要約すると、サンクトゥス・フィリウス両分派からは外部との交流の場、中継地点を作って欲しいとの事。これは最近頭角を現してきている連邦生徒会の超人と言われている人物からの依頼も含まれているらしい、恐らくその超人は私の想像通りの人物だろう。
そしてパテル分派…いや、甘背さんからは桐藤様の好きなようにしてくださいとそれだけ。そう言う態度をとられると逆に怖い。
そして、解散後ミカさんは私と話したいのがまるわかりだったが、私との関係を隠していて周りの目があるからか。
「アッ、ナギ…キリフジサン、オヒサシブリダネ!コレカラヨロシクネ!」
と片言兼棒読みで大変面白いことになっていた。かわいそうだったので去り際に耳元でまた後で、と言ったら耳を抑えて顔を赤くしていた。くすぐったかっただろうか?
そして、どうやらセイアさんとは同じ教室だそうなので案内もついでに任せることにした。ミカさんは羨ましそうな顔でこちらを見ていた。
隣を歩きながらセイアさんは私に礼の言葉を言ってきた。
「まずはトリニティに来てくれてありがとう。ナギサ、君のおかげで本当に最悪の事態にはならないと思う。私に出来る事ならなんだってサポートするから何かあれば何でも言ってくれて構わない。」
「セイアさん、私はあなたやミカさんの助けになりたいと思ってここに来たんです。ですからお互い協力し合って問題を解決していきましょう。」
私がそう言うとセイアさんはふ、と小さく笑い頼りにさせて貰うよと言った。
「それでだね、先程の話でのように君には一つ部活を作ってもらう事になる、部長はもちろん君で所属生徒は君というバックが付くために簡単な手出しは不可能になる。ティーパーティーなら理由があれば多少の干渉ができるが…いや、今はその話ははいいだろう。一応外部交流会という仮の名前はあるが…名付けは自由だ。君に任せる。」
それで…だ、とセイアさんは話を続ける。
「実は受け入れて欲しい生徒がすでに一人いるんだ、勧誘がしつこいせいで本人も辟易していてね。申し訳ないが彼女を守ってあげて欲しい。」
いい子なんだ。と言って頭を下げてくるセイアさん。早速の依頼だそれがセイアさんの為になるのなら協力しようと思う。
「分かりました。部活の手続きとかはお任せしても大丈夫ですか?」
「ああ、頼んでるのはこっちだし、特殊な部活だからね。そう言った処理はこちらに任せてくれ。」
そう言って教室に到着し授業を行う。まぁBDなどの教材を使っての勉強なのだが、アビドスはこういった事をあまりしないで金策に励んでいたから少し新鮮だ。無論自主的に勉強はしていたので私の成績は悪くない。
そして、授業を終えて指定された空き教室。ここが外部交流会の拠点となる場所か。
思ったよりも広い部屋を掃除し、机などの配置を変えたりして簡単な模様替えをする。
そうしてひと段落ついた頃、ドアがノックされた。
私がどうぞ、と声をかけると一人の少女が失礼します…。と控えめな声で中に入ってくる。
その子を見て私は驚いた。
綺麗な桃色の長い髪に自己主張が激しい部分がある立派な身体。疲れたような表情をしているせいで本来の美貌が若干損なわれているようではあるがかなりの美少女だと言えるだろう。
だが何よりも私を驚かせたのは私が彼女の事を知っているからで。
「あの…私…浦和ハナコというのですが…セイアちゃんにここに来るように言われて…。」
別の世界線で優秀な頭脳を使い私の脳を破壊する策を実行することになる天敵と言える少女との初邂逅になるのだった。
徘徊痴女さん登場。テマリさんもお気に入りの子が来たのでとても嬉しそうにニコニコしています。
セイアちゃんもテマリさんも同じようにサポートするよ!と言ってるのですがどちらが信用できると言えば…ねぇ?
原作世界軸の記憶を使ってネームドキャラと一所懸命コネクションを作り上げていく本作セイアちゃんはかなりのコミュ強なのでは…?