汀渚のアーカイブ   作:buridish

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ハスミのお願いにより新部隊を任されることになったナギサ様、指揮官経験なんてほとんどない私、これから一体どうなっちゃうの~!?

というネタでした。


ANTI RIOT

 私、仲正イチカは中々苦労性な人間と認識してます。

 

 自分の内にある暴虐性を抑えながら生きてきた。常に人の好さそうな笑みを浮かべ社交的な自分を外に出しながらも、その本性はゲヘナもびっくりな暴力性の塊。

 

 正直このキヴォトスの人間は話を聞かずまず暴力に訴える人間も多い為別に普通かとも思えるのだが、それはそれとして、平和な日常を愛する気持ちも本物であるので私はこの暴虐性を隠して過ごしている。

 

 そして平和を愛するが故、現在の荒れたトリニティを何とかしようと日々忙しく駆けまわっている。自分自身が荒れる暇がないほど忙しいのが唯一の救いだろうか。

 

 そんな忙しい日常を過ごしながら迎えたある日、上司であるハスミさんから新部隊を編成するからそこの一員になってくれとの連絡を受けた。

 

 あれこれと忙しい最近は固定の相手と組むことは少なかったがこれからはしばらく一緒にやっていくんすねー。とこぼしながら顔を合わせた相手は。

 

「あーだるー。早く犯罪者どもを叩き潰したいよー。」

 

「…………。」

 

「これ何の集まり―?私、ただここに来いって言われただけなんだけどー?」

 

 問題児だらけだった。

 

 一応ここにいる者たちは勉学、戦闘の能力は優秀。全員1年生でありながら能力だけなら将来幹部クラスにでもなれるかも?と言った子たちなのだが。

 

「昨日とり逃したアイツ…絶対潰す。最後に煽りやがって絶対に許さねー。」

 

「…………。」

 

「サボってカフェいこっかー、仕事めんどいし―。」

 

 揃って性格に難がある。暴力的、対人能力、仕事に対する意欲。厄介者を集めたごみ箱のような場所ではないだろうか?

 

(え?もしかして私の内面バレてます?問題児だって思われてます?)

 

 擁護すると問題児の中に常識人を入れておこうという上からの配慮なのだがこの面々を見てしまうとそう思ってしまうのも仕方がない。

 

 そう思っていると後に入ってきた生徒、最近よく名前を聞く先輩の桐藤先輩がその場に現れた。

 

 桐藤先輩は一通り周りを見渡し、これで全員ですね。と言った。

 

「皆さん、初めまして。私は正義実現委員会のお手伝いをさせて貰っております2年の桐藤ナギサです。このチームの指揮官を羽川さんに頼まれたので非才の身ながら全力でやらせていただきたいと思います。」

 

 よろしくお願いします。と頭を下げると共に揺れる三つ編み。清楚なお嬢様ないでたちの彼女とここはあまりにも場違い過ぎた。

 

「どうでもいーし、早く撃たせてよー。」

 

「…………。」

 

 空気が死んでいた。まったく話を聞いてないしギャルっぽい子は恐らく彼女の存在すら認識してないのではないだろうか。

 

「あー…そのー1年の仲正イチカっすー…。よろしくおねがいしまーす。」

 

 少しでも雰囲気を和らげようとするも空気は変わらず、唯一こちらに顔を向けている桐藤さんは綺麗な笑みを向けてくれていた。滑ったんじゃなくてよかった。

 

「他の方は荒木(あらき)さん、堅霧(かたぎり)さん、基先(きさき)さんですね。それではこれからこのチームの説明を行いますので聞いてくださいね。」

 

 それから桐藤先輩はこのチームの説明をした。特殊装備、権限を使用し事件の早期発見、対処を行う部隊。状況次第では現場判断でも対応してもいいらしい。

 

 試験部隊、部隊名ANTI RIOT。通称A・R隊、それがここに集まった人間なのだそう。人選間違っているのでは?

 

「これからパトロールをするので皆さん私の戦車に乗り込んでくださいね。事件が起きたら各々の役割を果たしていただくので。」

 

 そう言った彼女についていくのは私と無言の少女堅霧さんだけ、他の二人はうっせーパトロールなんてだりー、えー、めんどーい。と言って動かない。

 

「もしもサボるのでしたら羽川さんや剣先さんに言っておきますので、よろしくお願いします。」

 

 そう言うとしぶしぶついてくる二人、先が思いやられる。

 

 

 

 そうして、始まったパトロール、勿論それが平和に始まるわけもなく。

 

「あ!アイツ!昨日あたしを煽った奴だ!ぜってー逃がさねぇ!」

 

 といって、荒木さんが戦車から飛び出していく。

 

「…勝手な行動はダメですよ。聞こえてませんか…。」

 

 と、声色から感情が読めない桐藤先輩だったが、荒木さんが銃を抜いた瞬間戦車内から姿を消した。その直後に聞こえたのは犯人とは別の聞き覚えのある声。

 

「あ、あああぁぁ!あだだだだだだだ!割れる!頭が割れる!やめ!放せ!あ!変な音してる!頭変な音してる!やめてぇ!」

 

「だめですよ、命令無視な上、勝手な私闘は許しません。現行犯でも無いのでまずはお話を聞きましょう。」

 

 戦車に乗っていた私以外の人間全員が叫び声に驚き声の方に目を向けると、後ろから後頭部を掴まれ持ち上げられ、持っていた銃を取り落とし体をビクビクと痙攣させる荒木さんの姿。相当痛いのだろう、いつもの荒々しい感じは消えて涙声になっている。

 

 相手はその光景を見て引いていた。恐怖のせいで勝手に罪を告白し、聞いてもいないこれから行おうとした犯罪まで口にしていた。

 

 正実の他の人間に連絡して犯罪者を連れて行ってもらい、パトロールを再開することになった。先程とは違う静寂の中、痛い…と泣く荒木さんと、その空気の中淡々と各々の役割を説明する桐藤先輩。

 

 頭を割られかけた荒木さんはメインアタッカー、まだ声を発したことのない堅霧さんは盾持ちのタンク、ライフル持ちかつドローンや道具の扱いが器用に出来る基先さんがサポート。私は桐藤先輩のサポートだそう。

 

 おとなしそうな見た目に反した姿を見せられ誰も逆らう気が失せたのか、全員きちんと話を聞いている。恐怖が有効的であることを知ってしまった、だけど何とも言えない空気になってしまった周りを見て私は後輩には優しくしようと決意した。

 

 パトロールの途中で危険物取引の情報を桐藤先輩が操作していたドローンから入手し先んじて突入も行った。

 

 その時の指揮は相手がどこにいるか完全に把握しているかのようでありこちらも被害無く制圧できた。

 

 無論突入できたのは証拠品の存在がわかっているからであり、各員情報の重要性はきちんと認識できたようだ。分かりましたね?と笑顔の裏から感じる圧に屈したからではないだろう。

 

 初日から上下関係をはっきりさせ、全員が役割をしっかりとこなすこのチーム、元々全員が有能であったことから、現在はまともに見える。桐藤先輩への恐怖という点で協調性と仲間意識まで出来た。これでいいのだろうか?

 

 

 部隊結成から数日、驚くことに今では真面目に全員が仕事をこなしていた。堅霧さんはただ話すことが苦手だっただけで普通に話す事も出来たし、荒木さんは話す内容は物騒だし口は悪いけどそれが向けられるのは悪人に対してのみ、基先さんはたまに桐藤先輩が持ってくるロールケーキに餌付けされていた。

 

 能動的に正実が動くことにより犯罪件数が落ちてきているようだ。ここ最近は毎日忙しかった最初の頃と比べると大分マシになった。

 

 ここ最近は本当に平和な日が続いていて隊員同士で談笑もしていた。桐藤先輩に色々とドローンの操作を教わってドローンを動かしていた基先さんがまずい情報を掴むまでは。

 

 内容はトリニティ、ゲヘナ両方に仕掛けてもう一度抗争を起こさせ武器、傭兵を派遣し儲けようというもの。

 

 すっと頭が冷えた、二校の休戦は連邦生徒会も関わっているのにこいつらバカなんじゃないかとすら思った。

 

 それよりも先輩たちが、私達が必死になって作っている平和を壊そうとしている奴らが許せなかった。

 

 私はゲヘナに直接思う事はなかったが、他の皆は先輩に同調しゲヘナ憎しの人間は大勢いる、今は危険な時期なのだ、小さな火種でもまた大火事になりかねない。

 

 そんな私の内面を見透かしたのかはわからないが、桐藤先輩は少し待っていてくださいと言ってから端末を弄り始める。

 

 数十分後、桐藤先輩の端末から呼び出し音が鳴り桐藤先輩が通話に出た。

 

「はい、ミカさんですか?ええ、風紀委員も動いていたと。優秀ですね…え?ヒナさんが風紀委員長になった?…いえ、まだ二年生なのに早いなと驚いただけです。それで、ティーパーティーからは問題無し…と、分かりました。」

 

 どうやらティーパーティーの方とのお話しらしい。ミカ…と言っていたが聖園ミカ様の事だろうか?仲が良いという()()()はどうやら本当らしい。

 

 それから、現場の近くまで移動し基先さんが人数、武装、配置の確認…。今まで桐藤先輩が行ってきたことをやっている。だいぶ慣れてきたようだ。

 

 私達は装備の確認、応援が来るまで待機…だろうか。と、思っていたのだが。

 

「仲正さん。突入しますか?」

 

「え?」

 

 思わず言葉が漏れる。この人数で突入?

 

 流石に聞き間違いか、無謀じゃないかと思い聞き返そうとするとそれよりも先に桐藤先輩は口を開いた。

 

「相当に腹に据えかねた様子だったので、あまり溜め込むと望まぬところで爆発させてしまう恐れもあるかもしれませんし。」

 

 ぞくりと背筋が冷える。この人は私の本質を知っている。

 

 知られていてもこの態度なら大丈夫かと軽く息を吐く。

 

「仲正さんが本気を出せば軽く制圧できるでしょう、一応フォローとして他の隊員も配置しておきますし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 なんとなくわかる。この人は正実のあの人と並ぶレベルの力がある。だから()()暴れても大丈夫だと。

 

「…はぁ…。そっすねー、ここの所忙しくて忘れてましたがあいつらのせいで我慢の限界です。桐藤先輩がいれば後処理も大丈夫でしょうし…あ、皆、これから見る事は秘密でよろしくお願いします。」

 

 そう言うと桐藤先輩以外の皆は頭の上に疑問符を浮かべていた。まぁ普通はわからないだろう、わからないように隠しているし。

 

 

 配置に付きしばらく待つ、ここからならあいつらの顔が見える。正義実現委員会の皆が必死に守ろうとする平和を金稼ぎの為に壊そうと目論み、楽しそうに雑談している奴らの姿。

 

 そして付けているインカムから聞こえる声。

 

「改めて、今回の任務はティーパーティーから許可を得たものです。証拠品の有無に関係なく破壊、殲滅をして結構。A・R隊出撃!」

 

 言葉と共に飛び出す。あいつらの困惑した声が聞こえる。

 

「さて…だめっすよー?多方に迷惑をかける悪だくみをしちゃ。そんなことをすると罰が下るっす。」

 

 誰かが騒ぎ立てて集まってくる悪人ども、ああ、こんなにいたのか。

 

「まぁ、ここにいる人たちはもう手遅れっすけど。」

 

 武器を構えると、囲んできた相手も同じくこちらに武器を向ける、私は溜まり切った鬱憤を爆発させた。

 

「悪人共は全員地獄に行くっすよ。」

 

 その言葉と共に暴虐の宴が始まった。

 

 

 

 

 辺りは荒れ放題、敵の殲滅は終わり、暴れ足りない私は更に破壊をまき散らそうとしたものの、何かに抱きしめられて体を動かす事が出来なくなった。

 

 いや、あの…抱きしめられたというと綺麗に聞こえるが身体を固められてると言った方が正しい。本気で動こうとしても腕も動かせないんですけど、どんだけ力強いんすかこの人。あと少しいい香りがする。

 

「すっきりしましたか?」

 

 耳元にささやかれる声、くすぐったいのでやめて欲しい。

 

 暴走後特有のすっきりした感覚とやっちまった、と少しの後悔。この自分の性質を忌避しているとはいえ、すっきりしたのは事実だ。が、それはそうと取り合えず拘束を解いてもらおうと返事をする。

 

「いやー、堂々と何も気にせず暴れたのはかなり久々なのですっきりしました。…なのでもう離してもらって大丈夫っすよ?」

 

 というとすぐ離してくれた、この見た目から何であんな力が出るのだろうか。

 

 この後、他の隊員から名前にさん付けで呼ばれるようになった。怒らせたら怖い人認定させてしまっただろうか。

 

 

 

 部隊結成から一か月間、色々な事があった。全員可能な限り技術の習得に励んだり、暇なときはカフェでのんびりしたり。

 

 事件の元を発見すればこちらから出向いて制圧、1か月でおおよそ20%犯罪率が下がったとか。

 

 連邦生徒会の「超人」さんと防衛室の人が私達…というかナギサ先輩の指揮を見学しにきたり。

 

 防衛室の子が席を外した時に誘拐され、その救出の為にナギサ先輩が私達だけでなく何故か連邦生徒会側が連れてきていたSRTの生徒の指揮までさせられていた。

 

 ナギサ先輩自身が突入するなんてこともあったが、結果的には任務は成功、髪を解いて眼鏡を外し防衛室の人をお姫様抱っこしていたナギサ先輩はハナコさんごめんなさいと誰かに謝っていた。

 

 救出後、出会った当初はナギサ先輩に反抗的だった防衛室の人も直接助けてもらったからかしぶしぶ頭を下げていた。それからは真面目に見学し感心していたようだった。それとナギサ先輩がSRTの人からお礼にとお稲荷さんを貰っていた。

 

 本当に色々あった一か月、今日は部隊解体の日だ。

 

 A・R隊は試験部隊、しかも本来正実とは関係のないナギサ先輩がいたからこそ出来た部隊。正実もこの成果をティーパーティーに報告し、結果次第で再結成の可能性はあるとか。

 

 そこにはナギサ先輩はいないのだが…まぁ、ナギサ先輩もトリニティの生徒だ、会えなくなる訳じゃない。

 

「皆さん、一か月間ご苦労様でした。最初の頃と見違えるようですよ。」

 

 ナギサ先輩がそう言うと隊員たちも少ししょんぼりする。寂しい気持ちもわかる。

 

「姐さん!この一か月ありがとうございました!色々勉強になりました!」

 

「……ありがとう…ございました…。」

 

「ナギパイセン、これからも差し入れに来てくださいねー。」

 

 各々別れの言葉を告げていく、そして私も。

 

「初めはどうなるかと思いましたがいい経験になったと思います。それに…結構楽しかったっす。」

 

 そう言うとナギサ先輩は笑みを返してくる。私達もつられて笑顔になる。

 

 終わりはあっさりと、楽しかった時間は少しの寂しさと共に終わりを迎えた。




名前持ちの新キャラ出ましたがほとんど出番なしの一発キャラみたいなものなのでお気にせず。イチカ含めて一か月の間に仲良くなって名前呼びになってたり。

イチカは傍でずっとナギサの指揮官姿を見ていたから一番弟子と言えるだろうか。器用に色々出来る劣化ナギサ様みたいなポジション、有能。描写していませんが、何度かイチカ主導の指揮でA・R隊は行動してました。

ミカは抗争時にヒナと連絡先を交換しているのでトリニティゲヘナ間の問題に対して動けます。実は結構有能、なお、ヒナ側もトリニティと繋がりを知られると面倒なので秘密にしています、軽く連絡してくるミカに頭を抱えてます。

誘拐されちゃった防衛室の子誰なんだろう、ピンク髪かもしれない。

後、ミレニアムは大口の電子戦装備等の予約が増えてウハウハだそう。
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