今日も変わらず少数精鋭の我らがアビドス高等学校…、いや…はっきり言おう、廃校目前の愛する母校。
借金の返済の目途も立ち、私の努力次第では自分の代で返し切れる可能性もある。が、それとこれとは話が別で、生徒が入ってこなければ結局廃校になってしまう。
その為に過去にユメ先輩とナギサがやっていたことを資料として読んでみるも、なんとも行き当たりばったりなのだ。
その事に頭を抱え、彼女らの運と話術、そしてコネクションに戦慄すら感じる。自分じゃ絶対に無理だし、まさか最近アビドスにちょっかいをかけてきているカイザーもこんなノリでうまく行ってるとは思わないだろう。
そのユメ先輩…ユメさんも今は作り上げたコネクションの一つである調月さんの所に行っている。
なんでも最近調月さんはいろんな部活を体験をしてるとの事、今はミレニアムのエンジニア部とかいうところで部員と一緒に宇宙戦艦の武装を設計していると聞いた、何をしてるんだあの人。
こうしていろいろな資料を呼んでいると、ナギサも散々ユメさんに振り回されたのだと感じた。思いつきで行動しナギサがフォロー、この流れでうまくやっていたのだろう。あの人が一人だったら悪い人に絶対に騙されていた。
そうしているとふと、生徒会室の扉から気配を感じた。今日の予定からすると相手は恐らく。
「ん、ホシノ先輩。今日の見回り終わったよ、カイザーが雇ったヘルメット団殲滅してきた。」
「…おおー、シロコちゃんもやるようになったねぇ…単独で複数人相手にするだなんておじさんびっくりだよー。」
予想通り入ってきたのはシロコちゃん。新入生の片割れにして私の愛弟子になる子になるのだろうか?
いや…本当はただの後輩だったのだけど、ナギサに勝つことに闘志を燃やしたシロコちゃんは初めこそナギサに師事していたのだが、彼女がトリニティに行ってしまった為に私が代わりに戦闘関連を教えることになった。
よくよく考えればシロコちゃんがナギサに教わった事、私に教わったことをうまく利用すれば対複数人相手でもなんとかなるかもしれない。
私が主に教えているのは戦闘技術。銃の扱い、遮蔽の使い方、グレネードの使い方など。ナギサが教えていたのは戦場の下調べ、罠の使い方、隠密技術。
…その内とんでもない子に育つんじゃないだろうか、うちの子。ナギサの教えを変な事に使わなければいいのだけれど。
「そのおじさん…っていうの、変。急にどうしたの?」
「いやー…その―…ね?」
なんだか私って結構外では怖がられているらしいのだ、最近聞いた話では一騎当千とか天下無双とか言われた。こんなに小さい女の子に言う事じゃない。
今後入ってくるかもしれない後輩に怖がられるのは避けたい、という事で程々に緩い若干ユメさんを参考にした、いわばホシノユメモドキと言えるキャラ変をしてみたのだが。
「…ホシノ先輩がそうしたいならいいけど…あ、そういえば今日は予定あるの?」
あんまり好評ではないらしい。用事の確認という事は訓練とかの話だろうか?
「あー、今日はこの後ノノミちゃんといろんな企業を回らないといけなくてね。訓練とかだったらまた今度かな。」
借金返済の為にやる事は山程ある。折角ユメさんから受け継いだものを台無しにするわけにはいかないからだ。
「ん…残念。そう言えばホシノ先輩ってナギサさんよりも強いんだよね?」
「へ…?いやー…んー…。」
この話は少々難しい、勿論私の方が強い、と言いたくはあるのだが。
「正直五分五分だと思うけどなー、私が生徒会長になってからは模擬戦とかしなかったけど、戦う場所とか制限なしだったらどうなるか…。」
ナギサはとにかく相手の得意な戦いをさせない事が得意である。以前私が負け越していたのはこれが理由で、とにかく彼女とやり合うと思い通りに行かなくなる、ということ。
そして、あの戦いで見せたアレ、あの状態のナギサに正面から勝てるかがわからない。
「ナギサさんはホシノ先輩の方が強いって言ってたけど…。」
「ナギサは自己評価低めなところあるからね、あんまり真に受け過ぎない方が良いよ。」
これは戦闘に関するだけではない、人付き合いも関係している。
ミカさんはともかくこの間一緒にアビドスに来た浦和さんだったか、彼女もナギサに熱視線を送っていた、隠しているようだったが私にはわかる。他にも女をひっかけてはいないだろうか。
「じゃあさ、私とナギサ相手だったらどっちが勝てる気がする?」
「……むずかしい…けど、ナギサさんには勝てる気がしない。」
今の所、と言いはしたもののそれが事実だ。シロコちゃんに聞いた話だと策をめぐらせても結局は何もさせて貰えない、これに尽きる。
「本気のナギサは脳筋と言うよりは曲芸師だよ、あるものは何でも利用する。二丁拳銃で突っ込んできて片方の銃で私の銃をかち上げられてもう片方の銃を腹にあてられて射撃とか。市街地戦想定だった場合は、縦横無尽に壁や地面を蹴って訳の分からない動きをしたり。」
銃を使った格闘術とか、漫画みたいな動きとか、あんなの曲芸以外の何物でもない。私も壁くらいなら走れるけど。
「…ナギサさんって漫画とかに出てくる忍者とかなんじゃ…。」
そう言われて一瞬頷きそうになる、百鬼夜行にいるとは聞いたことがあるので冗談と言い切れない。
「とにかく、シロコちゃんはまだまだ発展途上だし、まだまだ伸びしろがあるから気にしないで大丈夫。今日だって複数人相手でも勝てたんだし。」
「周りが強いからあんまり自覚出来ない。他の学校の生徒とかと模擬戦したい。」
はっきり言ってシロコちゃんもかなり上澄みだと思うのだが、ノノミちゃんもああ見えて援護とか戦い方が上手い。
それにしても他の学校の学生と模擬戦か…調月さんのロボットは生徒じゃないしゲヘナ、トリニティは今声をかけるのは少々微妙な時期だ。
そうしばらく考えていたら、あ、と一つ最近アビドスに来た人の顔が思い浮かんだ。
「ミカさんに紹介された子がいるよ、見た感じ結構実力もシロコちゃんとちょうどいいかも。」
なんでミカさんが
本来、他の学校の子がアビドスに拠点を作る事などなど色々問題もあるのだが、あのミカさんの紹介だし、話してみて悪い子に思えなかったし、ゲヘナの子ではあるけど政治的に重要なポジションにいる訳でもないから多分大丈夫だろう。
「ん!模擬戦したい!」
「まぁ、受けてくれるかはわからないけど一応伝えておくよ。」
後になってこの時のことを後悔することになるとは思わなかった。模擬戦を通して友人になった相手にアウトローの何たるかを聞いて、シロコちゃんがあんなものに興味を持つとは思わなかったから。
取り合えず話が纏まったかなと思っていると呼び出し音が鳴る携帯端末、画面を見ると相手はノノミちゃん。
「ノノミちゃん?どうかしたー?」
「ホシノ先輩、ええとですね。今訪問先の企業から連絡がありまして、何者かの嫌がらせ行為を受けていて、相手がかなり武装しているとかで…。」
どうやら荒事のようだ、シロコちゃんも暇しているし丁度良い。
「うん、丁度シロコちゃんもいるから一緒に行くよー、無理しないで待っててね。」
「はい!お願いします!」
そう言って切れる電話。シロコちゃんも話を聞いていたようでふんす、と息を荒くしていた。
「話聞いてたかな?荒事みたいだから一緒に行こうか、シロコちゃん。」
「ん、ホシノ先輩の戦い方、傍で見させてもらう。」
ユメさんから受け取った盾を持ち、前にナギサに整えて貰ったポニーテールに髪型を変える、準備完了だ。
「それじゃ、アビドス生徒会、いくよ。」
そう言いながら私達は問題の解決の為、現場に向かった。
真面目モードの時は私、ゆるゆるの時はおじさんを使い分け始めるホシノ。本編ホシノがえぐすぎてここのホシノが平和でよかったと思う今日この頃でした。
息抜きにアビドスに遊びに来ていたミカと再会した誰かさん。アビドス生徒会長を紹介されてびっくりでしょうね。