汀渚のアーカイブ   作:buridish

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2年生も半ば頃の話です。時間をすっ飛ばしていかないとこのままだといつまでたっても原作時間軸にたどり着けない!


捕らわれた者達

 ヒフミさんが外部交流会に入部してから数か月、今では夏も終わり涼しさを感じる頃。

 

 部員も増え、私も特に他に顔を出す事も無く、偶に正実におやつを差し入れに行くとイチカさんやハスミさんが喜んでくれたりする程度。

 

 他にはセイアさんにお茶会に呼ばれてミカさんと一緒におしゃべりしたりと割と平和な日常を過ごしてみたり。

 

 アビドスの砂祭り(仮)の時水着が準備出来ていなかった事を思い出したのでフリルの付いたワンピースタイプの水着を購入してみたり。ハナコさんから水着を選んでくださいと言われて彼女の水着も選んだり…私の好みで選んでしまったがいいのだろうか?似合うと思って少し露出が激しいものを選んでしまったかもしれない。

 

 そして、今日は部活動としてトリニティ、ゲヘナの丁度間に位置する自治区でヒフミさんのお願いでモモフレンズのイベントに参加している。

 

 少々距離もあったのであの戦車を引っ張り出そうと思い、戦車が見当たらないのでおかしいなと思って庭を歩くと以前はなかったガレージの様なものが出来ていた。…いつの間に?

 

「それにしても…ゲヘナ・トリニティ間の関係を良くするためにモモフレンズがイベントを行うなんて思ってもみませんでしたね。」

 

 楽しそうにグッズを眺めながら一喜一憂しているヒフミさんを見ながら私は思ったことを口に出す。

 

「…色々と目論見はあると思いますが…ヒフミちゃんが楽しんでいるのならいいと思います。裏の事なんて私達には関係ないですし…。」

 

 それはそうだ…それと実は今日は遊びに来ただけではない。ミカさんとセイアさんからの依頼も含まれている。

 

「…一応お仕事もあるのですが…まぁこの名簿を相手に渡すだけなので難しい事ではないですけれど。」

 

 そこに書かれているのはトリニティ周辺にある自治区の行方不明者リスト、数百人規模である為に正実だけではなくティーパーティーも動いている。幸いと言っていいのかトリニティ生は含まれていないらしい。

 

「…ここの所慌ただしいですよね…以前は三日に一度は来ていたミカさんもここ二週間顔を見てませんし、セイアちゃんも忙しそうにしています。」

 

 セイアさんやミカさんが最近顔を見せていない事で少し表情が曇るハナコさん、彼女たちも頑張っていることは分かるのでもどかしさを感じるが…せめてハナコさんを外に連れ出すことで息抜きになっていればいいのだが。

 

 そろそろ相手との約束の時間か、ハナコさんには一応お仕事の話は伝えてあるのでその事を言っておく。ハナコさんはヒフミちゃんの事は見ておきますね。と言ってくれたので礼を言ってその場から離れる。

 

 少し歩き、人気の少ない所へ歩いていく。複数の人間…5人程だろうか?が依頼人の護衛として付いているようだ。

 

 少し待っていると一人の人間が物陰から現れる。肩程に伸ばした髪に余裕を感じさせる微笑を浮かべる少女。恵まれた体付きに少々…いや、だいぶ特徴的な服装。

 

「お待たせしてしまいましたか?トリニティの方?」

 

 少々棘を感じる口調、トリニティにあまりいい印象はないのだろう、いや、当たり前か。あの抗争を知っている人間でなおかつ彼女はその場にいた人間かも知れないから。

 

「いいえ、時間通りですから。これが頼まれたものです。」

 

 相手の望み通り義務的に接する、私としては彼女と仲良くするのには吝かではないのだが、相手が望んでいないのにそういう風に接してもマイナスになるだけだからだ。

 

 彼女に近付き依頼の品を渡す、これを渡す事はトリニティに叛意はないという事を伝える意味もある。

 

 渡したものに軽く目を通す少女、成程、と一言口にする。

 

「…流石ティーパーティーと言っておきましょうか、しかしこれだけの人数がいながらトリニティの被害者はゼロ…そちらの中に加害者がいないという証明にはならないと思いませんか?」

 

 それはまさしくその通りだと思う、偶然というには難しく、しかし証明のしようもないものだ。

 

「確かに、ですがトリニティ内部も一枚岩ではありませんので、少なくともこれを私に託した派閥はそちらと友好的であろうと思っているはずです」

 

 そう返せば表情は変わらないもののつまらなく思っているように見える反応。彼女もわかった上でこちらに文句を言っているのだろう。

 

「それにしても不用心ではありませんか?…もしかしたらあなたが行方不明者の1人になってしまうかもしれませんよ?」

 

 脅し…だろうか?と言っても私も少数精鋭のアビドスの一員としての自負がある。

 

「…右側の建物…屋上と3階に狙撃手2人、そちらの物陰に盾持ちが1人、私の背後にもう1人。」

 

 私がそう言うと相手の少女の表情が固まる、気付かれているとは思っていなかった様だ。

 

「それに…警戒する相手を近付けすぎてはいけません、護衛しきれなくなりますからね?」

 

 言葉を話しながら彼女の背後を取る、その瞬間周囲から向けられる敵意。

 

「……傲っていたのは私の方のようですね、流石にヒナ委員長程ではないとは思いますが…予想以上でした。」

 

 彼女が片手を上げ、手を軽く振ると緊迫した空気が霧散する。振り返った彼女は先程よりも緊張が見える表情でこちらを見た。

 

「失礼いたしました。改めまして、私は天雨アコと申します。機密性の高い任務の為ヒナ委員長と共にここに参りました。現在ヒナ委員長は別件で席を外しておりますが。」

 

 天雨アコ、聞き覚えのある名前だ。ゲヘナ風紀委員会、そのトップの空崎ヒナの右腕にしてNo.2行政官を務める少女。

 

「私は桐藤ナギサ、今回は友人の依頼でここに参りました。私はティーパーティーの人間ではないですが…程々に仲良く致しましょう?」

 

 そう言うと何とも言えない表情でこちらを見る天雨さん。

 

「…ティーパーティーでもないのに、ティーパーティーの人間から依頼されるだなんてよほど信頼されているのですねあなた。」

 

 頼られたからには仕方ないし、今回の事は実はティーパーティーの総意ではない。本当ならセイアさんやミカさんが解決する事なのだけれど今の情勢とてもデリケートであるし。

 

「この名簿の交換条件とは言いませんがそちらに一つ情報を、以前抗争の原因となった行方不明者を保護したのですが…数日前再び行方不明になりました。身動きが取れないほどの後遺症を持った方達もです。」

 

 これは確かに表に出せない情報だろう、しかし…後遺症もあったのか。

 

「また行方不明に…今回もトリニティに疑いを?」

 

 そう言うと天雨さんは首を軽く振る。

 

「いいえ、今回の事は自ら自分の意思で行方をくらませていると思っています。しかも下半身が動かなくなった生徒ですら自分の足で抜け出しているようですので。」

 

 普通の状況ではありません、と言いながら片手で頭を押さえる天雨さん。話を聞くと彼女らは突然おかしくなったのだそう、止めようとした相手も力づくで沈黙させられ、そのまま行方をくらませたらしい。

 

 しかし、後遺症で…下半身不随…?

 

「…あの…下半身不随だった生徒は以前は健康だったのですよね?」

 

「…?ええ、その為動かなくなったと知った時は酷く落ち込んでいました。カウンセリングなどで少しずつ良くはなっていましたが。」

 

 一瞬嫌な想像をした、そんな事は起きないはず。

 

 そんな考えを振り払うと、天雨さんはこれもどうぞ、と書類と写真を渡してくる。

 

「これがゲヘナ側の行方不明者です。見つかったらすぐに連絡をお願いします。」

 

 どうか私達を裏切らぬように、と言いながら渡されたそれを受け取ると、どこからか微かに悲鳴のような声が聞こえる。

 

「悲鳴…?」

 

 私がそう言うと天雨さんはインカムで誰かと話し始める、恐らく屋上の狙撃手だろうか。

 

「生徒が暴れている?何処の学園ですか、服装がバラバラ?規模は?」

 

 天雨さんが声上げている傍で私も”私”へと意識を移す。

 

 民衆もいるから不確かだけれどかなり多い、襲撃をかけている相手以外にも別の場所に数百程…だろうか?

 

 それよりも、ハナコさんとヒフミさんが危ない、それに一応ホシノにも聞いておきたい事がある。

 

「数百程の規模のようです。囲まれる前に移動しようと思うのですが、そちらはどうしますか?」

 

 一応天雨さんに聞いておく、この数だと護衛がいても危ない。

 

「す…数百!?…それは流石に誇張…どんどん増えている?…わかりました。」

 

 通信相手と話し終わったのか、こちらを見ながら天雨さんは口を開く。

 

「数が多すぎるので応援を呼びます。可能ならヒナ委員長に、それまでは協力関係といきましょう。」

 

 不本意ではあるようだが、場合が場合だ。私が先陣を切ると天雨さんと護衛の人たちが付いてくる。

 

 戦闘用の思考に切り替えながら私は片手に銃を持ちながらもう片方の手でホシノへと通話をかける。

 

 何度かの呼び出し音の後に通話がつながった。

 

「はいはーい、ナギサ?何の用ー?」

 

「今日そちらにユメさんはいらっしゃってますか?」

 

 緩い口調の友人に対し単刀直入に用件を言う。

 

「…何かあった?ユメさんは今日はノノミちゃんと一緒にモモフレンズとかのイベントに行くって言ってたよ、ゲヘナとトリニティの間の自治区。」

 

 良くない予想が的中した、彼女達もこの場にいるのか。

 

「…ホシノ、出来ればその場所に来ていただけるでしょうか?実は私もそこにいるのですが、数百規模で囲まれてまして。」

 

「数百?何処の軍事会社と事を構えたの?…取り合えず分かった。少し遅れるかもしれないけど急いで行く。」

 

 そう言って通話が切れる。端末を懐にしまいながらもう一丁の銃も抜く。

 

 視界に襲われている人が見える。一般人を襲っている側に銃を向け、撃つ。

 

 何人かを撃ち抜くと集団の視線が同時にこちらに向く。

 

 ぞっとした。寸分の狂いもなく夢遊病の人みたいに意識がはっきりしていないような視線が同時にこちらを向いたから。

 

 普通じゃないなと思いながら、私は遊撃に回りながら天雨さんに避難誘導をお願いする。正直守りながら複数を相手するのは得意じゃないのだけれど。

 

 後輩たちも心配なのだが見捨てていくわけにもいかず、相手に向かって撃つのを繰り返す、しかし。

 

「倒しても倒しても…起き上がってきますね…。」

 

 普通なら気を失うほどの攻撃を当てているのにも関わらず、しばらくすると起き上がってくるゾンビ映画のような光景。

 

 少しずつ後退しながら攻撃する。こんなに復活されては銃弾も心もとなく感じる。かといって格闘戦をしに集団に飛び込むわけにもいかない。

 

 少し困っていると耳に銃声、しかも断続的に聞こえる音は機関銃だろうか?

 

 聞き覚えのあるような銃声のもとへ向かうとそこには見覚えのある少女達の姿。

 

「皆さん!大丈夫ですか?」

 

 良かった。ユメさんはあの集団の中にいなかったらしい、ノノミさんが必死の表情で反撃をしながらユメさんがひぃんと声を上げていた。

 

「あ!ナギサちゃん!今日はモモフレンズのイベントがあって…ノノミちゃんがMr.ニコライのグッズが欲しいって…どうしてこんなことに…。」

 

 見知った顔を見つけてひんひん泣いている元先輩、ノノミさんも私の姿を見つけてホッと一息ついているようだ。

 

 ユメさんを守るようにハナコさんとヒフミさんもアサルトライフルを構える。どうやらみんな一緒にいてくれていたようだ。

 

「いきなりこの人達が攻撃してきて…話も通じないしいったい何が…?」

 

「分かりません…が、まだまだ数もいますし後退しましょう、ゲヘナの風紀委員の方が来ているので彼女達と協力して援軍が来るまで耐えましょう。」

 

 ノノミさんが困ったように聞いてくるも私自身も原因は分からない。索敵も忘れないようにし、後退しながら迎撃を続ける。しばらく下がるとこちらに近付いてくるゲヘナの校章が描かれた

 

「桐藤さん、こちらの増援までまだ少しかかります。…トリニティ側からも出せますか?」

 

「一応聞いてみましょう、ティーパーティーからの指示ならゲヘナと敵対行為も取らないと思いますし。」

 

 天雨さんと合流した私はトリニティに連絡した。連絡したのはミカさん、セイアさん、ハスミさん。ミカさんは驚いた後、自分が出るとばかりの事を言い始めた為に宥めて落ち着かせる。セイアさんは正義実現委員会に出撃の要請を、少し時間をおいてハスミさんに連絡、ゲヘナとの共闘の件も含めて状況を説明した。

 

 ハスミさんは少しの間黙っていたものの、出撃することを了承。剣先さんを含めた戦力でこちらに来てくれるそうだ。

 

 その事を天雨さんに話すと、彼女は囲まれない位置での籠城戦を提案、避難民を守るための防衛線を構築することになった。ついでにあの戦車も拾ってきた。

 

 そうして防衛線を敷いた場所で私はゲヘナ側から重機関銃を借りた、今はとりあえず命中率よりも数で圧倒したいと思ったからだ。

 

 戦車には、ユメさん、ハナコさん、ヒフミさんに乗り込んでもらう事にした。おそらくここが一番安全だから。

 

 私は眼鏡を外し地面に固定された重機関銃を握る。

 

 そうして現れた謎の集団に対する防衛戦が始まった。




舐めプアコ。トリニティのお清楚なお嬢様だと思ったらヒナよりの相手だったでござる。索敵能力も含めてトリニティに対しての警戒度がだいぶ上がりますね。ちなみにヒナだったらナギサの正体に気付きます。

ハナコとヒフミは逃げていたら(ハナコの)顔見知りであるユメパイとノノミを発見、合流みたいな感じです。

ホシノはナギサの口調だけでおじさんモードから即座にスイッチの切り替えをしています。相棒感凄い。
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