セイアちゃん実装もありまして今回はリハビリも兼ねて番外編を差し込ませていただきます。
今後は少しゆっくりペースで更新していこうと思います。
今回の番外編の時系列は未来、過去バラバラになっております。長いです。
陽炎の夢
「なんですって…?」
何の冗談かと、聞き間違いかとも思うような内容の報告が私の耳に届く。
「…今回のカイザーの調査と証拠品の確保の件で、カイザーと防衛室長の癒着の証拠を発見した。連邦生徒会としては現室長を解任、連邦生徒会長は次長のあなたに新たに防衛室長を任につくことを望んでいる。」
…どうやら聞き間違いではなかった様だ、目の前にいるのは連邦生徒会、いや連邦生徒会長直属であり法執行における最高の学府、SRT特殊学園に所属している少女。
…何故、私に?とは思わない、次長である私が繰り上がりで室長になるのは理解できる。
その上、資金繰り、他派閥との交流や他学校の治安維持組織との外交など、自分もかなりの業績を上げており、「超人」連邦生徒会長からの印象も良いだろう、しかし。
「…こんな形での就任は、あまり喜ぶべきことではありませんね。」
間違いなくこの後、尻拭いをさせられることは間違いない。感情を隠すために普段細めている瞳を片手で押さえながら溜息を吐く。だとしてもこれを解決するのは私が適しているとの考えで、あの「超人」は私が防衛室長になることを望んでいるようだ。
「承りました。と連邦生徒会長にお伝えください、他に何か連絡事項はございますか?」
どうせ遅かれ早かれこの立場になる予定であったのだ、私がやることは変わらない。D.Uの…キヴォトスの安寧の為に働く事こそが私の使命である。
「後日、連邦生徒会長直々に引継ぎについて話があるとの事だ、留意しておいてほしい。カヤ
連邦生徒会長からの任名を私が受けた時点で、彼女たちにとってはもう私が防衛室長なのだろう、少々切り替えが早いのではないだろうか?
そう言って部屋を出ようとする少女、FOX小隊の七度ユキノを呼び止める。
「私はいつまであなた方を預かっていればいいのです?本来連邦生徒会長の直属のあなた達の指揮権を預けられているおかげで私の仕事が増えているのですが?」
そう、私にとって苦い記憶である一件。あの誘拐事件から連邦生徒会長の懐刀であるFOX小隊を預けられているのである。本来は不可能な事なのだが、私が狙われたことがきっかけで、連邦生徒会長直々の命令もあって私に護衛として付けられている。
防衛室の人間たるもの、治安維持組織の指揮も存分にこなせとの事なのだろう。期待されているのだろうか。
「まだ任は解かれていない。それに、防衛室長になったカヤにはしばらく私達の力が必要だと思うが。」
「…まぁ、それもそうなのですが。」
次長が決まるまでは室長の仕事と同時に今までの仕事もしなければならない。正直、彼女達を動かせる権限はありがたくはあるのだが。
「あの人に憧れていたこともありましたが、上手く使われていると思うと何とも言えませんねぇ…。」
そう、私はあの「超人」に
圧倒的なカリスマ、その決定はすべて良い方向に向かい彼女が動けば解決しない事はない。
多くの賞賛を受ける彼女に、私もああなりたいと、思っていたこともあった。
しかし、あの一件の時、彼女…桐藤ナギサに言われたことを思い出す。
「ただ、憧れるだけでなく彼女の仕事ぶりを隣で見た方が良いと思います。そうなりたいのなら、理想像を見ておかないと。」
連邦生徒会長とは別の意味でとんでもない人物、文武両道、そして多くのコネクションを持ち複数の学園の中心人物とかかわりを持つ少女。
彼女の言う通り連邦生徒会長が外回りに付いていく事1か月程。
…私に「超人」は無理だと確信した。
いつ休んでいるのかと言わんばかりのハードワーク、確かに為になることは多かった。しかし、あれ程の仕事をこなしながら彼女自身疲れた様子は見せず。
あれは生き物としての格が違う、と確信した。あれに憧れあれになろうとするならば人間を辞めるしかないと。
尊敬する気持ちも憧れている心も未だ持ってはいるが、もはや「超人」になりたいとは思えない。私は人間なので。
そして、新たな目標に定めたのが私に助言をした少女、初めは連邦生徒会長に気に入られているようで気に食わなかった彼女。
…ピ、ピ、と爆弾のカウントが進む音、私は拘束されその場から動けず、震えるしかなかった。
閉じ込められていた部屋の扉が蹴り開けられてからは一瞬だった。
気が付けば私は彼女の腕の中、背後からは爆発と高いビルから落ちているのにもかかわらず、何故か安心感を感じた。
今思えばあの時の心拍の乱れは危機に陥っていたからこそ、所謂吊り橋効果、と言われるものだと思ってはいるが、ふと浮かんだ傍で見た彼女の凛々しい表情を脳内から追い出す。
その後も交流が続き彼女の優秀さを知ってからは彼女を新たな目標としている。
彼女の指揮能力、多くのコネクションを築く社交性、武力は真似できないものの、参考に出来るところは多々ある。まだ人間の範疇だ。
ちらりと私が呼び止めた少女、ユキノさんを見る。
彼女達は優秀だ、SRTに所属するエリートで、その中でも連邦生徒会長の信頼が厚いFOX小隊。
彼女達のおかげで私の指揮能力もどんどん成長を見せている。思った通り、いや、思った以上の成果を上げてくれる彼女達は私に沢山の経験を与えてくれた。
「今後、成果を上げ続ければSRTも安泰でしょう、いつまで私の傍で働くことになるかは分かりませんが連邦生徒会長、そして私が居ればあなた方の正義を果たし続けられる。」
私がそう言うとユキノさんは小さく口を綻ばせながら口を開く。
「…正義ある限り、私達はあなたの剣となろう、これからもよろしく頼む、カヤ。」
そう言いながら、部屋から出て行くユキノさん。ふ、と身体の力を抜きながらカップに注いである飲み物に口を付ける。
香る彼女から貰った
…この日から数か月後、SRTも安泰、といったこの言葉が彼女達の頭を大いに悩ませることになるとはこの時の不知火カヤ、七度ユキノには思いもよらなかった。
狐の休息
日頃、多くの業務に悩まされているサンクトゥス派次期首長である私、百合園セイアもたまには休みたいと思う事もある。
こんなに忙しいのも未来の為、皆で笑い合える世界の為と思えば、休んでいる暇は…とも思うがそれで倒れてしまえば本末転倒、現在久々の休息を貰いながらのお茶会の最中である。
「いや、すまないね、ナギサ。トリニティに来てから頼み事ばかり、私も自分の許容の限界も考えず動いているせいで時間もあまりとれず…申し訳ない。」
「いえ、セイアさんが忙しいのは私もわかっています。折角のお休みにこうしてお茶会に呼んで貰ってこちらも申し訳ないと言いますか…。」
そう言って苦笑するナギサ。派閥間のあれこれが無ければミカも呼べたのだが…後で膨れたお姫様の相手をすることになるかもと思うと、私も苦笑が浮かぶ。
「仕事の事を考えずゆっくりしている事が休息になるから問題ないよ、今日は皆大人しくしてくれているようで事件もない、久しぶりに暖かな陽気で転寝してしまいたいくらいだ。」
「ふふ、そうですね。今日は暖かいですし、良いお昼寝日和かもしれません。」
「夢」の彼女なら言わなそうな言葉、いや…余裕があるならばこういう言葉も出てくるのかもしれないが。
アビドスで過ごした日々は彼女にとって素晴らしい日々だったのだろう。それなのにこんな陰謀渦巻く場所に連れてきてしまった事に心が痛む。
「セイアさん、この間も交流会を行っていろんな派閥の方を集めていましたよね?サクラコさんやミネさんも来ていましたが。」
「ああ、彼女達は個人的に友誼を結んでいるからね、「夢」の世界ではここまでの交流はしていないんだが。来ていないのはパテル派とフィリウス派に所属してない子達だね。」
その事にナギサは驚いた表情を浮かべる。
「未来の重鎮になりうる方に積極的に交流を持っているのですね、救護騎士団、シスターフッド…引き入れられたら勢力図が一気に変わってしまいますが…。」
心配そうな顔でこちらを見てくるナギサ、恐らく派閥が大きくなりすぎる事で起こる問題を危惧しているのだろう。
「大丈夫、個人的に交流を持っているだけ、だからね。」
詭弁ではあるが。しかし、そう言うナギサだって、いつの間にかサクラコやミネに交流を持っているではないか。
「ナギサ、一つ聞きたいのだが…サクラコの愛しの君が君だという噂が流れているんだが…事実かい?」
今まで優雅にお茶を飲んでいたナギサがその言葉を聞くとタイミングが悪かったのか咽込んでしまった。
「ごほっ…いったい誰がそんなことを?いえ…そもそもどうしてそんな噂が?」
咽たせいで顔を赤らめ、目に涙を浮かべながら私に聞いてくるナギサに少し胸が高鳴りながら噂について答えた。
「噂についてはシスターフッドから広がっているね。何でも普段の笑顔と君に向ける笑顔が違う、だとか…他にはサクラコを壁に押し付けながら彼女の顎を…。」
私がそこまで言うと彼女は慌てて私の言葉を遮った。
「誤解です!…いえ…事実ではあるのですが両方理由があるんです…。」
こめかみを手で押さえながら、はぁ…とため息を吐くナギサ、正直その話は私も気になる所だ。
「前者は何かと勘違いされて困っているサクラコさんの為に自然な笑顔の練習…という事で行ってることで…後者はその…この間のお祭りの劇の練習に付き合ってもらったからで…。」
ああ…そう言う事か…後者は…惨い事件だった。普段お姫様、というか傅かれるのを嫌がるミカだが彼女程の適役がいないという事で姫役に抜擢されたのだ。
初めは嫌がっていたミカだったが、それを見かねたナギサがパートナーの王子様役を引き受けたのだ。
ナギちゃんがやるなら…としぶしぶ引き受けたミカだったのだが…ナギサが王子役として仕上げ過ぎたのだ。
本番でミカをエスコートするナギサは男装が妙に似合っていた。その姿に唖然としながらも精一杯に演技をするミカ。
そして、所謂キスシーンというもの、勿論本当にキスするわけではなく、フリだけなのだが…。
「姫…私のお姫様…どうか私の想いを…。」
そうしてミカに顔を近付けるナギサ、最前列で見ていたから私は聞こえていたが、ミカは顔を真っ赤にして、あっあっ…と声を漏らすだけだった。そして、何故か警備をしていたツルギも顔を真っ赤にしていた。
あれを見て私が感じたことは…将来聖園ミカはまともな恋愛が出来るのかという事…人の性癖はああやって壊れるのだというのを認識したのだった。
それ以来、ミカはナギサ限定でお姫様扱いを許容するようになってしまった。なんとも悲しい事件だった。
そうか、サクラコも被害者だったのか…。あれだけの完成度に仕上げたという事は相応に付き合わされたということで、サクラコも大丈夫なのだろうか?
誤解?も解けてゆったりとお茶会を続けていたが、あまりにも暖かな空気に小さくあくびが漏れるのを手で隠す。
それを見たナギサがくすりと笑い、私に手を差し出す。
彼女に手を引かれるままに身を任せると、柔らかなソファに案内される。
ナギサはそこに座ると私に顔を向け、自らの脚をポンポンと軽く叩いた。
それの意味することはつまり…。
まぁ…いいか、今日は久々の休みだし、私もたまには誰かに甘えたい時もある。
そうして大きなソファに横になり頭をナギサの脚に乗せる。柔らかいが思ったより鍛えられた感じのする感触、そして…。
「ちょっと暑いですね。」
人肌が熱いのかブレザーを脱ぎ、シャツのボタンを外す。その結果。
ナギサの顔が…見えない…?
思った以上の大きさだった。近くで見ないと分からないレベルとかどれだけ見た目詐欺なのだろうか。
そんな馬鹿な事を考えていると目蓋が重くなっていく。予想以上に疲れているようだ。
優しく頭を撫でられながら目を閉じる。その日、普段見る「
ここではない異なる世界で
「おーい、結先!」
呼ばれる自分の名と聞き覚えのある声に振り向く、そこにいたのはそれなりに交流がある友人だった。
「これからさ、飲みに行くんだけどお前もこねぇ?人数多い方が楽しいしさ。」
「いいよ。」
俺はそれに了承。友人はにっと笑いながら案内してくれる。
店に入ると何人か以前つるんでいた懐かしい顔ぶれが。
「よー!結先!久しぶり!」
「懐かしいなぁ、まさかせんせぇが本当に先生になるなんてな!」
昔のあだ名で呼ばれ、少しむず痒く感じながら案内された席に座る。
「せんせぃよぉ、どうだよ?教員って大変って聞くけど。」
「ああー…まぁ、大変だね。やんちゃな子も多いし。」
聞いてはいたけど実際に大変だ、思春期の子というのは何かと難しい年頃だし、数年前自分たちも通った道のはずなのだけれど。
「そういえば彼女とはどうなん?こん中で唯一の彼女持ちさんよ。」
久々に会うからか矢継ぎ早に質問が飛ぶ、ああ…彼女は…。
「あー…うん、振られた。」
そう言うと周りからは驚愕の声。
「はぁ!?いやいや、去年のクリスマスまでは一緒に過ごしたんだろ?1か月前じゃんか!」
「それは…まぁ、俺が悪いからなぁ…。」
そう、俺が悪い。
今まで何度か女性と付き合う機会はあった。
そのすべてで同じ理由で振られている。
「あなたは私を見ていない。」
そう言われて破局する。
彼女達が悪いわけじゃない。
未だにあの子の事を割り切れていない、未練がましい俺自身のせいだ。
「…ま、まぁ…気を取り直して飲むぞ!辛い事は忘れちまえ!」
気を使ってくれたのかそう言って注文を始める友人達。
「まぁ、振られるの3回目だしもう慣れてるから平気だよ。」
ついそう言うとまた空気が凍る、あ、これ余計な事言ったかな。
正直振られる事よりも、あの子との別れの時の方が精神的にくる。恐らくそう言うところなんだろうなぁ。
「お前誠実で、聞き上手で変な趣味持ってるけど、良い奴なのになんでそんなに振られるかね。」
普段は言わないのに酔っているからか、胸の内に秘めていた言葉が漏れる。
「あの子の事を忘れられないから、だろうなぁ…。」
「あの子?」
あ、と気付いた時には手遅れだった。皆は俺の溢した言葉に興味津々のようで。
「あー、うちにねホームステイ…というか預かってた妹みたいな子がいて…数年前に帰っちゃったんだけど。」
そして、胸元から懐中時計を取り出す。あの子から貰ったもの、整備はしているけど弟のも含めて全く劣化を感じない上、あの子の纏っていた何かを感じられるもの、俺にとっての宝物だ。
「懐中時計?」
「うん、あの子がお別れの時にくれたもので、俺にとって大切な物。」
その言葉を聞いた友人達はなるほどな、と納得していた。何を納得したんだろうか。
「なぁ、その子の写真とか画像残ってるのか?」
そりゃ記録には残してある。あの子を忘れない為に、写真を撮ってもヘイローと翼はうつらないけど。
「この子だよ。」
そう言って携帯の画像を見せる。機種変してもあの子の画像だけは絶対に保存してあるからいつでも見れる。
「……こりゃ無理だわ。勝ち目無しだ。」
皆、あの子に興味津々なのか代わるがわる画面をのぞき込む。そしてまた納得する。だから何を納得してるのか。
「この子には本当に世話になったんだ、手料理も作ってくれたしレポートとかも手伝ってくれたし。」
家事万能、頭脳明晰、まさしく嫁に欲しい女性上位に入るのではないだろうか?は?嫁になんかやらないが?
「まさに理想の女じゃねえか…お兄さん、妹さんを俺にくだ…。」
「は?」
つい本気で圧をかけてしまった。冗談を言った相手は引きつった顔をしながらこりゃ重症だ、と溢す。
正直あの子にはなにも返せていない、貰ってばかりだった。彼女が困っていたら、悩んでいたら助けてあげたいのに。
俺が何故教職を目指したのか、それは彼女が「先生」という存在に憧れを抱いていたから。世間一般的な先生とは違うものの可能性はあるが。
酒が進み他愛の無い話をする。適当な話をしながら頭に浮かぶのはあの子の…ナギサの姿。
『お兄さん!』
あの子は元気にしているだろうか、辛い思いはしていないだろうか、友達は出来ただろうか、家族と仲直りは出来ただろうか。
もしも…もしもあの子にもう一度会えるのなら。
すべてを捨ててでもあの子の助けになりたい。
そんな事を考えながら夜は更けていく。
長らくお待たせして申し訳ありません…その上本編ではなくお茶濁しの番外編です。
ナギサに脳を焼かれた被害者の会の皆様でした。次の更新は…今月中に出来ればいいなぁ…。
色々言いたい事はありますが…セイアちゃんの腋がえっち!