汀渚のアーカイブ   作:buridish

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ケセド追い込んでたけどこのナギサ様先生来るまでにあと3年あるんですよね。


意外な珍客

「んっ…?」

 

 どこかいつも目を覚ます時とは違う匂い、そして私の手を握っている誰かの温かく柔らかい手の感触。目を開けて最初に感じたのは全身の痛みと怠さ。そして白い天井。

 

「これがデジャヴュというものでしょうか…?」

 

 身体を起こそうとするが、全身の痛みに断念した私は手の温もりの正体を確認する為、首だけを動かし確認した。

 

 そこには椅子に座りながら私の手を握ったまま眠るユメ先輩がいた。

 

 何があったんだったかと思い記憶を探り、私は意識を失う前の事を思い起こす。

 

 そうだ、私はケテルに…。

 

 ボロボロのケテルの最後の攻撃で油断した私は意識を失ったのだ。敵の本拠地で気を抜くだなんて私もまだまだだなと考えていると、目の前でユメ先輩がふみゃぁ?と、気の抜けた声を漏らした。どうやら目を覚ましたらしい。

 

「おはようございます。ユメ先輩。」

 

「うんー、おはよう、ナギサちゃん…。……ナギサちゃん!?」

 

 ぽやーっとしながら挨拶を返したユメ先輩だったが、私を見て状況を理解するとかっと目を見開く。

 

「ナギサちゃん!ナギサちゃん!!ああぁぁぁ…よかった…よかったよぅ…。」

 

 どうやらかなり心配をかけてしまったようで、泣きながら私に抱き着いてくるユメ先輩。待ってくださいユメ先輩、まだ身体が痛くて、それに顔に押さえつけられるもので息が…。

 

 痛む体を無理やり動かし、軽くユメ先輩の腕を叩く。このままでは別の意味で死んでしまいそうだ。

 

「あっ…ごめんね。ナギサちゃん…怪我したばかりなのに…大丈夫?身体痛む?」

 

 ハッとして私を抱きしめる力を緩め体を離すユメ先輩。心配してくれるのは嬉しいのだが、私は怪我人なので少し加減して欲しい。

 

「私は…記憶の通りなら「廃墟」で倒れたと思うのですが…。」

 

「うん。ミレニアム近郊の廃墟の入り口で酷い怪我で倒れてたのをホシノちゃんが見つけたんだよ。帰ってこないから心配になって迎えに行ったんだって。」

 

 …ケテルの攻撃を受けて意識を失った…と思っていたのだが。…その辺りは考えても無駄か、怪我で済んでよかったと思っておこう。

 

「それでね。ホシノちゃんもいたんだけど、お仕事溜まっちゃうからって今は戻ってるよ、覚悟しといてくださいって伝えておいてって。凄い心配してたよ。」

 

 …どうやらホシノにも心配をかけてしまったようだ。廃墟に行く前に危なくなったら逃げろと言われてこの結果だから甘んじて説教を受けよう。

 

「それで…ここは病院みたいですが。」

 

「あ、うん。ここはD.Uの病院だよ。最初はミレニアムの病院にホシノちゃんが連れて行ったんだけどね?お仕事を依頼した連邦生徒会の人の代理人って人が来てね?ミレニアムの病院で処置を受けた後、D.Uの病院に移ってもらうように言ったの。治療費とかナギサちゃんが使った弾薬費とかは依頼人の人のポケットマネーで出してくれるって言ってたよ。」

 

 それは助かる。そして依頼人が連邦生徒会の人だと言うのは間違いないようだ。偽装の可能性も考えてはいた。

 

「連邦生徒会の人はどんな人でしたか?」

 

「ナギサちゃんと同じくらいの子だったよ。黒髪ロングのキリっとした顔のスタイルの良い、いかにも仕事出来ますって子。依頼人の子のお友達だったみたい。あの人にはこちらからきつく言っておきます。って言ってた。」

 

 ふむ…思い浮かぶのは1人いるが…となると依頼人はまさか、「将来の連邦生徒会長」か?

 

「…依頼に失敗したのにここまでしてくれるのはありがたいですね。はぁ…お金に目が眩んだとはいえ依頼を受けたのは失敗でしたか。」

 

「??え?連邦生徒会の人は依頼をやってくれてありがとう、って言ってたよ?要求していた以上のものですって言ってた。」

 

 …は?

 

 いったいどういう事だろう、私はケテルに追い回され意識を刈り取られ、依頼なんてしている余裕はなかった。寧ろ依頼の失敗を嘆きながら帰ろうとしていた瞬間だったのだ、あの時は。

 

 流石に、おかしいと思い脳内で”私”に聞いてみるが、”私”にもわからないらしい。という事はあの時”私”の意識も飛んでいたという事。

 

 流石に寒気を感じる、私の中にもう一人いたりしないか?私達2人だしもう1人いても誤差じゃないだろうか?

 

「…ま、まぁ無意識とはいえ依頼を達成出来ていたならよかった。連邦生徒会の方に良い印象を持ってもらえた方が良いですからね。」

 

「それでもナギサちゃんが怪我をするのはダメ、アビドスの為って言ってもそれだけは認められないよ。」

 

 ユメ先輩はいつものふわりとした雰囲気を消して、真面目な表情をする。

 

「もしも、もしもの話だよ?アビドスの借金を全部返せたとしても、そこにナギサちゃんがいなかったら何の意味もないんだよ。喜ぶどころか喜びをひっくり返すよりもっと大きな悲しみが出来ると思う。」

 

 ユメ先輩は真面目な顔を少しだけ崩し、口元を緩めた。

 

「だからね。自分の事を大事にして欲しいな。」

 

 ユメ先輩はそう言って表情をいつものように柔らかい笑顔に戻す。

 

 私もです。ユメ先輩、もう私にとってもあなたは大事な人で…。だからこそあなたを害する未来があると言うのなら。

 

 ごめんなさい、その時は全力で、その未来を破壊して見せます。この身を犠牲にしたとしても。

 

 私がそのように決意を固めていると、ユメ先輩が、あ!そうだった!と言いながら慌て始める。

 

「そういえばね?ナギサちゃんにお客さんが来てたんだよ。起きたら呼んで欲しいって言われててね?ごめんね?私、ちょっとその人呼んでくるから!」

 

 そう言って早足で病室を出ていくユメ先輩。はて、私に客?例の依頼人のほかホシノくらいしか思い浮かばないのだが。いったい誰なんだろうか?

 

 何とか枕にもたれ掛かりながら半身を起こす。寝たままだとお客さんにも失礼だろうし。

 

 そう言って待つこと数分、どうやらユメ先輩が戻ってきたようだ。

 

「ごめんね!すぐ呼ぶって言ってたのに待たせちゃって!それじゃ、お話が終わったら呼んでね?」

 

 と言うユメ先輩の声が聞こえる。どうやら例のお客さんと話をしているらしい。

 

 そして扉が開き、その人が病室に入ってきた。え…?

 

「あの、桐藤さん、お久しぶり…だね。」

 

「どうしてあなたが、ここに?」

 

 久しぶりに聞く呼び名。そして、私はここに来るはずがないと思っていた人が来たことで驚いていた。私に話しかけてきたその人は。

 

「…聖園…様。」

 

 聖園ミカその人だったからだ。




真なるゴリラ登場。彼女の傍にナギサがいない事で今作いろんな意味で変わった子になると思います。

この二人が名字呼びだと違和感がすさまじいです。
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