コルンのアトリエ ~黄昏の星の錬金術士~ 作:アトリエファンA
家に着くころにはすっかり日が沈んでいた。
「ここまで送ってくれてありがとうございました!」
「どういたしまして。次外出るときには、護衛か、武器を持っていくようにしなよ。」
「そうだね、近代式でも、錬金術が使えるならそうしたほうがいいよ!」
「わかりました。そうするようにします。」
普段はあのあたりに魔物が出現する情報はなかったので、少し不思議に思った。
けれど、今後も何が起きるかわからないので、言われたようにしようと反省した。
「せっかくなので、もしよければ晩御飯食べていきませんか?今日のお礼をさせてほしいです。」
「いや、悪いけど今回は遠慮しておくよ。役所に顔を出しに行かないといけないんだ。」
「ごめんね、次会ったときにまた声をかけてくれると嬉しいな。」
二人は申し訳なさそうに言うと、エスカさんは私に予備のヒーリングサルブを渡してくれた。
「これ、念のため渡しておくね。今日はしっかり休んで、早く治すんだよ。」
「はい、今日は本当にありがとうございました!」
二人の背中が見えなくなるまで見送ると、家に入り、夕食の支度を始める。
ちょっと歩いてみたけれど、痛みはほとんど引いていた。
今日の晩御飯は何にしようかと台所に進むと、コンロの上にはもうすでに下ごしらえを済ませている鍋が置かれていた。
お父さん、いつの間に帰ってきていたんだ。
でもまだ家の中に父の気配はなかったので、代わりに鍋を温め始める。
そしてそしてもう片方のコンロにも片手鍋を置き、水を入れて温め始めた。
カバンからわずかに残っていたトーンを取り出し、包丁で細かく刻む。
沸騰してきた手鍋に刻んだトーンを入れ、蓋をする。
その間に料理の鍋の方も温まってきたので、ルゥとスパイスを入れ、シチューを完成させた。
手鍋の蓋を開け、刻んだトーンに火が通っているのを確認すると、精油を注ぎ入れて火を止め、ゆっくりとかき混ぜていく。
これであの参考書に書いてある道具が出来上がるはずなんだけど、鍋を見ていてもイマイチ完成するイメージがつかない……。
「ただいまー。」
玄関からのお父さんの声にハッとし、手鍋に蓋をして、台所の隅に追いやった。
そして、シチューの鍋をテーブルへ急いで運んでいく。
「お帰りお父さん。晩御飯の下準備ありがとう。」
「お、気付いてくれたんだ。うん、おいしそうにできたね。味付けありがとう。」
出来上がったシチューを見て満足そうに頷くお父さんを横目に、食器を並べ、親子二人で晩御飯を食べ始める。
そういえば調合に夢中になったおかげで味付けの確認を忘れていたけれど、我ながらおいしく仕上がってて安心した。
「そうだ、今日は課題の発表があったんだよね。どんな卒業課題になったの?」
「んっ……!げふっ……!」
聞かれると予想していたはずだったのに、いざ聞かれるとドキッとしてしまい、思わず咳込んでしまった。
「あらら、大丈夫?」
「ごふっ……。う、うん、大丈夫……。」
一度息を整える。さてどう言ったものか……。
下手な嘘で誤魔化したところでなので、ひとまず正直に言うことにした。
「錬金術で物を作るように言われたの。今日はその素材を取りに行ってたんだ。」
そういいながら、カバンからヒーリングサルブとトーンを取り出す。
「これを作るの。あ、これは見本でもらったやつね。」
「なるほど、思ったより簡単そうだね。これなら無事卒業できそうで安心したよ。」
お父さんはそういうと、ヒーリングサルブを手に取り、口にする。
その様子に私は驚いた。
「それって食べれるの?!」
「そうだよ?とはいっても食べ物ではないんだけどね。
食べて品質を吟味することがあるみたいだけど、僕にはよくわからないや。」
そう苦笑いを浮かべ、お父さんは再び食事に戻った。
その様子を眺めていた私も、再びスプーンを手にし、食事を進める。
よし、嘘は言っていないよね。
何とか誤魔化したとは思う。
エスカさんには申し訳ないけど、もらっていた予備のヒーリングサルブが役に立ってよかった。
古式錬金術の習得という私には出来ないであろう課題を言ったらば、お父さんを困らせてしまうかもしれない。
ここは一旦流して、早めに手を打たないといけないな。
「明日からは家で過ごすようになるのかな?だとしたら、お弁当は作らなくても大丈夫?」
「うん、何なら朝食も私が用意するよ。今日の晩御飯はお父さんが準備したようなものだし。」
「そうかい?じゃあお言葉に甘えようかな。」
これでキッチンに立ち入ることもないので、手鍋を見られることはないはず、たぶん。
そうして家族団欒を過ごし、夜が更けていった。