コルンのアトリエ ~黄昏の星の錬金術士~ 作:アトリエファンA
寝支度を済ませ、私もお父さんもお互いの部屋に行く。
いつもならこのまま寝るのだけれど今日は別だった。
お父さんが部屋に入ってドアから漏れる光が消えたのを確認すると、ろうそくを手に取り、そーっとキッチンへと向かう。
そして、隅に追いやっていた手鍋を取り、蓋を開けてみた。
中は見事にぐちゃぐちゃになっていた。
おそらくヒーリングサルブになるであろう手鍋の中には、水と油が混ざりきらず、さらにトーンもダマになってしまっている。
これは何だろう……。
お父さんがしていたのを真似て、興味本位で指ですくって口にしてみる。
やはりというかなんというか、不味いし苦い。
トーンの苦みと薄まった油の気持ち悪さが相まって一瞬吐きそうになった。
何とか吐き気を抑え、手鍋の中の良くわからないものを処分する。
小麦粉で固めて捨てようと思い、樽を開こうとすると、キッチンが明るくなった。
「やっぱり何かしていたんだね、コルン。」
お父さんが少し困った表情で私を見ていた。
やっぱりってことは、バレちゃってたのかな……。
「お父さん……。どうして……?」
「これ、テーブルの上に置きっぱなしだったよ。」
そう言いながらお父さんは参考書を見せると、私はハッとした。
そういえば昼間に帰ってきたときに置きっぱなしだった……。
夕方に帰ってきたときにはすっかり存在を忘れていたけれど、お父さんが持っていたんだ。
色々と誤魔化しながら隠していた事が明るみになり、もう何て言おうかわからなくなっていると、先にお父さんが口を開いた。
「古式錬金術の習得を、課題として言われたのかい?」
古式錬金術についても知っていたのだろうか。
観念した私は、重い口を開く。
「うん……。隠していてごめんなさい。」
「ううん、何も責めているわけじゃないんだ。
言ってくれたらお父さんに出来ることで手伝ったのに。」
優しい声音でそう言うと、私に参考書を渡してくれた。
そして、失敗したヒーリングサルブが入った手鍋を覗き、笑い出した。
「うん、これじゃあ失敗するのも無理ないよ。」
「どういうこと?」
笑っているお父さんを不思議に思っていると、お父さんは淡々と失敗作を袋に詰め、保存用のコンテナへと仕舞った。
「これは記念に取っておこうか。錬金術士コルンの第一歩だ。」
「え……、でもなんか恥ずかしいというか、複雑な気分だけど……。」
「まあいいさ、続きはまた今度一緒にしてみよう。ひとまず今日は寝ようか。」
色々と頭に疑問が浮かんだが、眠気が勝り、お父さんの言葉に頷き、再び部屋へと戻った。
色々とお父さんにバレたけど、許してもらえて、応援してもらえて安心した……。
肩の荷が下り、緊張が解けた途端、一気に瞼が重くなる。
疲れも相まって、いつの間にか深い眠りへと落ちていった。