コルンのアトリエ ~黄昏の星の錬金術士~ 作:アトリエファンA
数日後、私は必要な素材を買いに、再びリヒトさんのお店を訪れた。
「こんにちはー。あ、今日はこっちに出ていたんですね。」
「あ、こんにちはコルンちゃん。うん、薬作りも落ち着いたから、休憩がてら店番してるの。」
リヒトさんは陽が当たる場所で、椅子に腰を掛けていた。
リヒトさんが言う様に、風邪薬からケガの軟膏まで、この前来た時には少なくなっていた医薬品が棚に整列していた。
「そういえば、この前コルンちゃんが言ってたトーンも取ってあるけど、持っていく?」
そういうとリヒトさんは立ち上がり、レジの脇に置いてあった袋を持ってきた。
「あ、はい!ちょうど欲しかったんですよ。ちなみにいくらですか?」
「ううん、お代はいらないよ。薬作りで余った材料だから。」
「いいんですか?ありがとうございます!」
「うふふ、どういたしまして~。」
私に袋を渡すと、リヒトさんは再び椅子に腰を掛け、空を仰ぐ。
相変わらずリヒトさんはフワフワとした人だなあ。
それからも少しの間談笑を交わすと、私は家へ帰った。
「ただいまー。」
玄関の戸を開けると、部屋の端の大きな釜が目に留まった。
「おっ、おかえり、コルン。ちょうどよかった。」
釜の陰からお父さんが顔を出した。手には軍手をしており、顔が少しほこりで汚れていた。
「どうしたのお父さん。こんな大きな釜。」
「うん、古式錬金術を使うなら、これを用意しなきゃと思ってね。」
そういいながら、お父さんは釜の周りや中を丁寧に拭いていく。
その様子を眺めながら、私は荷物を置いて椅子に腰かけた。
机に置いてある参考書を手元に寄せ、せっせと作業するお父さんを横目に、私も参考書の読み込みを進めていく。
「よし、これで後は中和溶液を……。」
お父さんの呟きに反応して釜の方を見ると、ぴかぴかに磨かれた釜と、フラスコや乳鉢等、学校でも使っていた機材が並んでいた。
「お父さん、これって?」
参考書を放り、フラスコを手にした。
少しくすんでいて、年季が入っているようだった。
「ああ、それもうちの倉庫にあったやつだよ。調合にはきっと使うとおもって、ついでに持ってきたんだ。さ、これを注いだらいよいよ調合を始められるぞ。」
そう言いながら、お父さんがキッチンの方から大きなタルを転がして来た。
そのままタルを持ち上げ、中に入っている液体を勢いよく釜に注いでいく。
釜が液体で満たされると、お父さんは樽を置き、額の汗を拭った。
「さあ、これで準備完了だ。コルン、後は頑張りなよ。」
「う、うん。準備してくれてありがとう。」
お父さんは疲れたのか、水を片手に部屋へと引っ込んでしまった。
後を任されたので、先日と同じように、材料の下準備をしていく。
使える機材は活用していき、刻んだトーンを乳鉢ですりつぶし、より混ざりやすくしてみた。
これでよりダマになりにくくなったと思う、たぶん。
足元のスイッチで点火してしばらく待つと、少しずつ釜から湯気が出てくる。
この前と同じ手順で材料を入れていき、かき混ぜ棒でぐるぐると混ぜていった。
今度はダマにならず均等に混ざっていったようだ。
釜の火を止めてさらにかき混ぜ、粘度が上がり、かき混ぜ棒が重くなってきたので棒を取り出し、釜に蓋をした。
後はこれで待つだけのはず。
かき混ぜ棒に付いてるほぼ出来かけのヒーリングサルブを指ですくい、再び口にしてみる。
吐くほどの不味さは無くなったけれど、私にとってはまだ苦い味だった。