コルンのアトリエ ~黄昏の星の錬金術士~ 作:アトリエファンA
私には錬金術士の才能がある。
卒業課題をこなしていく中で、何となく心のどこかで思っていた事ではあった。
そして、実際に言葉に出され、私は息を飲んだ。
先生は真剣な表情のまま話を続ける。
「古式錬金術を使える錬金術士は今の世の中じゃ数えるほどしかいないのは知っているわよね。私が知っているのは5人、そのうち二人は色々あってお尋ね者になってしまっているけれど。他の子たちはその地方の役人として活動しているわ。」
「中央でも再現をしようと試みているって話は聞きましたけど、他の地方で古式錬金術を使える錬金術士がいたんですね。」
歴史の授業の内容がどこまで正しいのかわからなくなってしまったけれど、先生が話している部分が正しいとしたら、古式錬金術を使う「錬金術士」の存在は身近ではないにせよ、どこかに存在しているんだ。
「ええ、錬金術に関してはまだ明かされていない謎があるから、一般向けに改良された錬成術の使用しか教えていないのよ。過去の歴史、しかも部分的に改ざんされた歴史を教えているのはここくらいでしょうね。」
一通り話し終えると、先生は広げていた資料をまとめ、そのまま立ち上がった。
「さあ、行くわよ。」
「あの先生、どこへ……?」
「もっと錬金術に詳しい専門家のとこよ。あ、その資料一緒に持ってきて頂戴。」
キョトンとしている私をよそに、先に先生は部屋を出て行ってしまった。慌てて私も席を立つと、机にまとめられている資料を抱え、部屋を後にする。
先生について行き、教員棟へとやって来た。
生徒たちの喧騒から最も遠く、廊下は私と先生の足音が静かに響いているだけだった。
いくつかの部屋の前を通り過ぎていくと、名札の掛かっていない扉の前で先生は止まった。
「ここよ。」
先生はそう言うと、ノックをして返事を待たないまま扉を開く。
ふわっと懐かしいような匂いがしたと思ったら、本や紙等で散らかった部屋が視界一杯に広がった。
「せめて返事を待ってから開けてもらえるかしら。」
部屋の奥では、紅茶を片手に不満顔の女性がこちらを睨んでいた。
しかし私を見た途端、カップを持ったまま立ち上がり、散らばっている資料を避けながら近づいてきた。
「あなたがコルンね。」
「えっと、はい。そうです。」
ボリュームのある銀髪と、その隙間からチラリと光る綺麗なイヤリング。
そして、隣の先生よりも良いスタイルとそれを際立たせる服。
まだ大人ではない私でも、この女性はなんか色々とすごいというのが見て伝わった。
「私はスレイアよ。よろしく、コルン」
「は、はい。こちらこそよろしくお願いします……。」
差し出された手を取り、握手を交わした。
「それじゃああとはお願いね、スレイア。」
お互いに挨拶を交わしたのを見届けた先生はそう言うと、そのまま踵を返して帰ってしまった。
「え!先生!?」
「大丈夫よ。あの子から色々聞いているから、後はこっちであなたの面倒を見るわ。とりあえず座りなさい。」
驚き慌てる私に対して、慣れているのか、スレイアさんは落ち着いた様子でそう言うと、私を来客用のソファに座るよう促した。
「まあ、そんなに緊張しなくていいわよ。しばらくの間、あなたの錬金術士としての能力を磨く訓練をしていくから、そのつもりでいて頂戴。」
「え?訓練、ですか?」
まだ状況を掴み切れていない私をよそに、スレイアさんは話を続ける。
「ええ、そうよ。錬金術士である以上、私や他の人の研究に役立ってもらいたいから、それに向けてあなたを育てるの。でももし能力が一定に満たければ、あなたは錬金術士としての活動を認めないわ。」
「認めない……。それって、個人的に使うのもダメなんですか……?」
「そうよ。あなたはしないだろうけど、周りには錬金術を悪用する人もいるのだから。あなたには悪いけど、その能力の存在は隠蔽させてもらうわ。」
力の悪用……。いつか自身を守るために武器を作るよう勧められたことがあったっけ。自分を守れるくらい強くなったら、ちょっとくらい使わせてもらえないだろうか……。
少し後ろ向きな考えをしていると、扉を叩く音が鳴った。
「どうぞ、開いてるわよ。」
スレイアさんがそう言うと、扉が開かれ、見覚えのある二人が入ってきた。
「失礼します。スレイアさん用事って一体――。」
「あー!!コルンちゃんだ!久しぶり!!こんなところで会うなんてびっくりだよ。」
エスカさんとロジーさんだった。ロジーさんの挨拶が終わるや否や、エスカさんは私を見つけてはしゃぎ出した。
言葉を遮られたロジーさんは呆れた表情をエスカさんに向ける。
「エスカ……。一応仕事で来てるんだからもう少し落ち着け。」
「えへへ、つい……。ごめんなさい、ロジーさん。」
「相変わらずエスカは賑やかね。この子と知り合いだったのなら話は早いわ。とりあえずそこに座って頂戴。」
「あ、はい。わかりました。」
促されるまま、エスカさんとロジーさんは私の隣に座った。
そしてスレイアさんは一口紅茶を飲むと、ほうっと息を吐き、口を開く。
「エスカ、コルンの師匠になりなさい。」
「「えっ!?」」
驚いた私とエスカさんは、お互いに顔を見合わせた。