「待たせたな、ユウト!」
あー、うん、俺のスキルで召喚できるのは分かっていた。分かっていたけどさぁ……最初に来るのがお前かよ、ブレイバーン!?
俺の天職『次元勇者』のスキル『
……だけど、こいつ、分類上、勇者ロボじゃなくて勇者ロボっぽい別者だろう。
……まあ良い。此処はこう答えておこう。
「ああ、待ちくたびれたぜ、ブレイバーン!」
戦いってのは、ノリの良い方が勝つんだからな!
***
俺は鳴海勇斗。この世界に転生した転生者である。
現在、一人暮らしの高校生だ。
両親は海外での仕事の為に渡米中の為に、今は居ない。俺は進学の都合でこうして一人暮らしを優雅に満喫中である。
昨日はうっかりと遅くまでラノベを読んでいたせいで寝不足気味だ。
「キリの良いところで止めるつもりだったけど、つい最後まで読んでしまったな」
どうも新刊がでると続きが気になる物だ、と改めて思う。
そして始業チャイムギリギリで、同じく寝不足気味に見える友人の南雲ハジメと合流して、寝不足気味でキツい身体を押して教室の扉を開けたのだが、クズグループの檜山達四人から俺達を《キモオタ》とか言ってきたが、ちょっと視線を向けると目を逸らしたので、完全に無視して自分の机に向かった。
……アレか、アイツらの上の連中を含めて不良グループを全員叩きのめしたのが原因か? それとも、アイツらが溜まり場にしてる使われてない倉庫の出入り口を塞いで破裂すんぜんのシュールシュトレミングを大量に設置していて阿鼻叫喚の地獄絵図の中に放り込んだのが原因か? お礼参りに来たアイツらの先輩連中を叩きのめした上で警察に届けたのが原因か(色々と所持していては行けない物があった為に警察に御用)?
…………知り合いの伝で巻き込まれた一件で、ヤの付く自由業の人たちに頭を下げられたのを見られたか?
まあ、檜山が『余計なこと言うんじゃねえよ』と周りに責められている姿から、ハジメからは『何やったの?』って顔で見られてるが、気にしない。
割とクラスの中では恐怖の対象なのだから、その辺は諦めた。
そして、昼休みになったら、
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せた。
外国にある大きな教会や宮殿のような感じのした場所で目を覚まし、イシュタルと名乗った爺さんとの出迎えになったのだ。これはどう考えても、気が付いたらいつの間にか異世界召喚されてました。的な展開だよな。
地球に帰還後に知る事だが、この昼休みにおきた学校での事件は、謎の神隠しとされ、弁当や生徒達のカバン等が残されたまま、一つのクラス全員と一人の教員を含めた人間が消えたのであった。
その後当初いた場所から変わり、本職のメイドとも言える人達が現れ、男子からすれば美女・美人のメイド達であったが、俺からすれば『ハニトラ』としか思えなかった。我ながら、妙にそう言う世界に詳しくなるのは六本木の知人との伝でそんな事件に関わったからであろうか。
そして全員に飲み物がいきわたると、イシュタルがここはトータスという名の異世界で、この世界の唯一神である【エヒト様】と呼ばれる存在が俺達をこの世界に召喚したと言われた。
分かりやすく言うと、このトータスには大きく分けて人間族・魔人族・亜人族の三つの種族がある。
人間族は北の、魔人族は南の一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きているらしく、三つの種族の中の二種族、人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。
魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していたそうだ。
両種族の戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしいが、最近、異常事態が多発しているという。
それが、魔人族による魔物の使役。
魔物とは、通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだ、と言われている。この世界の人々も正確な魔物の生体は分かっていないらしい。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣とのことだ。
今まで本能のままに活動する彼等を使役できる者はほとんど居なかった。使役できても、せいぜい一、二匹程度だという。その常識が覆されたのである。
これの意味するところは、人間族側の〝数〟というアドバンテージが崩れたということ。
つまり、数で対抗できる様になってしまった今、元々質で劣る人間族は滅びの危機を迎えているのだ。
そんな時に神様であるエヒトから神託を受け、その神託で召喚されたのが俺達らしいのだが、イシュタルとか言うジジイはどこか恍惚とした表情を浮かべている。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。
イシュタルのジジイによれば人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。
(うわー、あのイシュタルとか言うジジイの目、完全に何かの異常者の目だぞ)
その目を見ただけで完全にイシュタルへの信頼がゼロになった。神だろうが、人だろうが、思想だろうが、狂信者と言う人種は常に信用すべきでは無い。
俺はこれからどうするべきかと思考を走らせる。
そんな中、いち早く行動を起こしたのは転移させられた者の中で唯一の教師の愛子だった。
「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争をさせようって事でしょ! そんなの許せません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く返して下さい! きっと、ご家族も心配している筈です! あなた達のしている事はただの誘拐ですよ!」
ぷりぷりと怒る畑山愛子先生。
今年25歳になる社会科の教師だが、低身長に童顔の為、その姿には本人の目指す威厳のある教師とは反対の微笑ましさがある。
呼ばれたら本人は怒るが愛ちゃんと言う愛称で親しまれる彼女のそんな生徒達の為にあくせくする様子に生徒達の場は和むが、イシュタルから紡がれた言葉に場は凍り付いてしまう。
「気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能なのです」
シン……と言うような音が聞こえて来そうな程の沈黙。音が消えたかのような錯覚さえ覚える。
(やっぱりな)
その辺だけは予想していた勇斗だ。
隣を見てみるとハジメもそんな事態を予想くらいはしていた様子だ。
『現状では』と言う言葉から召喚者がこの場に居ない。
召喚者が敵側に捕らえられている等のパターンを考えられる。
だが、最悪なのは、
「先ほど言った様に、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉する様な魔法は使えませんのでな」
だが、イシュタルの言葉は勇斗の考えられる最悪のパターンだ。
(エヒトとか言う奴の力を借りてコイツらが召喚したわけじゃ無くて、エヒトと言う奴が召喚した、か)
「あなた方が帰還できるかどうかも、エヒト様の御意志次第と言う事です」
その言葉で逆に言えばエヒトとか言う神様(仮)の気分次第では魔王を倒したところで元の世界に帰れない危険性まで出て来たのだ。
「そ、そんな……」
その言葉に呆然となり椅子に腰を落とす愛子。それを合図に周囲の生徒達も黙って居られずに騒ぎ始める。
「おいおい、嘘だろ!? 帰れないって何だよ!」
「嫌よ! 何でも良いから帰してよ!」
「戦争なんて冗談じゃねぇぞ! ふざけんなよな!」
「どうして……何で……」
パニックに陥いる生徒達を尻目に冷静な目で観察してしまう。
(最悪の場合、魔王とかを倒しても返してもらえない可能性がある、か)
あの壁画から感じたエヒトと言う神様(仮)の印象はそれだった。
結局の所、召還した連中に大半の者達の生活を保障させて魔王討伐の旅に託けて自力で帰還方法を探すか、上手く抜け出して自力で帰還方法を探すしかない。
(俺が勇者って言うならそれも有りだけどな……)
この中には一人とおまけ一人ほどこれを実行する上で邪魔になる正義バカと取り巻きの脳無し筋肉がいる。
それを抜きにしてもこちらを観察するような視線を向けてくるイシュタルへと視線を向ける。
『エヒト様に選ばれておいて、何故喜ばないのか』と言うような侮蔑の意思を感じさせるその視線に余計に苛立ちを覚えるが、当面はその苛立ちは魔人族や魔物相手に向ける事にしようと苛立ちを飲み込む。
仕方ないとばかりに勇斗が口を開こうとした時、誰かが何かを叩くような音が響く。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ」
そして、光輝の言葉が響く。
「……オレは、オレは戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放って置くことはオレにはできない」
(おいおい、呼び出されたばかりで状況も見えないのに何言ってんだ、こいつは)
肉食動物に襲われる草食動物が可哀想だと草食動物を守った結果、その土地の植物が食い尽くされる危険もある。
弱い者が善とは限らず、強者が悪とは限らないと言うのに、既に魔人族側が悪いと既に決めつけている。
(エヒトとか言う奴の思惑通り、都合のいい勇者様、だな)
勇斗は心の中で皮肉を込めてそう呼ぶ。
「それに、人間を救うために召喚されたなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん、どうですか?」
「ふむ、確かにそうですな。……エヒト様も救世主様の願いを無碍にしますまい」
「オレ達には大きな力が有るんですよね? 此処に来てから妙に力が漲っている感じがします」
「ええ、その通りですな。ざっと、この世界の人間族と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えて良いでしょう」
「うん、それなら大丈夫。オレは戦う! 人々を救い、皆が家に帰れる様に。オレがこのトータスも皆も救ってみせるさ!」
根拠のない自信だ。自分達には力が有るから大丈夫だ、と根拠のない自信に溢れている。
(拙い流れだ。このバカに全員が流されたら拙いぞ)
勝手に全員分の傭兵契約の契約書にサインしかねない。しかも、本人は完全な善意で、だ。
しかも、最悪な事に光輝という人間には思考停止している取り巻きのバカが一匹存在している。
「へへっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……オレもやってやるぜ!」
「龍太郎……」
(お前が一番タチ悪いな、脳筋のクズが! 自分の意思を持ってないだけのイエスマンなんだろうが)
こうなったら、バカとバカに全面賛成のイエスマンの組み合わせは拙い。しかも、
「……気に食わないけど……私もやるわ」
「雫……」
(気に食わないなら断れ、追従するな)
「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」
「香織……」
(追従してんじゃねえよ! 何、感動的な雰囲気出してんだよ、馬鹿かあの女どもは!?)
そして、最後に香織が参加してしまった事でこの流れは完全に決まってしまった。
愛子が必死に『ダメですよ~』と宥めているが光輝が無駄に発揮したカリスマ性の前には無駄だった。
そこで勇斗は先ほどの光輝と同じくテーブルに拳を叩きつけ衝撃音を響かせる事でその流れを止める。
「お前ら、そんなに殺し合いに参加したいのかよ?」
当面は従うしかないが、流石に一度冷静になって貰う必要がある。
「魔人族って言うのがどんな姿形してるのか知らないけどな……そんなに人殺しがしたいのかって聞いてるんだよ?」
「ひ、人殺しって……それは言い過ぎだろう!?」
そんな勇斗の言葉に反論する光輝。
「そうだな。人の形をしてないかもしれないから、人と認識出来ないかもしれないけど、少なくとも殺し合いなのは間違いないな」
「こ、殺し合いって……」
敢えて生々しい言葉を突きつける事で、濁流の様な流れになっていた状況から一気に冷静さを叩きつける事に成功した。あとは、
「ひ、人を助けるのに理由なんて要らないだろう!?」
「お前は戦争中毒者か、それともサイコパスかよ? 殺し合いに参加するのに理由が要らないって」
光輝が押し黙る事で光輝のカリスマ性で出来た流れは完全に止める事が出来た。
その後、光輝と勇斗の言い争いが始まる前に、イシュタルが間に入り、暫くの間訓練とこの世界の事を学んでから、戦争への参加は各々の判断に任せると言う話に落ち着いた。
そして勇斗達はこの【神山】と呼ばれる場所の麓にある【ハイリヒ王国】に移動したのだが、王様達がいる場所にまで移動と、玉座で座るべき王様が《立ち上がって待っていた》事と、イシュタルさんの手に軽く触れないか程度のキスをしたので、この世界では【神の意思】によって動かされていると判断できた。
そして晩餐会が開かれ、食事が終わった後には各自一人ひとりに部屋が用意され、天蓋付きのベットなのに困惑したが、精神的に疲れていたのもあり、思いきりベットの上で眠るのであった。
アーシュ達ドラ娘の五人以外にも2〜3人程ヒロインを増やした方が良いでしょか?
-
増えても良い
-
アーシュ達だけでいい。