ありふれて無い勇者達の力で異世界最強   作:龍牙

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九話目

ベッドルームから出るとハジメとユエはその光景に圧倒されていた。

まず目に入ったのは太陽だった。当然此処は地下迷宮でありそれは本物ではない。真上には円錐状の物体が天井高く浮かんでおり、その大変に煌々と輝く球体が浮かんでいた。わずかに温かみを感じさせ、蛍光灯のような無機質さを感じない為、思わず太陽と称したのだった。

 

「あれは夜になると月みたいになる」

 

「マジか……」

 

「……凄い……」

 

勇斗の言葉にこの隠れ家を作った者の技術の高さに圧倒されてしまう二人だ。

だが、ハジメは場違い感のあるキッチンカーと妙な機械に違和感と疑問を感じてしまうが、恐らくはそっちは勇斗の物だろうとスルーしておく事にした。

 

「それにしても、お前はどうして俺達よりも先にここまで来てたんだ?」

 

「ああ、オレ達があの時、吹き飛ばされた後の話だ」

 

そう言って勇斗はゆっくりと話し始める。

 

吹き飛ばされた直後、助かる方法を模索していたら、ベヒモスとの戦いを経てレベルアップしたお陰か、不完全ながら勇者宇宙(ブレイブ・ユニバース)の力を引き出した結果か、残された魔力で一度だけ、空間転移用のESミサイルとES爆雷が使えたのだ。

 

せめて、互いに落下による転落死は避けようとハジメの下にESミサイルを、自身の下にES爆雷を使い、共に転落死を避けられる安全圏まで転移したのだ。

 

その中で、勇斗はオルクス大迷宮の最下層まで転移してしまい、不正な裏技での攻略となってしまった結果、様々な要因が重なり、脱出が出来なくなってしまったのだ。

 

その為に、ES爆雷やESミサイルを再度使えるレベルになるまで、勇者達の力でヒュドラを倒しながら、レベリングを繰り返していた。

 

「食料も有機物を食料に変換する機械が召喚できたからな」

 

「……その隣のキッチンカーは何だよ?」

 

「調理器具があると便利だろ?」

 

確かに便利だが、何故キッチンカーという疑問しか湧かない光景だ。

 

一同が次に、注目するのは耳に心地良い水の音。扉の奥のこの部屋はちょっとした球場くらいの大きさがあるのだが、その部屋の奥の壁は一面が滝になっていた。天井近くの壁から大量の水が流れ落ち、川に合流して奥の洞窟へと流れ込んでいく。滝の傍特有のマイナスイオン溢れる清涼な風が心地いい。よく見れば魚も泳いでいるようだ。もしかすると地上の川から魚も一緒に流れ込んでいるのかもしれない。

 

川から少し離れたところには大きな畑もあるようである。今は何も植えられていないようだが……その周囲に広がっているのは、もしかしなくても家畜小屋である。動物の気配はしないのだが、水、魚、肉、野菜と素があれば、ここだけでなんでも自炊できそうだ。緑も豊かで、あちこちに様々な種類の樹が生えている。

 

最後に勇斗達は川や畑とは逆方向、ベッドルームに隣接した建築物の方へ歩を勧めた。建築したというより岩壁をそのまま加工して住居にした感じだ。

 

ハジメとユエが石造りの住居に入って最初に感じたのは全体的に白い石灰のような手触りだった。

清潔感のあるエントランスには暖かみのある高級が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。ここを生活拠点にしていた勇斗は兎も角、薄暗い所に長く居たハジメとユエには少し眩しいくらいだ。

そこは3階建てらしく上まで吹き抜けになっている。

 

取り敢えず勇斗に案内されて一階から見て回る一同。

暖炉や柔らかな絨毯、ソファーのあるリビングらしき場所に台所、トイレ。勇斗が来た時くらどれも長年放置されて居たような気配はない。人の気配はないが、旅行から住人が帰った家と例えるのが妥当だろう。

 

「ここに来てから、何度も調べたけど、開かない部屋も多かったな」

 

殆ど探索できなかったと言う勇斗は案内の中で二階部分の探索を跳ばして、三人が足を踏み入れたのは三階部分。

入ってすぐに分かった事だが三階は一部屋しかないようだ。中に入るとそこには直径8メートル程の今まで見た事もないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央に刻まれて居た。

その繊細さは正に芸術品と言っていい程に見事な幾何学模様だ。

 

だが、それよりも注目すべきなのは、その魔法陣の向こう側にある豪華な椅子に座った人影だ。

その人影は骸だった。椅子に座ったまま命を落としてからどれだけの月日が流れるまで彼の前に現れた者がいなかったと物語る様に白骨と化していた。

黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織った姿に薄汚れた様子はなく、お化け屋敷のオプジェを想像させる。

 

「オスカー・オルクス。この迷宮の名前の由来になった解放者だ」

 

その亡骸を一瞥してそう言いながら、魔法陣を指差すと勇斗は、

 

「正規のルートを降りてきた二人ならそこに立てば、彼の遺産を与えられるはずだ」

 

何故そこまで知っているのかと疑問に思っていると、勇斗は頭を抱えながら、

 

「…………ES爆雷使って此処に来たせいで、途中でエラー起こしたって所だな、オレの場合」

 

「うわー、チート使ったゲーマーの末路をリアルに体験したのかよ」

 

「偶然の事故でバグった、って言って欲しい」

 

流石にチート故のバグで進行不能よりは、偶発的な事故によるバグで進行不能になった方がまだ人聞きが良い。

そもそも、解放者も魔力を一切使わない手段で瞬間移動してくると言う瞬断は想定外だったのだろう。

 

ユエが二人の会話がわからないと言う顔をしている中、勇斗に促され二人は魔法陣の中央に立つ。

 

魔法陣が淡く輝き、部屋を神秘的な光が満たす。

中央に立つハジメ達の眼前に立つ青年は、よく見れば後ろの骸と同じローブを着ていた。

 

「試練を乗り越えよく辿り着いた。私の名は『オスカー・オルクス』。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えば分かるかな?」

 

話し始めた彼はオスカー・オルクスと名乗った。此処【オルクス大迷宮】の創造者の様だ。

その事に驚きながら彼の話に耳を傾ける。

 

「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」

 

そうして始まったオスカーの話は京矢達地球組が聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話とは大きく異なった驚くべき物だった。

 

それは狂った神とその子孫達の戦いの物語。

 

神代の少し前の時代、世界は争いで満たされていた。

人と魔人、様々な亜人達が絶えず戦争を続けていた。

争う理由は様々だ。領土拡大、種族的価値観、支配欲、他にも色々あるが、その理由は『神敵』だから。

今よりもずっと種族も国も細かく分かれていた時代、それぞれの種族、国がそれぞれに神を祀っていた。その神からの神託で人々は争い続けていたのだ。

 

だが、そんな何百年と続く争いの歴史に終止符を討たんとする者達が現れた。

当時、『解放者』と呼ばれた集団である。

 

彼らには共通する繋がりがあった。それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。

そのためか『解放者』のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまった。何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのだ。『解放者』のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり志を同じくするものを集めたのだ。

 

彼等は、『神域』と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。

『解放者』のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った7人を中心に、彼等は神々に戦いを挑んだ。

 

しかし、その目論見は戦う前に破綻してしまう。

何と、神は人々を巧みに操り、『解放者』達を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせたのである。

その過程にも紆余曲折はあったのだが、結局、守るべき人々に力を振るう訳にもいかず、神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇なした『反逆者』のレッテルを貼られ『解放者』達は討たれていった。

 

最後まで残ったのは中心の7人だけだった。

世界を敵に回し、彼等は、もはや自分達では神を討つことはできないと判断した。そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。

試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。

 

長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。

 

「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。

同時に、ハジメ達の脳裏に何かが侵入してくる。ズキズキと痛むが、それがとある魔法を刷り込んでいたためと理解できたので大人しく耐えた。

 

やがて、痛みも収まり魔法陣の光も収まるとハジメはゆっくり息を吐いた。

 

だが、本来ならば終わったであろう筈のそれは再度現れる。

 

「これを聞いていると言うことは、君達にはあの事を知る権利があると言うことの様だ」

 

再度映像が現れたことに驚きを露わにする勇斗達。映像の中のオスカーはそんな彼らを他所に淡々と言葉を続けていく。

 

「実は最後に一つ、賭けに出たんだ。かつて、エヒトと戦った神が生み出したと言う魔神達を使って、せめてエヒトを打てないかと」

 

オスカーの口から語られるのは、勇斗が調べたら魔神達の話だ。

エヒトと戦い敗れた神はエヒトに対抗する為に強大な力を持つ魔神達を生み出したが、それらは動き出す前に敗北してしまい、生み出した魔神達の肉体を、エヒトに奪われない為にトータスの各地に封印した。

 

「たった一体だけ見つけ出した魔神、それを見つけた事を後悔した。何故あんなものを見つけてしまったのだと。一目見ただけでわかった。あの魔神の強大な力が。確かに魔神達が揃えばエヒトを倒せていたとは思う。だけど、あれに手を出すべきじゃない、そう思ってしまったんだ。神話の時代、何を思ってそれが生み出されたのかは分からない。だけど、願わくば永遠に魔神達が目覚める日が来ないことを、君達が魔神の力を望まない事を願う」

 

そう告げられて再び映像は消えるのだった。

追加ヒロインは次の内誰が良いでしょうか?

  • 白上フブキ(ヤマト幻想怪異譚)
  • ベータ(陰実)
  • テラコマリ(ひきこまり吸血姫の悶々)
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