ありふれて無い勇者達の力で異世界最強   作:龍牙

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十一話目

魔法陣の光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感した。奈落の底の澱よどんだ空気とは明らかに異なる、どこか新鮮さを感じる空気にハジメの頬が緩む。

 

やがて光が収まり目を開けた勇斗達の視界に写ったものは……

 

洞窟だった。

 

「なんでやねん」

 

「いや、想像できただろ?」

 

魔法陣の向こうは地上だと無条件に信じていたハジメは、代わり映えしない光景に思わず半眼になってツッコミを入れてしまった。正直、めちゃくちゃガッカリだった。

そんなハジメに勇斗は呆れた視線を向ける。

 

そんなハジメの服の裾をクイクイと引っ張るユエ。何だ? と顔を向けてくるハジメにユエは自分の推測を話す。慰めるように。

 

「……秘密の通路……隠すのが普通」

 

「あ、ああ、そうか。確かにな。反逆者の住処への直通の道が隠されていないわけないか」

 

「考えてみろよ、仮に街のど真ん中に出口なんてある隠れ家なんて、危険なだけだろ?」

 

そんな簡単なことにも頭が回らないとは、どうやら自分は相当浮かれていたらしいと恥じるハジメ。頭をカリカリと掻きながら気を取り直す。

 

「……ってか、勇斗。最近オレに辛辣じゃねえか?」

 

「毎度、二人でお楽しみしてる奴に対しては妥当じゃねえか? こっちはアーシュ達のことが心配だってのに」

 

態とらしい大きなため息を吐く勇斗。毎度隣の部屋でそれを聞かされる方の身にもなって貰いたい物だと思う。

 

「いや、お前と流星って、付き合ってないだろ? …………あの距離感で」

 

「グゥ……」

 

ハジメも勇斗一緒にアーシュ達と集まっていたのだ、アーシュ達五人が勇斗に好意を持っていたのは側から見ていればよく分かる。

クラスのカーストトップの光輝とは仲が悪くとも、側から見れば美少女五人と一緒に行動出来る立ち位置のハジメもハジメで妙な羨望を受けていた。

それでも、メガ達四人が勇斗に告白とかしなかったのは、勇斗との付き合いが長いアーシュに気を使っていたからだろう。

 

ハジメもそんな付かず離れずな勇斗とアーシュの関係を見ていたら、早くどちらからでも良いから告白しろ、と思ったほどだ。

最近は光輝が絡んできていた為に余計に告白などは出来なかっただろうが。

 

「……」

 

そう言われてしまうと何も言い返せないのが痛い所だ。中々告白出来なかったのが痛い所だ。

 

こんな所でユエを置き去りにした恋バナでも無いと考えて、そこでハジメは話を切り止める。其処は緑光石の輝きもなく、真っ暗な洞窟ではあるが、三人とも暗闇を問題としないので道なりに進むことにした。

 

途中、幾つか封印が施された扉やトラップがあったが、オルクスの指輪が反応して尽く勝手に解除されていった。三人は、一応警戒していたのだが、拍子抜けするほど何事もなく洞窟内を進み、遂に光を見つけた。外の光だ。ハジメと勇斗はこの数ヶ月、ユエに至っては三百年間、求めてやまなかった光。

 

ハジメとユエは、それを見つけた瞬間、思わず立ち止まりお互いに顔を見合わせ、勇斗は無意識の中で光に手を伸ばすと、それから互いにニッと笑みを浮かべ、同時に求めた光に向かって駆け出した。

 

近づくにつれ徐々に大きくなる光。外から風も吹き込んでくる。奈落のような澱んだ空気ではない。ずっと清涼で新鮮な風だ。〝空気が旨い〟という感覚を、この時ほど実感したことはなかった。

 

そして、勇斗とハジメとユエは同時に光に飛び込み……待望の地上へ出た。

 

地上の人間にとって、そこは地獄にして処刑場だ。断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。深さの平均は一・二キロメートル、幅は九百メートルから最大八キロメートル、西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡を、人々はこう呼ぶ。

 

【ライセン大峡谷】と。

 

勇斗達は、そのライセン大峡谷の谷底にある洞窟の入口にいた。地の底とはいえ頭上の太陽は燦々さんさんと暖かな光を降り注ぎ、大地の匂いが混じった風が鼻腔をくすぐる。

 

たとえどんな場所だろうと、確かにそこは地上だった。呆然と頭上の太陽を仰ぎ見ていたハジメとユエの表情が次第に笑みを作る。無表情がデフォルトのユエでさえ誰が見てもわかるほど頬がほころんでいる。

青空を見上げながら勇斗は自然と太陽に手を翳す。

 

「……戻って来たんだな……」

 

「……んっ」

 

「戻ってきた……」

 

ようやく実感が湧いたのか、太陽から視線を逸らすとお互い見つめ合い、そしてハジメとユエは思いっきり抱きしめ合い、勇斗は拳を空高く突き上げた。

 

「うおおおおおおおおぉ! 外だぁー!」

 

「よっしゃぁああーー!! 戻ってきたぞ、この野郎ぉおー!」

 

「んっーー!!」

 

小柄なユエを抱きしめたまま、ハジメはくるくると廻り、勇斗は両手を突き上げる。

しばらくの間、人々が地獄と呼ぶ場所には似つかわしくない笑い声が響き渡っていた。途中、地面の出っ張りに躓つまずき転到するも、そんな失敗でさえ無性に可笑しく、ケラケラ、クスクスと笑い合う。

 

ようやく笑いが収まった頃には、すっかり……魔物に囲まれていた。

 

「はぁ~、全く無粋なヤツらだな。……確かここって魔法使えないんだっけ?」

 

ドンナー・シュラークを抜きながらハジメが首を傾げる。座学に励んでいたハジメには、ここがライセン大峡谷であり魔法が使えない場所であると理解していた。

 

「……分解される。でも力づくでいく」

 

ライセン大峡谷で魔法が使えない理由は、発動した魔法に込められた魔力が分解され散らされてしまうからである。もちろん、ユエの魔法も例外ではない。しかし、ユエはかつての吸血姫であり、内包魔力は相当なものであるうえ、今は外付け魔力タンクである魔晶石シリーズを所持している。

つまり、ユエ曰く、分解される前に大威力を持って殲滅すればよいということらしい。

 

そして、

 

「え? オレのは普通に使えてるぞ?」

 

ライセン大峡谷で魔法が使えない理由は、発動した魔法に込められた魔力が分解され散らされてしまうからであるが、何故か勇斗は普通に使えていた。

ユエでさえ発動には力尽くで十倍の魔力を必要としているのに、だ。魔法と言う形には収まっているが、正確には『勇者ロボの力』だからだろうか。

ユエ曰く、勇斗の使うそれは魔力を必要とはしているが、魔法とは全くの別物らしい。

 

「さて、先ずは試させてもらうか」

 

フレイムソードを引き抜くと、ハジメとユエに「危なくなったら、援護を頼む」と言って魔物の群れに切り込んでいく。

 

「はぁ!」

 

IDアーマーを使わない場合は、一種の魔法剣士としてのスタイルが、勇斗の戦い方だ。

武器を変える必要こそあるが、別の勇者達の力を自在に使えるのは手札の多さに繋がるものの、比較的炎と雷に属性が偏っているのが、現状での問題点だろう。

 

常人なら其処にいるだけで意識を失いそうな壮絶なプレッシャーが辺り一帯を覆う中、遂に魔物の一体が緊張感に耐え切れず咆哮を上げながら飛び出した。

 

「ガァアアアア!!」

 

「サンスライサー!」

 

太陽を模した炎のチャクラムがその魔物の頭を切り裂く。更に別の魔物に手をかざすと、

 

「フレイムキャノン!」

 

炎の砲撃が直線上の魔物達を吹き飛ばしていく。そこから先は、もはや戦いではなく蹂躙。魔物達は、ただの一匹すら逃げることも叶わず、まるでそうあることが当然の如く切り裂かれて、骸を晒していく。辺り一面が魔物の屍で埋め尽くされるのに五分もかからなかった。

 

フレイムソードを腰の鞘ににしまった勇斗は、首を僅かに傾げながら周囲の死体の山を見やる。

 

その傍に、トコトコとハジメとユエが寄って来た。

 

「どうした?」

 

「いや、あまりにあっけなかったんでな……ライセン大峡谷の魔物は相当凶悪って話だったから、もしや別の場所かと思って」

 

「……勇斗が化物」

 

正確に言えばこれでも一部しか使っていない。ヒュドラを倒した時の様に勇者達の力を使うことだって可能なのだ。

……流石にこの状況で、それはオーバーキル過ぎるが。

 

「おいおい、それは少し酷くないか? まぁ、奈落の魔物が強すぎたってことでいいか」

 

そう言って二人の言葉に肩を竦めた勇斗は、もう興味がないという様に魔物の死体から目を逸らした。

 

「さて、この絶壁、登ろうと思えば簡単に登れるだろうけど……どうする?」

 

飛行可能なマシンを呼び出せば簡単に登れる程度の高さなので、どうするのかと問いかけると。

 

「ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えられている場所だ。せっかくだし、樹海側に向けて探索でもしながら進むか?」

 

「……なぜ、樹海側?」

 

「いや、峡谷抜けて、いきなり砂漠横断とか嫌だろ? 樹海側なら、町にも近そうだし。」

 

「……確かに」

 

「どこにいくにしても、街で補給するのは悪くないからな」

 

ハジメの提案に、勇斗も、ユエも頷いた。

魔物の弱さから考えても、この峡谷自体が迷宮というわけではなさそうだ。ならば、別に迷宮への入口が存在する可能性はある。ハジメの〝空力〟やユエの風系魔法、勇斗の召喚する飛行可能なマシンを使えば、絶壁を超えることは可能だろうが、どちらにしろライセン大峡谷は探索の必要があったので、特に反対する理由もない。

 

宝物庫から魔道二輪を出していざ街の方へと向かおうとした時、何かが見えた。かつて見たティラノモドキに似ているが頭が二つある。双頭のティラノサウルスモドキだ。

 

だが、真に注目すべきは双頭ティラノではなく、その足元をぴょんぴょんと跳ね回りながら半泣きで逃げ惑うウサミミを生やした少女だろう。

 

ハジメは胡乱うろんな眼差しで今にも喰われそうなウサミミ少女を見やる。

 

「……何だあれ?」

 

「確か、魔人族や人間族以外の……」

 

「……兎人族?」

 

「なんでこんなとこに? 兎人族って谷底が住処なのか?」

 

「……聞いたことない」

 

「こんなところで生活してたらかなり強いってことだろ? そうは見えないよな?」

 

「じゃあ、あれか? 犯罪者として落とされたとか? 処刑の方法としてあったよな?」

 

「……悪ウサギ?」

 

「もしくは、捨てられた、とか?」

 

ハジメとユエと勇斗は首を傾げながら、逃げ惑うウサミミ少女を尻目に呑気にお喋りに興じる。助けるという発想はないらしい。

別に、ライセン大峡谷が処刑方法の一つとして使用されていることからウサミミ少女が犯罪者であることを考慮したわけではない。赤の他人である以上、単純に面倒だし興味がなかっただけである。

追加ヒロインは次の内誰が良いでしょうか?

  • 白上フブキ(ヤマト幻想怪異譚)
  • ベータ(陰実)
  • テラコマリ(ひきこまり吸血姫の悶々)
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