ありふれて無い勇者達の力で異世界最強   作:龍牙

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十二話目

勇斗としては安心してしまうレベルの、変わらずの変心ぶり、鬼畜ぶりだった。

ハジメの場合、ユエの時とは訳が違うし、ウサミミ少女にシンパシーなど感じていないし、メリットが見当たらない以上ハジメの心には届かない。助けを求める声に毎度反応などしていたらキリがないのである。ハジメは既に、この世界自体見捨てているのだから今更だ。

 

さて、まだ情を残している勇斗は、と言うと。

 

「弱い奴が善良とは限らないからな……」

 

そもそも、刑場にいる時点で罪人の可能性が高いのだ。残念ながら、あのウサ耳が、罪人であるか、善人であるかと言うとは誰にも分からないし、それを確かめる手段もない。

 

この世界のことはどうでも良いし、大事なのはアーシュ達五人だが、勇斗してはこの世界の法をそれなりに無視する気はない。正当な裁きで落とされたなら(冤罪の可能性もあるが)助ける義理はないだろう。その辺の判断が難しいなら、迂闊に助けるのは悪手とも言えるし。

 

しかし、そんな呑気な三人をウサミミ少女の方が発見したらしい。双頭ティラノに吹き飛ばされ岩陰に落ちたあと、四つん這いになりながらほうほうのていで逃げ出し、その格好のまま一同を凝視している。

 

そして、再び双頭ティラノが爪を振い隠れた岩ごと吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がると、その勢いを殺さず猛然と逃げ出した。……それはもう一直線に勇斗達三人の方へ。

 

まだ、それなりの距離があるのだが、ウサミミ少女の必死の叫びが峡谷に木霊し、勇斗達に届く。

 

「だずげでぐだざ~い! ひっーー、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」

 

滂沱の涙を流し顔をぐしゃぐしゃにして必死に駆けてくる。そのすぐ後ろには双頭ティラノが迫っていて今にもウサミミ少女に食らいつこうとしていた。このままでは、勇斗達の下にたどり着く前にウサミミ少女は喰われてしまうだろう。

 

流石に、ここまで直接助けを求められたら……

 

「うわ、モンスタートレインだよ。勘弁しろよな」

 

「……迷惑」

 

「いや、何気にひどいな。まあ、モンスタートレインと言うか、MPKは普通に迷惑行為だけどな」

 

やはり助ける気は全くないらしい。そんな二人にツッコミを入れつつ、真っ先にウサミミ少女から視線を逸らす勇斗。

ハジメもユエも必死の叫びにもまるで動じていなかった。むしろ、物凄く迷惑そうだった。勇斗達を必死の形相で見つめてくるウサミミ少女から視線を逸らすと、ハジメとユエに助ける気がないことを悟ったのか、少女の目から、ぶわっと更に涙が溢れ出した。一体どこから出ているのかと目を見張るほどの泣きっぷりだ。

 

「まっでぇ~、みすでないでぐだざ~い! おねがいですぅ~!!」

 

ウサミミ少女が更に声を張り上げる。

 

それでも、ハジメは、全く助ける気がないので、このまま行けばウサミミ少女は間違いなく喰われていたはずだった。そう、双頭ティラノがウサミミ少女の向こう側に見えた彼等に殺意を向けさえしなければ。

 

双頭ティラノが逃げるウサミミ少女の向かう先に勇斗達を見つけ、殺意と共に咆哮を上げた。

 

「「グゥルァアアアア!!」」

 

それに敏感に反応するハジメだったが、

 

「はぁ……」

 

仕方ないとばかりに勇斗は手を翳し、ジェイバスターを召喚する。

 

「ジェイバスター」

 

容赦無く引き金を引き、ジェイバスターから放たれたビームが二条放たれ、左右の頭を吹き飛ばす。

 

「……最後までビームを撃てる銃は作れなかったんだよな……」

 

敏感に反応した殺気の事も忘れてビームを撃ち出したジェイバスターに目を輝かせるハジメであった。

 

力を失った片方の体が地面に激突、慣性の法則に従い地を滑る。双頭ティラノはバランスを崩して地響きを立てながらその場にひっくり返った。

 

その衝撃で、ウサミミ少女は再び吹き飛ぶ。狙いすましたようにハジメの下へ。

 

「きゃぁああああー! た、助けてくださ~い!」

 

眼下のハジメに向かって手を伸ばすウサミミ少女。その格好はボロボロで女の子としては見えてはいけない場所が盛大に見えてしまっている。たとえ酷い泣き顔でも男なら迷いなく受け止める場面だ。

 

「アホか、図々しい」

 

しかし、そこはハジメクオリティー。一瞬で華麗にウサミミ少女を避けた。

 

「えぇー!?」

 

ウサミミ少女は驚愕の悲鳴を上げながらハジメの眼前の地面にベシャと音を立てながら落ちた。両手両足を広げうつ伏せのままピクピクと痙攣している。気は失っていないが痛みを堪えて動けないようだ。

 

「……面白い」

 

ユエがハジメの肩越しにウサミミ少女の醜態を見て、さらりと酷い感想を述べる。

 

「いや、流石にそれは酷いだろう……。確かに面白いけど」

 

今度の様な状況は確かに『面白い』としか言えないが。

 

「ってか、もう助かってるぞ」

 

その勇斗の言葉にウサミミ少女が思わず「へっ?」と間抜けな声を出し、おそるおそるハジメの脇の下から顔を出してティラノの末路を確認する。

 

「し、死んでます…そんなダイヘドアが一撃なんて…」

 

ウサミミ少女は驚愕も顕に目を見開いている。どうやらあの双頭ティラノは〝ダイヘドア〟というらしい。

 

頭が二つあるのなら、片方生き残っていたらまだ動く可能性があるので、二つとも撃ち抜いたのだが、それで問題はなかった様子だ。

幸いにも体内に運動機能を司る器官はない様子だし。

 

呆然としたままダイヘドアの死骸を見つめ硬直しているウサミミ少女だが、その間もユエに蹴られ、ハジメにしがみついたままである。さっきから、長いウサミミがハジメの目をペシペシと叩いており、いい加減本気で鬱陶しくなったハジメは脇の下の脳天に肘鉄を打ち下ろした。

 

「へぶぅ!!」

 

呻き声を上げ、「頭がぁ~、頭がぁ~」と叫びながら両手で頭を抱えて地面をのたうち回るウサミミ少女。それを冷たく一瞥した後、ハジメは何事もなかったように先へ進もうとする。

 

その気配を察したのか、今までゴロゴロ地面を転がっていたくせに物凄い勢いで跳ね起きて、「逃がすかぁ~!」と再びハジメの腰にしがみつくウサミミ少女。やはり、なかなかの打たれ強さだ。

 

「先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

「いや、いきなり、図太いお願いだな!?」

 

そして、なかなかに図太かった。

 

ハジメは、しがみついて離れないウサミミ少女を横目に見る。そして、奈落から脱出して早々に舞い込んだ面倒事に深い溜息を吐くのだった。

 

「私の家族も助けて下さい!」

 

峡谷にウサミミ少女改めシア・ハウリアの声が響く。

どうやら、此処にいるのはこのウサギ一人ではないらしい。仲間も同じ様な窮地にあるようだ。よほど必死なのか、先程から相当強くユエに蹴りを食らっているのだが、頬に靴をめり込ませながらも離す気配がない。

 

「取り敢えず、話位は聞いてやったらどうだ?」

 

良い加減、鬱陶しくなって纏雷でも使いそうだったハジメに勇斗はそう声をかける。流石に話くらいは聞かないと逃げられそうに無いのだし。

 

「マジか……?」

 

「一応、家族とか言ってるなら、処刑のために落とされた罪人でもなさそうだからな」

 

最後につぶやかれた「話を聞いた方が早そうだし」という言葉がハジメの決断を導くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

そして現在、そのウサ耳少女のシアを魔力駆動四輪に同乗させて谷底を走っていた。

 

そのシアから聞いた話を要約すると、シアは魔力を持たない亜人族の中に魔力を持ち、更に直接魔力を操る力を持って生まれた上に、未来視という固有魔法まで持った異端児。

家族の情が深い兎人族であるハウリアの一族は他の亜人たちからシアの存在を隠し続けていたが、つい先日それがバレてしまった。

このままではシアが処刑されるため、ハウリアの一族は捕まる前に【ハルツィナ樹海】を出た。

 

行く宛もない彼等は、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。

山の幸があれば生きていけるかもしれないと考えたからだ。

未開地ではあるが、帝国や奴隷商に捕まり奴隷に堕とされてしまうよりはマシだ。

だが、運悪く帝国の兵士に見つかってしまい、南へと逃れてきたがその際に半数近くが捕まってしまった。

全滅を避けるために必死に逃げ続け、ライセン大峡谷にたどり着いた彼等は、苦肉の策として峡谷へと逃げ込んだ。

流石に、魔法の使えない峡谷にまで帝国兵も追って来ないだろうし、ほとぼりが冷めていなくなるのを待とうとしたのである。

魔物に襲われるのと帝国兵がいなくなるのとどちらが早いかという賭けだった。

しかし、予測に反して帝国兵は一向に撤退しようとはしなかった。

小隊が峡谷の出入り口である階段状に加工された崖の入口に陣取り、兎人族が魔物に襲われ出てくるのを待つことにしたのだ。

そうこうしている内に、案の定、魔物が襲来した。

 

もう無理だと帝国に投降しようとしたが、峡谷から逃がすものかと魔物が回り込み、ハウリア族は峡谷の奥へと逃げるしかなかった。

そうやって、追い立てられるように峡谷を逃げ惑い、峡谷に逃げ込んだ約60人のハウリア族は、既に40人ほどまで減ってしまったという。

 

ここまで聞いて、一先ず助ける事にした。ユエの発案で樹海の案内を条件に、という前置きが付いた。

それなら一応ハジメ達にもメリットがある為、ハジメが危惧していた無償での慈善活動という使い潰されそうな面倒な事態にはならずに済む。

そうしてシアを連れて峡谷を魔力駆動二輪で爆走中なわけだが、その際に勇斗達の事情も少し話した。

 

「え、それじゃあ、お二人も魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると……」

 

「ああ、そうなるな」

 

「……ん」

 

しばらく呆然としていたシアだったが、突然、何かを堪える様にハジメの肩に顔を埋めた。そして、何故か泣きべそをかき始めた。

 

「……いきなり何だ? 騒いだり落ち込んだり泣きべそかいたり……情緒不安定なヤツだな」

 

「……手遅れ?」

 

「手遅れって何ですか! 手遅れって! 私は至って正常です! ……ただ、一人じゃなかったんだなっと思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」

 

「「「……」」」

 

どうやら魔物と同じ性質や能力を有するという事、この世界で自分があまりに特異な存在である事に孤独を感じていたようだ。

家族だと言って十六年もの間危険を背負ってくれた一族、シアのために故郷である樹海までも捨てて共にいてくれる家族、きっと多くの愛情を感じていたはずだ。それでも、いや、だからこそ、〝他とは異なる自分〟に余計孤独を感じていたのかもしれない。

 

シアの言葉に、ユエは思うところがあるのか考え込むように押し黙ってしまった。いつもの無表情がより色を失っている様に見える。ハジメには何となく、今ユエが感じているものが分かった。おそらく、ユエは自分とシアの境遇を重ねているのではないだろうか。共に、魔力の直接操作や固有魔法という異質な力を持ち、その時代において〝同胞〟というべき存在は居なかった。

 

だが、ユエとシアでは決定的な違いがある。ユエには愛してくれる家族が居なかったのに対して、シアにはいるということだ。それがユエに、嫉妬とまではいかないまでも複雑な心情を抱かせているのだろう。しかも、シアから見れば、結局、その〝同胞〟とすら出会うことができたのだ。中々に恵まれた境遇とも言える。

 

勇斗のスキルである勇者宇宙(ブレイブ・ユニバース)も珍しい力だが、それでも、同胞とはなり得ない。それを理解しているから勇斗は敢えて口は出さずにいた。

 

それから暫く走っていると、遠くで魔物の咆哮が聞こえた。

 

「! ハジメさん! もう直ぐ皆がいる場所です! あの魔物の声……ち、近いです! 父様達がいる場所に近いです!」

 

「だぁ~、耳元で怒鳴るな! 聞こえてるわ! 飛ばすからしっかり掴まってろ!」

 

「いや、この分だとすでに見つかってる可能性が高い!」

 

そう叫ぶ勇斗の視界にはワイバーンの様な魔物が飛んでいる姿が捉えられた。

 

「俺が先行する!」

 

そう叫ぶ勇斗の腕に現れるブレスレットの様なもの。それに触れながら、勇斗はそのキーワードを叫ぶ。

 

「トライ、ダグオン!」

 

勇斗の全身を包む炎を思わせる赤い装甲とスーツ。目の前で特撮ヒーローの様な姿に変身する勇斗に思わず、ハジメは目を輝かせて「おぉ!」と叫んでしまう。

 

やはり、変わったとしてもヒーローや巨大ロボは憧れるのだ。

 

「ファイヤーエン!」

 

そして、ファイヤーエンに変身した勇斗が手を翳すと赤いランプを光らせたパトカー、ファイヤーストラトスが現れる。

 

横を走るパトカーのドアが開き、その中に勇斗が飛び込む。

 

「すげぇ……」

 

思わず目の前で特撮ヒーローの様な姿に変身した友人に呆然としながら、そう呟くしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから少し走ると、上空にワイバーンのような魔物、ハイベリアが上空に屯しているのが見えた。

ハイベリアは群れで行動し、連携して獲物を追い詰めるのだ。

その時、狙いを定めたのかハイベリアの1体が急降下を始めようとした時だった。

 

突然響くサイレン音に兎人族もハイバリア達も其方へと注意が向く。

ファイヤーストラトスの姿に新たな魔物かと思う兎人族達だったが、

 

「融合合体!」

 

突然、ファイヤーストラトスが赤い人型の巨人に変わり驚く兎人族達を他所に、突如現れた巨人、ダグファイヤーに警戒を露わにしているハイベリア達に、左前腕内から取り出した光線銃『ファイヤーブラスター』で撃ち落としていく。

 

「やれやれ、降りるより早いけど、これじゃ、オーバーキルだったな」

 

ダグテクターの姿で十分な相手に、降りるよりもこちらの方が早いと判断してダグファイヤーに融合合体したものの、魔導二輪よりもファイヤーストラトスの方が早かったので、こちらで来たが必要なかったと思いながら、

 

「スターバーン!」

 

最後の一体を胸のエンブレムから撃ち出した、星型の炎で焼き尽くす。

 

「な、何が……」

 

悲鳴をあげて炎に包まれて地に堕ちるハイベリアを最後に、ダグファイヤーを見上げていた兎人族の中の誰かから声が溢れる。

 

ダグファイヤーを見上げていた兎人族達の優秀な耳に、今まで一度も聞いたことのない異音が聞こえた。キィィイイイという甲高い蒸気が噴出するような音だ。

今度は何事かと音の聞こえる方へ視線を向けた兎人族達の目に飛び込んできたのは、見たこともない黒い乗り物に乗って、高速でこちらに向かってくる三人の人影。

 

その内の一人は見覚えがありすぎる。今朝方、突如姿を消し、ついさっきまで一族総出で探していた女の子。一族が陥っている今の状況に、酷く心を痛めて責任を感じていたようで、普段の元気の良さがなりを潜め、思いつめた表情をしていた。何か無茶をするのではと、心配していた矢先の失踪だ。つい、慎重さを忘れて捜索しハイベリアに見つかってしまった。彼女を見つける前に、一族の全滅も覚悟していたのだが……

 

その彼女が黒い乗り物の後ろで立ち上がり手をブンブンと振っている。その表情に普段の明るさが見て取れた。信じられない思いで彼女を見つめる兎人族。

 

「みんな~、助けを呼んできましたよぉ~!」

 

その聞きなれた声音に、これは現実だと理解したのか兎人族が一斉に彼女の名を呼んだ。

 

「「「「「「「「「「シア!?」」」」」」」」」」

 

追加ヒロインは次の内誰が良いでしょうか?

  • 白上フブキ(ヤマト幻想怪異譚)
  • ベータ(陰実)
  • テラコマリ(ひきこまり吸血姫の悶々)
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