ありふれて無い勇者達の力で異世界最強   作:龍牙

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十五話目

ハウリア達が(物理的に)空を飛んでから勇斗達は、恐らくは人間族の中で初めてフェアベルゲンに招待された。

 

暫くは目的の大樹に近づかないのならば仕方ない。そう開き直ってフェアベルゲン観光を楽しもうと考えた勇斗も、(周囲からの敵意のこもった視線はスルーしつつ)その幻想的な光景には圧倒されていた。

 

その後、フェアベルゲンに招待された勇斗達は、アルフレリックの案内でとある一部屋に案内され、そこで【オルクス大迷宮】の奈落で知ったことを話した。

 

「なるほど………この世界は神の遊戯の盤であったと………」

 

アルフレリックは溜息を吐きながらそう呟く。

 

「驚かないんだな?」

 

勇斗は気になった事を聞いた。思っていた反応とは違うことが気になったからだ。

 

「この世界は亜人族(われわれ)に優しくない。今更だ」

 

確かに人間族や魔人族が世界を二分する様なトータスの現状に対して、亜人族はその両者から支配される側だ。有益だと人間族から保護されている極一部の者たちを除けば、このフェアゲルベンだけが亜人達が唯一安心して生きていける土地となる。

世界から虐げられている側、最初から神が味方などではない側の亜人族にとって、この世界が神の遊戯のためのゲーム盤等と言われても今更といった所なのだろう。

呆れるように言うと、

 

「あんたは『解放者』について知っていたのか?」

 

ハジメがそう聞く。

 

「詳しくは何も知らんよ。古くから伝わる長老の座についた者への言い伝えだ。『七大迷宮は“解放者”という者達によって創られた』。曰く、『迷宮の紋章を持つ者に敵対しない事』『その者を気に入ったのなら望む場所へ連れて行く事』。お前さんの持っていた指輪はその紋章の一つだった。故に敵対せず案内したのだが…………全ての亜人族がこれを知っているわけでは無い。それに、知っていてもそれを守らない者もいる…………」

 

その言葉を聞いた勇斗はそれが祖先となるものからの一つの忠告だと考える。

ハジメから聞いた奈落の底が各迷宮のレベルだとすれば、あの状況を生き残れた者の力は敵対すること自体が愚行と言えるだろうし。

……まあ、明らかに合計200層を超える上に引き返すこともできない大規模の迷宮は他の迷宮のクリア後が推奨の可能性が高いが。

訓練で入った数階層の事を考えると、各階層のモンスターを秒殺できたとしても、最短ペースで行くのは100層までが限界だろう。101層以降は初見で攻略して走破するしかない。1〜100層までを転移したとしても、後半と言うよりも本番とも言うべき階層の攻略にどれだけの時間がかかるか分からない。少なくとも、消耗品である水と食料は手持ちで足りるとは思えない。

そして、長老達への伝承から考えると、忠告と同様に亜人族の者が誤って入ってしまわないように、迷宮に入る為には何かしらの条件があるのかもしれないし、それが迷宮の紋章なのかもしれない。

 

どちらにしても平和的に話が進みそうな状況に安堵する。

そう、安堵していたのだが、

 

「アルフレリック!! 貴様………どういうつもりだ? 人間と忌み子を招き入れるなど…………!」

 

勇斗の安堵諸共ドアを蹴破って来たのは大柄の熊の亜人で、見て分かるほどに額に青筋が浮かび上がっている。

 

「なに、口伝に従ったまでだ。お前達も各種族の長老の座にあるのだ。事情は理解できるはずだが?」

 

アルフレリックは冷静にそう言い返すが、

 

「こんな人間族の小僧共が資格を持つというのか!? 敵対してはならない強者だと!?」

 

熊の亜人の男はわなわなと拳を握る。どうやら、この男が『知っていてもそれを守らない者』の代表格なのだろう。

内心、「勘弁してくれ」と思っていると、

 

「ふざけるなっ!! ならばこの場で試してやろう!!」

 

拳を振り上げ、一番近くに居た勇斗に殴りかかった。

勇斗は一度溜息を吐くと、

 

「ふっ」

 

その拳を避けながら、振り下ろした勢いのまま頭から床に投げ落とす。

 

「あのアホ共への対処法として軽く勉強しておいて良かったな……」

 

主に光輝と龍太郎辺りが挑発に負けて殴りかかってきた場合の対処法の一つとして簡単に学んでおいた柔道の技である。

必要になっても良い様に、と学んでいたが、毎回決闘を挑むところから始まるので意味は無いが、役に立つものだと思う。

 

「まあ、納得できないとは思うけど、先人の忠告は聞いとくものだぞ」

 

鮮やかに頭から熊の獣人を床に落とすとそう告げる。ステータスこそ(IDアーマーやダグテクターなしでは)ハジメには劣るが何気に戦闘の技術面では勇斗の方がまだまだ上だ。

 

なお、ハジメとしては初期的な物とはいえ、ブレイバーンやファイバードの力を見ている以上、まだその一部とは言え彼らの力を使えるのは王国にいる光輝達のチートを遥かに超えていると思う。

まあ、強いて弱点を上げるとしては、炎と雷に特化しすぎている、と言うことくらいだろう。

 

「で? これで納得してもらえたか? なあ、森人俗の長老さん?」

 

尚も立ちあがろうとする熊の獣人の鼻先に、「動くな」と言わんばかりにカイザーソードを突き付ける。

 

「ジン、力自慢のお前が完全にあしらわれておる。少なくとも、それだけの力量を持つ者達だという事は理解したはずだ」

 

「ぐっ………」

 

ジンと呼ばれた熊の亜人は悔しそうに声を漏らし、腕から力を抜いた。

それを確認して勇斗も剣を下ろす。そして、ジンが入って来た扉の方を向くと、

 

「それで、外にいる人たちも俺達を試すか?」

 

そう、扉の外に居る者達に呼びかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亜人たちは近い種族ごとに長老が居るようで、虎人族のゼル、翼人族のマオ、狐人族のルア、土人族のグゼ、熊人族のジン、そして森人族のアルフレリックが勇斗達と向かい合うように座っていた。

 

「で? あんた達は俺等をどうしたいんだ? 俺は大樹の下へ行きたいだけで、邪魔しなければ敵対することもないんだが……亜人族としての意思を統一してくれないと、いざって時、何処までやっていいかわからないのは不味いだろう? あんた達的に。殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮する程、俺はお人好しじゃないぞ」

 

ハジメの過激な物言いに勇斗は内心苦笑する。矢張り、ハジメの言葉に、ゼルやジンが顔を顰める。すると、

 

「確かに、この少年達は、紋章の一つを所持しているし、大迷宮を突破したと言うのは本当だろう。僕は、彼を口伝の資格者と認めるよ」

 

そう言ったのは狐人族の長老ルア。翼人族のマオ、土人族のグゼも、渋々と言った感じで認める発言をする。『来るべき時が遂に来た』と考えているのだろう。

しかし、

 

「俺は認めんぞ!」

 

虎人族のゼルが拒否の意を示した。

 

「俺も同意見だ!」

 

先程殴りかかって来たジンも続く。

 

まあ、反対意見も出る物とは思っていたが、

 

「口伝には気に入った相手を案内するとあるんだろう? 俺はコイツらが気に入らん! 大樹への案内は拒否させてもらう。ハウリア族に案内してもらえるとは思わない事だな。そいつらは忌み子を匿った罪人たち。すでに長老会議で処刑が決まっている」

 

それを聞いた瞬間、

 

「そんな! どうか………どうか一族の命だけはお助けください!」

 

シアが必死に懇願する。

 

「やめなさいシア。皆、覚悟は出来ている」

 

それを止めたのはカムだ。

 

「でも………でも………!!」

 

「お前には何の落ち度もない。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わん。我らハウリア族はどんな時も一緒だ」

 

カムの言葉に泣き崩れるシア。

 

「大樹に行く方法が無くなった訳だが、どうする? 運よく辿り着く可能性に賭けてみるか?」

 

ゼルがいい気味だと言わんばかりにガハハと笑うが、勇斗は不思議そうに、

 

「いや、その場合、この国を潰すなり、大樹まで一直線に木を切り倒せば済む話だろ?」

 

その言葉に沈黙が流れる。余りやりたくないが、勇者ロボの力が有ればその程度も楽だし、フルサイズの巨大ロボ一体有れば霧があっても迷わない直線ルートを作るのも楽だろう。

 

ブレイバーンやファイバードの事を知ってるハジメとユエも納得と言う様子だ。

 

「何だと!?」

 

ゼルが叫びながら言い返す。

 

「ついでに言っておけば、そいつが殴りかかったのが勇斗で良かったな。もし俺やユエに殴りかかってきたら俺は殺す気で反撃してたぞ? 殺そうとしてきたんだ。殺されても文句は言えないだろ?」

 

「そ、それは! しかし!」

 

「勘違いするなよ? こっちが被害者で、あの熊野郎が加害者。長老ってのは罪科の判断も下すんだろ? なら、そこのところ、長老のあんたがはき違えるなよ?」

 

「付け加えるなら、俺達は僕ハウリア族に対し、彼女達を護る代わりに大樹まで案内してもらう、と約束した。大樹まで行くのが俺達の目的で、その目的が達成されるまで俺達には彼女達を護る義務がある」

 

「俺らはお前らの事情なんて関係ないんだよ。このままコイツらを処刑するって事は、俺の邪魔をするって事だろうが」

 

勇斗の言葉に続けて、ハジメはそう言いながらシアの頭に手を乗せ、

 

「俺らの行く道を拒もうって言うのなら、覚悟を決めてもらおうか?」

 

「本気かね?」

 

アルフレリックの問いかけに、

 

「当然だ」

 

即答するハジメ。勇斗も無言で頷く事で肯定の意思を示す。

 

「フェアベルゲンから案内を出すと言っても?」

 

「何度も言わせるな。俺の案内人はハウリアだ」

 

「なぜ、彼等にこだわる。大樹に行きたいだけなら案内人は誰でもよかろう。案内人を変えるだけで我々と争わずに済むのだ。問題無かろう」

 

「大有りだ。あんた達は俺達を嘘つきにしたいのか? それに、仮にも口伝を知っている長老があんな態度でその案内人を信用できるか?」

 

勇斗がゼルを一瞥し、そう言うとアルフレリックは黙り込む。

 

「それに案内するまで助けてやるって約束したんだ。途中でいい条件が出てきたから鞍替えなんざ………格好悪いだろ?」

 

ハジメがそう続いた。

 

「…………何を言っても無駄か………」

 

アルフレリックはそう言って深いため息を吐いた。

 

「ならば、お前さんの奴隷ということにでもしておこう。フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰ってこなかった者、奴隷として捕まったことが確定した者は、死んだものとして扱う。樹海の深い霧の中なら我らにも勝機はあるが、外では魔法を扱う者に対して勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬように死亡と見なして後追いを禁じているのだ。……既に死亡と見なしたものを処刑はできまい」

 

「アルフレリック! それでは!」

 

ゼルが叫ぶ。アルフレリックが言った理由は完全に屁理屈だ。納得できないのは当然だろう。

 

「ゼル。わかっているだろう。この少年達が引かないことも、その力の大きさも。ハウリア族を処刑すれば、確実に敵対することになる。その場合、どれだけの犠牲が出るか……下手をすれば、宣言通りに全滅も在り得る。長老の一人として、そのような危険は断じて犯せん」

 

「しかし、それでは示しがつかん! 力に屈して、化物の子やそれに与するものを野放しにしたと噂が広まれば、長老会議の威信は地に落ちるぞ!」

 

其処で一言言葉を区切り、

 

「既に一度掟を曲げて物心つくまでは育てる事を許した筈だ! 俺達もお前達も! それにあの忌子を追放してからだろう! 謎の魔物が出る様になったのは!?」

 

「謎の魔物?」

 

「ああ、伝える前にこの様な事になってしまったが、霧の中で正体不明の魔物に出会う様になったのだ」

 

勇斗の言葉にアルフレリックが答える。

警備として街の外で行動している者達の多くが正体不明の魔物に襲われる様になったのだと言う。

 

今の所命を落とすものは出ていないが、多くの者が襲われているそうだ。そして、何よりもその魔物を正体不明、としているのはその魔物に遭遇した者達、その全員の証言が何一つ一致していない事だ。

そう、同時に目撃した者達でさえ一人一人が全く別の魔物を見たと言っているのだ。

だが、別の者達は今度は口々に同じ姿の魔物を見たと言っている。

 

故にその魔物の外見さえ掴めていないのだ。そして、その魔物が現れた時期は、

 

「そのシアと言う娘と同じ、忌み子の娘を追放してからだ」

 

そう語った後、一呼吸おくと、

 

「ハウリア族は忌み子シア・ハウリアを筆頭に、南雲 ハジメの身内と見なす。そして、資格者南雲 ハジメに対しては、敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁ずる。以降、南雲 ハジメの一族に手を出した場合は全て自己責任とする……以上だ。何かあるか?」

 

アルフレリックがそう結論を出す。

 

「いや、何度も言うが俺は大樹に行ければいいんだ。こいつらの案内でな。文句はねぇよ」

 

「……そうか。ならば、早々に立ち去ってくれるか。ようやく現れた口伝の資格者を歓迎できないのは心苦しいが……」

 

「気にしないでくれ。全部譲れないこととは言え、相当無茶言ってる自覚はあるんだ。むしろ理性的な判断をしてくれて有り難いくらいだよ」

 

ハジメがそう言いながら席を立つ。

勇斗達もそれに倣って立ち上がるが、シア達ハウリア族は、未だ現実を認識しきれていないのか呆然としたまま立ち上がる気配がない。

 

「おい、何時まで呆けているんだ? さっさと行くぞ」

 

シアが、オロオロしながらハジメに尋ねた。

 

「あ、あの、私達……死ななくていいんですか?」

 

「? さっきの話聞いてなかったのか?」

 

「い、いえ、聞いてはいましたが……その、何だかトントン拍子で窮地を脱してしまったので実感が湧かないといいますか……信じられない状況といいますか……」

 

周りのハウリア族もシアと同じように困惑している。すると、

 

「……素直に喜べばいい」

 

ユエがそう呟いた。

 

「ユエさん?」

 

「……あなた達はハジメ達に救われた。それが事実。受け入れて喜べばいい」

 

「……」

 

ユエの言葉に、シアはハジメに視線を向ける。

 

「まぁ、約束だからな」

 

ハジメは背を向けながら軽く肩を竦める。

 

「ッ……。ハジメさ~ん! ありがどうございまずぅ~!」

 

シアが泣きながらハジメに向かって跳び付くように抱き着いた。

 

「どわっ!? いきなり何だ!?」

 

「むっ……」

 

「いや、また一人増やしたのかよ……」

 

そんなシアにムッとするユエと、呆れた様に呟く勇斗。

 

「修羅場って奴だな、これは……」

 

勇斗の呆れた様な呟きが虚空に消えていった。

 

「……所で一つ気になったんだけど、何で魔力を持った子供を忌み子と言って迫害しているんだ?」

 

「何?」

 

「魔力を持った子供が居ることで、お前達が、何か直接的な被害を被ったのかって聞いてるんだが?」

 

「何を言う!? そいつは我々を苦しめた人間族と同じく魔力を持ち、更に魔物達と同じく魔力を直接操作している! それが化け物でなくて何だというのだ!?」

 

ゼルがそう叫ぶと、勇斗は分かり易く溜息を吐いた。

 

「それを亜人族全体の『進化』、魔物への強力な対抗手段、虐げられる側からの解放の為への福音、って捉えられない時点で根っからの負け犬だな」

 

呆れた様に再度溜め息を吐くと、

 

「そう言う突然変異も受け継がれれば立派な進化だろ? 自ら前に進む手段を捨てて、現状にいる事しか出来ない時点で、迫害されるのは亜人族の運命なのかもな」

追加ヒロインは次の内誰が良いでしょうか?

  • 白上フブキ(ヤマト幻想怪異譚)
  • ベータ(陰実)
  • テラコマリ(ひきこまり吸血姫の悶々)
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